月光城 ~宮中志シリーズ第0巻~   作:仲村大輝

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ここからは本で見たことないような書き方をします。
これは、元々「美朝村の霧」と同じ書き方をしていましたが、大学の授業で武田泰淳の「ひかりごけ」を読んだことで、「こういう書き方は面白い!」と思い、この書き方にしました。
また、自分の住む地域の高校に演劇部があり、その公演を見て、「自分も演劇を書いてみたい」と思っていたのでなかなか書いてて楽しいものでした。

みなさんは、演劇の演出家や登場人物の役者になったつもりで楽しんでください。

(演劇の脚本の素人なので、演劇界のタブーに触れていたらご容赦ください。)

「さあ、宮中さん。
明治に滅んだニホンオオカミがあなたを食べに来ていますよ。
ほら、後ろ!」


第1幕 予感

*この物語は宮中が口伝で話した話を、勇気が演劇の脚本のようにまとめたものである。

 

劇場の造りは、歌舞伎舞台のように観客席から見て左側が廊下(脇舞台)になっている。廊下以外は幕で隠す。

 

 

登場人物

宮中志:先ほどまで話し合っていた男に似た(本人と見間違うほど似た)男。しかし、ちょっと若い。トランク、ベルトバックを持っている。

木こりの男:林業作業にふさわしい格好をしている。

娘:明るい服を着ている。(犬に乗っているのでズボンの方が良い)

犬:娘を乗せてもびくともしない大きな白い犬。(狼のようなデザイン)人が2~3人入る。

 

舞台設定

月光城入口、草木の生えた小山の壁になっていて、一カ所切れている。これが入口、入ると小山が脇に消え、両側が小山になり、宮中が奥に歩くと景色も同時に動く。(プロジェクションマッピング)

 

 

開場状態で既に一番左前の座席に宮中が座っていて、幕があがると席から舞台に上がり登場する。観客参加型である。

宮中:…月光地区入り口よりも、違う名前に変えた方が良さそうだな。例えば、月光城入口まで五kmとか。

プロジェクションマッピングは、ただ両側は畑を何十年も使わずにおいたかのように雑草が我先にと生えている土地を映し出す。

宮中が足踏みすると、プロジェクションマッピングの景色も自然と移る。

宮中:だんだん道が上り坂になってきた。…これが伝説でつくられた山の入り口か?

(思わず声が出た感じでしゃべる。)

マッピングは、だんだん杉のような針葉樹が多くなる。

宮中:あれ?あれはなんだ?地形が不自然なところに出たぞ。

マッピングは道はそのままなだらかなのだが、両脇が堤防のように高くなっている場所を映す。

宮中:………土塁か?

 

(読者の皆様は「日本の城」と言われたら姫路城や熊本城 大阪城のようなものを想像すると思うが、それは平和になってから象徴としての機能または役所としての機能を持つ城だ。

戦国時代までの城とは主に戦争用の山城を指し、山を一個改造したようなものが城だった。

土塁とは土で出来た塀のようなもので、守りたい側の外側の土を掘り 盛り上げ使われた。

なぜ外側かと言うと、その掘った穴を空堀や落とし穴として使うためだ。)

プロジェクションマッピングで説明を映し出す。もしくは、ナレーションが入る。

 

宮中:だが、なにかおかしい。

宮中 土塁を触りながら

宮中:今までに…というか中学生の時に城も調べたりしたが、だいたい山のものは植物に侵食されているがこの土塁は土色で、「まだ俺は現役だ!」と言っているようだ…

宮中 それを通る真似をすると、正面が壁になっている。

宮中:おや?(見渡す真似。)あっ!左に折れるのか…馬出しとも…虎口(こぐち)とも違うつくりだ。

 

(虎口とは城の門のことであり、馬出しとはその門を守るための城外側に作られた小さな広場をいう。ちなみに城の内側につくる広場を曲輪と言う。)

プロジェクションマッピングで説明を映し出す。もしくは、ナレーションが入る。

 

宮中:入ってきた敵がこの道沿いに歩いたら土塁の上から飛び道具で攻撃が簡単なようにするためか…

マッピングは、宮中は、今道沿いに歩いているため、右側が壁になっている。しかも土塁は誰か飛び出してきそうなほど綺麗に整備された状態。

宮中 突如振り返る。

宮中:……誰かが俺を見てるのか?…警戒して出てこないだけで?…確かに発表するときに感じる人の目の圧は感じるが……(ここまで独り言)

宮中:(ここから、反対の舞台袖に届く大きな声)どなたかいらっしゃいますか?私は駒川大学の宮中志です。怪しいものではありません。村長に了解は得ています。

なにも返答しない。

宮中 歩き出す、木の棒を拾い、頭の上に掲げる。

宮中:……まさかオオカミがいるとは考えられないけどな。

 

(送り狼 送り犬…日本狼がいた昔、人が夜に山道を歩いているとなにかつけてくる。振り返っても誰もいない。この現象は狼が集団で狩りを行う現象で、狼に襲われたという記述は全国に点在する。ならびにそういった本には送り狼からの逃げ方、家に着いたらどうすればいいか?というやり方も説明されている。

狼は対象物の上を飛び越えたり体当たりして敵を弱らせるのだが、それを逆手にとり 刀や棒を頭の上に掲げておけば飛び越える狼を傷つけることができ、それで狼が恐れて逃げるからだ。)

プロジェクションマッピングで説明を映し出す。もしくは、ナレーションが入る。

 

宮中:オオカミな訳はないだろう…ただ、この道を音を立てずに歩ける人間はいない。いるなら…魔法使いかな?(歩きながら言う。声は独り言)

二秒空ける。

宮中:私は村長に頼まれ、魔法使い選抜を記録するだけだ。魔法使いではない!(観客席の後ろまで届く大きな声)

十秒ぐらいしたら、後ろの木の枝がバサっと大きな音を立つ。

宮中 バサっのバで振り向く。

十秒ほど待つ。

(音はしない。)

宮中:…去ったか?(独り言)

また歩き出す。棒は捨てる。

下手の舞台袖に一回引っ込む。

プロジェクションマッピング 広場になっているが、周りは林になっている。違うデザインに変わる。

木が舞台袖から倒れて、木こりが座る場所になる。

木こり:一休みするか。

など言って良い。

木に座り一服している。

宮中:(再登場する直前)しめた!木こりがいる。木こりならなにか分かるかもしれない!

 

 

宮中 :こんにちは。

木こり:あぁどうも。

宮中 :私は、東京の大学から来た大学院生です。

木こり:…あぁ!そういえば村長が言ってたな。どうしたんだ?折れに用か?

宮中 :実は…道に迷ったらしく…

木こり:いや、大丈夫だ。ここを通るので合ってる。

宮中 :本当ですか!良かった…実はもう一つありまして…

木こり:なんだ?

宮中 :ここ独自のことかと思いますが、あの土塁を過ぎてからずっと誰かに見られてる気がするのですがそれもここ独自ですか?

木こり:…?…目線?…そんな話や体験はないぞ。

宮中 :えっ!

木こり:なにせ十何年間も木を切ってるが誰かに見られてると感じたことはないし、あの土塁の山側はいろいろ山菜が採れるから秋になれば人はたくさん行くが、今の時期は…もし不安なら俺の子供と村長のところまで行けばいい。おーい!

娘  :はーい!

上手から大きな犬に乗った女の子が登場。

木こり:悪いが、この人を村長のとこまで連れてってくれ。

娘  :はーい、おじさん行きましょう。

宮中 :いや…あの、木こりさん。見ず知らずの私をどうしてそこまで信頼するのでしょう?…

木こり:…もし、変な気を起こしたらこの犬の餌になることは覚悟出来てるだろう?

宮中 :そういう訳ですか。ではお言葉に甘えさせていただきます。

二人は下手方向に歩き出す。

木は木こりを乗せたまま上手へ移動してはける。

マッピング:周りは木が生え、足元は一筋、道のように土が固まっている。そこを縫うように犬と宮中が歩いていく。

宮中 足場が悪くたまに転びそうになる。

山犬と宮中の動きは舞台をぐるぐる廻っているだけだが、プロジェクションマッピングに合わせてアクションが求められる。

 

(参考事例、小説の文体で表記する。演出の指示を仰ぐ。)

歩いているところは尾根のようになっているため、もし人が来て、すれ違うにはその道から外れなければならないが、もしそんなことをしたらまくれ落ちてしまう。

下を見つつ犬に離されないよう気をつけていたら急にジャンプした。

観ると、尾根が不自然にえぐれたように無くなっている。これは一回降りて登らなければならないという非常にめんどくさいものがたまに来る。

するといつの間にか、苔むした石がゴロゴロとして、水が石の下を流れているところになった。周りを見ると自分が堀の中にいるように、両側の土地が反り上がっている。

足が濡れるのを心配していると、目の前にドロが堆積した場所が現れた。

なにかがのたうち回ったようで、ところどころ土が乾いている。

考えてみればあそこは、切った木を加工するためなのか、広くなっていた。なぜかというと、似たような少し開けた場所が点々とありそこでは人が働いている。(村民は上手や下手から歩いてくるだけのつもり。)

 

村民 最初は不審顔だが、少女と山犬を見たらみんな作業に戻っている。

しばし歩くと、少女が歌を唄い出す。

 

細い夜道にネズミがおって

驚き わけさせ

引っ張りまわり

楽にさす

 

古い小池に小亀が住んで

かんかん照りで

水が干上がり

足を出す

 

畑の大根 千切りにして

頭に菜が生え

走りながら

あのえ行き

 

白鷺 蛙を丸呑みし

蛙が腹で大騒ぎ

口で腹をつついてみれば

中から蛙がこんにちは

 

(プロジェクションマッピングで文字を映し出す。)

 

宮中:上手だなぁ…もう一回歌ってよ。

娘  一瞬、驚いた様子だったがまた唄い出す。

宮中:聞いてみて思うが、結構えげつない内容だな…しかも聞いたことない。この村独自のものなのかな?(つぶやくように)

宮中 唄をスマホの録音機能で撮っておく。

 

もう一回歌ってもらっているときに一回目の幕を閉じる。

 

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