ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話   作:井上ああああ

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最終決戦です。



ミサトとシンジの最終決戦パート4

 ミサトさんが13号機に取り込まれた。

 シンジは呆然とした。

 

「ミサトさん?」

 

 

 アスカは口を覆い隠した。

 やられた、あのミサトが……。

 

「うそでしょ? 嘘といってよ!」

 

 カヲルも同じく無言であったが、呆然しかなかった。

 

「なんてことを」

 

 カヲルはふとシンジの心配をしてしまった。

 目の前で起きたことが信じられなかった。

 ミサトさんが触手に捕まり、食べられた。

 

 加持はジープの中で一部始終をみてしまった。

 

「葛城……」

 

 なにもできなかった。

 俺は何もできない、シンジ君にそういった。

 あれは彼を動かすために言った言葉、だが本当だったのだ。

 葛城を守ることすらも。

 

 日向は顔を真っ青にした。

 

「葛城さん、だから無茶だっていってたのに」

 

 だからいったんだ。

 無茶ですよって。

 なのにあの人はすべて抱え込んで……。

 

 

 そんな中、沈黙がその場にいたすべての人間を包み込んだ。

 

 

 

 シンジの声が漏れた。

 

「ミサトさん」

 

 ずっと自分のそばにいてくれたミサトさん。

 確かに理不尽だった。

 ずぼらでがさつだった。

 でも勇気があって、僕のために命を懸けてくれるミサトさん。

 大好きだった。

 愛してた。

 

 そんなミサトさんが……食べられた。

 

『風呂は命の選択よ』

 

『第3新東京市。私たちの街よ。そして、あなたが守った街』

 

『楽しいでしょ? こうして他の人と食事すんの』

 

『一つ言い忘れてたけど、あなたは人にほめられる立派なことをしたのよ。胸を張っていいわ』

 

 初めてミサトの家に泊まった日の言葉が振り返った。

 自分に優しさを見せてくれたミサトさん。

 嬉しかった、楽しかった。

 初めて生きててよかったと思えた。

 ミサトさんに明日あえるから生きていこうと思えた。

 心の中にすっぽりと埋もれる何かがあった。

 

 そんなミサトさんが食われた。

 

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 シンジは悲鳴を上げた。

 そして、手にあったビザンオオフネを振り上げると蛇頭を切り裂いた。

 紫色の血を吹き出すと蛇頭は地面から離れた。

 

 そして、両手を振るい大声をだした。

 

 

「おい、バケモノ!!! 僕も食べろ!!! 俺を食えよッ!!!!」

 

 

 アスカは面食らった。

 あのシンジが俺!? 

 

 

 その声に反応するかのように蛇頭の親玉である真ん中の顔が動いた。

 

 

「食え! 食ってみろ!!! さあ、食え!!! 食ってみろォ!!!!」

 

「いや、シンジやめて!!!」

 

「やめろ! ダメだッ! シンジ君よすんだ!」

 

 カヲルとアスカの声がシンジの耳には聞こえなかった。

 真ん中の顔は大きな口を開けると、初号機の近くによった。

 

 ペロンッ

 

 それだけ音がすると、初号機は丸のみにされていった。

 

 

「シンジ……」

 

「シンジ君」

 

 

 初号機が食われた。

 

 

 カヲルはふと目に何かが流れるのがわかった。

 

「涙だ」

 

 そうか、悔しいのか。

 自分に感情が生まれていたのか。

 悔しい。

 

 

「シンジ君……」

 

 

 わかるよ、葛城さんが食われたとき感じた悔しさ辛さ。

 僕の胸を走っているよ、シンジ君。

 

 

「おりゃああああああああああ!!」

 

 

 カヲルは二号機から声が聞こえたのを感じた。

 セカンドが暴れている。

 蛇頭をつかむと力任せに引き千切ってる。

 

「怒り、怒りか。リリンの強さはそれか」

 

 渚カヲルも胸にふちふちと上がる感情に身を任せた。

 まるでアスカのように。

 四号機は動き出すと、マゴロクソードを振るい蛇頭を一刀両断にした。

 

「行くぞ、最後まで!」

 

「言われなくてもわかってるァ!」

 

 

 アスカはJA改から引き継いだ電磁ハンマーを抱えた。

 そして、蛇頭を潰しにかかっていった。

 

 すると、攻撃に反応したのか13号機はゆっくりと二号機と四号機を見下ろした。

 

 かつてコアがあった場所には男の顔と思われるものが生えていた。

 

 

 男の顔は白かった。

 目は白目がなく黒い。

 そして唇は真っ赤だった。

 まるで邪悪なピエロのようだ。

 

 コンラッドと融合したことでヤツの要素も加えたのか。

 カヲルは確信した。

 

 

「うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!!」

 

 

 男の顔は笑っていた。

 まるでコンラッドのマネをするように。

 というよりも、13号機の精神は完全にコンラッドに乗っ取られているのではないかとその場にいたすべてが考えた。

 

 それは正しかった。

 

「笑うな!!!」

 

 アスカは怒りで体を震わせた。

 最初は恐怖があった。

 だが今、この不愉快なそれに対しては怒りと憎悪と嫌悪感、不快感しかない。

 この悪魔を消え去るしかない。

 こんな奴は世の中に生きてはいけないのだ。

 

 

 

 

 そんな時だった。

 

 空から零号機がふってきた。

 

 

「ポジトロンスナイパーライフル、発射!!!」

 

 レイはそういうと、空中の中でラミエルの時に初号機がしようしたポジトロンスナイパーライフルを撃った。

 時田の改造により、日本中の電力を賄えるほどのバッテリーを手に入れていた。

 

 13号機の胸に生えていた男の顔はつぶれた。

 青白い光は消えると、13号機の胸に大きな穴が開いた。

 そして、旧東京の市街地が眠る海のなかへと倒れていこうとした。

 

 倒したか!? 

 

 誰もがそう思った瞬間だった。

 

 だが、次の瞬間穴は徐々にふさいでいった。

 男の顔も徐々に戻っていった。

 

 四号機と二号機はそれぞれの武器を構えた。

 零号機も構えた。

 

 3体をまるで待ち構えていたように白い蛇頭は襲い掛かってきた。

 弐号機はその攻撃を避けると、電磁ハンマーで思いっきり叩き潰した。

 四号機はマゴロクソードで切り捨てた。

 零号機もポジトロンスナイパーライフルを捨てると、マゴロクソードに切り替えた。

 そして、蛇頭を両断した。

 

 

 それぞれがそれぞれのやり方で戦っていた。

 だが、蛇頭は何度も何度も生えていった。

 まるで量産機が如く……。

 

 

 13号機の胸に生えた男顔はそんな彼らをあざわらうかのように微笑んでいた。

 まるで人間を見下ろす高次元の神のように。

 そして大きくまた高笑いをした。

 

 

「うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!! うハはははは破覇はははは!!!」

 

 

 その不愉快さにカヲルすらも歯をきしませた。

 綾波もまた歯をきしませ、眉間に皺をよせた。

 

 二人はその言葉を知らないが、その感情は「不快」であった。

 

「そうやって、笑っていろ! その顔に風穴を開けてやる! お前は所詮まがいものなんだ! リリン如きに洗脳されるこの面汚しめ! この世から消え去ってやる! この反吐が出る道化めが!」

 

 カヲルは口を振るわせて言った。

 

「あなたはこの世界にいる意味がない。消えて」

 

 綾波も思わず言ってしまった。

 

 アスカは二人がこんなことをいうなんて珍しいと感じていた。

 

 だが、こいつは強い。

 様々なことで傷をつけているが、びくともしていない。

 

 そんな時だった。

 ミサトを飲み込んだタコの触手の奥にあった口の部分から大きな大きな恐竜のような竜の顔が生えてきた。

 

 まるでプレシオサウルスだ。

 第一形態の黒い岩状の肌をしていた。

 竜頭は白い目でゆっくりと、地面にいるすべてのものをみていた。

 

 

 

 

 

「これが、第三形態なのか!」

 

 加持の焦りの声が聞こえた。

 

 

 恐竜の顔はみるみうちにのびていった。

 やがて、雲を抜け、天空を突き刺すと邪悪な竜の口は大きく開いた。

 大気圏をぬけると、竜の口は開いた。

 そして、大きな青白い光を輝かせた。

 

 天空はそれに誘われるように積乱雲が覆うと雨と雷が吹き荒れた。

 

 

 その様子は世界中の人間がみていた。

 日本に定着していたオーバーザレインボーの艦長は天を仰いだ。

 部下も同じくそうだった。

 そして、褐色の肌をした巨漢の部下は悲しそうに言った。

 

「あいつは天気まで操ってるんだ。彼らは勝てなかったのか…。」

 

「いや、まだだ…。」

 

 艦長はそういった。

 だが、正直信じられないでいた。

 

 そのころ、第一発令所では巨大な熱エネルギーを感知していた。

 

「目標の口内温度が1兆度を超えております。このままでは、世界が!!!」

 

 冬月は愕然とした。

 サードインパクトではない人類の破滅。

 補完計画ではない、別の形のもの。

 それは、人がLCLになるものではない。

 宇宙そのものを破壊し無にするビッグバン。

 もしくはそれに通じる無限のエネルギーを大消費か。

 ヤツの目的はそれだったのか。

 

 

 ジープにいた加持は苦虫を噛んだ。

 

「コアさえわかれば……コアさえ……」

 

 最後のコアさえわかれば奴を倒せるのに。

 

 日向も同じことを思って拳を震わせた。

 

『コアさえ潰せばあんな奴……』

 

 ケンスケは恐怖でメガネを震わせていた。

 

『このまま殺される、みんなあいつに食われて死ぬんだ』

 

 ケンスケはそう思った。

 

 だが、ヒカリは違った。

 ヒカリは憎悪の目で13号機を睨みつけ、震えていた。

 恐らく怒りで。

 それはこの場にいる誰もが感じていた。

 どうやったら勝てるのだ。

 そんな絶望が周囲を包み込んだ。

 

 

 

 ミサトは静寂の中目を覚ました。

 自分はどうなったんだ。

 あいつに捕まって食われたのか? 

 

 ピンク色の体組織がミサトの体を覆いつくしていた。

 まるで繭のように。

 首に手足に絡みついたそれはミサトを磔にしているようだった。

 

 彼女の近くにはコンラッドがいた。

 同じく繭に包まれていたが、生きているのか、死んでいるのかわからない。

 恐らくは死んでいるかも、肉体的には。

 

 だが、彼女はわかった。

 いずれにせよ今、コイツの肉体は滅んでも精神は13号機と一つになっている。

 

 

 

 ふと、首を絞めている体組織が強く動きだすのを感じた。

 

「うっ!」

 

 ミサトは悲鳴をあげると気を失いまた、静寂の世界に入っていった。

 その中でミサトは声が聞こえた。

 

 

『エヴァ初号機の中に入るのか?』

 

 野太い声、コンラッドの声。

 それに還すように女性の声が聞こえた。

 

『ええ』

 

 その声はレイに似ていた。

 だが、違った。

 恐らくは碇ユイ。

 シンジ君の母親、初号機のコアの中にいる母親だ。

 

『夢っていうのは叶えるためにあるんだ、ユイちゃん。俺は応援するぜ!』

 

 男の声がまたした。

 

 

『あなたに相談してよかった、だれも相談できる人がいなくて……。残された世界を主人と息子がどうなるか……少し心配だったの』

 

『お前の夢はでかいな、碇ユイ。そういうところ好きだぜ』

 

『ありがとう』

 

 そうか、すべてはこいつが焚きつけた事なのか。

 こいつが焚きつけなければ碇司令はあのままシンジ君と向き合えた。

 シンジ君も碇司令ももっとまともな人生を歩めた。

 

 

 さらに別の声がした。

 

『葛城博士』

 

 コンラッドの声だ。

 その後に声が聞こえた。

 

『コンラッドさんか、お金は用意してくれたのか? 助かる……君たちがいてくれて本当に助かったよ。感謝する。研究資金ができたのはあなたと六分儀さんのおかげだ。君タチには感謝してもしきれないよ!』

 

 父さんの声!? 

 まさか、父はこいつと関わりがあったのか。

 

『俺たちゼーレの仕事は善良な人間に資金を出す事だ』

 

 

 こいつもかかわっていた。

 セカンドインパクトに……。

 こいつも父の仇だったのか。

 

 こんな奴がいなければ、父はゼーレと会うこともなかった。

 南極に行くことも死ぬこともなかったのだ。

 

 でも、なぜこいつの声が聞こえたんだろう。

 そうか、徐々に私もあいつに取り込まれて行き始めているのか。

 だから、あいつの意識が私の中に。

 こんな奴と一緒になるのはごめんだ。

 でも、手も足も動かない。

 ごめんね、シンジ君。

 

 

 いや、こんなところであきらめるわけにはいかない。

 やれることはやってから死ぬ。

 最期まであきらめるわけにはいかない。

 

 

「し……」

 

 口が動いた。

 

「シン……」

 

 まだ動ける。

 

「シンジ君!!!!!!!!!!!」

 

 ミサトは動いた。

 すると手足を縛った筋組織がよりさらに強く締め上げていくのを感じた。

 次に首も。

 

「うっ!!!」

 

 意識が消えていく。

 

 その時だった。

 

 ビクッ!!! 

 

 何かが動くのを感じた。

 肉が避けていく音、動き……。

 薄れていく意識の中でミサトはみえた、紫色の何かが……。

 

 

「いた!!! ミサトさん!!!」

 

 

 シンジは黙って食われたわけではなかった。

 怒るとともに冷静に考えた。

 これだけでかくて強ければ、内部は脆いはず。

 そして、ミサトを食べたということは中にミサトがまだいるということ。

 

 その考えは正しかった。

 

 食われて行く中で、シンジは初号機の体を起こし13号機の肉の中を突き進んでいったのだった。

 肉はつかみやすかった。

 

 そして、声が聞こえた。

 ミサトの声が。

 

 それにあわせてシンジよじ登っていった。

 絶対に生き残ってやる。

 ミサトさんと僕と生き残る、こいつは死ぬ! 

 そのためならなんでもやってやる! 

 

『やめろ』

 

 声が聞こえた。

 野太い声だ。

 こいつの中にいるから、コイツの意志が僕の頭の中に入ってきてるのか!? 

 

『お前には無理だ』

 

 父さんか? 

 イヤ、違う。

 この声はあの悪魔の声だ。

 マーカス・コンラッド。

 

 

『やめろ』

 

 

「そんなにやめてほしいなら止めて見せろ!!!」

 

 筋組織が初号機を締め上げていこうとした、だが初号機の動きはとまらない。

 シンジはそれを引き千切り、嚙みちぎりながら突き進んだ。

 爪と指で肉の壁をよじのぼっていった。

 

 

 

「ミサトさんを返せ!!!!」

 

『やめろ』

 

 コンラッドの声が聞こえた。

 知るもんか。

 やってやる。

 

 シンジはミサトをつかんだ。

 ミサトを縛っていた筋繊維は引き千切った。

 

 

『やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ』

 

 

 

 連呼か、こいつ狂ったか。

 シンジは怒りの炎がふつふつと上がるのを感じた。

 やめろ、なにを今更。 

 ふざけるんじゃない。

 そして、声に出した。

 

 

「やめない! お前はトウジをはめたときはやめようとしたのか? やめなかったろ。女の人を水槽に落とした時、やめようとしたのか? やめなかったろ。電車の中にいた人たちの悲鳴にも耳を貸したのか!! なのに、お前だけやめろというのはおかしいだろ!! お前は楽しんだんだ!! その報いをとれ!!!」

 

 

『やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ』

 

 

「やめない! やめない! やめるもんか! 貴様はトウジの仇だ!」

 

 

『やめろ!』

 

 

「うるさい!」

 

 

『やめろォ!!!!! やめてくれェェェェッ!!!!』

 

 

 コンラッドの声が強くなった。

 最初からこいつはミサトさんが欲しかったんだ。

 でも、くれてやらない、

 お前には渡さない。

 

 トウジを奪った、父さんを奪った。

 ミサトさんまで奪わせはしない。

 お前にだけは絶対に。

 

 

 ふと、シンジは頭上に何かがみえた。

 赤い球体。

 コアだ。

 そうか、こいつが焦っていたわけはこれ。

 

 体内に隠していたコアがバレてしまってびびってるのか。

 お笑いだな。

 正々堂々とふるまいながら隠し玉を用意していた。

 姑息な卑劣の輩らしいふるまいだ。

 

 

 シンジは残酷な笑みを浮かべた、醜悪な魔物を処刑する天使のように。

 

 

「これがお前の最後のコアか。こんなもの食ってやるよ。」

 

 

 シンジはそう告げると大きな口を開けた。

 それに続き、初号機は口を開けた。

 

 

 

『やァめェろぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!』

 

「イヤだね。」

 

 コンラッドの声がまた聞こえた。

 だが知らない。

 知るもんか。

 

 お前は僕が倒す、そう誓った。

 その約束を今、果たすんだ。

 

 コンラッド。お前は僕たちに負けてばかりしかしていない。

 僕たちが常に勝ってきた。

 今回もそうだ。

 お前の負けだ。

 

 

 初号機の顎は大きな口を開けると、コアに噛みついた。

 そして、余った腕をシンジは大きく突き上げた。

 

 

 ブシュっ。

 

 

 赤い肉壁が突き破るのがみえた。

 大きいものは内側から潰す。

 どんなに硬くても内側から潰せば倒れてしまうからだ。

 ミサトさんとみた宇宙人の映画で学んだことだ。

 

 

 

 外の世界では零号機も四号機も弐号機も戦っていた。

 その中には絶望があった。

 零号機も活動限界が近づいた。

 リツコの手で20分間に延長できたとはいえ、もう残された数は少ない。

 綾波は疲労困憊していた。

 アスカも同じく、そしてカヲルでさえ。

 二号機はコアがむき出しだ。

 四号機も攻撃を避けることで精いっぱい。

 

 どうすればいい?

 

 限界だ。

 蛇頭は斬っても斬っても蘇る。

 せめてコアさえわかれば逆転の糸口はあるのに……。

 3人はみなそう思っていた。

 

 

 そんな矢先だった。

 

 タコ状の口からのびていた首長竜顔が悲鳴をあげていくのがみえた。

 そして、恐竜顔は急速に凍っていくとすぐさまダイヤモンドダストになっていった。

 まるで、エネルギーがなくなり凍結していったようにみえた。

 隕石と氷河期で絶滅した恐竜のように…。

 

「みろ。」

 

 カヲルは指を刺した。

 それは希望の糸口だった。

 

 

 それはオーバーザレインボウからもみえた。

 艦長はゴーグル越しでその様をみた。

 雄たけびを上げて消えていく。

 

「やりやがった!あのバカども!」

 

 褐色の部下と抱き合うと大声を出して喜びを分かち合った。

 

 

 

 ミサトを捕まえたタコ状のそれは膨らむと、電子レンジでつくったゆで卵のように爆破していった。

 アスカは冷凍で買ったタコ焼きが爆破したのをおもいだした。

 

いずれにせよ、頭部は倒壊を始めた。

 崩れていった。

 希望はみえた。

 

 

 

 

「何かがあったのか!」

 

 

 尾についていた量産機状の蛇頭はお互いに共食いをはじめた。

 まるで、思想がバラついたかのように。

 お互いを噛み、食い合っていった。

 真ん中にいる首領と思われる蛇頭は口から赤い血を吐き倒れていた。

 無数の子分たちがそれを捕食していた。

 ズタボロに。

 

足は崩れ、地面に倒れ伏した。

 下半身も崩れてきた。

 

 

「攻撃がきいたのか?」

 

 カヲルはそういった。

 

 だが、違った。

 彼はふと13号機の胸をみた。

 

「あ!」

 

 消えている。

 笑みが、苦痛に変わっている。

 13号機の胸の中にあった男顔から笑顔が消えていた。

 苦悶の表情になると、けいれんしていった。

 赤い唇は震えていた。

 

 

「なんだ?」

 

「苦しそうだ」

 

 

 カヲルとアスカは交互にいった。

 13号機は苦悶の表情をあげけいれんを起こすと、男顔の額から血が噴き出るのがみえた。

 そんな中、額の傷から紫色の腕がみえた。

 

 

 エヴァ初号機だ。

 そうか、巨大な敵は内部から崩していく。

 

 キール議長もそんなことを言っていたけな。

 

 カヲルはほくそ笑んだ。

 

 

 

 

「シンジ君だ。」

 

「バカシンジ! 生きてたのか!」

 

「碇くん」

 

 

 

 

 

 3人が感動している中、男顔は目と口から赤い血を吹き出した。

 ベリベリ……という嫌な音が聞こえた。

 苦悶から激痛の表情に変わっていってるのがみえた。

 

 額の傷はみるみるうちに大きくなった。

 

 

 やがて、13号機だったそれは地面に倒れた。

 魔王の最期が近いのだ。

 13号機の体は見る身うるちにしぼんでいった。

 エヴァの10倍以上あった大きさも見る見るうちにしぼんでいった。

 

 まるで空気が抜けた空気人形のように。

 

 邪悪な道化の赤い唇は青くなると、けいれんをつづけて今にも息絶えそうであった。

 

 

 

「みんなで助けに行こう!!」

 

 カヲルはそういうと、3体はかけよろうとした。

 そんな時、残っていた蛇頭が二体ほどうねうねと近づいてきた。 

 3人は構えをとった。

 かろうじて生き残っていた蛇頭の1部がさらに、背後にいたが、カヲルはそれをにらむとマゴロクソードで両断した。

 

 その時わかったことがあった。

 

 もう再生しない。

 力がないのだ。

 

 さらにもう一体が二号機の背後にきた。

 

「気持ち悪い。」

 

 アスカはテンションが低めにいうと、電磁ハンマーを振るい頭を叩いた。 

 それに応じてマゴロクソードをもった零号機がぶったぎったのだった。

 

「流石、ファースト!」

 

 アスカは親指をたてて綾波の健闘をたたえた。

 綾波も返した。

 

 

 すべての頭部はこれでつぶれた。

 赤い血をだしながら、すべての蛇頭の頭部は地面に崩れていた。

 そして、溶けていくようにカヲルにはみえた。

 

「さあ、今すぐシンジ君のもとへ!」

 

 カヲルはそういうと、アスカとレイを扇動した。

 アスカもレイも笑顔だった。

 もう絶望じゃない。

 

 もはや、こいつは大した脅威などではない。

 勝てる。

 

 3体は倒れた13号機の胸にかけよった。

 その際にうざい男顔にアスカは蹴りを入れる事を忘れなかった。

 そして、初号機の腕をとると、力任せに引き上げた。

 

 

「がんばれ、シンジ!!!あとちょっとだぞ!!!」

 

「シンジ君、ボクを置いて死んだら本気で許さないからね!」

 

「碇君、生きて…ごはん作ってくれる約束忘れてるでしょ。」

 

 3人はそれぞれシンジへの想いをのべた。

 

 その様子を発令所で観ていた冬月はふと感じた。

 

 シンジ君は愛されている。

 この愛される力こそ、本当の彼の実力だ。

 人間ではない使徒も、難しい性格とプライドを持った少女も、母のクローンもそれぞれが別の意味でシンジを想っている。

 

 アスカはシンジへの立場が違えど、ある意味では姉弟としての愛を。

 カヲルは種族を越えた友情を。

 綾波のそれはミサトのモノの近いだろう。

 

 碇、みているか。これがお前の息子だ。どこでこんな育ち方をしたんだ?まさかお前…実はこっそりこうなるようにしていたのか? 

 それはないだろう。

 お前はあいつが怖かったものな。

 

 

 

 冬月は微笑んだ。

 

 彼がここに来たときは理不尽に振り回される少年でしかなかった。

 哀れであった。

 できればどれだけ助けてやりたかったか。

 碇から奪い、自分の子供にしてやろうかと考えすらあった。

 

 だが、違う。

 親はなくても子は育つのだ。

 

 愛が変えたのだ、あの哀れな少年を。

 

 

「まったく、バカな連中だよ。」

 

 冬月の漏らすバカは親愛がこもっていた。

 

 

 

 

 3体は力を入れて、初号機を引き上げた。

 想いは一つだった。

 

 初号機の頭が見えた。

 独自の角が生えた紫色の装甲がみえた。

 そのアゴの中にはコアがあった。

 コアは赤い筋組織が糸を引いていた。

 

 

「最後のコアだ!」

 

 アスカは思わず言ってしまった。

 

 そして、すでにそのコアはヒビがいっていた。

 

 13号機が倒れた理由はこれかとカヲルは気づいた。

 

 初号機をつかむ力は増していった。

 頭がみえると、次は上体がみえた。

 片手にはミサトがいた。

 

 

 

「ミサトっ!」

 

 アスカは歓喜の声をあげた。

 四号機と零号機は初号機の体をつかんだ。

 そして、さらに力を入れた。

 初号機の胴が見えた。

 やがては下半身すらも…。

 

 

 初号機は起き上がると、アゴに力を入れた。

 

 

 パキッ。

 

 

 

 噛み砕かれるとともに、13号機はドロドロと溶けていった。

 13号機だったそれは悲鳴をあげなかった。

 コアはかみ砕かれた、男顔は苦悶の表情をあげたまま死んだ。

 

 

 13号機の中に残っていたコンラッドの意識は薄れていった。

 その中でコンラッドはシンジをみた。

 

 

 

 コンラッドの意識が薄れる中、彼はわかった。

 

 自分は負けた。

 ミサトとシンジに負けた。

 完敗だ。

 世界最強になる俺の夢は崩れていった。

 本当にクソ・ド・ファッキン・ヒーローになるとは……。

 やりやがった。

 おのれシンジ、おのれミサト……。

 

 最後に残ったのは恨み言だった。

 

 やがて、彼の意識はドロドロのLCLになると水の中に消えていった。

 彼の野望も欲望も消えていった。

 破壊への願望も‥。

 コンラッドの邪悪な魂は液化していき、そのまま海の水とともに浄化していったのだった。

 

 

「消えていく13号機が……」

 

 カヲルは言った。

 

 オレンジ色のスープになった13号機の中、4体のエヴァだけが残っていた。

 

 紫色の鬼神。

 であると同時に人類の守護神。

 それがエヴァ初号機。

 初号機は13号機を打ち破った。

 

 

 シンジは初号機の片手に掴んだミサトを優しくみつめた。

 

「ミサトさん……」

 

 死んでしまったのか、動かない。

 

「ミサトさん!!!!!」

 

 シンジは悲鳴を上げた。

 嫌だ、死なせはしない。

 死んでほしくない。

 ここまでがんばったのに、なぜ・・・。

 

 

 その時だった、初号機の中にいるユイが反応したかのように雄たけびを上げた。

 

 

「ウオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 その時だった。

 ミサトの手が動いた。

 次に目が開いた。

 

 ミサトは気が付いた。

 そこは初号機の掌の上……。

 ドロドロのLCLまみれになったミサトはシンジをみあげた。

 

「シンジ君……」

 

 助けてくれたのか。

 いつも助けてくれるのはシンジ君だ。

 私は助けられてばかり、女神にすらなれない。

 

 

 そして、ミサトは上体を起こすと初号機の紫色の手を撫でた。

 シンジは初号機越しにその感触を感じた。

 

 暖かい。

 この暖かさは間違いない。

 命の鼓動だ。

 

「ミサトさん……」

 

 やがて、初号機は浜辺にミサトを置いた。

 それを二号機・零号機・四号機はともにみつめていた。

 

「ありがとう、みんな……ありがとう……」

 

 ミサトは弱弱しく感謝の声をあげた。

 四体のエヴァの背に夕日が差し込んだ。

 まるで4人の勝利を祝うように……。

 

 その光景を見ていた加持と日向も驚いていた。

 

「まさか、やるなんて。」

 

 日向はそういった。

 加持はほくそ笑んだ。

 

「やったな、みんな。」

 

 この勝利はみんなの勝利だ。

 

 おめでとう、アスカ。

 おめでとう、シンジ君。

 ありがとう、みんな。

 

 加持はニッと笑った。

 

 後部座席にいたケンスケとヒカリはお互いに泣き合って生の喜びをわかちあった。

 

「生きててよかった。」

 

「鈴原の仇を打てた。」

 

 ヒカリはそういった。

 泣きながら笑顔で。

 ケンスケもつられて泣きそうになった。

 

 その頃、ネルフ本部では勝利の報告がなされた。

 全職員が歓声をあげた。

 マヤは青葉に抱きつくと頬に思いっきりキスをした。

 普段は感情を表さないリツコであったが、その時ばかりは立ち上がり喜んだ。

 

 冬月は肩の力が抜け、大きなため息をついた。

 世界は救われた、何とか……。

 

 やがて、すぐに日向のジープとネルフのVTOL機がやってきた。

 そのころにはジープの中でケンスケとヒカリはぐっすりと眠っていた。

 ミサトはすぐに緊急治療室に運ばれた。

 体は安全でなんともなかった。

 

 日向はミサトの生存、自分たちの勝利を感じると感動のあまり大声で泣き始めてしまった。

 加持は二号機の元にいくと、アスカを抱きしめ「よく生きてた」と喜んだ。

 その目には涙が浮かんでいた。

 加持はアスカを抱きしめると、改めて真実の彼女への愛を感じていた。

 

 リリスの魂を持つレイ、アダムの魂を持つカヲルはお互いに握手をした。

 笑顔で。

 

 シンはそんなネルフの勝利とみると、また荒野の中へと消えていった。

 彼には争いの道しかない、ここに自分の居場所はない。

 低カーストで始まった彼を引き受けるのは暗殺団しかなかった。

 その中でシノギをあげて幹部になったシンはコンラッドと出会った彼は彼の顧問暗殺者になった。

 

 だがヤツは今回とんでもないことをした、それでも間違いなく二人の間には友情があった。

 それも終わったのだ。

 彼は日本を去った。

 長くここにいすぎたのだ。

 ここには平和しか残っていない。

 

 

 争いは終わった。

 

 数時間後

 ネルフの病室の中でミサトとシンジは再会した。

 

 ミサトは病室にいた。

 シンジも重傷であったが、早く退院できたのだ。

 だが、何とか二人は生きている。

 それで充分だ。

 

 シンジはミサトに渡された十字のペンダントをかえした。

 ミサトはそんなシンジをみて、ふと思った。

 

 

 生きて帰ってきた。

 やはり、私は正しかった。

 今回は生きて帰ってくる。

 私もシンジ君も戦って、勝ったのだ。

 生きるという事は戦うことだから。

 

 ミサトは微笑みつぶやいた。

 

「ただいま。」

 

 シンジはミサトに微笑みをかえすと静かに言った。

 

「おかえりなさい。」

 

 

 あの家出した少年を迎え入れた時のように。

 二人はお互いに微笑みあい、手を取り合い手を握りしめあった。

 そして、シンジはミサトの顔を寄せるとキスをした。

 ミサトもそれを受け入れた。

 

 

 世界の滅亡を救った二人を阻むものなどありはしないのだから。

 

 




次回、エピローグかいて終わります。
もうちょっとだけ続くのじゃ。

続編はやったほうがいいですか?よくないですか。

  • やったほうがいい
  • やらなくてもよい
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