ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話 作:井上ああああ
第三新東京市、郊外。
コンフォート17。
住んでる世帯が一つしかないこのマンションでは特務機関ネルフの作戦課長である葛城ミサトとエヴァ初号機パイロットの碇シンジが住んでいた。
シンジには不満があった。
それは同居人の葛城ミサトが家事手伝いを一切行わないからだ。
「なんで、僕が家事なんかしなきゃいけないんですか…。」
少年のせめての抵抗に29歳の女軍人は冗談めかして答えた。
「だって、シンちゃん。あたしの作ったご飯たべたい?」
「じゃあ、もう何もしなくていいですよ!」
シンジにはそれ以外にも不満があった。
上司でもあるミサトの指示は大雑把なのだ。
こんな人が軍人とは思えない。
「いつもいつも何もしないで、自分ばっか楽な想いばかりして…。」
シンジは思わず口に出してしまった。
ミサトはキョトンと見つめるしかなかった。
「どうしたの、シンジくん?」
「もういいですよっ!!」
シンジは肩を怒らせながらそのまま学校へと向かっていった。
「やだ、あの子また家出とかしないわよね~もうめんどくさいなァ…。」
ミサトはまるで河豚のようにほほを膨らませ憤慨した。
『楽な想い』をしている。
これは家事のことだけじゃないだろう。
恐らく少年は作戦課長としての葛城ミサトにも苛立っている。
「確かに彼の言う通り、私は楽な想いばかりしているのかも…。」
発令所で陣取り、偉そうに指示をする。
それなのに称賛されるのはいつも作戦課長である自分ばかり。
シンジ君から見れば確かに苛立つの当然だ。
ミサトはペットのペンペンに留守を任せると、そのままネルフ本部へと向かっていったのだった。
数時間後…。
第一中学校は今日も平穏に終わった。
シンジは友人のケンスケにミサトの愚痴を話しながら下校していた。
「ミサトさんって本当にずぼらでどうしようもないんだよ!家事は僕任せだしさ、ペンペンの世話だってろくにしないんだ。」
「でも、あの人すごい美人だと思うけどな。それにあのスタイル。すごく素敵だと思うよ。」
シンジは鼻で笑った。
ケンスケはあの人のことをわかってないんだ。
確かに僕だってあの写真が送られたときすごく美人だと思った。
でもただの美人じゃなかった。
ずぼらでがさつでどうしようもないダメな大人だったんだ。
「フン、それにあの人の考える作戦ときたら無茶ばかりだよ。自分は痛い思いをしてないのに、僕ばっかりに無茶な指示だしてさ。」
ケンスケは大袈裟に笑ってみせた。
「きっと、お前や俺にわからないだけで綿密な作戦を考えてるんじゃないか?」
「フン、ケンスケだってエヴァパイロットをやればわかるよ。本当ひどいんだよ。」
「はは、じゃあ俺電車に乗って帰るわ。」
「またな。」
シンジは肩を怒らせながら歩いていた。
ケンスケたちはわかっていない。
ミサトは本当にずぼらでどうしようもない。
あんなのが軍人なんて信じられない。
「でも…。」
ずっと前にジェットアローンを追いかけた時のミサトさんはさっそうとしていた。
あんなカッコイイ一面もあるんだとシンジは感激したものだ。
でも、あれだけだ。
それ以外の時は本当にどうしようもない、正直ミサトへの信頼も揺らいできていた。
ふとそんな時だった。
「ああ、ごめんなさい。駅まではどこをいけばいいのかな?」
男の声が聞こえた。
シンジは顔を見上げた。
「えっと、僕に聞いてますか?」
「うん、君しかいないからね。」
「えーっと、駅は…。」
シンジがそう言おうとした矢先であった。
バチィ!!!
激しい音とともにシンジの体に電撃が走った。
悲鳴を上げる暇もなくシンジは地面に倒れ伏した。
「おい、待てッ!!お前たち!!」
シンジを陰ながら観ていた保安部の職員は銃を持ち駆け走ってきた。
「おい、どけ」
車の中から一際大きな白人男性が姿を現した。
まるで80年代のアクション映画のスターのようなハンサムな顔と鋼の肉体を持った男は保安部を不適なほほえみで迎えた。
「やあやあ、どうも。」
そして男は大きなチェーンガンを持つと、そのまま轟音とともに火を放った。
ドドドッ!!
鈍い音とともに放たれたチェーンガンは保安部の職員をすぐさま、血だらけのハチの巣の姿をかえさせてしまった。
男は微笑んでいた。
飛び散る薬きょうの臭い、飛び散る血の光景を楽しむと恍惚の表情を浮かべた。
「たのしいねェ…。」
男は、部下の待っている車に乗るとその場から去っていった。
数時間後、ネルフ本部。
シンジ誘拐の伝令はミサトの耳に届いた。
ミサト直属の部下である日向から話を聞いたミサトは顔を硬直させていた。
「えっ?それ本当?」
「残念ながら…。」
ミサトは感情を押し殺して問い詰めた。
「保安部は何をしていたの?」
「二名ほど犠牲になりました。」
こんなことだからもっと対人防衛予算に経費を回すべきだと何度も説明をしていた。
なのに、上は取り合ってくれない。
そんな中、とうとうシンジ君が攫われてしまった。
でも、他人のせいにはしていられない自分にだって非はある。
「これからは私自身の手で見守らないといけないのかな…。」
同じころだった。
ミサトの執務室に冬月コウゾウ副指令がやってきた。
「葛城一尉、話は聞いているな。」
「はい。」
「向こうは我々にエヴァの情報や身代金を要求している、我々としては身代金を出せてもエヴァやここの情報を渡すことはできない。」
「誘拐した相手は誰なのでしょう?」
「元CIAのマーカス・コンラッド、危険な男だ。数年前に香港で傭兵部隊や反政府ゲリラを率いて戦略自衛隊の基地を襲撃し壊滅に追い込んだことがある。セカンドインパクト前から活動をしている危険な男だ。ヤツとのその仲間はゼーレにすら危険視されている、キール議長は何度も暗殺者を送ったが全員返り討ちにあったそうだ。」
コンラッド…。
少しだけ聞いたことがある。
あらゆる戦地で暴れ倒した根っからの殺人鬼で破壊主義者。
ゼーレや戦自ですら手に負えないと匙を投げる凶悪な殺人マシーン。
保安部の連中が何人集まったところで勝つことは不可能だろう。
彼らは経験が浅い人間ばかりだ。
連中だけじゃない、ここの職員はみな「人を殺すこと」になれていない。
一人を除けば…。
本当は戦争などごめんだった。
かつて南沙諸島で起きた紛争に参加した際に、多くの人間を殺してきた。
その時経験した地獄に比べれば使徒はあらゆる意味でマシだったのかも。
いや、それは違う。
今回戦っているのはシンジ君だ。
私ではない。
『自分ばっか楽な想いばかりして…。』
彼の言うとおりだ。
ミサトは決意した。
部下であり家族であるシンジを救うのは自分の役目だ。
「私がいきます。」
「葛城一尉…。」
デスクの棚からハンドガンを取ったミサトは冬月に問い詰めた。
「向こうには身代金を払うから、指定した場所に取りにこいと伝えてください。」
その異様な空気に冬月はノーとはいえなかった。
冬月はこんな彼女を観たのは初めてだった。
経歴は知っていた、かつて国連軍にいた際に従軍経験があったと聞いた。
圧倒された彼は少し言葉を濁した。
「あ、ああ‥わ、わかったよ。」
「公園で待っています。」
ミサトはさっそうと自分の執務室から去っていった。
あまりにも殺気立った光景から冬月は思わず言葉を漏らしてしまった。
「まるでいつもと違うなあれは…。」
冬月の言葉が聞こえたが、ミサトは無視した。
そんな彼女の前に親友のリツコがやってきた。
「ミサト、シンジ君が誘拐されたって…。」
「わかってる。」
「どうしたの?」
「私が助けに行く。」
「無茶よ!」
友人である彼女はミサトの身を案じている。
ミサトは少し立ち止まり振り返ると、いつもの笑顔に少し戻った。
「ごめんなさい、リツコ。あなたに預けておくものがあるわ。」
ミサトは首から下げていたペンダントをリツコに手渡した。
「これは、父の形見なの。私がもしも死んだらそれをお墓に添えてね。それから鍵渡しておくからペンペンのことよろしくお願い。それと今度ドイツから来るアスカにごめんって伝えておいて。」
「バカなこといってんじゃないわよ!縁起でもない!」
「ごめんね、リツコ。」
ミサトはそういうと、ネルフ本部を後にした。
復讐がすべての優先だったが、今はそうではない。
シンジ君を助けるために、やれることはすべてをやる。
その頃。
第三新東京市の果てにある、廃工場ではコンラッドと碇シンジがいた。
シンジは椅子に座られた状態で両腕に手錠をかけられていた。
本当は怖かったが、キッとコンラッドを睨みつけていた。
コンラッドは不慣れな日本語でシンジに質問した。
「どうした坊や。」
「なぜ、こんなことをするんですか。」
「金だよ、君達は高値で売れる。なんてたってエヴァパイロットだからな。まあ安心しろ、イカレた同性愛者には多分売らないから。」
「金…。」
お金か、世の中には正義や理想で動かない人間もいる。
損か得か。
「すぐに保安部隊がくるよ?」
「日本のクソ自衛隊以下のクオリティーしかねえ連中がなにを呼ぶんだ?ゴキブリの寄せ集めか?全員まとめて殺してやるよ。ハンバーグにはミートソースだよな。違うか?」
「え?」
「え?」
「なに言ってるの?」
「俺はな坊や、殺人が大好きなんだ。」
シンジは肝を冷やした。
こいつはなしが通じない。
ヤバイ。
シンジはふと周囲をみた。
外国人はこの男だけでそれ以外は日本人だ。
カメラには銃を持った複数の男たちがいる。
彼は少し嫌な気分になった。
僕は父さんやミサトさんに褒められるために乗っていた。
でもそれだけじゃない、世界を守るという使命感も多少はあった。
でも、なのに・・・。
「世界の命運がかかっているのに…なぜこんなことを。」
「お前が消えてくれればお金をくれるやつもいるのさ。」
コンラッドの本当の目的は別だった。
ここに凄腕の兵士が一人だけいる、葛城ミサト。
あれこそが本当のターゲットだ。
ほんとはエヴァパイロットなどどうでもいい。
こんなガキはあの女を殺した後はどこに行こうが知ったことじゃない
クライアントが望んでいるのはシンジだけだ。
その生死を問わず。
仮に殺したとしてもなんてたって碇ゲンドウの息子だ。
自分の息子が殺されたと知れば、ゲンドウがどんなにタフな人間でもかなり動揺する。
動揺は恐怖を産み、恐怖は混沌を呼ぶ。
でも、俺もエヴァみたいな兵器がほしい。
そして多くの人間をぶち殺してみたい。
どんな気分だろうか…。
あとはエヴァの情報がお釣りでくればそれでいい。
写真で見たが、かなりの美人だ。
聞けばこいつはこのガキに相当入れ込んでいる。
家族だと思っているそうだ。
そんなのを誘拐してみろ、どうなる。
必ず怒るだろう。
大事な家族の前で俺に嬲り殺しにされる様をみせてやる。
もしくは、俺と同じ殺人が大好きな殺人マシーンの本性をみせてやるさ。
あーたまらん。
コンラッドは微笑みを浮かべた。
「楽しいなあ、楽しいなァ…坊やも楽しいだろ。ヒヒヒ…。一緒にいっぱい楽しいことをしようなァ‥。」
シンジは顔を青くした。
こいつやばい、使徒の方がマシだ。
危険すぎる。
そうだ、この前授業で言っていた。
こういうのを精神病質、サイコパスというんだ。
もう早く帰りたい。
シンジは少し怖くなってきた。
夜8時。
約束の時間になった。
シンジが第三新東京市に来た時に連れてきた場所だ。
『ここが第三新東京市、貴方の守った街よ。』
シンジ君に勇気を与えたくてみせた。
それがよかったのか悪かったのか、今となっては誰にもわからない。
ミサトは愛車のアルピーヌに乗り、相手を待っていた。
数時間前にマヤと青葉がアタッシュケースを手渡してきた。
中にあるのは身代金800億円とエヴァの情報が入ったファイル。
金額が少なすぎはしないだろうか。
ミサトはそんな風に思っていると一台の車がふらっとやってきた。
「やあやあ、お姉さんお待たせしました!」
アロハシャツを着た軽薄そうな男だ。
これが相手だろうか。
「約束のお金ありますかねー?」
間違いない、取引相手だ。
他には誰もいないようだ。
一人だけできたのだろうか。
「まず先に彼の無事を確認させてください。」
ミサトはそういった。
男は面倒くさそうに頭を掻きながら近寄ってきた。
手元には銃がある。
「いやー、お金でしょ普通さあ…先に。お姉さんはあれかい?体売るときはお金もらってやるでしょ?ねえ。」
ミサトは黙って男の下世話な下ネタを無視してアタッシュケースを出すと、男に手渡した。
「本当に持ってきたのかー凄いねえ。お兄さん感激よ。マジで。」
「シンジ君はどこにいるの。」
「心配しなくても無事だよ、まあこれで取引は終了ってことで…。しばらく放置したら帰ってくるよ。」
男は背を向けた。
もう我慢の限界だ。
ミサトはジャケットの内ポケットの中にあった銃をとると男の足を撃ちぬいた。
男は悲鳴をあげると地面に倒れ伏した。
「ぎゃ」
足からは血がどくどくと流れていた。
芋虫のように男は地面を這った。
「なにしやがンだこのクソ…」
男は銃を取り出し、撃ち返そうとした。
だがミサトは容赦なく男の肩に銃弾を撃ちぬいた。
「ひぎゃ」
男は悲鳴を上げると銃を地面に落とした。
「何しやがる!!こんなことしてただで済むとおもうなよ!!」
男は芋虫のように地面を這いながら、声を荒げミサトに抗議しようとした。
ミサトは倒れた男の肩を足で踏みながら問い詰めた。
「ひぎゃああああああああ!」
男は素っ頓狂な悲鳴をあげた。
「シンジ君はどこにいるの?」
「そりゃ…言えねえよ。」
男は情けない声で抗議をした。
ミサトは無視をして、徐々に足の力は強まっていった。
男は涙を浮かべていた。
「さっさと言いなさい、生かしておいてあげるから。」
「わかった、わかったよ!」
「いいから、教えて。」
「俺の車の中にマップがあるよ。そこにXマークが書いてある、そこがアジトだよ!」
ミサトは男が乗ってきた車の中をみるとマップを確認した。
確かに真ん中のあたりにXマークがあった。
少し遠い距離だ。
男は銃をとると、ミサトに反撃しようとした。
「クソアマァ~~~~~~~~!!!」
ミサトは男に顔を向けると、0.1秒の差で男より早く動き頭を銃で撃ちぬいた。
男は地面に倒れるとそのままぐったりと今度こそ動かなくなっていった。
愛車のアルピーヌに乗り換えたミサトは男の死体を轢くと公園を去っていった。
こんなことはしたくなかった。
ミサトは心苦しい気分になった。
心の中にあったモヤモヤが重くなっていくのを感じた。
誰も殺したくない、死なせたくない。
今思えばシンジを引き取ったのはそんな気分が根底にあったのかもしれない。
彼を救うために人を殺してしまったが、もう家族は続けられないだろう。
こんな私をみればシンジ君はきっと悲しむんじゃないだろうか。
シンジ君は今なにをしているんだろうか。
怖いのかな。
ミサトはアクセルを強く踏んだ。
すぐにシンジを救うために。
数時間後、シンジとコンラッドはテレビで映画を見ていた。
ただし、シンジは腕を縛られていた。
シンジは知らなかったが、昔の怪獣映画のようだ。
コンラッドは子供のように目を輝かせていた。
「なあ、坊やこのシリーズは他にみたことあるか?」
「そんなこと知らないよ。」
「コンラッドさん、あいつが帰ってきません。どうしましょう。」
コンラッドの部下が訪ねた。
するとコンラッドは不愉快そうな顔をして男の首をつかみ持ち上げた。
「なあ、俺今映画みてんだ。邪魔しないでくれよ。」
コンラッドは力を強めた。
部下は苦しそうにもがいたが、手遅れだった。
ゴキッ…。
鈍い音が響くと部下はまるで糸が切れた人形のように手足をダランとさせていた。
シンジは目の前で起きたことが信じられなかった。
こいつは人の命をなんとも思っていない。
モンスターだ。
使徒以上のモンスターだ。
あいつらには感情がないけど、こいつにはある。
感情がないものよりあるものの方が怖い。
こいつはその典型例だ。
「なあ、坊や。ごめんなこんなところみせて。坊やとは楽しいことをいっぱいしたいなあ。あんなこといいなっ!できたらいいなっ!君もそうだろ?」
シンジは黙った。
もうダメだ。
恐怖心のあまり涙が出てきた。
こんな気分になるならエヴァに乗ってたほうがマシだ。
ミサトは近くにつき、遠い先からスコープで様子を確認していた。
装備はアサルトライフルを持っている。
日本人しかほとんどいない。
ゲートには2,3人が見守っている。
ここはどうやら廃工場のようだ。
周囲は山と森で囲まれている、隠れる場所はいくらでもある。
「おい、お前そこで何してんだ」
声が聞こえた。
スナイパーライフルとナイフを持っている、見張りだろう。
ミサトはすぐさま男の胸にとびかかりナイフを奪うと男の首にナイフを突き刺した。
男は血のこもった咳をゴポゴポと繰り返すとそのまま、ゆっくり動かなくなっていった。
彼女はライフルを持つと、構えた。
「もう待っていられない。」
ミサトは門番の男の頭をスナイパーライフルで撃ちぬいた。
バァン
一人が死んだことに誰かが気が付いた。
バァン
すぐさま、二人目を殺した。
バァン
3人目をまたたくまに殺した。
「なんだ!?敵襲だ!!」
男たちは銃を構えると、やみくもに森の中を銃で撃ち始めた。
ミサトは素早く身をひるがえすと大きな木の中に隠れた。
「チクショー!!やられた!!絶対においつめろ!!」
二人組の男がやってきた。
近くにあった守衛の死体をみつけると小さな悲鳴をあげた。
一人はハゲていたが、もう一人は体に和彫りの入れ墨があった。
「やられてるぞ」
「なんてこった…。俺はもう降りるぞ。」
ハゲ男は焦ってそういった。
「バカ言え、コンラッドに殺されるぞ。」
「知らねえよ。こんな事なら銀行強盗すりゃよかった。」
「の野郎!!」
「もう降りる」といった男の顔を覚えた。
そういう意志があるなら促した方がいいだろう。
和彫りの男の方にとびかかるとそのままナイフでめった刺しにしていった。
和彫りの男は手榴弾を持っていたのがわかったのでそれを奪った。
和彫りは完全に息絶えていた。
ハゲは完全に戦意喪失状態であった。
「ひぃええええええええ~~~~~!!!」
「逃げたいなら早く逃げなさい。さもないと追いかけて殺しに行くわよ。」
「許してお母ちゃんおかああァちゃァ~~~~~ん!!」
ハゲはそのまま姿が見えなくなっていった。
すると追手が気が付いたのか何人も迫ってきていた。
「女かぁ~~~~~~~~!!!」
SMGを持った男たちは乱暴に撃ちながら迫ってきていた。
草影に隠れたミサトはすぐさま避けると、手榴弾をポイと軽く投げた。
「ん・・・なんだこれ。」
男たちはマヌケにそういった。
ミサトは全速力でその場から逃げると爆破の影響で4人ぐらいが吹き飛んでいるのを確認した。
そして、再び木に登ると追ってを一人、一人と次々とスナイパーライフルで撃ちぬいていった。
恐慌状態になった男たちは逃げ始めていった。
どうやら、そこらへんのチンピラをかけ集めただけの集団でしかないようだ。
しかし装備をみるとかなりプロがいるようだ。
すると逃げる男たちを負いかえるように大きなチェーンガンを持った白人男性が姿を見せた。
「逃げるんじゃない!戦え!」
チェーンガンの銃口は逃げていく男たちを貫いていった。
ミサトはあまりの光景に顔が引きつっていった。
あのチェーンガンを軽々持ち上げる怪力、ただのバカじゃない。
「あいつがリーダーか。」
しかし、あの短気で狂暴なリーダーのおかげで何人もいなくなったようだ。
でもシンジ君…無事なのだろうか。
ミサトは大木から降りると、工場にかけよろうとした。
そんな矢先だった。
「あなたドコノヒトね?」
声が聞こえた。
やせ細った男だった。
発音からして中国系だろう。
手には青龍刀があった。
「ワタシ、銃なんてものには頼らないよ。あなた殺すとお金もらえる。嬉しいネ。」
「そう、じゃあ私も銃なんかに頼らないわ。」
「いいね、ゾクゾクするヨ。」
男は青龍刀を構えると、奇声とともにミサトにきりかかった。
すぐさま避けると、ミサトはさきほど隠れていた大木に青龍刀がひっかかるのを目視した。
男に隙が生まれた。
ミサトはするどい蹴りを男の首にあてた。
「ぬぐっ!」
男はそれを紙一重で避けた。
「やるねえ、オネえさん。中々楽しませてくれるのイイヨ。」
男も蹴りをミサトの腹部にあてた。
「うっ!」
ミサトは腹部を抑えると地面に倒れた。
激痛がミサトの腹部を支配した。
「これで終わりにしてやるヨ。」
男はとびかかると鋭い蹴りをあびせようとした。
ミサトはすぐさま立ち上がると、それを片手で受け止めて捌いた。
「なに・・・。」
中国男は顔を青ざめた。
余った片腕で張りてを作ったミサトは思いっきりの力で中国男の顔面を掌底打ちで叩きつけた。
「おぼっ…。」
中国男は悲鳴をあげた。
ミサトはその長い脚を使った蹴りを続けて放ち男を完全に沈黙させたのであった。
素手で挑みに来るだけまだスポーツマンシップあるやつだなとミサトは感じ、ロープで両腕両足を縛るだけで許しておくことにした。
その頃、監視カメラで一部始終をみていた廃工場の中コンラッドは憤りをみせていた。
「役立たずどもめ…。」
コンラッドはため息をついた。
「まるで別れた女房と子供みたいだ。あいつらどうしてるんだっけ。ああ、殺したんだった。」
シンジは恐怖で震えていた。
目をつぶることしかできなかった。
ふと目を覚ますとカメラに少しだけミサトがいた。
ミサトはスナイパーライフルを持っていた。
「ミサトさん…。」
僕のためにきてくれたんだ。
他はいない、たった一人で…。
その目は鋭く、普段のズボラなミサトさんもJAの時のカッコイイミサトさんでもなかった。
冷たくまるでゴミを処理するように次々と男たちを狩っていた。
「ミサトさん…。」
怖い。
でも何だろう、それ以上嬉しい。
自分のためにここまでしてくれるなんて。
でも、もうあんなミサトさんはみたくない。
ズボラで明るくてマヌケなミサトさんがいい。
心配そうに見つめるシンジをみてコンラッドはほくそ笑んだ。
「ゾクゾクするだろ、坊や…。」
シンジは男を観た。
笑っている。
まるでショーを楽しむように。
この男は悪魔だ。
「悪いな、少し眠ってもらうぞ。」
男はそういうと、シンジの首にスタンガンを当て黙らせた。
数分後、ミサトは身を乗り出した。
もう人はいない、リーダーと自分だけだ。
「タイマン上等。」
ふと、工場をみるとほとんどいなかった。
そして辺りは朝になろうとしていた。
自分を奮い立たせるように静かに言った。
だったら、もうシンジ君を助けに行くしかない。
「シンジ君…。」
ミサトはすぐさま走っていった。
シンジ君、無事でいて。
そう胸におもいながら。
周囲に誰もいないか確認をしていった。
そこには死体の山があった。
つくべきボスを間違えたチンピラたちの死体の山、同情はできないがあまりにもむごい最期であった。
コンラッドという男はとても恐ろしい男だ。
自分に逆らうもの、逃げるものに容赦はしない。
あのチェーンガンはすっかり弾切れになっていたようだ。
地面に放置されていた。
ふと奥をみた。
そこにシンジらしき姿がいた。
口元にはガムテープをしている。
椅子に座らされ両腕両足を縛られているが、無事だ。
それ以外に傷らしいところは何一つとしてない。
「ああ、シンジ君…。」
無事だった。
私の家族、部下、愛しい存在。
ミサトは我先にシンジに駆け寄っていった。
シンジはすっかり眠っていた。
目には涙らしきものがある。
ミサトも少し涙が出てきた。
「シンジ君、シンジ君…。」
シンジは目を覚ました。
気が付いたようだ。
「もう大丈夫だから…。」
ミサトはシンジにそういった。
ナイフで両腕両足の拘束を解いた。
そして、ナイフを地面に置くとシンジを優しく抱きしめた。
シンジの顔は一気に赤くなっていた。
ミサトの乳の部分がちょうど顔に当たっていたからだ。
「よかった…本当によかった…。」
ふと、ミサトはシンジの口にガムテープがしていることを思い出した。
「ごめんごめん!忘れてたわ!ちょっち痛いけど、我慢してね。」
シンジの口元にあったガムテープをはがすとミサトはシンジに微笑みかけた。
「もう大丈夫よ。」
しかし、シンジは何かに気が付いた。
「ミサトさん後ろっ!!」
そう言おうとした矢先だった。
ミサトの首元に何かが絡みつく気配を感じた。
「うぐっ…。」
鎖だ。
固い鎖はミサトの首元に蛇のように絡みついた。
「待ってたよ、ミサトちゃん。」
コンラッドだ。
コンラッドの怪力と固い鎖はミサトの首を二重の力で締め上げていった。
コンラッドはふと、ミサトの髪の臭いを嗅いだ。
「い、いい臭いだぁ…。」
うっとりとしたコンラッドはさらに力を強めた。
彼の口元は三日月上に笑みが浮かんでいた。
そして、目はかなり恍惚としていた。
「わかってる、殺してやる。お前の大事なガキの前でな!」
ミサトは鎖を解こうともがいた。
だが、鎖は重く力強かった。
徐々に意識が薄まってくのを感じた。
このままここで死ぬのか、復讐もできずこんな男に惨めに殺されるのか。
無念だ、まだ生きたい。
何よりシンジ君だけでも生きていてほしい。
「窒息死は醜い、美しいお前が醜く死ぬ。こんなに楽しいことがほかにあるかよ!!」
「みっ、ミサトさん・・・。」
ダメだこのままじゃミサトさんが殺される。
それは嫌だ。
シンジは自分の言った言葉を恥じた。
『楽な想いをしている』なんてひどいことを言った。
だけど今こうやって僕のために戦って死のうとしている。
また知らない天井を観るのは嫌だ。
独りぼっちは嫌だ。
なんとかしなきゃ…。
でもあの大男は僕よりもはるかに強い。
僕がどうこうできるやつじゃない。
『頑張ってね…。』
ミサトさんはエヴァに乗ったとき、たった一人だけそういってくれた。
他の誰もねぎらいの言葉はかけなかった。
それが…。
「ミサトさあんッ!」
コンラッドはシンジの声に気が付いたのかニヤリをほくそ笑んだ。
「坊主、いい女はな‥絞め殺すのが1番いいんだぞ!覚えておけ!」
テンションが高くなったコンラッドは野太い声をまるで地獄のオーケストラのように響かせていた。
「あ~はっはっはっはっはっは!!!!!」
シンジはその様をみて戦慄していた。
だが、怖がっているばかりではいけない。
何とかしないと…。
「逃げちゃダメだ。」
シンジは足元にナイフがあることに気が付いた。
さっきミサトが自分を解放する時につかったものだ。
「やるぞ。」
シンジはナイフを持った。
ミサトさんを放せ、それは僕の大事な家族なんだ。
シンジはふと授業で学んだ。
アキレス腱、そこを切ればどんな強い人間でも足元がぐらつく…。
利根川先生の話を思い出したシンジはコンラッドの右足めがけてナイフを突き刺した。
「うお!」
コンラッドは腕の力を弱めた。
鎖を手放してしまった。
そして足に突き刺さったナイフをみた。
「坊や…。」
コンラッドはシンジをみつめた。
そこにはもはや14歳のただのガキじゃない、戦士がいた。
コンラッドは喜びで震えた。
「中々やるじゃねえか…。」
ミサトはようやく解放された。
自分を先ほどまで締め上げていた鎖を腕に巻くと思いっきり、コンラッドの顔面を右ストレートで殴り飛ばしていった。
「悪く思わないでね。」
コンラッドの140㎏を超える巨体は宙に浮かびそして完全に意識を失った。
そして、銃を取り出すと彼にトドメをさそうとした。
こんな人の皮をかぶった悪魔は世の中でいかしておく価値はない。
そう判断した彼女の独断だった。
「ミサトさん、もうやめて…。誰も殺さないで!」
シンジの声がした。
ミサトは正気に戻った。
そこには14歳の少年が涙を浮かべ自分にすがりついているのがみえた。
「シンジ君…。」
「ありがとう、ミサトさん。ありがとう…もういいよ。もういいんだよ。」
ミサトはシンジを抱きしめた。
ふと気が付けば先ほどコンラッド殴った腕が少し折れていた。
なんでこんなこと自分でもしたんだろ、そんな風に考えたミサトは余った腕でコンラッドの体を鎖で縛りあげるとすぐにネルフ本部に電話をした。
すると数分後に救護班となんと戦自と国連軍・警察の合同部隊がやってきてすぐさまコンラッドを確保したのであった。
ミサトは全治1ヵ月ほどのケガを腕と首にしていた。
病院には毎日のようにシンジが訪れていた。
リツコは呆れてため息をつき「もう、本当に無茶な人ね」とミサトのペンダントを返しにきていた。
日向は泣きながらミサトの無事を喜んだ。
幸い使徒はまったくこなかった。
コンラッドはその後、ハーグ裁判所で裁かれる予定になると聞いたが、それで満足するようなヤツじゃないどこかでまた会うだろうミサトは覚悟をした。
とうとうミサトの退院の日が来た。
迎えに来たシンジはミサトの体にとびつくと、「ありがとう」と連呼しながらミサトの胸の中で何度も涙と鼻水を出していた。
見に来ていたマヤと冬月もつられて少し涙が出ていたようだ。
そして、シンジは気が付いていた。
あれ以降ミサトを見るたびに自分の胸がどくどくと音を建てて興奮するのを。
ミサトは「いいところばかりとっていく」と思っていたが、彼女がいなければ自分は助からなかった。
自分のために体を張ってくれたミサトに対して淡い恋心が芽生えるのを感じていた。
ミサトのために弁当を作ってあげることにした。
そして、シンクロ率は上昇していった。
エヴァに乗ることも最初は父親に認められたいからだったが、それはいつしかミサトへの愛情を示すためになっていった。
それから数日後
ネルフ本部でシンジが自販機コーナーにいた。
「どうした、シンジ。」
ゲンドウの声がした。
シンジは思わず顔を上げた。
「父さん…。」
「話とはなんだ、手早く済ませろ時間がない。」
ゲンドウはわざわざこのために呼び出された。
「父さん、僕好きな人ができたんだ。」
「誰だ?」
「それは…言えないよ。」
顔を赤らめがら言うシンジに少し苦笑するとゲンドウはふとユイと自分があったときを思い出した。
「そうか…ではまずプレゼントだな。また連絡しろ。金がないなら送る。以上だ。」
「ありがとう父さん。」
ふと、ゲンドウはいつかシンジと釣りにいけばいいなとも考えるようになっていった。
某所。
コンラッドは死刑となった。
怒りに震えた彼は刑務所の地下深くの特殊な檻の中で一人寂しく死ぬまでの時間を待っていた。
家族もいない友人もいない。
彼を迎えに来る人間などいないはずだった。
だが、彼には気が付いていた。
多くの人間が自分を求めている。
自分の行う破壊と殺戮で得をする人間がいると…。
すると、ドアが開いた。
「コンラッド、お前と話したいヤツがいる。」
「次の依頼か…。」
コンラッドはほくそ笑んだ。
次の殺しのために…。
そしていつかあの碇シンジと葛城ミサトを殺すために戻ってこようと。
続編はやったほうがいいですか?よくないですか。
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やったほうがいい
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やらなくてもよい