ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話 作:井上ああああ
アメリカ、ニューヨーク
エヴァ13号機が襲撃をした。
100万人以上が死ぬという最悪の事態となった。
ニューヨークにいる国連職員の数名が死亡し、NYで演説をしていた大統領が死亡したというニュースまで流れていた。
それだけではない、13号機の放った青白い火球は地獄の花火になり世界中に降り注いだ。
日本でも北海道が犠牲になり、数千万の人間が亡くなってしまった。
その火球には大量の放射能が入っていた。
NYを破壊しつくした13号機は活動を沈黙させている。
ミサトは本能的にわかった。
ここでヤツはエヴァを待っている。
コンラッドの精神が反映された人工知能がパイロットの代わりにいる。
奴の破壊と戦いを楽しむ精神が反映されているのだ。
歩く核兵器、死の象徴。
それが狂人の手にゆだねられたのだ。
世界が終わる、人類補完計画とは別の完全な終焉として。
「そうはさせない」
夜遅く、ネルフ本部にいたミサトはつぶやいた。
刻一刻と、1週間のタイムメリットは過ぎていった。
しかし、その1週間の間にリツコたちは備えを整えていった。
アメリカから支給されたマゴロクEソードの配備、企画打ち切りになったJA改のパーツを取り入れたことで強化された二号機、そしてより強化されたエヴァ初号機のF型装備。
全てが整った。
そんな時、ミサトのケータイに着信が届いた。
登録していない番号。
「はい」
「ミサトちゃん、コンラッドだ。1週間は過ぎちまった。準備は整ったか?」
ミサトはスピーカーをオンにすると、ネルフ本部上に聞こえるようにつないだ。
この時を待っていたのか。
ヤツはゲームを楽しんでいる。
じゃあ、その誘いに応じてやろう。
「ええ」
「いいだろう、じゃあ最後のゲームだ。今から12時間後にそっちにエヴァ量産機を派遣させる。全部で15体。武器はロンギヌスの槍のコピーだ」
9体だったはずが、増えている。
そして、ここを襲撃する。
「それだけじゃない、同じ時間にNYにいる13号機を動かす。アメリカ大陸全土を破壊する。止めれるのはお前らだけだァ。言っておくが13号機は俺がコントロールをしているわけじゃない。つまり何をしでかすかわからない。博打ってのはな、痛い目みるから楽しいのよ。頑張って止めなけりゃ俺もお前も地獄送りだ」
こいつはそれだけじゃすまない。
最後のゲーム、プレーヤーは私も含まれているはず。
つまり、私にも汗を流せということだろう。
「それで?」
「最後にお前だ。今俺がどこにいると思う? かつての日本国技館跡地だ。そこで最後のケンカとしゃれこもう。ここには日本の首相が人質にいる。お前が助けにこい。12時間後にこなけりゃこいつはただ死ぬよりひどい目にあって日本政府は永遠に笑いものにされるだろうな……。どんなのができるか想像を絶するものがネットで観れると思うぜ!?」
別に今回の人質は死んでも構わない。
もともと戦略自衛隊にはネルフ本部を強襲するというプランがあった。
戦時の1部がシンジ君やアスカを誘拐していたこともあった。
その裏にいたのはこの日本国首相だった。
こんなやつ死んでも全然悲しくともない。
だが、コンラッドは許せない。
ヤツはここで殺す。
「そう、それで他には」
「ない、せいぜい残された時間を楽しむんだな。あと早々……シンジちゃんに言ってくれ。フレンチは食えなくなってしまったと伝えてくれ。じゃあ待ってるぜ」
そういうと、コンラッドは電話を切った。
ふと、ミサトは発令所をみた。
そこにはシンジ・アスカ・レイ・カヲルがいた。
「みんな聞いてたわね」
4人は黙って頷いた。
「零号機と四号機はここで待機して、量産機を迎撃して」
「任せておくれ」
「了解しました」
カヲルは不適に、綾波はいつものように無感情に言った。
ミサトは二人を見つめ小さく「頼んだわよ」というと、シンジとアスカに向き直った
「初号機と二号機はNYに向かって、13号機を倒して」
「了解!」
アスカは元気よさげに言った。
JA改のS2リアクターをつけた二号機は初号機と同じく、アンビリカブルケーブル不要で活躍ができる。
片腕には90億ボルトの大電流アームと武器に超電磁ハンマーがついている。
二人に行ってもらうしかない。
「出発は今から10時間後、それまでしっかり寝て体調を整えてね」
「わかってるわよ!」
「なにか言いたいことは?」
すると、今まで沈黙を守っていたシンジが口を開いた。
「僕、ミサトさんと二人だけで話がしたいです……」
「わかったわ、じゃあ3人ともあとは好きにして」
すると、ミサトの執務室にはシンジとミサトの身が残されてあとの3人は出ていった。
アスカはニヤニヤとして、今からでも冷やかそうとしたがカヲルに腕をとられると引っ張るように出ていった。
執務室に残されたシンジはいつものように頬を赤らめて俯いていた。
「どうしたの、シンジ君」
「僕と結婚してください!!!」
シンジは肩を震わせると、大きな声で言った。
その声はネルフ中に響き渡った。
ミサトは普段は茶化したい気分でいたが、黙っていた。
「僕、死ぬかもしれない。でも……もし生きていたら……」
シンジは少し泣いている。
怖いのか。
ミサトは目の前にいる愛しい少年に微笑みかけた。
私は彼の女神にはなれない。
でも、その苦しみを寄り添えるなら……。
「いいわよ」
「え?!」
「ただし、一つ間違ったことがある」
シンジは困惑した。
やはり、年齢差か。
そんなの知ったことじゃない、ミサトさんが40歳だろうとかまわない。
僕にはこの人しかいないのだから……。
「あなたは絶対に死なない、生きて帰ってくる。私は信じてるわ」
でも、私は死ぬかもしれない。
あの悪魔は強い。
ミサトは首につけていたチョーカーを取ると、シンジに手渡した。
シンジはそれがミサトの大事な宝物だとわかっていた。
「あなたが死ぬのは大分先、しっかり生きて……それから死になさい」
「ミサトさん……」
シンジはミサトの目を見つめなおした。
奇麗な瞳だ。
すると、ミサトは彼の頬をつかみ唇を近づけた。
やがて、ミサトの舌が自分の口の中に入ってくるのを感じた。
ミサトとは過去に何回もキスしてきたが、今までのそれとは違う。
舌をからませ合うフレンチ・キスだ。
「大人のキスよ、帰ってきたら続きをしましょ」
シンジはミサトが死ぬ気でいるのがわかった。
そして、自分には生きてほしいのだ。
だけど、違う。
自分もミサトも生き残る。
そのためにやれることはやろう。
一方、アスカは自販機コーナーにいた。
エヴァ13号機、最強のエヴァ。
勝てるのだろうか、世界中の街を一瞬で炎に包む破壊の権化に。
すると、そんなアスカに加持がよってきた。
「いくのか? 本当に……」
「ええ」
「死ぬかもしれないぞ」
「でも、大丈夫。加持さんは生きれるわよ」
すると、加持はアスカの肩を強くつかみ静かに抱き寄せると、言った。
「でもお前が死んだら俺はどうするんだよ!」
そうか、加持さん心配してるんだ。
最近優しかったものね。
前は逆だったのに、いつの間にか逆転していた。
「アタシが死んだら泣く?」
「泣くさ」
「じゃあ、死なない。必ず戻ってくる。約束する。だって、加持さんが泣くのもっと嫌だから……」
アスカはそういうと加持の背中を優しくさすった。
そのやり取りをみて、カヲルは不思議そうにレイに言った。
「リリンは興味深い生き物だね、そう思わない? ファースト……いいやリリス」
「そうね」
綾波は肯定も否定もしなかった。
「僕はこの興味深い生き物がどのように生きるか観ていきたい」
「あなたも私も立派なリリンよ、もう……」
綾波はそういった。
カヲルはその顔をみた。
笑顔だった。
まぶしいぐらいの笑顔だ。
「じゃあ、もう寝ようか」
「ええ」
カヲルとレイはそれぞれの寝室に向かって歩いていった。
ゼルエルに破壊され大きな穴が開いたまま修復できない第三新東京市には雨が降っていた。
その中を傘を差しながら冬月はふと考えていた。
これから世界はどうなるのか、この組織はどうなるのか。
「準備完了です、副司令。いいや……冬月総司令」
「なあ、日向君。君はこの組織に入ってどうだった」
日向は鼻をかきながら照れ臭そうに言った。
「すごく楽しかったです。僕は今まで退屈な人生を歩んでいました。それがここまで楽しい想いをしたなんて中々ありません」
「そうか」
「それに、人類を守るこれほど有意義なことはありませんからね!」
特務機関ネルフ、人類補完計画のための組織。
そのはずであったが、補完計画を考えてた者たちが消えた今。
建前上であった「人類守護」が目的になったわけだ。
世界の命運は我らにかかっているか。
その近くに日向がよってきた。
日向の肩に手を置くと、冬月はニッコリと笑った。
「君はいつも真面目で律儀だ。私もそうありたいものだ」
相棒であった碇ゲンドウは息子を守って死んだ。
では、私は何ができるだろう。
彼に代わり、シンジを見守ることにしよう。
それがせめてもの彼への弔いになるのなら。
第一発令所、そこではオペレーターの青葉シゲルがギターを弾いていた。
同僚のマヤはそこの近くによった。
「こんな時にギターですか?」
「こんな時だからこそだよ……」
マヤは呆れた。
すると、青葉はギターを止めた。
「あ、あのさ……マヤちゃん。ここに敵来るらしいじゃん。怖くない?」
「怖いです」
マヤは震えていた。
「じゃ、じゃあさ……これもしも生き残ったら一緒にデートにいかない? 美味しいお好み焼き屋あるんだ」
「え?」
「食いに行きたいんだよ、君と」
マヤは突然の言葉に顔を赤くさせた。
普段なら怒ってるが、これをいうということは青葉も怖いということだ。
「ええ、行きましょ。約束忘れないでくださいね」
マヤは微笑み返した。
青葉も彼女に優しく微笑んだ。
リツコの部屋では時田とリツコが最終調整の段階に入っていた。
時田はパソコンをいじりながら、二号機とJAの融合作業の調整を確認していた。
「赤木博士、13号機は人工知能コンピューターで動いてるらしいね」
「ええ」
「だったらウィルスで動きを止められるとかできるんじゃないかな」
「ハッキングということね」
「そうだ。あいつらにない言葉でトドメを刺してやろう」
リツコはふと何のことと時田を見つめなおした。
だが、時田は教えようとはしなかった。
「そうだ、赤木博士。以前はとんでもない非礼をして申し訳ないと思っている」
「こちらこそ‥」
リツコはふと思った。
時田を破滅させたのは自分だ。
だから罪滅ぼしはしないといけない。
「JAの想いがつまった二号機……きっと強い子になるわよ」
リツコは愛用のコーヒーメーカーにコーヒーを入れると時田に手渡した。
時田はそれを受け入れると微笑んで飲んだ。
やがて、翌日となった。
約束の12時間は過ぎた。
ネルフ専属戦闘機に乗った初号機と二号機はすぐさまNYへと向かった。
それと逆に翼を広げたエヴァ量産機15体はネルフ本部へと向かって上陸を開始した。
白い肌と赤い唇をもったエヴァ量産機は飛行形態から着陸形態に変化すると、地面に降り立った。
手にはロンギヌスの槍をもじった剣を持っていた。
「来たかい、ボクのまがいものたち」
カヲルは四号機にのりながらほくそ笑んでいた。
その手にはマゴロクEソードがあった。
その後ろには背中合わせで青い零号機がいた。
同じく手にはマゴロクEソードがあった。
「アナタたちには負けないわ。私たちは生き残るもの」
綾波はそういった。
シンジと出会い、ゲンドウを失った。
その過程で綾波は学んだ。
生きるという事は強いこと。
あの二人が生きた世界を自分も生きていたい。
「グロロ……」
口に笑みを浮かべた量産機は微笑みを浮かべながらじりじりと間合いを近づけていった。
その数は多い。
戦いは彼らからしかけた。
量産機の1体が四号機の前に躍りかかった。
「君たちの弱点は知ってるよ、その胸のコアさ」
カヲルは素早くソードで量産機のコアをついた。
別の機体がつづいてやってきたので、四号機は再びコアをついた。
「もっとおいで、僕を楽しませてくれ」
四号機は踊るように素早く動きながら次から次へと量産機を餌食にしていった。
コアをつかれた量産機は動きを停止させた。
「持っている剣には気をつけろ、ロンギヌスの槍だ!!」
冬月は雄たけびをあげた。
零号機も次から次に量産機を倒していった。
うち1体が零号機に剣を投げ飛ばし、ロンギヌスの槍状に変えたが零号機はそれをつかむと、逆に投げ返しぶつけたのだった。
投げたロンギヌスの槍は1体、また1体と突き刺していった。
零号機と四号機は次々に量産機を倒していった。
マゴロクEソードは圧倒的であった。
やがて、数分たちあと1体となったときであった。
零号機に切られた個体がまるでゾンビのようによみがえり、その体を修復していた。
「あなたたち、不死身なのね」
綾波はつぶやいた。
だが、そのつぶやきは恐怖でも焦りでもなかった。
把握済みだったのだ。
加持の友人のCIAのリークのおかげだ。
零号機は大きくジャンプするとカヲルに告げた。
「あれ、お願い」
「わかった、じゃあ……発令所のみなさん気を付けてよ!」
カヲルは不適にほほ笑むと手をかざした。
すると、量産機15体の足元に何か黒い空間が浮かび上がった。
やがて、黒い空間は底なし沼のごとく量産機たちを飲み込んでいった。
「あれはディラックの海!!!」
リツコは声をあげた。
そうか、四号機を呼び寄せたのはこれか。
ディラックの海はことごとく量産機たちを飲み込むとそのまま消えていった。
余りの光景にマヤは呆然として語った。
「エヴァシリーズ、沈黙しました……」
カヲルはふと自分の勝利に酔いしれ、笑みを浮かべていた。
だが思い直した。
シンジ君たちはどうなっているのだろう。
そして、13号機にはこのようなマネをしても通じないだろう。
あれは間違いなく虚数空間を突き破り、それすらも喰らいつくす。
そんなバケモノにシンジ君たちはいけるのだろうか……。
ニューヨーク。
世界最大の都として語られていたそれも完全に廃墟と化していた。
その真ん中には13号機がいた。
シンジはその大きさに驚いた。
でかい。
超高層ビルほどある。
でかさだけじゃない、その圧力。
何か得たいのしれないオーラがあった。
初号機を思わせる兜を黒い岩肌のような爬虫類の如き鱗がつつんでいる。
サイボーグというより、あれは生物。
怪獣だ。
というか恐竜だ。
鎧をつけた恐竜、それがまさしく目の前にいる。
「あれがエヴァなのか?」
シンジは思わずつぶやいた。
アスカは久々に恐怖を覚えた。
何も返せなかった。
震える手を片手でつかむと抑えた。
太く長い尾はピタリと静止していた。
戦闘機から降り立った初号機は紫色の特殊装備をつけていた。
二号機はJAのアーマーと左腕、そしてハンマーをもっていた。
どちらもアンビリカブルケーブルがなくても動きは出来るようにアップグレードしていた。
すると、13号機は初号機と二号機の存在に気が付くとギロと白い目をのぞかせた。
それはまるで暴走したエヴァ初号機のようであるとアスカは感じた。
そして、ゆっくりゆっくりと初号機の前に近づいていった。
シンジはつばを飲み込んだ。
逃げない、勝つんだ。
「行くぞ。」
旧・日本国技館前。
テロで多くの街と市民を失った旧東京の中でもよく格闘技の興行が行われてた場所。
今ではほとんどが廃墟になるか水にうまっている。
ミサトを乗せたジープは降り立った。
「もういいわ、日向くん。先に帰っていて。」
ミサトはそういった。
日向にジャケットを脱いで手渡した。
ノースリーブとホルスターだけがみえた。
「でも、あなたが心配です…相手は多いのでは…。無茶ですよ。」
「無茶は慣れっこよ。生きてまた会いましょう。」
ミサトは笑顔で日向に告げた。
日向はミサトを愛していた。
だが、ミサトはいつも違う人間をみていた。
14歳の少年。
それが彼女の愛する人。
僕は14歳の少年以下なのか…。
日向はふと、ミサトを見送った。
ミサトは廃墟の中を突き進みながら、歩いていた。
「ごめんなさい、葛城さん。今回ばかりはあなたの命令に従う気はありません。」
そういうと日向はミサトにバレないようにこっそりと車を停めた。
そんなミサトは黙って進んでいた。
コンラッドは自分より大きく強い。
勝てないかもしれない。
でも、やらなきゃいけない時がある。
ミサトはそう思い、突き進んでいったのだった。
続編はやったほうがいいですか?よくないですか。
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やったほうがいい
-
やらなくてもよい