ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話 作:井上ああああ
時系列的には第四話「シンジ君とミサトさんがデートに行く話」の後らへんです。
本当は別のところに投稿するつもりでしたが、本作と被っているので面倒だからこっちにしました。
痴漢冤罪をふりかけられた冬月をミサトが助ける話
ネルフ本部
ネルフ副司令の冬月コウゾウはあきれ果てた。
というのも作戦課長の葛城ミサトは大事な会議をすっぽかしてサードチルドレンの碇シンジとともにデートにいってそのまんま仕事をすっぽかしたからである。
赤木リツコの報告でそれを知った冬月はミサトに反省文を書かせている最中である。
総司令執務室ではゲンドウに苦言を呈していた。
「流石に君はあの女に甘すぎるのではないかね。」
総司令のゲンドウは笑みをもらすと、冬月に振り返った。
「何が悪いんだ?」
どうしたらいいのか、こいつはとんだ親バカになってしまったもんだ。
恐らくはユイ君のもとに帰るなどという考えはもうないだろう。
冬月は眉間に皺をよせると、相棒に苦言を呈した。
「揃いも揃って恥をかかせおって…。」
「恥ずかしい、それも立派な感情だよ。」
「もういい、私は帰るぞ。」
冬月は呆れると、そういい執務室を後にした。
帰りの電車に乗ると、揺られながら考えた。
特務機関の副司令官である私が電車通勤か。
時間は夜10時。
流石に混雑を極めてきていた。
第三新東京市内部はネルフ職員だけではない、それに付随する企業や市民なども多く暮らしている。
治安も乱れてきているようだ。
髪を脱色した若者が多くいる。
その多くは手元にあるケータイ型電話に夢中のようだ。
冬月は今でもまだガラケーを使っている。
古い時代の化石と笑われても使い続ける。
こんな連中と同じものを使うなら古い時代のものの方がマシだ。
冬月はそう思い手摺を強くつかんだ。
そんな時だった。
「きゃあああああああああああ!!!!」
隣にいた女性が悲鳴をあげた。
冬月は思わず振り返った。
「な、何事か!?」
「この人、チカンですぅ!」
女は大きな声をあげた。
その指さした方向には冬月がいた。
「なにを言ってる、誤解だ。私はなにもしておらんよ!」
冷静な冬月であっても、流石に困惑した。
なにを言ってるんだ、この女は。
私はこんなハレンチな恰好をした女など好みではない。
もっと、黒髪でおしとやかな女が私の好みなのだ。
ユイ君のように。
だが、冬月の思惑とは別に周囲にいた男たちは冬月を取り囲んだ。
「爺さん、電車を降りてもらおうじゃねえか。」
「とんだスケベジジイだな。」
「おいおい、爺さんこれで電車遅れるのマジで勘弁なんだけど!」
男たちの目は明らかに飢えた犬のそれだ。
正義を求め暴力のはけ口を探す野犬ども。
女は彼氏と思われる男性によりかかると泣いていた。
「わ、私は何もしてない。」
女の彼氏と思われる金髪ツーブロックの男は声を荒げた。
「コラァ、ジジイ。てめえこれやってどれだけ女が傷つくかわかってんのかオラァ!!」
気づくと電車のブザー音が鳴り響き、駅員が相次いで降りてきていた。
「どうしました。」
「痴漢ッスよ。」
駅員は冬月を取り囲むと、冬月の腕を取り無理矢理降ろそうとしてきた。
冬月は声を震わせた。
誤解だ。
チカンだと!?
私が痴漢などするわけがないだろ!いい加減にしろ!!
とネルフ本部なら声に出せるだろう。
だが、ここではそうはいかない。
それに私がもしネルフの副司令とバレればどうなるだろう。
内務省や国連、アメリカ政府など、下手すればゼーレのピラニアどもに狙われてしまうではないか。
冬月は思わず顔を青くした声を震わせた。
「誤解です、聞いてください。」
だが、女の悲鳴は冬月の声をかき消した。
「この人が私のお尻をつかんでさわりましたッ!!!!!!!!!!!」
駅員は思わず冬月をにらんだ。
「とりあえず、話は電車を降りてから聞こうか。お爺ちゃん。」
お爺ちゃん??????
「わ、私は…。」
するとツーブロックの男は冬月の胸倉をつかんだ。
タンクトップの腕からは筋骨隆々の筋肉がみえていた。
そして小さい声でいった。
「お前ネルフだろ。」
冬月は唾をのんだ。
なぜ知ってる。
「わかってんだぜ、これをよぉもしも…総務省なりなんなりにつきつけてやったらおたくどうなるかわかってんだよなあ?」
「な、なに?」
「いいんだぜ、俺…チンコロしちゃうから。ネルフの副司令は痴漢ヤローっていっちゃうから。」
「ち、ちんころ??????」
「どーすんの、爺さん。」
いかん、いかん。
まずいぞ。
冬月の世界はグニャァァと溶けていった。
大学教授から特務機関の副司令になった冬月の人生が溶けていく音が聞こえた。
バレる????
そもそもちんころとはなんだ???
わからん。
そんな時だった。
「ヘタクソな芝居を打って、哀れなヤツもいるもんね。」
この女の声。
聞き覚えがある。
葛城ミサト。
「葛城くん!?」
周囲にいた乗客も思わず振り返った。
「なに?」
「なんだなんだ?」
「え?」
駅員たちはざわめきたっている。
黒髪の背の高い作戦課長は堂々と勝ち誇った顔をしている。
発令所でみる戦略家の顔ではない。
まるで、勝ち誇った顔をしていた。
「さっきまでみてたわよ、アタシ。その人、手なんて触れてないわよ。」
女と彼氏の男は顔を見合わせている。
その表情は困惑の顔になっていた。
前方の席にいたのか。
だが、普段こいつは車通勤のはず。
「葛城君、車はどうしたのだ。」
「修理に出してます。」
「運のいい男だよ、私は。」
ミサトは微笑んだ。
冬月は思わずその表情にドキリとくるものがあった。
これか、碇シンジが好きなのは。
なんとなく少しわかってしまった。
まあ、ずぼらな女なので好きにはなれんが。
「でも、私触られました!!」
女は涙を流してそう言った。
「証拠は?」
「えっと・・・ええーっと。」
「ないじゃん、それに冬月さんはつり革をつかんでいましたよ。だからお尻なんか触ってられる場合じゃないっての。」
そうだ。
その通りだ。
「なんだ、冤罪やろうかよ。」
「哀れなピエロか。」
「きっしょ。」
彼氏の男はミサトの前にでると指を指して言った。
「てめぇ、俺の女をバカにしてんのか!!!この行き遅れババアが!!!」
ミサトはムッとした顔になった。
「いや、それは言い過ぎだろう。」
冬月は思わず言ってしまった。
ミサトは駅員をかき分けると男の前に立った。
「アンタ、この人脅したでしょ。私って、声が聞こえなくても唇の動きで読めるのよね。」
ミサトは言い切った。
冬月は思い出した。
こいつ読唇術が使えるんだった。
そして、小さい声でいった。
「どこのスパイなのか、はっきりいいなさい。時と場合によっちゃアンタの人生無茶苦茶にしてあげるわよ。」
男は冷静にほくそえんだ。
「そこまでいうんだったらさ、おばさん。外にでなよ。」
「でも、ツヨシちゃん。」
男のツレの女は不満気にいった。
「てめぇは黙ってろ!!!」
男は割って入った。
女は震えあがっていた。
ツーブロックの男とミサト、駅員、冬月と女、そして複数の見物客がおりてきた。
「ケンカだ。」
「わーおもしれー!」
「冤罪する奴はよ、不運と踊っちまったんだよ。」
夜の駅のホームはコロシアムになっていた。
「誰の人生を無茶苦茶にするだって?なめたマネほざいてんじゃねぇぞ!!クソアマ!!!」
「お下品ですこと、恰好もお下品。頭の中もお下品。ゲヒンアンドゲヒンですこと。」
周囲の客は大爆笑の渦だった。
冬月も思わず笑ってしまった。
しかし、冬月が見る限りではミサトは口は笑っていたが、明らかに目はキレていた。
男は完全にミサトのペースにのせられていた。
「勝ったな。」
冬月はいつもの癖でそういってしまった。
すると、とうとう男はキレてしまったらしくミサトに殴りかかろうとした。
男は拳を作ると、想像以上に早いスピードでミサトの前に振りかぶった。
「あ、葛城くん!」
冬月は思わず悲鳴を上げた。
シュンッ。
空気を切る音が聞こえた。
ミサトは地面にしゃがみ、よけていた。
流石は葛城くん。
素早い。
「へっへへ、元ボクサーの俺のパンチ避けるとはやるじゃないの。おばさん。」
すると駅員の一人が叫んだ。
「あああああああ~~~~!!!こいつ知ってる!!!元ライトヘビー級のタイトル保持者の渡ツヨシだ!!!」
なに、元プロか?
そうだ、思い出した。
元ライトヘビー級王座の保持者であったが、酒の席で思わず相手を殴り殺してしまったせいで免許はく奪になった渡ツヨシ。
こいつか。
元プロボクサー相手はきついんじゃないか。
冬月の心配はよそにミサトは安心した表情を浮かべていた。
「かかってらっしゃい、ボーヤ。」
ミサトは片手をひらひらとさせて煽っていた。
男は牡牛のように走ると、素早いパンチを連続で切り出した。
シュンっ
また空気を切る音が聞こえた。
しかし、相手はボクサー。
ミサトも動きを避ける事しかできないようだった。
「勝てるのか?」
冬月がそう言ったその時だった。
ボクサーの男はパンチをミサトの顔に当てた。
まずい、あれは死ぬ。
ましてや男女差がある。
相手は強すぎたのか。
「葛城くんっ!!!」
冬月は悲鳴をあげた。
だが、目を凝らすとミサトは男の腕をつかんでいた。
そして、ジャンプして飛び上がると両足で男の腕を挟み、締め上げるとそのまま地面に倒れ込んだ。
その動きはボクサーの男より早かった。
冬月はその技を知っていた。
「腕ひしぎ十字固めか!!!」
ミサトの目は兵士のそれになっていた。
オーディエンスは湧き上がっていた。
ツヨシと名乗る元ボクサーの顔は苦悶の表情に染まりあがっていった。
「う、うごあああああああああああおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
悲鳴をあげると地面にのたうち回りはじめた。
顔は青くなっていた。
「折るわよ、降参しなさい。」
ツヨシは顔を青くした。
そして、ツヨシの余った片腕は地面を叩いた。
「今度こそ勝った…。」
冬月は思わずつぶやいた。
ツヨシは腕を抑えながら地面に倒れ込んだ。
「これでも軍人なのよ、甘くみるんじゃないわ。」
オーディエンスは歓声を上げていた。
駅員は倒れた男に駆け寄ると、すぐさま病院に駆け込んでいった。
ミサトは冬月の方に近づくと、微笑んで敬礼をした。
「ご苦労だったな、葛城くん。」
「あの、反省文…渡そうと思って追いかけちゃいました。」
「あ、反省文?」
「ええ。」
冬月の手元にくしゃくしゃになった原稿用紙6枚が手渡された。
「くしゃくしゃじゃないか。」
「えっ?ああ・・・すみません。」
冬月は笑うと、ミサトの肩を叩いた。
「今回のこれで許しておくよ。」
冬月はそう言うとほくそ笑んだ。
やがて、駅員たちと保安部員の事情聴取でこの元ボクサーはいわゆる反ネルフの市民団体に雇われたボクサー崩れのチンピラであったことがわかった。
女は男の彼氏で、冬月が以前からこの電車に乗っていることなどから彼を付け狙い痴漢冤罪をでっちあげとうとしていたのだ。
その日以降、冬月はミサトに対する評価が少し変わった。
ずぼらな作戦課長から、やればできるけどずぼらな作戦課長に。
これからもちょくちょくカッコイイミサトさんの話を描きに来るかもしません。
続編はやったほうがいいですか?よくないですか。
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やったほうがいい
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やらなくてもよい