ウマ娘 紅の軌跡If もし物語開始前から三人が迫っていたら 作:小鳥遊 小佳夏
しばらくして、何とか退院までこぎつけることができた。体は完全に訛り切っているが、未だ完治は見えない。
「ありがとう、三人とも」
「ううん、これくらいなんてことないよ♪クレナイもやってくれたことだしね~♪」
それから少しして。三人が変わりばんこに私の世話を焼いてくれた。それこのご飯食べさせてくれたり、体を拭いてくれたり。そして退院の日だが、今日はテイオーの番の日だ。実際のとこ、車椅子生活になって不便しそうだったからうれしいのだけども。ところで、なんで私の車椅子が無動力なのかしら? 電動のをお願いしていたはずなのだけども・・・? いえあれね、勝手に動かれたくないってルドルフが横やりを入れたんでしょうね。容易に想像がつくわ。
「これからもボクたちが面倒みるからね、全部任せてよ!」
「ほんとうにありがとう」
「どういたしまして♪」
そのままテイオーに部屋まで連れて行ってもらう。車椅子ということもあり、プレハブの入り口がスロープになっていた。バリアフリーだ。
部屋に戻ると、ルドルフとスズカが待っていた。二人に抱えてもらって、ベッドの上に移してもらう。
「ありがとう、ルナ、スズカ」
「気にしないで」
「ところで一つ、聞いておきたいことがあってな。その答えを理事長にあげないといけない」
「足のことよね? 正直、まだわからないけれども厳しそうというのが答えになるわね。筋力の衰え具合はあなた達もわかってると思うけど、そういうことなのよ。明日あたり、タキオンにお願いしてデータを取るつもりだけど」
「ああ、わかった。詳細がわかったらまた言ってほしい。もしトレーニングしたくなったら、私たちが手伝うからな、言ってくれ」
「ええ、頼りにしてるわ」
この様子だと、このまま逃げ切れることはできなさそう。腹をくくって走るしかないかもね。そんなことを考えながら目を閉じ、深い睡眠に落ちていった。
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「寝たか?」
「ええ、深く眠っているみたい」
「そうか・・・」
クレナイが寝るのを見届けた後、ボク、スズカ、ルドルフの三人は今でお茶を飲んでいた。
「で、二人はどう思うのさ。クレナイ、また走ると思う?」
「正直わからないな。体は何とかなると思う。それこそ、酷い骨折から復活したスズカや、何度も骨折して治ってるテイオーがいるんだ。体は戻ると考えていいはずだ」
「そうね。そこはいいとして、後はクレナイの心の問題よね」
「ああ。そこばっかしは、その時にならないとわからん」
「まあ、もし走りたくないって言ったら、その時はみんな揃って学園やめて、どこかでゆっくり過ごすのもいーんじゃない?」
「っと、まさか最強のウマ娘を目指していた君からそんな言葉を聞く日が来るとはな」
「まあでも、私たちみんな同じこと考えてるでしょう?」
「それは違いない」
くつくつと笑うルドルフ。ここにいるのはみんなクレナイが好きで、好きすぎるくらいの三人。であれば、クレナイが何よりも最優先で、クレナイが何かしたいと言えばそれが叶うようにすべてを整える。
どんな道を歩もうとも必ずついていく。それを確認しあった三人であった。
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それからしばらくして、私のケガは少しずつではあるが、確実に治っていった。ギプスも段階的に取れ、軽い工作くらいならできる程度に腕が動かせるようになった。だがそれに反比例するように筋力やスタミナは落ち、今では普通の人間と変わらないくらいにまで落ち込んでしまっていた。
そんな中、今日はスズカに車椅子を押してもらって、散歩に来ていた。もちろんルドルフとテイオーも一緒に。今日は普通にトレーニングはお休みの日なので、みんなでのんびりと散歩をしている。
「外は風がきもちいいわね」
「ええそうね、ほんと」
途中で買い食いしたり、ウィンドウショッピングをしたり、色々と回っていた私たちは、帰りがけに河原の土手に来た。オレンジ色の夕日が綺麗に映えている。
ふと河原を見下ろすと、ウマ娘が必死にランニングしている姿が見えた。自然と、唇を強く嚙み、血が出るほど強く手を握りしめていた。
悔しかった。まだまだ治らず、治るにつれてどんどん鈍るこの体が恨めしかった。もっと走りたい、また速く走りたい。そんな思いだけが先行し、私の心を黒く染め上げる。
「やっぱり、生きてても、もう・・・」
小さく、とても小さく呟いた。そしてそれが、三人に聞こえてしまった