ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話   作:井上ああああ

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ミサトとシンジの最終決戦パート3

 旧日本国技館前

 

 かつて相撲取りなどが多く使用していたこの場所は今や廃墟になっていた。

 調べた情報によると昔は縁日などで利用する人間も多くいたらしい。

 

 ここが全ての戦いの最終決着の舞台か。

 

 ミサトはゲート近くに進もうとした。

 恐らく車を途中で乗り捨てたのだろう、何台か破棄されたモノがあった。

 

 すると、銃声がいきなり響いてきた。

 

「待ち伏せしてたのか」

 

 ミサトはすぐさま、破棄された車の脇に隠れると、銃弾を凌いだ。

 男たちはマシンガンを持っている。

 

 ミサトは冷静にハンドガンを向けると、男たちを一人殺した。

 

 

「一人やられたァ~~~応援を頼む!」

 

 

 声が聞こえた。

 

 

「やらせない」

 

 

 ミサトは振り向くと、銃を撃ち応援を呼びに行こうとした男の頭をヘッドショットした。

 男たちの焦る声が聞こえた。

 

 コンラッドは天井からその眺めを楽しんでいた。

 

 ミサトに無駄な動きは存在しない。

 まるで一人一人無駄がないように適格に撃っていく。

 それも相手の弱点である頭と胸を極めて的確に冷静になれたことのように撃っていくのだ。

 

 すごい。

 

 素晴らしい。

 

 俺が目をかけただけのことはある。

 こんな奴とギリギリの殺し合いを楽しめる。

 

 コンラッドはピエロの白面の下でほくそ笑んだ。

 

 

「おい、容赦するな。スナイパーライフルを使え」

 

 

 近くにいた狙撃手に狂人は無愛想にそういった。

 ここで死ねばそれでおしまいだなとコンラッドは思った。

 命じられた狙撃手はスナイパーライフルを持つと、ミサトの頭上を狙おうとした。

 

 パァン。

 

 狙撃手は何者かに撃たれ、天井から地面に落下した。

 

 冷静なコンラッドはビクッとしゃがみ周囲をみた。

 ミサトではない。

 コンラッドは目を凝らすとそこにはジープに乗った若い男がいた。

 

「愛ゆえにか……」

 

 コンラッドはやはり格闘戦でしか奴を倒せないと悟ると、屋上を黙って去っていった。

 ミサトも気が付き、振り返った。

 ふと目をやった700m先の廃ガレージに日向マコトとジープがあった。

 

 

「日向くん……」

 

 

 

 日向はスナイパーライフルを持っていた。

 ミサトは日向の視線の先を追うと、そこに狙撃手が3名ほどいることに気が付いた。

 

 ありがとう、日向君あなたがいなけりゃ殺されてた。

 いい意味で命令を無視してくれたのね。

 

「私はいい部下に恵まれて幸せだわ」

 

 

 黙ってミサトは何も言わず銃を撃ちこんだ。

 残った二人目の狙撃手が倒れた。

 

 

「やられた!」

 

 男が悲鳴を上げた。

 ミサトはそれを見逃さなかった。

 3人目にハンドガンを向けると冷静に射殺した。

 それにあわせるかのように日向は最後の狙撃手を銃で撃ち殺した。

 

「日向君、やるじゃない」

 

 ミサトは素早くケータイをとると日向に『ありがとう、でも危なくなったら逃げて』と書き送信した。

 そして、再び銃を構えると門番を一人、また一人と射殺した。

 数分たつと、あたりが静かになっていくのを感じた。

 

「もう刺客はいないのか」

 

 

 ミサトはそう言って乗り出した。

 誰もいない。

 おかしい、するとミサトの周囲を複数の男たちが取り囲んでいった。

 男たちの手には日本刀があった。

 

 

「久しぶりやのォ、姉ちゃんよ」

 

 リーダーらしき男の顔に見覚えがあった。

 鈴原マサキ、殺された鈴原トウジの従兄だ。

 確かヤクザだったはず。

 コンラッドは日本のヤクザにすら影響力があったのか。

 

 

「マサキさんだったわね? あなたの身内はコンラッドに殺されたのよ。それでもあいつに従うの?」

 

 

「トウジのことですか、あんな裏切りもんのカスは死んで当然のヤツや。そんなことよりもね、アンタを殺せばコンラッドのオジキに金もらえるんだわ。大人しくここでくたばってくださいよ」

 

 

「身内を切り捨てる、そりゃヤクザの社会からも見捨てられて当然の人間ね」

 

 

「オラァ!!! なめたことほざいてんちゃうぞコラァ!!! お前らやったれ!!!」

 

 

 マサキはそういうと、舎弟に号令をかけた。

 舎弟たちは日本刀を持つと襲い掛かってきた。

 ミサトは冷静にしゃがむと、まず一人の刺客の足をひっかけて地面に転がすと頭を思いっきり蹴り上げKOした。

 そいつの持っていた日本刀をつかむと、二人目の腹部に思いっきり突き刺した。

 

「ぐお!」

 

 血が噴水のように吹き出し、男たちは悲鳴を上げたじろいた。

 返す刀で襲い掛かってきた他二名を切り捨てると、ミサトはマサキをにらみつけた。

 

『次はお前だ』

 

 

 その異形に男たちは恐れた。

 

 しかし、光景を見てマサキは怒った。

 名古屋の親分に頼んで兵隊をかき集めたのにこいつらはろくに殺しもできねーのか! 

 そして、恐怖した。

 この女、ナニモンだ。

 

 

「なにをイモひいとるんじゃボケどもがァ!!!」

 

 

 マサキは怒号をあげると、日本刀を持ちミサトに切りかかった。

 

 

「アンタごときはこの刀すら血に汚すのもおこがましいわ」

 

 

 ミサトは言い切ると、ジャンプすると男の顔面目掛けて思いっきり蹴りを食らわせた。

 マサキは歯2,3本折るとそのまま地面に崩れていった。

 自分の親分がやられたことを恐怖したマサキの舎弟たちは我さきに逃げていった。

 所詮ヤクザだの不良だのといっても社会のクズの集まり、ミサトは唾を吐くとマサキに浴びせたのだった。

 ミサトは日本刀を持つとそのまま場内に入っていった。

 ゲートを超えると、不思議な事に誰も攻撃をしてこなかった。

 

 

「妙ね」

 

 

 

 ミサトは背後に殺気を感じた。

 そして、本能的にしゃがみこんだ。

 

 

「キェぇぇぇぇえ!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 サーベルだ。

 サーベルを持ったターバンを巻いた老人が襲い掛かってきた。

 あまりに唐突な光景にミサトは肝を冷やした。

 

 

「なんなの、こいつ!」

 

「フフフフ、我が名はシン! 我が祖はトラ!」

 

「またこの手のか‥‥」

 

 

 老人は手にサーベルを持つとほくそ笑んだ。

 ふと、髪の毛の1部が斬り取られていることに気が付いた。

 

 

「なるほど、中々のやり手ね」

 

「凄腕の兵士がいると聞けば女かね」

 

「悪い?」

 

「否、その血浴びさせてもらおう!」

 

 

 シンと名乗る老人はサーベルを持つと襲い掛かってきた。

 ミサトは日本刀を使い、サーベルを迎え撃った。

 刀とサーベルは紙一重で押し合った。

 やがて、もつれあうとミサトの力が押し勝ち、サーベルを弾き飛ばした

 

 

「おお、なんという力よ! あなどっておったわ!」

 

 

 シンは感動していた。

 

 

「アナタも素手でやるとかいわないわよね……」

 

「フハハハ、そうか我がインド最強の虎拳法の奥深さを味わいたいか……」

 

「やっぱ、そうなるの」

 

 

 誰かに似ているとミサトは苦笑すると日本刀を捨てて素手で挑むことにした。

 

「行くぞ!」

 

 シンは大きな拳を作ると、ミサトに振りかぶってきた。

 ミサトはやっとのところでそれを避けた。

 だが、老人の腕は強くコンクリートの壁を打ち砕いた。

 

「ふふふ、まだまだわしもいけるのお……」

 

 こいつ強い。

 コンラッド並みの強さをしている。

 老人なのに。

 伊達や酔狂ではない、本当に強いからこうやって遊んでいるのだ。

 恐ろしい。

 

 ミサトはシンと名乗る老人に蹴りを入れるべく、壁を蹴りその勢いで顔面に蹴りかかった。

 だが、シンの腕は素早かった。

 片手で捌くと、余った片腕を伸ばしミサトの首をつかみ地面に押し倒した。

 

 

「さあ、我が手の中で死ぬがよい!」

 

 ミサトは老人の力の強さに少し驚いた。

 だが、ミサトは両腕で男の腕をつかむと倍以上の力で老人の腕をつかむと地面に立ち上がった。

 

 シンは顔を青くしていた。

 この女、わしより力が強い!!! 

 

 ミサトはその隙をついて、グーパンチで顔面を殴り飛ばしシンを戦闘不能にしたのであった。

 

 

「素手のケンカならいつでも相手してやるわ」

 

 

 ミサトはそう言うと、シンをそのまま放置して刀を取ると、そのままドアを開けリングの方へと向かっていった。

 

 観客席はだれもいなかった。

 ふと、リング前をみるとそこには総理大臣らしい男が地面に倒れていた。

 殺されている。

 元から所詮ただの釣り餌に過ぎないのか。

 

 

「待っていたぜェ、ミサトちゃァん!!!」

 

 

 ふとみると、エントランス方面にコンラッドが立っていた。

 その顔はピエロメイクを思わせるマスクをしていた。

 髪は紫色のオールバックに。

 そして、服装は全身をタイツで覆い隠していた。

 

「バケモノになってしまったの? コンラッド」

 

「いや、神になったのさ」

 

「もう、御託は結構でしょ。やらせてもらうわよ」

 

 ミサトは持っていた日本刀でコンラッドに切りかかろうとした。

 だが、コンラッドは左手の肘で日本刀を受け止めた。

 ミサトは信じられなかった。

 ふと、コンラッドの肘に切り傷ができているのがみえた。

 

「おしいねぇ、でも無理だよ。俺に痛覚はねェのよ」

 

「なに」

 

 

 そういうと、肘に力入れると日本刀をはじき返したのだった。

 

 

「うわっ!!!」

 

 

 ミサトはあまりの力の強さに押し出され地面に転げそうになった。

 

 

「どうするね、ミサトちゃん」

 

 ミサトは黙ってホルスターから銃を取り出した。

 コンラッドの頭にめがけて銃を撃った。

 

 パァン

 

 

 やったか。

 

 

「甘いねえミサトちゃん」

 

 コンラッドは頭をなでててつぶやいた。

 

「実は俺の頭の皮膚はね、特殊なゴム素材で防弾式になっちゃったの」

 

 そんな馬鹿な。

 たじろいているミサトに隙ができた。

 コンラッドはそこを見抜くとミサトの首をつかみ持ち上げた。

 

「がはッ!!! ぐっ!!!」

 

 ミサトは何とかその腕を払おうとした。

 だが、コンラッドの力は強かった。

 ミサトの首を片手で持ち上げると、3mの高さから一気に地面に叩きつけた。

 

 

 ドンッ! 

 

 

「ああっ!!」

 

 ミサトは悲鳴を上げた地面に倒れた。

 強い。

 こいつはかなり強い。

 

 

「んーまだまだ続くよ」

 

 

 コンラッドはそういうとミサトの背中を思いっきり蹴り上げた。

 

 

「あうっ!!」

 

 

 ミサトの体は5m先までふっとぶと地面に再び倒れた。

 

 強い勝てない。

 ミサトは意識もうろうとする中地面を起こそうと必死に立ち上がろうとした。

 そんな矢先だった。

 

 コンラッドは近づくとミサトの髪を持ち上げ、自分の顔近くに近づけた。

 

「いい声だねェ……もっと楽しませてくれよ」

 

 

 コンラッドは顎が開くと、そこから独自の腐臭漂う舌でミサトの頬をなめようとしたそんな時だった。

 

 

 ドルゥン……ドルゥン……。

 

 バイクのエンジン音が鳴り響いた。

 すると、観客席からバイクが無理矢理入ってきた。

 バイクの運転手はリング近くで降りるとヘルメットを取って顔を出した。

 

 

「葛城、遅くなったな」

 

「加持くん!!」

 

「葛城、シンジ君と会うんだろ。だったら生きて帰らないと」

 

 

 そんな加持の乱入をみて、コンラッドは怒るどころか喜んでいた。

 

 

「乱入か、大歓迎。なんだったら屋台でも呼ぶか? ボーヤ」

 

「レディの顔を舌で舐めるなんて下品がすぎるぜピエロ」

 

 

 加持の軽口を聞くとコンラッドはフフフと小さな笑みを浮かべた。

 

 

「そうやって余裕ぶっているが、内心は恐怖と憎悪で満ちている。わかるぞ。お前が余裕の仮面をかぶるのはそうやって恐怖・憎悪を隠しているからだ。違うか? まるで虚勢をはっている。ピエロは貴様の方だ」

 

「お前がそうだからか」

 

「そういう部分があるのは否定しないよ」

 

 

 加持は少しイラッとしていた。

 ミサトにはわかっていた。

 図星をつかれたんだ。

 

 

「もうその臭い口をこれ以上開くな、こっちの鼻がひん曲がる」

 

「フフフ、怖いねー。怒らないでよ」

 

 

 加持はミサトを起こすと耳元でささやいた。

 

 

「まだ応援はくる。それまでの辛抱だ」

 

 

 するとコンラッドは大笑いした。

 

 

「聞こえてるぞ、応援か。面白い。実に面白い」

 

「もういい。もういい加減、その臭い口を閉じろ」

 

 

 加持はそういうと長い脚を使いコンラッドの顔に蹴りをいれこんだ。

 コンラッドはよけなかった。

 

 

「これが蹴りか、ミサトちゃんのがまだ強いな」

 

 

 そういうと、コンラッドは加持の顔面に渾身の右ストレートを放った。

 加持はそれをガードしようとしたが捌くことはできずに地面に倒れた。

 

 

 ミサトは起き上がるとコンラッドの腹部に全力の蹴りを加えた。

 コンラッドは衝撃のあまり、よろめいた。

 

「そうそう、これが蹴りだよ!」

 

 コンラッドは歓声をあげた。

 

「でもね、痛みを感じないんだ。なぜだろう! なぜだろう! あぁ思い出した! お前だ! お前が俺に硫酸を浴びせたんだ! あの日から俺は怪物になれたのだ!! 怪物になったのだ! お前に感謝しているぞォ!! おお素晴らしい! でもな、痛みは感じてこそ生なんだ! それを感じないのはもはや生きていても楽しくともなんともない! ……だからお前らには死んでもらう」

 

 

 ミサトはコンラッドの軽口を無視して顔に蹴りをもう一撃加えた。

 コンラッドはまたよろめいた。

 そして、ミサトは銃を取り出すとコンラッドの心臓めがけて銃弾を放った。

 だが、コンラッドは0.5秒の差でよけた。

 

 そして、ミサトの顔を裏拳で殴り飛ばした。

 ミサトに額に傷がつくと、血が流れ始めた。

 

「うっ!!!」

 

 ミサトは地面によろめいた。

 加持が負けじと立ち上がり、銃を何発かあびせようとしたがコンラッドの速さが勝った。

 素早くよけると、加持の手から銃をはたき落とした。

 そして、加持の胸倉をつかむと放り投げた。

 

 

「まだ寝るのは早いゾぉ~~~~~~~~~~!!!」

 

 コンラッドは加持の体を抱え込むと、一気にコンクリートの地面に叩きつけた。

 加持は悲鳴をあげることもできなかった。

 あまりの激痛が背中に襲い掛かった。

 激痛に悶えながら地面に拳を叩きつけるしかなかった。

 

 

「クソッ…………」

 

 強い、コイツ強い。

 

 早く何とかしないと‥‥。

 

 

 

「応援はまだかなァ~~~~~~フハハハハハハハ!!!!」

 

 

 加持とミサトは並んでコンラッドの前に倒れ伏した。

 コンラッドは二人を踏みつけると、大声で笑い始めた。

 

 その時だった、コンラッドは気が付いていなかったが、すべては加持のアイデアだった。

 加持はこっそり二人の応援をすでに会場に入れていたのだ。

 

 その内の一人が相田ケンスケ。

 ケンスケはこの日のために玩具の拳銃を持って兵隊ごっこをしていだんだ。

 と心に言った。

 

「あいつはトウジの仇だ……」

 

 だが、足が震えて動かない。

 怖い。

 相手はミサトさんですら勝てないバケモノだ。

 俺なんか適うわけがない。

 どうしよう、どうしよう……。

 

 加持のアイデアは、相手が気に取られてる隙を狙い塩コショウ入りのカラーボールを目いっぱい浴びせて視力を奪うというものだ。

 

 でも、そんなのどうやってできるんだよ……。

 

 

 二人そろってボコボコにされてるじゃないか。

 当初の話では二人であいつをボコボコにするとかそんな話だったじゃないか……。

 逆だろ、それじゃ……。

 このままだと、みんなコロサレル!??? 

 

 ああ、こういう感覚か。

 

 シンジがエヴァに乗るのが怖いって……。

 

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……って、俺はシンジじゃないんだぞ、俺はケンスケだ!! 相田ケンスケ!!! 相田ケンスケいきまーす!!! ケンケンいきまーすっ!!!」

 

 男にはやらなきゃいけない時がある。

 ケンスケはトウジの顔を思い出した。

 ケンスケは走って観客席に向かうと起き上がり、コンラッドに対して叫んだ。

 

 

「お、おいば……バケモン!!!」

 

 コンラッドは振り返った。

 

 

「トウジの仇だ喰らえ!!!!」

 

 ケンスケは特注のトイガンから塩コショウ入り特性カラーボール弾をコンラッドの顔にブチ当てた。

 コンラッドの顔に見事に命中した。

 

「う、うおおおおおお! な、なんだこりゃ!!!」

 

 

 コンラッドは自分の白いピエロ顔に蛍光色のカラー弾がぶつかったことに心底焦っていた。

 

「みえない!! みえない!!」

 

 ふと、液体が口の中に入った。

 しょっぱい!? 

 こりゃ塩コショウだ。

 

 

 

 

 その背後にはもう一人の刺客がいた。

 洞木ヒカリ。

 ケンスケとは違い、ヒカリには明確な意思があった。

 自分とトウジを弄び、トウジを殺した憎い敵。

 それに復讐するチャンスをヒカリは欲していた。

 

 

「復讐は気持ちいい事」

 

 

 手にはフライパンを持っていた。

 ヒカリは走ると、フライパンをコンラッドの頭部に勢いよくぶち当てた。

 

 カァーン!!! 

 

 

 コンラッドの頭部にフライパンはぶち当たると勢いのいい音を響かせた。

 道化の姿をした鬼畜は脳味噌が揺れる感覚を覚えた。

 

 

 そして、コンラッドは地面に足をつけた。

 

 痛覚はない。

 だが、脳は揺れる。

 コンラッドの世界は一気に揺れ始めた。

 

 

「あ……」

 

 コンラッドはその時、体中に電撃が走るのを感じた。

 

「痛ェ」

 

 

 痛い! これは苦痛! これは頭痛! 

 も、戻ってきた。

 ショック療法かぁ、こりゃ!? 

 

 

「う、うおおおおおおおおお痛ぇぇ!!」

 

 ミサトは立ち上がると、背を向け地面に足をつけているコンラッドを見逃さなかった。

 そして、210㎝140㎏の巨漢の背中をつかむと思いっきり持ち上げた。

 青葉がみていたプロレスビデオの再現、ジャーマンスープレックス。

 するとミサトは怪力でそのまま地面に叩きつけた。

 

 頭から落とされたコンラッドは悲鳴をあげのたうち回った。

 

 

「いでえええええええええええええ!!! あああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

 コンラッドがウケた傷の痛みが倍返しになり、コンラッドの全身を覆いつくした。

 酸で焼かれた皮膚の痛み、フライパンで殴られた痛み、故障で目をやられた痛み、そしてジャーマンスープレックスで投げられた痛み。

 これらが倍返しになりコンラッドの全身に響きまわった。

 

 

 加持はミサトにこんな怪力あったのかと面食らった。

 ふと思い出したように言った。

 

「さっき、俺の蹴りが弱いっていったよな。じゃあこれはどうだ」

 

 加持はそういうと、コンラッドのピエロの白面を思いっきり蹴り上げた。

 コンラッドは苦悶すると地面にのたうち回った。

 

 

「ありがとう、加持くん。二人を連れて安全な場所に……」

 

「こんなのバレたらアスカに殺されちまうな。さあ、二人とも帰るぞ。よーくやった! あとで6万円渡すからな!」

 

「まだよ! こいつを殴り足りないわ!」

 

「もういいだろ委員長、逃げようぜ!」

 

 

 加持は無理矢理ヒカリを抱えると、そのままケンスケとともに去っていった。

 

「まだだ……」

 

 コンラッドは頭を抱えて立ち上がった。

 だが、ミサトは以前と違い痛覚が戻ったコンラッドなど敵ではなかった。

 

 以前シンジがさした傷を思い出すと、思いっきりローキックをコンラッドの膝に向けてはなった。

 

「あガ!?」

 

 コンラッドは足を抱えると地面に倒れそうになった。

 ミサトはそのまま、思いっきり片膝をついたコンラッドの頭をつかむと渾身の膝蹴りを食らわせた。

 

「ごボッ!!!!」

 

 コンラッドは血を吐くと地面に倒れた。

 もう再起不可能だろう。

 血を吐くと地面に悶絶して倒れ伏した。

 

 ミサトはコンラッドの頭を踏むと銃を突きつけた。

 

 

「やめなよ、ミサトちゃん。銃は聞かねえつったろ……」

 

「頭は、でしょ」

 

 ミサトはコンラッドの足を狙うと撃ちぬいた。

 

「ぬおっ!」

 

 

 今回はシンジ君はいない。

 黙ってこいつを殺せる。

 次に、コンラッドの足を銃で撃ちぬいた。

 

 

「うおっ!!」

 

 1発では済ませなかった、2発、3発……四発と続いた。

 楽に殺す気はない。

 心臓を撃って、楽に死なせない。

 こいつが殺してきた人たちの怨念を含めてじっくりと嬲り殺しにしないと気が済まない。

 

 

「まだ、弾はあるわよ。いつまで弾とあなたの体力どっちが長く持つかしら?」

 

 

 だが、コンラッドは笑っていた。

 

 

「そうやって笑っていなさい。あなたは死ぬのよ」

 

 

 ミサトは冷酷に微笑んで告げた。

 コンラッドはそれでも笑っていた。

 

 こいつらわかってねえ、昔からだよ。

 

 本当の目的は「葛城ミサト」なんだってな……。

 

 

 

 

 同じころ、ニューヨークではF型装備をつけた初号機とJAと融合した二号機が13号機相手に戦っていた。

 初号機はマゴロクEソードの大型「ビザンオオフネ」で何度も何度も攻撃を加えたが、13号機はビクともしていなかった。

 二号機も同じように電磁ハンマーで攻撃を加えたが、ビクともしていない。

 黒い岩肌の13号機は静かに何もせずただ攻撃を受けているのみであった。

 まるで自分たちの攻撃をあえて受けるようだ。

 

 

「固い!」

 

 アスカはそう悲鳴をあげた。

 13号機はようやく動き出したとおもったら、その鈍重な口を開くと、青白い光を放とうとした。

 

「あ……!!」

 

 アスカは目の前が真っ白になった。

 ふと、二号機とともに自分が消される絵が想像できてしまった。

 

 

「イヤだな、死にたくないな」

 

 

 その時だった、シンジは大きく飛び上がるとビザンオオフネを上に突き上げるとそのまま13号機の顎を突き刺したのだった。

 その力に思わずのけぞった13号機は天空に転ぶと、そのまま空中高く青白い光解き放った。

 その光は宇宙の先に飛ぶと、そのまま宇宙の中へと消えていった。

 

「ボッとするな! アスカ!」

 

 シンジの声で目が覚めたアスカはそのまま13号機の膝の上に飛び乗り、電磁パンチの雨あられを繰り出した。

 ミサトが以前言っていた「大きい相手は膝を崩す」というアドバイスを基にした。

 数億ボルトの電流は13号機の体に何度も何度もぶつかった。

 

「あ、そうだコア! こいつ四つあるんだ!」

 

 アスカは這いながら13号機の胸元に行こうとした。

 だが、シンジの方が早かった。

 ビザンオオフネを構えると、胸のあたりを何度も何度も切りつけた。

 

「バカシンジ、手柄とるなよ!!!」

 

「いいから、お前もこっちにこいよ!!」

 

「お前!? よくもセンパイに向かって!!!」

 

 

 そんな二人が言い争いをすると、13号機は起き上がり二体は地面に転がっていった。

 そして、トカゲの肌をした13号機は二体をみつめるとその大きな尾を振るい二体を吹き飛ばした。

 その大きな尾だけでエヴァの6倍以上の大きさはあった。

 

「っ!!!!!」

 

 

 シンジとアスカは悲鳴すらあげることができなかった。

 激痛が二体の腹部に走った。

 その力はあまりにも強かった。

 特殊装甲で改造し固めたはずの初号機と二号機は一気にコアがむき出しの状態になっていた。

 

 シンジとアスカは地面に倒れると、そのまま昏睡し気を失っていった。 

 時間がゆっくり止まっていくのがみえた。

 

 

 死ぬのか…。

 

 そんな時、声が聞こえた。

 マヤの声だ。

 

「シンジくん!!」

 

 

 マヤの悲鳴がシンジに聞こえた。

 

「生きてますよ、マヤさん。」

 

 何とか声に出せた。

 でも、お腹が痛い。

 

「シンジ君、装甲が大破してる!!! このままだとまずいわ!!!」

 

 わかってるよ。

 

「アスカの二号機もよ!!! このままだとやられてしまう!!!」

 

 アスカもか。

 二体はそろって、装甲がはがれコアがむき出しの状態になっているのがビルの鏡状に見えた。

 大ピンチだ。

 ゼルエルでもここまで強くはなかった。

 光線でも特殊な技でもない、ただのシンプルな打撃でここまで行くなんて……。

 シンジは起き上がろうとした、だが呻いて地に倒れることしかできなかった。

 アスカも同じくだった。

 

 強い。

 圧倒的に、強い。

 

 アスカはようやく目が覚めたようだ。

 この私がこいつ相手に気を失うなんて。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

 叫びたいけど、叫べない。

 アスカは弱弱しく息を吐くのみだった。

 

 

「う……う……」

 

 シンジの声だ。

 生きていたか。

 

「し、シンジ……アンタ生きてる?」

 

「生きてるよ……」

 

「このままだと死ぬわよ、あたしたち……」

 

「わかってる……」

 

 

 13号機はゆっくりゆっくりと迫ってきていた。

 まるで顔は笑っているようにみえた。

 そして、再び口を開けるとまた青白い光線を放とうとしているのがみえた。

 

 勝てない。

 強い。

 

 ヤツの吐く光線は1兆度あるときいた。

 おかしい、ヤツは全力でやっていない。

 遊んでいるんだ。

 吐かない、こっちに向けるとしてもせいぜいこっちが死ぬ程度の威力のものしかあびせない。

 全力で出さない、出せば簡単に壊れるから。

 

 死のゲームはここからだ。

 

 シンジはわかった。

 

 二人は何とか上体のみを起こすことができた。

 

 シンジは死を覚悟した。

 アスカももうおしまいだと観念した。

 

 そんな時だった。

 またネルフの特殊戦闘機がみえた。

 

 こんな時になんだろう。

 

 

 白銀の機体、四号機だ。

 

 

 

「二人とも、助けに来たよ!!! 向こうの戦闘が早く終わったんだ!!」

 

 

 カヲルの声だ。

 アンビリカブルケーブルは刺していない。

 そうか、カヲル君は使徒。

 アダムそのものだ。

 エヴァを自由に使える。

 

 

「調子に乗るなよ、リリンの玩具。」

 

 カヲルは量産機から奪ったロンギヌスの槍を13号機に投げ飛ばした。

 見事に13号機の顔に刺さると熱線は外れた。

 そして、自らの胸の装甲に光線をあててしまう失態を犯した。

 胸の装甲は外れ、コアがむき出しの状態になった。

 

 

「お前もやってやるよ……虚数空間で果てるといい。」

 

 

 カヲルは指を鳴らすと、地面のマイナスエネルギーを13号機の周囲で包み込んだ。

 やがて、空間は球体となった。

 

 だが、これも長続きはしない。

 恐らくやつは暴れる、レリエルが初号機にやられたように。

 

 カヲルの試みは正しかった。

 虚数空間にとらわれたはずの13号機はもがき暴れると突き破り目覚めていった。

 口の中には量産機と思われる体が複数あった。

 虚数空間で出会って皆殺しにして、食い殺したんだ。

 

 もしゃもしゃと呑み込むと初号機・二号機・四号機をみつめた。

 

 まるでお前らもこうなるんだぞといわんばかりに。

 

「リリンはとんでもないバケモノを産んだ……。使徒以上の怪獣を……」

 

 13号機は顔にささった槍を抜くとそのまま力任せにへし折った。

 ロンギヌスの槍をあっさりと……。

 しかも、大したダメージを受けていない。

 スピード以外はとんでもないパワーとタフネスをしている。

 厄介だ。

 

「まずい、このままだと僕もやられる……」

 

「それってどうするの?」

 

「装甲はF型装備の初号機やJA搭載した二号機のが強い……残念だけどヤツの攻撃にボクは耐えられるかどうか……」

 

 アスカは呆然とした。

 このままだと殺される。

 

 

 その時だった。

 

「みんな聞こえる!?」

 

 低い女性の声が聞こえた。

 リツコだ。

 

「時田さんと二人で作ったコンピュータウィルスをあいつの頭の中に入れるから、あいつの動きは10秒間止まる、その間だけあいつの耐久力も下がっていくようにしてやったわ。その間にボコボコにしちゃって。行くわよ。カウントお願い」

 

 このウィルスをとけるパスワードは一つだけ「希望」。

 だが、時田曰くこんな連中に希望なんてもんはない、絶対に解けないとのことだ。

 

 リツコはこの男の楽観論が好きになった。

 

 3人はこの話を聞き洩らさなかった。

 流石リツコさん、ハッキングに成功したんだ。

 マギは凄い。

 耐久力も下がるのか。

 今の内だ、ありったけを叩きこんでやる。

 

「3」

 

「2」

 

「1」

 

 13号機は白い眼のカガヤキがなくなった。

 止まった。

 それだけじゃない、黒い岩肌は削げ落ちていた。

 肌は白くなっていた。

 

 耐久力の秘訣はあの岩肌だったんだ。

 シンジは確信した。

 

「行くよ!!」

 

「OK!」

 

「一気にきめよう!」

 

 初号機はビザンオオフネを持つと、まず危険な火を吐く恐竜型の頭部を一刀両断した。

 次に四号機はマゴロクソードで、大きな尾を両断した。

 そして、二号機はJA改の電磁ハンマーを持つとむき出しになった13号機のコアめがけて思いっきり叩きつけた。

 

 耐久力が下がった今、もう敵ではない。

 

「あいつが動くわ!」

 

 もうカウントは過ぎた。

 だが、コアは全部潰したはず。

 

 やったか!? 

 

 

「いや、動いてる」

 

 カヲルは指摘した。

 シンジは驚愕した。

 頭部を奪った、コアはつぶした。

 

 

「なのになんで……」

 

 アスカは感づいた。

 

「まさか、コアは別にもう一つあるとか……」

 

 13号機は竜頭を失うと、頭部からタコのような無数の触手をはやした。

 触手の奥には大きな口と思われるモノがぽっかりと開いていた。

 

 なくなったはずの尾、その先から無数の蛇の顔がでてきた。

 無数の蛇頭はその中でも一際大きな蛇頭を守るように周囲に生えていた。

 蛇頭たちは白く唇は赤く、量産機のようにみえた。

 

「量産機たちを取り込んだのはこれが理由か」

 

 カヲルは静かに告げた。

 量産機を取り入れて、連中が持っている能力を吸収した。

 不死身の力を。

 そして、最強になる。

 

 

 その不気味な姿。

 それはまるでクトゥルー神話のそれであった。

 

 エヴァ13号機第二形態。

 先のが破壊神なら、こちらは邪神。

 

 無数の蛇頭は初号機に向かって絡み始めた。

 

「うわっ!! やめろー!!!!」

 

 

 シンジは悲鳴をあげた。

 だが、蛇頭は絡むとそのままシンジをつかんでいった。

 

 

「おい、シンジを離せ!」

 

「シンジ君をかえせ!!」

 

 四号機と二号機は攻撃を加えようと近づいたが、別の蛇頭が気が付くと二号機と四号機を瞬く間に捕まえた。

 そして、13号機はそのまま天高く、羽を伸ばすと一瞬で中へと飛んでいった。

 音速を超えたスピードで進んだ13号機はすぐさま、日本へと戻ってきた。

 たった数分だった。

 

「スピードまでつけたか。」

 

 

 カヲルは絶望した。

 

 

 そこは、旧東京あと。

 

 

「ここって、まさか……ミサトさんがいる!?」

 

 シンジはつぶやいた。

 

 まさか……、まさか……13号機の目的ってミサトさん!? 

 

 

 13号機はそのまま進むと、旧日本国技館前へと躍り出た。

 そして、天井をつかむとベリベリとまるで包み紙をはがすようにはがしていった。

 

 

 

 

 その様子を逃げ出したシンや加持がみつめていた。

 加持は日向の待機していたジープの中に乗り込んでいた。

 その後部座席にはケンスケとヒカリがいた。

 

 

 

「葛城……。そんな……」

 

 ああ、ダメだ。

 やられてしまう。

 

 

 別の場所にはインドの暗殺者シンがいた。

 

 

「こんなことは契約にないぞ、コンラッド」

 

 

 シンは呆然としていた。

 私たちは間違っていた。

 間違った相手の味方をした。

 

 

 

 

 

 ミサトは音に反応して、天空をみつめた。

 そこにはまるでクトゥルー神話のバケモノのようなものがいた。

 タコ状の触手が複数あった。

 

 

 血まみれになったコンラッドは高笑いをした。

 4発撃ったはずなのにまだ生きている。

 かなりタフなやつだ。

 

「実はな、あの13号機には特別な物をしかけてる。俺が死にそうになったとき俺の生命反応に合わせてこっちに来るように仕込んでおいたのさ。そう、お前に殺されそうになったときあるいは死んだ時にこっちにくるようにしておいたのさ」

 

「なんですって!?」

 

「お前と俺は13号機と一緒になるのさ、そして宇宙を滅ぼすエネルギーとともに果てる。俺とお前はアダムとイブになるのさ、うふふふふ。」

 

 

 触手の1部はコンラッドの体をつかみ上げた。

 

 

「あーっはっはっはっはっはっはっは!!!」

 

 

 そして、口の中に入れるとコンラッドは消えていった。

 と次の瞬間ミサトの近くに触手が近寄ってきた。

 

「私を狙ってるんだ!」

 

 ミサトは日本刀を持つと、13号機の触手を一つ一つと切り捨てていった。

 だが、無駄な努力であった。

 すぐに触手はミサトの首を締め上げた。

 

「あ、あうっ!」

 

 ミサトはなんとか応戦しようとしたが、他の触手が腕と足を締め上げ始めた。

 次は腕に絡みつくとその凄まじい力で締め上げた。

 思わずミサトは日本刀を離してしまった。

 

「うあぅ!」

 

 両腕、両足、首を拘束されたミサトは身動きがとれなくなった。

 ふと、ミサトは蛇頭の尾に拘束された初号機がみえた。

 

 シンジ君。

 ああ、私の全て。

 

 

「助けてシンジ君……」

 

 

 ミサトはそう漏らすと気を失いそのままコンラッドとともに呑み込まれて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、最終回です。

続編はやったほうがいいですか?よくないですか。

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