ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話   作:井上ああああ

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ミサトさんの絶体絶命

シンジとコンラッドの戦いから1年がたった。

アスカは新しく創設されるEU支部の設立に向けて、加持とともに旅立った。

久々にシンジとミサトはペンペンを加えての2人と1羽の生活になった。

 

シンジももう今日、卒業式を迎えたのであった。

ミサトは残念ながら出張でこれなかったが、代わりに冬月とリツコ、なぜか青葉も来ていた。

冬月の目には涙が流れていた。

二人には辛い時期に勉強を教わって感謝している。

 

高校は第三新東京市内の高校へと進む予定だった。

第三新東京もようやく復興が始まり、疎開していた人間の多くが戻ってきていた。

ケンスケとヒカリもその戻ってきた人の一人であった。

戦いは終わり、日常の日々が続いていた。

 

ケンスケはシンジたちと違う高校に進学することが決まっている。

アスカに完全にホレてしまった彼はドイツ語を勉強し、いい大学に入る予定でいるらしい。

超エリート進学校に行くそうだ。

 

シンジがネルフ本部に行くこともめったになくなった。

また、2年以内にネルフからヴィレに名前が変更になるという事も決まったらしい。

 

しかし、何かあったときのためにもエヴァ初号機と零号機・四号機は日本に置かれることとなった。

リツコのいうところでは、恐らくエヴァを独自に開発して悪用しようとする悪人たちが多くいるらしい。

 

そういったものに対抗するためエヴァは必要になるのだ。

 

卒業式を終えたシンジとケンスケはいつもの通りを歩いていた。

 

「平和だよなあ、シンジ。」

 

友人のケンスケはふと言った。

ケンスケはアスカにすっかりホレているらしい。

アスカはキモメガネといって敬遠しているが、SNSでのやり取りはなんだかんだでしてくれるそうだ。

 

「ああ、そうだね。」

 

「トウジもそばにいればな…。」

 

ケンスケは惜しそうに言った。

 

トウジ、あの悪党の餌食になった。

そして、父さんも間接的とはいえ餌食になった。

 

「なあ、シンジ。高校が違うところに行っても俺たちは友達でいようぜ。」

 

「ああ。」

 

「あとそれからついでにさ…。」

 

ケンスケが顔を赤くしながら尋ねた。

 

「アスカ、俺にくれねえ?」

 

「いや、ボクは彼女の所有者じゃないから…。」

 

 

そんな二人が会話している矢先だった。

 

「おい、シンジ…。」

 

ケンスケは声を出した。

だが、手遅れだった。

そこには5人の不良がいた。

不良の一人はシンジにわざと肩をぶつけると、地面に転がした。

 

「いでっ!・・・」

 

シンジはしりもちをついた。

 

 

「痛いじゃないか!」

 

「やめろシンジ!」

 

 

 

ケンスケは震えていた。

だが、シンジは怯えていなかった。

 

 

「どうしたのケンスケ。」

 

「あ、阿久津先輩がいる…。」

 

「阿久津?」

 

「知らないか?この学校はちょっと前まで阿久津先輩が支配していたんだ。いなくなってみんなのびのびしてたんだ。中学生だったけど、戦自の兵士6人病院送りにして退学になったんだ…。近所の空手道場で主将をやっているんだよ。」

 

 

不良の中でも一際大きい阿久津と呼ばれる男はやってきた。

まだ高校生ぐらいだが、身長180㎝は下らない巨漢だ。

 

「相田、久しぶりだなァ…。」

 

 

阿久津はケンスケの肩を力強くもつと、自分の側によせた。

 

「なあ、相田。ジャムパン買ってこい!ジャム抜きで!」

 

 

シンジは思わず突っ込んでしまった。

 

 

「それ、ただのコッペパンじゃん。こんなの無視していいよ。」

 

 

阿久津はシンジの存在に気が付くと睨みをきかせた。

 

 

「お前さっき、俺の後輩に文句ありそうなツラしてたよな?なめてんのか?」

 

 

「し、シンジ…やめろ!」

 

 

ケンスケは震えていた。

シンジは一蹴した。

 

 

「なめてるよ。」

 

 

阿久津は右腕で大きな拳を作ると、シンジにめがけて殴りかかろうとした。

その矢先だった。

 

シュッ。

 

空気を切る音だ。

と、同時にシンジには赤いジャケットの腕がみえた。

その腕は、阿久津の右腕をつかんでいた。

 

 

「ミサトさん。」

 

 

シンジは振り返った。

ミサトは鬼の形相で立っていた。

阿久津の体は動かなかった。

 

 

「なにしてるの?」

 

 

「おい、ババア離せ!」

 

 

阿久津は雄たけびを上げた。

 

ぴきっ

 

 

ミサトは阿久津の腕をつかみ、力づくで引っ張ると自身の腋の中に誘い込み肩ごと締め上げ始めた。

阿久津の固く鍛え上げられた体はビキビキと音をたて割れそうになっていた。

 

 

「あ・・・あぎゃ!!!腕が・・・・。」

 

 

「今から10秒以内に折るわよ。」

 

 

「い、いひっ!!!」

 

 

ミサトはふと周囲を観た。

所詮不良の塊だ。

まるで、一番強い相手をへこませれば自然と戦意を喪失させる。

 

 

「ミサトさん、もうやめてあげて。」

 

 

シンジはふと言った。

ミサトはため息をつくと、阿久津の腕を離した。

阿久津は痛めた肩を抱えると、そのまま後輩たちに抱えられ逃げていった。

 

 

「二人とも、大丈夫だった?」

 

ミサトは笑顔でそういった。

シンジは少しツンとした表情でみた。

 

これるなら来てほしかったのに。

 

「仕事じゃなかったの?」

 

「早く帰れたからそのままきちゃった、遅れちゃったかな。」

 

「もういいよッ!本当大事な時にはいつもきてくれないんだからっ!」

 

すると、ミサトはシンジを両腕で包み込むと優しく自身の胸の中で抱き寄せた。

シンジは顔を紅潮させた。

 

当たってる!!

ミサトさんの柔らかいおっぱいが僕の顔に!!

 

 

「み、ミサトさん!!!や、やめてよ!!は、恥ずかしいよ!」

 

 

「イヤ…シンジ君の卒業式。あたしもみたかったの。」

 

 

「く、苦しいよ!!」

 

 

ミサトはシンジを抱き寄せたまま離そうとしなかった。

シンジは必死でミサトの背中をつかもうと放そうともがいたができなかった。

 

っていうか、ミサトさん。

もしかして、わざとおっぱいを押し付けてない?

 

シンジは思わず言ってしまった。

 

 

「そんなことよりも、胸!おっぱい!!!!」

 

 

「おっぱいがなに?」

 

 

「顔に当たってる!」

 

 

「あててんのよ。」

 

 

やっぱりこうか!!

最近、ミサトさんはスキンシップが過剰になっている。

アスカがいたときはまだセーブしていたのに…。

最近は特にこうだ。

 

 

 

「葛城くん。」

 

 

声が聞こえた。

ミサトはようやくシンジを解放して、背後にいる男の声に気が付いた。

 

 

「冬月司令…。」

 

「なんというか、君はそのスキンシップが過激すぎではないかね。そのようなことをするのは我が組織の恥晒しというか。シンジ君が恥ずかしがっている。そのハレンチはやめた方がいいと思うが。」

 

 

ミサトは黒いスーツを着た冬月の声を聴くと、シンジを解放した。

 

「ううう…。」

 

シンジはうめき声をあげると地面に倒れそうになった。

和服を着ていたリツコはシンジを優しく支えた。

 

「本当に手を出したら私たちが引き取りますからね!」

 

「り、リツコまで・・・。」

 

「そうなったら、俺はミサトさんに引き取られたいなあ。あ、イヤ…そんなわけじゃないんだけど!とりあえず…。てっへへ。」

 

ケンスケはそう言ったが、周囲の全ては無視した。

冬月は眉間に皺を寄せると腕を胸でくみながらさらにつづけた。

 

「シンジ君の将来を考えたまえ。」

 

「うう・・・うううう・・・。」

 

ミサトは肩を落とした。

リツコは怒りながらミサトに指を指した。

 

「本当に、いい加減になさいッ!!!本気でこっちで彼を引き取りますから!!!」

 

リツコがさらに怒号を浴びせようとしたその矢先だった。

 

「もう大丈夫だよ、リツコさん。僕はいいんだ。だからいいんだよ。」

 

「シンジ君。」

 

「ミサトさんは本当にずぼらでどうしようもない人だ。僕がいないと家事もできない人だ。」

 

 

シンジは俯いて小さい声でいった。

 

 

「だから、ボクが嫁にするんだよ。」

 

 

ミサトは先ほどのシンジより倍顔を赤くした。

両手を大きく振るうとシンジの肩をつかみゆさぶった。

ケンスケとリツコは思わず顔を見合わせた。

 

 

 

「し、しししし・・・シ!?シ!!!シシシシシシシンジくんんん????!!!!なななななななにに!!!いってるのよ!」

 

 

「ダメ?」

 

 

「いいけど、こんなところで照れちゃうじゃない…。」

 

 

「さっき僕を照れさせたろ。その仕返しだよ。」

 

 

「し、シンジのぶわっかっ!!!」

 

 

「ずぼらミサト!」

 

 

「お、大人を呼び捨てにするなっ!」

 

 

「へへへ・・・今度またいってやろ!」

 

 

冬月は呆れると、すごすごと帰っていった。

 

 

「また、恥をかかせおって・・・。」

 

そう、思わずつぶやいた。

リツコはそんな冬月を追いかけると同じく去っていった。

ケンスケは呆れて笑うと、そのまま家に帰っていった。

 

バス停の中、洞木ヒカリは一人で卒業証書を持っていた。

この1年間色々あった。

人を愛した、そしてその人は悪人に利用されて死んだ。

一度街を離れたが、ようやく戻ってきた。

 

 

「あ、ここでおりるんだった。」

 

ヒカリはボタンを押し、硬貨をいれるとすぐにおりた。

一通りも元に戻ってきたようだ。

街はにぎやかそのものだった。

 

そんな時だった。

人ごみのなかで目立つ大男がいた。

 

 

 

ヒカリはゾッとした。

愛したトウジの仇のような大男だった。

しかも、外国人。

 

だが、よくみるとコンラッドとは違う。

明らかにあいつよりも歳はいっていた。

見た感じ50代半ばだろう。

片手もないのか、黒い義手をしている。

さらにいえば、片目を失っているのか眼帯をしていた。

 

だが、体格がすごく大きい。

あのコンラッドよりも少し上かも。

 

だが、片腕片目だけで大きな荷物をもっている男性はややしんどそうにみえた。

 

ヒカリは思わず声をかけた。

 

 

「あの、お荷物持ちましょうか。」

 

 

なんで日本語なのよ!

でも、こういう時英語でなんていえばいいんだろう。

すると、外国人の男性は微笑んで言った。

 

 

「助かるよ、ありがとう。ホテルまでついてきてくれたら助かるな。」

 

 

男はカバンの一つを手渡した。

 

 

「日本語がお上手ですね。」

 

 

「10代のころはね日本にいたんだ。嫁さんも日本人だったからね。」

 

 

「そうなんですか。」

 

 

だから日本語が上手なんだ。

コンラッドとは違い、優しくていい人だ。

ヒカリは思わず怒っていない時の父を思い出した。

 

 

「今でも漢字はよくわからないけどね。」

 

 

「日本人でも難しいって人はいますよ。」

 

 

ヒカリは存在しない男の義手の存在に気が付いた。

 

 

「ああ、これ気になるかい。これはね義手なんだ。中々世間じゃ売ってない軍お手製のものなんだよ。」

 

 

「軍人だったの?」

 

 

「そうだよ、この右腕もなくなった右目も全部全部戦争で失ったんだ。私はね、親子代々軍人の生まれだったんだ。アメリカはそうなんだ。軍人の家で育ったものは軍人か傭兵になる。手榴弾が当たってね、私の手と目はなくなった。弟と一緒にね。」

 

 

ヒカリは思わず顔を伏せそうになった。

この人はどれほどつらい想いをしたんだろう。

 

 

「だからね、戦争はやっちゃいけないんだ。こんなことを傭兵だった私がいうのもなんだがね。」

 

 

確かにそうだ。

戦争でこの人は多くのものを失ったんだろう。

 

 

「あの、日本にはどうしてこられたんです?」

 

「それはねここに友人が住んでいる。彼女に会うためさ。」

 

「女性なんですか。」

 

「うん、古い友なんだ。」

 

 

二人は気が付くとホテルの前にたどり着いた。

 

 

「ここでいい。」

 

 

ヒカリはカバンを手渡した。

 

 

「助かったよ。名前はなんだね?」

 

「洞木ヒカリです。」

 

「覚えておくよ、また会うかもしれない。ここにしばらくいるからね。」

 

「おじさんのお名前は?」

 

「アーノルド・ウィルソンだ。」

 

「さようなら、ウィルソンさん。」

 

「さようなら、洞木さん。」

 

 

ヒカリは手を振ると、そのまま去っていった。

アーノルドは嘘をつかなかった。

戦争で手と目を失ったこと、妻は日本人だったこと、この義手は軍お手製のものだということ。

全ては本当だ。

そして、古い友人に会うことも。

復讐をするためには会わなきゃいけない。

 

 

 

ふとアーノルドは気が付いた。

背後に雇った暗殺者がいる。

 

 

「あの娘に手を出すことは許さん。」

 

 

「コンラッドなら手を出したはずだぜ。」

 

やせ細った男はそう言った。

この男の名前は蛇島コウイチ。

蛇を使い、暗殺を行う奇妙な男だった。

 

 

「ヤツと私では違う。」

 

「でも、人質はとるんだろ。」

 

「それは私が決めたヤツだけだ。それ以外の人間を巻き込むことは許さん。もしも巻き込めば貴様をここで殺す。」

 

「くっくっく、それも面白いと思ったんだがな。」

 

 

ウィルソン家は代々傭兵や軍人として生きていた。

アーノルドと弟のロビンもそうだった。

 

アーノルドは何年前に南沙諸島で起きた中国とベトナムの戦争の際に、中国側に雇われた傭兵部隊として国連軍を相手にした。

やがて、国連軍や戦略自衛隊の介入を招き中国側は不利となった。

 

戦略自衛隊の連中は相手にする価値もない雑魚の集まりだった。

 

だが、その時、ミサトはいた。

国連軍の側として。

 

そして、傭兵部隊を率いていたアーノルドと弟はミサトたちの部隊と交戦した。

ミサト以外の全てを殺したはずだった。

 

しかし、ミサトはたった一人でも戦った。

 

あの執念・維持・プライド…女ではない。

まさしく鬼だった。

 

ミサトはだしぬけに手榴弾を放り投げた。

その手榴弾はアーノルドとロビンを巻き添えにして吹き飛んだ。

 

 

ロビンはそのまま死んでいった。

アーノルドの傭兵部隊も壊滅になった。

 

 

弟ではあったが、年齢は20歳以上離れていた。

まるで息子のような存在だった。

幼馴染と結婚をするはずだった。

父は何度も女性とわかれを繰り返した。

父とは言えぬ輩だった。

 

将軍であったが、非道な輩だった。

最後は老人ホームでのたれ死ぬことになった。

 

アーノルドの母も捨てた。

母は自ら命を絶ってしまった。

 

 

母は違えど血は絶てない。

絆も絶てない。

 

 

だからアーノルドはロビンを父として兄として育てた。

 

 

 

 

それが、死んでしまった。

 

 

魂の抜け殻になったロビンの遺体をもったアーノルドは大いに泣いた。

 

 

その時自分の右目と右腕がなくなっていることに気が付いた。

やがて、アメリカ政府に引き取られたアーノルドはその腕を義手に変えた。

超合金製の物、5トンの物を持ち上げダイヤモンドすらも引き裂く。

 

この義手でミサトの脳味噌をぶちまけてやる。

 

それがアーノルドの目的だった。

 

 

この腕の痛みは失った心の痛みだ。

 

 

 

「飯を食いに行く。」

 

「わかったよ。ボス…。」

 

 

アーノルドは蛇島に荷物を渡すとホテルから去っていった。

彼はブラブラと歩いた。

ふと、夕刻から夜になっていた。

一通りも少ない暗い道に差し掛かった。

 

 

「あの女、マジでムカつくぜ!」

 

「レオン君も女にやられたんすか。」

 

「阿久津もか、マジで許せねえな。」

 

 

阿久津とレオンと名乗る男二名はアーノルドの存在に気が付いた。

 

 

「おう、おっさん。観光客か?日本の礼儀ってもんを教えてやろうかコラ?」

 

 

 

褐色のレオンはアーノルドに近づくとそういった。

アーノルドは睨むと冷たく言った。

 

 

「汚い顔を近づけるな。」

 

 

「あンだと、この野郎!!!」

 

 

レオンは拳を構えるとアーノルドの前に突き出した。

アーノルドは超合金製の義手ではない左腕を持ち上げると、素早くレオンの拳を捌いた。

 

 

「遅いな。」

 

 

そして、余った超合金製の義手を使いレオンの顔を素早く惚けなく殴りつけた。

 

ゴキャッ。

 

レオンの体は宙に浮かぶとそのまま地面に倒れ伏した。

みていた阿久津はレオンのそばにかけよった。

 

 

「く、クビがおれている…死んでいる!」

 

 

こいつやばい、バケモノだ!!!

 

 

 

「やってしまったか、まあいい。目撃者は死んでもらおう。」

 

 

アーノルドは義手で阿久津の頭をつかむとそのまま持ち上げた。

 

 

「やめ…」

 

 

 

阿久津は悲鳴をあげた。

やがて、べきっくしゃという音が響いた。

辺りは血で溢れた。

阿久津は苦しむことすらなく頭部を破壊されてしまったのだった。

そして、死を迎えた。

 

アーノルドは死体をそのまま無造作に捨てると、そのまま去っていった。

 

 

 

ミサトの部屋。

そこにはシンジとペンペンがいた。

コンフォートには、最近新しい住民が増えた。

前のようにバカ騒ぎはできない。

本当はペット禁止であったが、ミサトの要望でペット可となった。

 

ふとバルコニーにミサトはいた。

 

「ミサトさん。」

 

シンジはふと呼び掛けた。

バルコニーでビールを持ちながら夜風にふけているミサトはさっそうとシンジには見えた。

 

「なあに。」

 

「昼間いったこと、ボク本気ですから。」

 

 

ミサトを嫁にもらう。

ミサトはそれでもかまわない。

むしろ、そのつもりだ。

 

 

「ええ、待ってるわ。私もその時まで。」

 

「だから…僕の前ではせめて下着ぐらいはつけてよね。」

 

 

そう、ミサトは風呂上りでバスタオルしか羽織っていなかったのだ。

ミサトはシンジに微笑むと胸を強調してほくそ笑んだ。

 

 

「なーんでこの格好してるか、シンちゃんわかんないの?」

 

「え?」

 

「みてほしいからよ、あなたに。」

 

 

 

シンジは顔を赤くすると、ミサトに背を向けた。

 

 

「本当ずぼらでバカでマヌケでだらしない人なんだからっ!僕以外に誰もミサトさんをお嫁になんかもらわないよ!」

 

「はいはい。」

 

 

「もう、ボク買い物いってきますからっ!服は着てよね!ふんっ!」

 

 

「いってらっさい。」

 

ミサトはシンジが見送るのをみると、目つきを細めた。

ドイツにいる加持から情報が入った。

アメリカからある男が来る。

そいつはミサトに恨みを持っている。

 

一人だけ心当たりがあった。

最近シンジにスキンシップをとるのは、彼にだけは安定してほしいから。

彼を傷つけることは絶対にさせない。

したくない。

 

そして、わかっていた。

もしかしたら、自分は死ぬかもしれない。

 

なぜかそんな気がした。

その前にシンジにできる限り交流をとっておきたい。

 

 

「なにか嫌な予感がする。」

 

 

ミサトは急いで服を着た。

彼を失いたくない。

 

 

シンジはエレベーターから降りると、いつものコンビニに向かおうとした。

その矢先だった。

 

 

「なあ、坊や。」

 

シンジは振り返った。

そこには白人の大男がたっていた。

 

 

「お、お前はこ、コンラッド!?」

 

「違う、俺はアーノルド・ウィルソンだ。お前を攫いに来た。」

 

 

アーノルドは義手ではないほうの腕を振るうと、シンジの腹部に突き刺すように刺した。

 

 

「うっぶ!」

 

 

シンジは腹部の痛みで震えるとそのまま意識を失った。

アーノルドはそのままシンジを片手で抱えると、そこから去ろうとした。

その矢先だった。

保安部の職員数名が銃をもって追いかけてきた。

 

「なにをしている!」

 

 

アーノルドはほくそ笑んだ。

 

 

「張り子のトラ上がりのゴミどもが…。」

 

 

職員が銃を撃つより先にアーノルドは動き、職員たちをその義手を使い一人また一人と血祭にあげていった。

 

 

「貴様らなど前菜にもならん。」

 

 

 

アーノルドは背中を向け、職員たちの死体を無視しようとした。

 

 

「待ちなさいッ!!!」

 

背中ごしに女の声が聞こえた。

この声、聞き覚えがある。

葛城ミサト。

アーノルドは余裕の表情から憎悪の表情に変わった。

 

 

「お、お前は…!!」

 

ミサトは愕然とした。

こいつを知っている。

まさか、きたのか!

 

 

シンジには黙っていたが、もう二度とシンジを攫わせないようにシンジが外出するたびに追いかけていた。

もう二度と手放したくないから。

 

 

そんな矢先だった。

 

大男がシンジ君を攫おうとしていた。

そして、ミサトはアーノルドの顔に見覚えがあった。

かつて南沙諸島での紛争に参加した際に、見た顔。

名前はアーノルド・ウィルソン。

 

 

 

「久しぶりだな。お前のせいで奪われた弟の恨み、忘れはせんぞ。」

 

 

アーノルドは義手のついた腕の剛力でマンホールの蓋をつかむと、そのままフリスビーのように放り投げた。

 

 

「なんてパワー。」

 

 

ミサトは0.5mの差でマンホールの蓋をよけた。

うまくよけなければ顔面に当たっていた。

やがて、投げられた蓋はコンビニの近くにあった車のエンジンに突き刺さった。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

舌打ちをするとミサトは踵をかえしてそこから離れた。

 

 

ボォオオオオン!!!!

 

 

車は爆発音とともに吹き飛んだ。

やがてその破片と爆炎はコンビニを巻き込んだ。

その騒ぎに乗じてアーノルドは姿を消した。

 

 

ミサトは気が付いた。

手遅れだった。

 

 

「なんてことなの…。」

 

 

また誘拐された。

シンジ君が。

今回は私の不手際だ。

 

数時間後、ミサトはネルフ本部に向かった。

冬月は昼間とは比べ物にならない、怒りに震えた顔でミサトにげきを飛ばした。

ミサトもわかっていた。

今回ばかりは自身のミス。

 

一緒についていけばよかった。

 

そうすれば、こんなことにはならなかった。

 

ミサトはいらだった様子で自身の執務室へ向かった。

 

 

「シンジ君。」

 

 

攫われた。

今回はコンラッドとは違う。

愉快犯の悪戯ではない、真の戦士の策略。

 

だからこそ恐ろしい。

 

シンジ君はヘタすれば殺されるかもしれない。

 

 

「葛城さん。」

 

 

部下の日向マコトの声が聞こえた。

 

 

「シンジ君の話は聞きました。」

 

「私のせいね。」

 

「違います。」

 

「いえ、私のせいよ。攫った男に見覚えがある。私が戦地に行った時にヤツの部下と腕を奪った。あいつは復讐に狂った鬼なの。まるでかつての私のように。」

 

復讐鬼。

かつての自分そのものだ。

使徒への復讐、セカンドインパクトへの復讐それに満ちていた。

それを克服するために、父を超えるためにいった戦場で私は誰かを傷つけていた。

 

 

「復讐に狂えば、結果それで傷つく人によってまた自分も…復讐される。因果応報よ。」

 

シンジ君が復讐を忘れさせてくれた。

彼の笑顔と皮肉に癒されていた。

その結果、彼は攫われた。

全て私のために…。

 

 

ふと、ミサトのケータイ電話に着信音が鳴り響いた。

 

 

「シンジ君のケータイだわ。」

 

ミサトはすぐさまとった。

良かった、無事だったのね。

 

 

「シンジくんっ!」

 

「否。」

 

「アーノルド!?」

 

「そうだ、貴様は今から送る座標に来い。一人でこい。俺はこれ以上無駄な犠牲を出したくはない。さもなくばこのガキを殺しお前の家の前にその首を晒してくれる。」

 

「そうはさせない。」

 

 

アーノルドは電話を切った。

ミサトは怒りに震えた。

 

無駄な犠牲を出したくない?

何様のつもりだ。

 

自分がもしも、一緒にいけばあるいはそこで終わった。

だが、今日コンビニにいた店員も客も巻き添えになり死んだ。

相手は復讐に狂った腕半分を機械に変えた文字通りの狂戦士。

 

許しはしない。

送られた座標は第三山の奥深く。

破棄されたキャンプ場だ。

 

 

「ミサト、話は聞いたわよ。」

 

「リツコ…。」

 

「アーノルド・ウィルソンといえば、かなり悪名高い奴よ。通常の人間が数パーセントしか使えない能力を奴はフルで使うことができる。おまけに片腕は超合金でできた腕。ヤツは強化人間の上に片腕サイボーグの生きる暴走マシンよ!あなたに勝てる?」

 

「やるだけやるわ。」

 

「アンタ本気なの?」

 

「いつものやつ、持っていて。」

 

 

ミサトは素早くペンダントと鍵をリツコに渡した。

 

 

「あとリツコ、日向くん…これ終わったらまた遊びにいきましょっ。」

 

 

リツコは何かゾクりと感じるものがあった。

ミサトの目には死がみえていた。

 

 

「ミサト、あなたまさか…本当に。」

 

「あーあアスカのいうとおり、カーペット変えればよかったなあ。じゃあね。」

 

ミサトは冗談めかしてそういった。

リツコには何か嫌な予感がした。

もしかして、本気で死ぬんじゃないか。

 

 

「死なないでね、ミサト。」

 

 

リツコはそういった。

ミサトも聞いていた。

学生時代からの友人、彼女にも迷惑をいっぱいかけた。

せめて、彼女だけでも幸せになってほしい。

 

 

ミサトは送られた座標をもとに、愛車を走らせた。

山々を越え、車を抜かした。

 

近くで渋滞が起きているのだろう。

 

ふと、転がる車がみえた。

その先に轢かれた鹿の死体がみえた。

 

 

ミサトはカーラジオをつけた。

 

 

『死神が待っているぞ…。』

 

 

「えっ」

 

 

『グリムリーパー2…ついに公開!』

 

 

ホラー映画の予告編か。

くだらない。

ラジオを切った。

ミサトは進んだ。

 

もう、朝日がみえかけていた。

 

 

やがて、数時間後目標地点の近くにつきかけたことに気が付くと車を停めた。

草原があたりをつつんでいた。

敵の奇襲はいつくるかわからない。

ミサトは匍匐前進をして、しゃがんで進んでいった。

 

そして考えた。

 

 

アーノルドは何をしているだろう。

彼のことは後で知った。

少なくとも、シンジ君を拷問して楽しむ輩ではないと願いたい。

あるいはコンラッドが如く関係ない人間を巻き込み、傷つくさまを楽しむサディストでも…。

 

大学に出てすぐゲヒルンに入った。

リツコとは違い、特殊部隊を経由してだった。

そこで、国連軍の対テロチームに入った。

元々は陸上自衛隊の一つであった。

復讐するためには強くならないといけない、そう思ったから。

 

戦略自衛隊だけでは追いつかないということで私たちの部隊もかりだたされた。

 

そこは地獄だった。

死体は飛び交い、血は噴き出た。

私もなんどかヤられされそうになったがそのたびに追い返した。

 

そこで出会った。

 

 

中国軍に雇われた地獄の傭兵部隊「マーダーズ。」

 

 

彼らを前に仲間の部隊は私を残しみな死んだ。

私を鍛えて部隊を指導した一尉も、そして仲間もすべて。

アーノルドとその弟はすさまじい強さをしていた。

有名であった。

 

皆殺しのウィルソン兄弟。

 

 

相手は数人程度であったが、ことごとく戦自と国連軍のチームは徹底的に打ちのめされた。

私はハンドガンで追っ手を応戦し、手榴弾を投げ逃げる事だけだった。

気が付けば相手の部隊も壊滅していた。

手を失い弟の死体を抱えているアーノルドを見捨てた。

その結果、私は生き残った。

 

 

それが復讐にきた。

さしずめ、死神。

 

 

今ミサトを囲んでいる草原はふと、戦った戦場によく似ていた。

 

そんな時だった。

 

シュルルル…。

 

何の音だろう。

蛇の声だ。

だがおかしい、ここに蛇はいないはず。

 

 

そんな時だった。

 

草むらを裂くような音が聞こえた。

それは素早かった。

あっという間にミサトの足に絡みつき、腰に、肩に…そして首に絡みついた。

 

 

「はうっ!」

 

 

ミサトは小さい悲鳴を上げると地面に倒れた。

彼女の体はダークグリーンの鱗をした蛇に絡みつかれていた。

大きな蛇だ。

7mはくだらない。

蛇はミサトの首と胴をすさまじい力で絡みつき、締め上げた。

 

 

「くくく…。」

 

 

男の笑い声が聞こえた。

草むらで蛇に縛り上げられているミサトをまるで見下しているように男はたたずんでいた。

 

「それはね、アナコンダっていう蛇なんだ。俺はそいつに独自の訓練をさせていてね。君のような美しい女性を締め上げ殺すのを楽しんでいるんだよ。俺は。」

 

男はそういうとカメラを回していた。

変態サディストか。

 

 

「ああ、自己紹介を忘れていた。俺の名は蛇島コウイチ。まあ、君が二度と思い出すこともない。絞め殺されて死ぬのだから…。」

 

ミサトは蛇の体で首と胴、ふとももを締め上げられて行くのを感じた。

このままでは殺される。

力は想像以上に強い。

 

すると蛇が大きな口をあけミサトの頭に近づいた。

 

お前に食われるぐらいなら私がお前を食ってやる。

 

ミサトは手を振りかざし蛇の頭部をつかんだ、そして素早く思いっきり自身の口元に近づけると大きな歯で蛇の首に食らいついた。

 

口の中に吐きそうになるほど蛇の血があふれ出るのを感じた。

 

だが、無視した。

気にするものか。

 

 

「なにっ!」

 

 

蛇島という暗殺者の男は悲鳴を上げていた。

ミサトはそのまま大蛇の首に食らいつく力を強めた。

大蛇の力は弱まっていった。

 

 

「バカ!や、やめろ!なにをする!それは俺の商売道具だっ!」

 

 

ミサトは男を無視して、立ち上がる力を足に取り戻した。

大蛇はやがて、ミサトの首や体から離れていくように動きを震わせた。

ようやくミサトは大蛇から解放された。

 

やがて、ミサトの顎に挟まった大蛇はそのまま事切れて動かなくなっていった。

 

 

「あ、ああ・・・。」

 

 

ミサトは蛇の死骸を口から離すと蛇の死骸をそのまま男に投げつけた。

 

 

「どわっ!」

 

 

男はしりもちをついた。

草むらの泥にまみれながら、男は逃げていこうとした。

だが、ミサトは逃がさなかった。

 

ジャケットからハンドガンをとると、男の足元めがけて銃弾を放った。

 

 

「彼はどこにいるの。」

 

「その先のキャンプ場だ!」

 

「あなたは何なの。」

 

「俺はフリーの暗殺者だ、普段は生物学者をしている。蛇が女を殺すのがたまらなく好きなんだ。それでお前を殺すためにアーノルドって男に誘われた。そこまでしか知らない。頼むよ、殺さないでくれ…。俺は病気なんだ。許してくれ。なあ頼む!!!見逃してくれよぉ!!!」

 

しらじらしい。

ミサトは蛇島と名乗る男のスーツに黒く光るものがみえた。

銃だ。

命乞いをして、背中を向けば撃つ。

悪党らしい姑息なやり方だ。

 

 

「でも、許せばアンタはアタシを殺しに来るでしょ。」

 

ミサトは冷酷に蛇島という男の頭を銃で撃ちぬいた。

蛇島は地面に転がると、そのまま動かなくなっていった。

 

 

銃声は数百m先のキャンプ場にいるアーノルドにも聞こえた。

所詮、あの蛇島は噛ませ犬。

あの男にやられるぐらいなら最初からやらなくてもよかった。

 

テントの中にいるシンジは銃声で目を覚ましたようだ。

 

 

「・・・ここは?」

 

 

シンジの声をアーノルドは無視した。

草むらから朝焼けとともにミサトがやってきたからだ。

ミサトの目は怒りに燃えていた。

 

 

しかし、対照的に冷静だったアーノルドは義手ではないほうの腕でシンジの首をつかむと持ち上げた。

 

 

「うわっ!」

 

 

そして空中高くつきだした。

 

 

「は、離せ!」

 

 

アーノルドは力を強めた。

 

 

「ううっ!!!」

 

 

シンジは自分の首に絡みつくアーノルドの指を解こうとした。

だが、できない。

強すぎる。

コンラッドは遊びが多すぎたが、こいつは違う。

無駄な動きはしない。

確実に殺そうとしている。

 

 

「がはッ!!!」

 

 

「銃を捨てろ、このガキの首を砕くぞ。俺は本気だ。遊びじゃない。」

 

 

ミサトはジャケットの中に構えていた銃をつかむと地面に放り捨てた。

アーノルドはその様子をみるとシンジを解放した。

草むらの中でシンジは地面に倒れた。

 

「シンジくんっ!!」

 

 

ミサトは駆け寄るとシンジを膝の上で抱き起した。

シンジは目を覚ますと、ミサトの目をみつめた。

ミサトは安堵の表情を浮かべると、シンジの頬をやさしく触った。

 

 

「ミサトさん、無事だったんだ。」

 

 

こんな目になっても私の心配ばかり…。

 

 

「ごめんなさいっ!シンジくん!ごめんなさいっ!」

 

 

ミサトは謝った。

シンジは微笑んだ。

 

 

「これが終わったら洗濯はしてよね。」

 

「うん。」

 

「あと皿洗いも…。」

 

「わかってるってば。」

 

 

その様子をみてアーノルドは激しい憤怒が心の奥底で立ち上がるのを感じた。

 

なぜだ。

俺は家族を失った。

 

お前だけ家族と触れ合うのが許されるのか。

 

 

「ごめんなさいか、私の弟にもその言葉をいってくれるかな。」

 

 

アーノルドの声に気が付いたミサトはみた。

白髪の角刈りと顎髭を蓄えたアーノルドの身長は218㎝、体重は150㎏であった。

コンラッドよりも大きい。

恐らく素の状態でも強いだろう。

 

だが、そうであっても許すわけにはいかない。

 

 

「なにがしたくて彼を巻き込んだッ!!!」

 

 

「復讐だァッ!!!」

 

 

アーノルドはその大きな合金製の義手を振りかざした。

ミサトは危険を感じ、シンジの体を横向きにお姫様抱っこの姿勢で抱きかかえるとそのまま大きく飛び上がった。

そして、森に近づくとシンジをおろした。

 

 

ゴンッ!!!!!

 

 

地面は大きな音をたて軽い地震がおきた。

そして、義手は大きな岩を簡単に砕いていた。

 

 

ミサトはその異様さに震えあがった。

 

コンラッドなんかとは全然格が違う。

 

 

 

「み、ミサトさん…。」

 

「シンジ君、早く逃げなさいッ!」

 

「でも、ミサトさん!」

 

「いいからっ!!!」

 

 

怒りに震える狂戦士アーノルドは雄たけびを上げながら追いかけ始めた。

その動きは素早かった。

あっという間にミサトの背後にたった。

 

上半身の服は脱いでいた。

右の肩から腕にかけてサムサムしい機械と義手が動いているのがみえた。

 

 

 

「貴様はそうやって家族ごっこか?あるいはそのガキに逃避しているのか?!!この偽善者めがッ!!!!許せぬ!!!俺の弟を奪っておいてそれが貴様の態度か!!!!許せぬ!!!許しはせぬぞ!!!」

 

 

アーノルドは大きな義手を振りかざし大木を殴りつけた。

義手のパワーはすさまじかった。

たった一つの振りで8mを超える大木は地面に倒れていった。

 

 

ミサトはシンジの手をつかむと必死で逃げた。

 

 

「逃がさん!!」

 

 

怒り狂った鋼鉄の腕をした狂戦士は大木を次から次へとなぎ倒していった。

やがて、崩れた大木の一つを義手でつかむとまるでボールを投げるように放り投げた。

 

ミサトはシンジをつかむとともに地面にしゃがみこんだ。

 

あの大樹を軽々と破り振り回すパワー。

 

怪物だ。

狂科学が生んだ現代のフランケンシュタイン。

狂気のメカゴジラ。

 

それがあの男。

憎悪と憤怒に狂った怒れる巨漢。

 

「このまま森にいたらまずいっ!」

 

せっかく戻ってきた生態系の生物たちが…このままでは無駄に死ぬ。

そして私たちも。

このままでは…。

 

「そうはいかないわ。」

 

ミサトはそう思い、来た道の逆を行きキャンプ場へと戻っていった。

シンジは震えていた。

使徒でもない、コンラッドでもない。

この世界の生物とは思えない改造手術で狂科学で超人となった男がいたのだ。

 

「あいつはやばすぎるよ…。」

 

「シンジ君、私を置いて逃げなさい。」

 

「やだよっ!!!」

 

「じゃあ、安全なところにいて。私さえ殺せば…あいつの怒りは静まるじゃない?」

 

「ミサトさん?」

 

 

そういうと、ミサトはシンジの頬をつかんだ。

そして、キスをした。

以前した時の大人のキス。

続きは結局していない。

 

これをするということはミサトは死を覚悟している。

 

 

「一緒にいて、楽しかったわ。ありがとう。さよなら。」

 

「なにをいってるの、ミサトさん。」

 

 

 

ミサトは勇気を振り絞った。

 

「来なさい、アーノルド!あなたが殺したいのは私であってこの無害な自然たちではないはずだッ!!」

 

「いわせておけばァ~!!!」

 

アーノルドは一直線に向かってきた。

ミサトは逃げなかった。

そして、構えをとった。

 

雄たけびをあげると、足を振り上げアーノルドの胸を蹴った。

遠くから見ていたシンジはアーノルドの胸に大きな蹴りのあとができているのがみえた。

 

「あいつの腕以外は人間のまま。」

 

 

だが、笑っていた。

 

 

「死ね!」

 

鋼鉄製の義手が動いた。

その義手はミサトの腹部を大きくぶち当てた。

 

 

ゴンッ…。

 

 

鈍い音だった。

 

ミサトは腹部を抑え、地面に倒れた。

そして、気が付けば口から血が出ていた。

骨も折れているだろう。

 

悲鳴をは出さなかった。

シンジを怖がらせたくない。

 

 

アーノルドは義手ではない方の腕でミサトの髪をつかむと持ち上げた。

 

 

「まだ終わらせぬ!断罪だッ!」

 

 

そして1発、二発、3発を繰り出した。

 

 

「ミサトさん…?」

 

 

シンジは思わず声が漏れた。

ミサトは手を震わせながらなんどもなんどもアーノルドをつかもうとした。

シンジにはわかった。

反撃しようとしている。

 

 

だが、4発目5発目を喰らいとうとう動きがなくなっていった。

 

 

シンジは足元に武器になるものを探した。

あのままじゃ殺される。

だめだだめだだめだ。

 

ようやく気が付いた。

ミサトさんが先ほどすてた銃があった。

 

これなら、あいつを倒せる。

 

訓練で勉強した。

 

『目標をセンターに入れてスイッチ』

 

使徒じゃなくてヒトなだけ、できるはずだ。

 

 

ふと、そんな時シンジの耳にアーノルドの声が聞こえた。

 

 

「貴様に奪われて与えられたこの力でお前を殺すと約束した。」

 

 

アーノルドは合金製の腕を使い、力をためこんだ。

そして、片手でつかんだミサトの髪をとうとう離した。

ミサトは膝をつき地面に倒れようとした。

 

もう立ち上がる力も気力もない。

 

 

シンジ君逃げて。

 

ミサトはそう思った。

その時だった。

 

 

アーノルドの義手は空気を切る音とともに、ミサトの頭部にぶち当てた。

 

 

 

 

その瞬間をシンジもみていた。

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

ミサトはとうとう地面に倒れた。

頭部からは血がしたたり落ちていた。

 

アーノルドを朝焼けが包んでいた。

 

大きなため息をつくと微笑んだ。

 

 

「これで終わった。」

 

 

 

パァン!!

 

 

銃声が響いた。

アーノルドはふと、横を向いた。

彼は急いで銃弾をよけようとした。

だが、遅かった。

 

銃弾はアーノルドの胸を突き刺した。

 

アーノルドは自分の胸元をみた。

 

血が流れている。

 

 

「誰だ…。」

 

 

アーノルドは周囲を見回した。

そこにはシンジが立っていた。

アーノルドはほくそ笑んだ。

 

「お前か…。」

 

 

そうか、復讐をもくろむものは復讐によって倒れる。

これも因果か。

すまないな、洞木さん。約束は守れそうにもない。

 

アーノルドは目をつぶった。

これで家族の元に逝ける、悔いはそこまでない。

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 

 

シンジは何発も何発も銃弾を撃った。

アーノルドの頭部と左胸に銃弾は当たった。

気が付けばシンジは全弾を撃っていた。

 

 

アーノルドは微笑みとともに倒れていた。

そして、そのまま事切れた。

 

シンジはアーノルドが倒れたことに気が付くとミサトに駆け寄った。

血だまりの中、ミサトは倒れていた。

目は開いていない。

シンジはミサトを膝の上で抱き寄せていた。

 

 

そんな中だった。

ネルフのVTOL機がたどり着いた。

 

中から日向がのぞいていた。

 

 

シンジは声も枯れていた。

涙は草むらの上に落ちて輝いていた。

 




次回で番外編最終回です。

続編・番外編があるとするならどんなものがみたいですか?

  • アスカと加持を主役にした活躍
  • レイとカヲルを主人公にした活躍
  • ゼーレに代わる抵抗勢力の暗躍
  • 帰ってきたゼーレ
  • 帰ってきたコンラッド
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