ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話   作:井上ああああ

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トウジが参号機に乗る話 後編

深夜1時

洞木ヒカリはベッドで寝かされている。

飢えた男なら年頃の少女を襲いかねない。

 

だが、コンラッドがいる限りそれはない。

 

コンラッドは悪党ではあったが、無益な動物殺し・無駄なレイプはしない。

それは弱者のやることだからだ。

戦時下ならともかく、今やることではない。

 

 

「碇ユイの息子か。」

 

 

コンラッドは思い出した。

 

 

 

 

碇ユイ、ゼーレの有力者の養女。

だが、それは表向きの話。

実はキール議長の養子だった。

 

俺と同じく。

 

誰にでも売る笑顔、その中に底知れぬ野心を持った中々いい女だった。

若いころ、ゼーレの会合でよくあった。

 

 

俺にも笑顔だったな。

 

あのうすら寒い笑顔は大好きだった。

 

俺のことをマーカス君といって。

 

それがゆえにキール議長のお気に入りでもあった。

 

 

俺を越えてゼーレの最高幹部になるんじゃないかともいわれてた。

そして、俺は破門された。

形式上の破門だが、これが黒から白になることはない。

ヤツは俺を残してゼーレの最高幹部になるのは明白だった。

 

 

それは許せない。

俺を差し置いて、それは許さない。

 

 

だが、あいつには生命がどうなるかみたいという夢があった。

バカな夢だが、キール議長の考える事よりはるかにスケールがあって俺は好きだった。

 

 

エヴァ初号機のシンクロ実験をやる際にもあいつは迷っていた。

 

 

取り込まれるってのは、わかってた。

でも怖かったんだ。

息子と夫を残して勝手なことをしていいのか。

 

 

バカなことに俺に相談しやがった。

大馬鹿だ。

 

ヤツは俺を理解できなかったんだ。

世の中には信じちゃいけないやつがいる。

それを「サイコパス」っていうんだ。

 

なぜだか、あの女…ゼーレは破門になったはずの俺とのコネは取り続けた。

同じ養子だったから、それ込みで何か思うものがあったんだろう。

変わってるが、そこが気に入った。

同じはぐれもの同士、気が合ったんだろう。

 

 

だから俺はあいつを後押しした。

 

 

『夢っていうのは叶えるためにあるんだ、ユイちゃん。俺は応援するぜ!』

 

 

そしたらあいつは初号機の中に消えた。

 

俺はせせら笑ったね。

 

ありがとう、クソ女。

ありがとう、バカ女。

そして、さようなら。

 

 

しかし、どうだ…。

 

 

結局キール議長は老いぼれたまま、居座った。

俺は破門されたまま、結局はテロリストとして生きるしかなかった。

老人どもは俺を破門したままだ。

 

理由は狂暴で凶悪だから破壊を行うから。

 

俺は確かに生まれついての悪党だ。

 

だが、それを利用してきたのは誰だ。

どこのどいつだ、ゼーレの連中に俺を否定する資格はない。

 

だからあいつらの計画は破綻させる。

俺を追いやったユイとその家族も許さん。

 

 

思えばシンジの坊やもあいつに似て頑固なんだろう。

 

あいつ、俺を倒すだとよ…。

 

上等だよ、上等。

 

倒してみろよ、俺は人類補完計画でもない別の形で世界を俺のモノにする。

 

ユイもろとも、あいつを殺してやる。

 

あんな奴最初は興味なかった、アメリカや中国にでも売ればなんとかなるだろう。

それでお釣りがくるだろう。

最悪死んでも脳味噌さえあればクローンができる。

その程度にしか思っていなかった。

 

だから最初の誘拐も殺して捨てようと思っていた、そこでナイフでグサッだ。

大したもんだ。

 

そのためにアメリカ政府を抱き込んで、エヴァ量産機の上に立つ最強のエヴァンゲリオンを受注した。

 

それはできるだろう。

 

 

だが、その前に試練を用意した。

 

あいつはそれを乗り越えられないならその程度のモン。

乗り越えたなら上等こいて潰してやる。

 

そして、あいつを支える凄腕兵士の葛城ミサト。

 

あの女にも試練を用意した。

 

あいつを写真でみたとき、胸がギュっとなった。

 

殺そう、こいつは俺に殺されるために生まれてきた。

だが、殺すのは簡単じゃ済まさねえ。

あいつにも試練を与えて、それを越えられるかみてから殺してやる。

 

 

「くくく、碇ユイ…てめえが大嫌いだけど大好きだぜ。」

 

 

 

コンラッドはほくそ笑み、高笑いをした。

 

 

朝。

ミサトは眠っていた。

そろそろ松代で実験の日だ。

アスカとシンジは先に起きて学校に行っているようだった。

 

制服に着替えると、出ようとしたその時だった。

 

 

ケータイの着信音が鳴り響いた。

 

 

『洞木ヒカリ』

 

ああ、前に助けた女の子か。

電話先を交換していたはず。

 

きっとボーイフレンドが心配になって電話をかけたんだろう。

鈴原トウジ、参号機パイロット。

そして、ヒカリの彼氏。

 

10代の少女らしい歳相当の恋心だ。

 

 

「もしもし、葛城です。ヒカリさん、何かしら?」

 

 

「おっはよー、ミサトちゃーん。夜は楽しかったかな?」

 

少女の声じゃない。

この声に聞き覚えがある。

 

 

「コンラッド…。」

 

 

しばらく忘れていた。

あの悪魔のごとき男。

 

 

「覚えてくれていてありがとう、洞木ヒカリは預かった。帰してほしけりゃタイマン勝負だ。場所はアース映画会社跡地、調べて追いかけてきな。誰かひとりでも応援で連れてこい。このかわいい娘さんの命はねえと思え。じゃあな。」

 

 

電話が切れた。

とうとう、ネルフと関係ない人間まで巻き込んだ。

 

 

「外道め…。」

 

 

ペンペンが心配そうに見つめていた。

ミサトは急いで電話を掛けた。

相手は冬月副司令。

コンラッドめ、今度こそ命を絶ってやる。

 

 

ミサトの連絡を受けてネルフ本部はざわついた。

松代に行く予定であったが、一応の伺いをとるためネルフ本部にミサトはすばやくむかった。

 

総司令公務室。

 

 

「葛城くん、君の仕事はネルフの作戦課長であって警察官ではないわかるかね。」

 

 

冬月は苦言した。

正論だ。

だが、許せないことはある。

罪のない子をさらった。

罪は重い。

 

リツコはもう松代に向かってるようだ。

 

 

「洞木さんはチルドレンたちの友人、彼女を失うことは士気に影響します。」

 

 

事実だ。

パイロットの精神が崩れればシンクロ率にも影響する。

 

 

「碇、どうする。」

 

「葛城君、行きたまえ。ただし生きて帰ってこい。」

 

「仕方ないな。」

 

冬月は苦笑した。

ミサトは敬礼をすると、すぐさまたった。

こうなった以上、頼れるのは一人。

ミサトは自分の机の中に家の鍵とペンダントを置いた。

 

コンラッド、もうこれ以上罪のない人を傷つけはさせない。

子供たちを傷つけることは許さない。

 

 

 

 

その頃松代では参号機の起動実験が行われていた。

赤木リツコはミサトが来ないと聞いた。

その理由も。

洞木ヒカリ、確かシンジ君とアスカの友人だったらしい。

関係ないパイロットの友人まで手にかける、あの精神の異常さ…。

 

 

あそこまで行くとマーカス・コンラッドは自分まで狙うかもしれない。

 

 

松代支部は慌てふためき、忙しく動いていた。

 

参号機は黒く、初号機を思わせる装甲をしていた。

 

否、これは装甲ではない。

拘束具。

ミサトやあの子たちを利用して、だまし続ける。

 

これにいつまで耐えればいいのだろうか。

それにしても参号機の実験はうまくいくのだろうか。

 

 

心のどこかでリツコは引っかかりを感じていた。

 

時々リツコにもミサトほどではないがカンが働くときがある。

何か嫌な予感がする。

そういえば、参号機をみたとき変なカビが生えているようにみえた。

きっと整備のミスだろう。

 

だからもっと予算をくれといったのに。

 

リツコは放置した。

しかし、何かモヤモヤする。

テストが先だ。

 

そんな時だった。

 

エラー音が鳴り響いた。

パターンは青色。

 

「まさか、まさか…。」

 

スタッフが慌てふためいた。

使徒に乗っ取られた!?

 

黒い参号機は雄たけび声をあげると、動きを始めた。

第二支部は轟音とともに崩壊を始めていったのだった。

 

 

 

その知らせは学校にいたシンジのもとへも届いた。

使徒。

パイロットたちは発令所に向かうとエヴァ3体に乗り込んだ。

それはいつものことのはずであった…。

いつもと違い、司令部にいるのはミサトではなくゲンドウ。

ゲンドウが指揮をとることになるのだった。

 

 

 

時刻は昼を越え夕方になっていた。

 

 

ミサトは調べた場所にたどり着いた。

アース映画会社、そこにはかつて日本最大の映画館があった。

 

しかし、今はつぶれてしまい誰も買い手がいない。

 

ミサトはゆっくりと向かっていった。

 

あの中国人殺し屋はきているのか。

しゃがみながら前進をした。

 

罠はなさそうだ。

 

ドアを開けると、そこには縛られたヒカリが力なくぐったりと椅子に座らされていた。

ケガはない。

しかし、口はガムテープで巻かれている。

 

あの時のシンジ君のように。

 

後ろにはスクリーンがある。

以前はそこに多くの席があったのだろう。

 

 

そこにはシートは一つしかなかった。

そこにヒカリは座らされている。

 

 

コンラッドは誘拐はするが、むやみやたらに人質を弄ぶわけではないようだ。

だが、人質にとった時点でもうどうしようもない奴なのは間違いない。

 

奥には黒髪、2m超の巨体を持ったコンラッドがいた。

 

 

「よーく来てくれたなぁ…待っていたぜ、ミサトちゃん。」

 

ミサトは銃を取ろうとした。

そんな矢先だった。

 

「ダメだ、銃はやめな。」

 

見抜かれていた。

コンラッドはヒカリの近くによるとナイフを取り出した。

 

「うっ…。」

 

ヒカリの頬元にナイフを近づけるとコンラッドは彼女の臭いを嗅いでいた。

 

 

「こんないい臭いのする娘を殺したくはないなァ…。銃は捨てろ。さもなきゃこのかわいい娘の顔はズタズタになるぜ。」

 

ヒカリは目をつぶり、体を震わせて耐えていた。

泣いてない。

強い子だ。

 

 

ふと周囲を観た。

周りはコンラッドの部下らしい人間がいる。

 

 

 

「部下のことか?心配するな、てめーには手をださねえよ。俺とお前のタイマン勝負だ。楽しみにしてるぜ。お前が生き残らなければこの娘は死ぬ、造作もなく。俺が死ねばそのまんま家に帰ることだな。」

 

 

相手の条件は飲むべきか。

ミサトは脇に構えていた銃を捨てた。

ジャケットも脱いだ。

 

 

「本当にしつこい男(ヤツ)。」

 

 

思わず言葉が漏れた。

するとコンラッドは真面目な顔をしてつぶやいた。

 

 

「ゲームってのはそうでなきゃいかんだろ?」

 

 

コンラッドも手に持っていた銃やナイフを捨てると、上半身の服を脱ぎ筋肉質の巨体をさらけ出した。

まるで古代から蘇った暴君竜のような立派な巨体だ。

こんな相手に勝てるのか。

年齢も、技量も、体格も、経験もおそらく上だろう。

勝てるのか…。

 

 

 

「お前らも手ェ出すんじゃねえぞ!」

 

 

部下はビクッと震え上がった。

こいつは自分の機嫌が悪ければ部下であろうと平気で手に賭けるヤバい奴だ。

ビビるのも無理はない。

 

かつて映画館だった建物は、まるでコロッセウムの闘技場のようになっていた。

 

 

「じゃ…行くぞ。」

 

 

コンラッドは地面をけり上げるように走りだした。

 

速いっ。

身長200m以上あるのにどこからこの素早さはでるのだ。

 

そして、素早くサイドキックを繰り出した。

 

ミサトはそれを避ける事しかできなかった。

 

コンラッドのサイドキックはコンクリートの壁を突き破っていた。

 

 

「避けるなんてひどいぜ、ミサトちゃん。これでも俺はまだ足のケガは痛むんだ。容赦ぐらいしてくれよなー!」

 

 

壁には大きな穴が開いていた。

なんてパワーだ。

あれを喰らっていれば間違いなく私は死んでいる。

ミサトはゾッとした。

 

しかもコンラッド自身はずいぶんと平気そうだ。

 

足のケガ云々もジョークだろう。

 

 

ミサトも負けじと走り始めた。

そして、大きく地面を飛び蹴り上げるとコンラッドの顎めがけて勢いよく、膝を当てた。

顎がおれるはず…。

 

コンラッドは大きくたじろいた。

 

 

「中々やるじゃねーか!」

 

 

だが、まだまだ余裕という表情だった。

 

 

「ちっ…。」

 

ミサトは舌打ちをした。

素早く、ミサトは続けて同じアゴの部分に掌底打ちを叩きつけた。

 

しかし、効果はみられない。

 

 

「もうおしまいかな?」

 

コンラッドは余裕という表情だった。

この男、強い。

ミサトも並み居る男を打ち倒してきたが、この男は今までのヤツとはわけが違う。

 

 

「次は俺からだ。」

 

コンラッドはその両手でミサトをつかみ持ち上げた。

そして、その剛腕でミサトの腹部を締め上げ始めた。

 

 

「ぐうっ・・・・!!」

 

 

これはベアハッグ!!

プロレス技のベアハッグだ!!

 

 

ミサトの背部に強烈な激痛が走った。

 

 

「うわああああああああっ!」

 

 

ミサトは悲鳴をあげ、激痛に耐えた。

意識が漏れていく。

苦しい。

 

 

「いい声で啼くなァ…。」

 

コンラッドは余裕だ。

 

 

 

ヒカリは二人の乱闘をただ、みつめるだけしかできなかった。

以前ヤクザ崩れを数人まとめてのしていたミサトが…苦戦している。

相手は強いんだ。

 

 

ミサトは薄れていく意識をなんとか支えながらコンラッドの髪をつかんだ。

そして、コンラッドの頭に頭突きの一撃を食らわした。

 

 

ゴンッ!!!!

 

 

鈍い音は周囲に響いた。

コンラッドは頭を抱えて、うめき声をあげながら地面に崩れた。

チャンスだ。

 

ミサトは倒れたコンラッドの側頭部めがけて強烈な延髄斬りを繰り出した。

 

 

「ぶふぉっ!」

 

コンラッドは悲鳴を上げ、頭から血を出していた。

チャンスだ。

そう思って、追撃を食らわせようとした矢先だった。

 

シュッ。

 

空気を切る音が聞こえた。

手だ。

コンラッドのリーチ200㎝以上ある腕は勢いよくのびるとミサトの首を簡単につかんだ。

 

 

「残念だったな、お嬢ちゃん。てめえは俺を本気にさせちまった。」

 

 

コンラッドは力を籠め、ミサトの首を締め上げていった。

 

 

「がはっ・・・うぶ・・・。」

 

 

コンラッドの万力の指はミサトの首を絞めると、次第に強くなっていった。

ミサトは必死に腕を振るい、コンラッドの指を離そうとしたが離れる様子はない。

 

 

「俺の勝ち。」

 

 

コンラッドはそういうと力を徐々に徐々に強めていった。

ミサトは視界が暗くなっていくのを感じた。

 

 

「まあ、殺しはしねえよ。ちょっとばかり眠ってもらうだけだ。」

 

 

コンラッドの声が虚空に響いた。

ミサトは負けてしまった。

コンラッドのゲームに負けたのだった。

 

 

 

 

 

その頃松代、使徒の正体はエヴァ参号機だった。

シンジは困惑した。

 

「父さん、あれが敵なの?」

 

違う、あれはエヴァだ。

敵なんかじゃない。

 

「あれはエヴァよ、まさか…参号機?」

 

アスカも目を見開いた。

参号機、中にいるのは鈴原だ。

 

 

「シンジ、あれの中にいるのは鈴原よ。」

 

「知ってる、ミサトさんの部屋で書類をみてた。」

 

「どうしよう。」

 

「どうしようって言っても…。」

 

 

「とりあえずエントリープラグでも抜ければ。」

 

 

するとレイが冷静にいった。

 

「無理よ、エントリープラグがはがれないようになってる。」

 

「じゃあ、どうすりゃいいの。あいつを傷つけたらヒカリが‥‥。」

 

 

アスカは焦っていた。

あの傲慢不敵なアスカも困惑していた。

攻撃はできない。

作戦通り、三体別方向で攻撃するそのはずだった。

 

 

参号機であった『それ』はすばやくアスカの乗っている弐号機を襲撃した。

 

 

飛び上がると、弐号機を襲ったのだ。

 

 

「きゃああああああああああああ!!!」

 

 

アスカの悲鳴が聞こえた。

なにもできなかったんだ。

 

「アスカ…。」

 

 

参号機は目にも止まらない早業で次は零号機にとびかかった。

 

「あああああっ!!」

 

 

レイの悲鳴が聞こえた。

 

「綾波…。」

 

 

シンジは人の心配をしている暇ではなかった。

すぐさま参号機であった使徒は初号機にも襲い掛かったのだから。

 

 

 

ミサトは目を覚ました。

どうやら首を絞められそのまま気絶したようだ。

両腕は鎖で縛られ天状にある機械から吊るされている。

 

ふと、目を覚ますとスクリーンに映像がうつっていた。

 

初号機が参号機に襲われている。

 

 

「どうして…。」

 

 

すると、横からコンラッドの野太い声が響いた。

 

 

「使徒バルディエル。」

 

 

「使徒?」

 

 

「そう、アメリカ政府はなずっと隠し持っていたんだ。数体の使徒を。俺はそれを盗んできた。こっちに渡そうとしなかったからな。そのうちの一つはイロウル、前にネルフに侵入した部下がネルフ本部に植え付けたんだ。例の停電騒動の時にな。」

 

 

やはりこいつか、停電騒動の黒幕は。

イロウルといえばリツコが倒した使徒。

コンピューターウィルス状の。

 

 

「そして、今初号機がやってるのはな、バルディエルだ。菌類、カビに似た形の使徒でな。」

 

 

まさか、こいつが・・・。

 

 

「アンタが…。」

 

 

「そう、ずいぶんと楽な仕事だったぜ。なあミサトちゃん…俺がなんでお前をここに呼んだか知ってるか?」

 

 

「ワタシとのタイマン勝負…。」

 

 

「それもある、お前はずいぶんと頑張っただがお前じゃ俺に叶わねえ。やっぱ攫うガキがシンジちゃんじゃないと本気は出せねえってか?」

 

「シンジ君…。」

 

 

初号機は参号機を殺すことを拒んでいる。

まさか、人を殺すことを拒んでいるから。

 

 

「あなたは何が目的なの!」

 

 

「それはあとで。」

 

 

 

 

コンラッドはそのまま進むと、まじまじとスクリーンを見ている少女の近くによった。

洞木ヒカリ、参号機パイロット鈴原トウジの彼女。

 

・・・・まさか彼女にこれをみせるため?

彼女だけじゃない、私にも。

 

 

ミサトは漸く気が付いた。

 

こいつは弄んでいるだ。

 

コンラッドの顔をよくみた。

 

笑っている。

 

まるで、自己陶酔する巨人のように笑っている。

 

 

「あの中にはトウジ君がいるのよ!!!やめなさい!!!」

 

 

ミサトは思わず声を出してしまった。

 

ヒカリはビクッと振り向いた。

 

 

「鈴原?」

 

ヒカリの口からガムテープは抜けていた。

 

そんなヒカリをみてコンラッドは優しく、頭をなでた。

 

 

「そうだよ、君の彼氏だ。君の彼氏はめっちゃんこ強いんだね。感心だ。」

 

 

嘘でしょ。

あれに乗っているのは鈴原、紫色の初号機に乗ってるのは碇君。

友人同士で殺し合ってる。

 

 

 

「さあ、観ようじゃないか。友達が使徒になったらあの坊やはどうなるのか。友達を殺すのかな?それとも…?」

 

 

コンラッドは音量をあげた。

 

するとゲンドウの声が聞こえた。

 

 

「シンジなぜ戦わない。」

 

参号機に首を絞められている初号機からシンジの声が漏れていた。

高く割れそうな脆いが、悲痛な声だった。

 

「だって、人が乗っているんだよ、父さん!!」

 

「構わん。そいつは使徒だ。我々の敵だ。」

 

「でも…でも、できないよ!…助けなきゃ…人殺しなんてできないよ!!」

 

「おまえが死ぬぞ!」

 

「いいよ、人を殺すよりはいい!」

 

 

シンジ君…。

そう、あなたに人を殺すことなんてできない。

させる気はない。

してほしくない。

 

 

「シンジ君、シンジ君!!!シンジ君!!!!」

 

 

聞こえるはずもない、だが叫び声をあげてしまった。

するとコンラッドの部下が近寄って、腹部を殴ってきた。

 

「ウッ…。」

 

 

ミサトは気絶しなかった。

だが、激痛が腹部に広がっていくのを感じた。

 

 

 

 

「うるせーぞ、クソアマ!」

 

 

コンラッドはその様子を他人事のようにみていた。

 

 

 

「お前ら、あんまやめとけよ。やりすぎるとそいつキレて手に負えなくなるぞ。」

 

 

そして、ヒカリのそばによると肩を持って話しかけた。

 

 

「なあ、お嬢ちゃん。君はどっちが勝つと思う?シンジちゃんとトウジちゃん。俺はな…あのままじゃシンジちゃんがやられると思うんだ。でもな、ゲンドウはそんなことをさせないんだ。」

 

 

コンラッドの指摘は正しかった。

ゲンドウの声が響いた。

 

 

「回路をダミープラグに切り替えろ!今のパイロットよりは役に立つ!」

 

 

ダミープラグ、そう来るか。

 

 

「くっくっく・・・・」

 

 

すると、初号機の目の色が変わった。

やがて、参号機の首を逆に締め返した。

獣のような雄たけびをあげていた。

 

 

「おお、うおおおおおお!!!!すごい!!!すごいぞ!!!」

 

コンラッドは立ち上がり感動に震えた。

まるでその感動に応じるかのように初号機はそのまま、力任せ参号機だった『それ』の首をへし折った。

そして、人形のように振り回すと地面にたたきつけた。

 

 

「これが、これが初号機の力!!!本当の力!!!なんという破壊力!強さ!!!強さ!!!!」

 

 

興奮したコンラッドはなんどもなんども地面をけっていた。

それに応じるように初号機はなんどもなんども地面にいる参号機を叩きつけ蹴って、血まみれにしていた。

 

 

「父さん、やめてよ、こんなのやめてよ!!!!クッソォ…止まれよ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれ!止まれェ!!!!!」

 

 

やがて、参号機のエントリープラグを引き抜いた初号機は文字通り引き抜いた。

そして…音が響いた。

 

グチャ

 

「やめろ、やめろォーーーー!!!!!」

 

 

シンジの悲鳴が響いた。

ミサトは震えた。

悲しみに、体が震えるだけであった。

 

「シンジ君…ごめんなさい。シンジ君ごめんなさい。」

 

 

うわごとのようにシンジへの謝罪をいうだけであった。

 

 

 

「フハハハハハハハハハ!!!シンジちゃーん、君はやっぱ最高の玩具だよ!!!!」

 

 

コンラッドは高笑いをした。

最高だ、こいつぁ傑作だ。

あいつは結局誰も殺せなかった。

クソ・ド・ファッキン・ヒーロー様が聞いて笑わせる。

 

俺を倒すだと、こいつにはできねェな!!!

いや、やるかもしれない。

 

いずれにせよ、こいつはヒーローの素質がある。

 

自分の誇りを命より大事にする。

気に入った、テストは合格だ。

 

 

 

 

 

「ミサトちゃん、言っておくぜ。お前にこれをみせたかったんだ。子供同士が殺し合うのをな。俺の与えた試練ってモンよ。」

 

 

 

そうか、これはトラップだったんだ。

シンジ君が友人を殺すか、殺さないかの選択をさせるところをみさせる。

残酷なショーだったのか。

 

 

「お前は指揮官としては無能だ、未熟だ。おまけに情に誘われる。そこがお前の弱点でアリ強みだ。お前だったら参号機パイロットを助けようとしただろう。だが…だがな、そうはさせねえ。ここでお前も俺様と一緒に地獄をみるんだよ!!!!ハハハハハハハ!!!ハハハハハ!!!ヒャ!!!ヒャヒャヒャ!!!」

 

 

こいつ…。

 

 

コンラッドはひとしきり笑い転げると、ヒカリの方に再び近寄った。

 

 

「んー泣いてるのか。」

 

 

ヒカリは泣いていた。

静かにさめざめと・・・まるで冬の雨のように涙を流していた。

最初は静かだった。

 

「イヤ…。」

 

だが、次第に大きくなった。

 

 

「いや・・・・嫌・・・・いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァ!!!嫌あああああああああああああああああああああああああああああ!!!鈴原ぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

コンラッドはミサトの方を一瞬みた。

 

『どうだ?』

 

ミサトは睨み返した。

 

『その子に手を出すな』

 

 

「そうか、そうか・・・うんうん悲しいよな。辛いよなあ。でもな人は悲しみの涙の数だけ大きくなれる。大きくなろう、ヒカリちゃん。」

 

 

コンラッドはスクリーンの音量を小さくした。

 

 

「お前らあとは好きにしていいぞ。」

 

 

コンラッドはそういうと部下はミサトを取り囲んだ。

彼は飽きたようにタバコに火をつけた。

 

 

「へへへ、コンラッド様はいきのいいお方だ。あとは煮るなり焼くなり俺たちの自由ってわけだ。」

 

「俺、刑務所暮らし長かったから女とはご無沙汰なんだよね。性犯罪で捕まってさ。」

 

「でも、俺29のババアはいらねーや。」

 

「29がババアっててめーロリコンかよ。俺は32だからお嬢ちゃんだよこんなもん。」

 

 

ふと、一人の男がヒカリに近寄っていった。

ソフトモヒカンで入れ墨をいれていた。

地元の半グレだろう。

 

 

「なあ、あれお前の彼氏なんだよな。殺されちゃったの。ぐっちゃぐっちゃじゃねーの?!死体。」

 

 

 

男のゲスなジョークを聞くと、周囲の男たちもつられて笑いはじめた。

コンラッドにいたっては腹がよじれるほどの大笑いをしている。

男たちのジョークは笑いの波を産んだ。

 

 

 

もうダメだ。

ミサトの中で何かがキレた。

縛られているはずの腕に力を入れた。

モルタル状の天井は脆かった、簡単にヒビがいった。

 

バキッ…。

 

ミサトは鎖の先に石がついてるのがみえた。

そして、力いっぱいに振り回した。

 

 

 

 

「お前らァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

先ほどミサトを殴ったチンピラの一人に石は完全にクリーンヒットした。

 

「おべ!」

 

 

そして、渾身の力を入れてミサトは鎖をビキビキと引き千切った。

鎖はさびて腐っていたのもあり、簡単に割れることができた。

ミサトは自分にここまでの力があったことに驚いた。

 

 

「ひいいいい!!!」

 

 

男たちは怯えていた。

あるものは逃げ、あるものはミサトを止めようと近寄ってきた。

ミサトは怒りのすべてをぶつけるように近寄ってきた男の顔をグーで殴り飛ばした。

 

 

別の男がよってきた。

そいつの股間に思いっきり蹴りをいれダウンさせた。

 

先ほど逃げたやつが銃を持って戻ってきた。

 

ミサトは地面に落ちていた自身の銃を取り出すと、男より早く頭を撃ちぬいた。

 

 

「コンラッド!!!!」

 

 

「ミサトちゃん!!!第二ラウンドは武器OKだぜ!!!」

 

 

ミサトは銃を数発撃った。

コンラッドは素早いスウェイでそれをかわすと、素早い蹴りを食らわした。

 

「うっ!」

 

 

ミサトの腕から銃は外れ、再び手薄になった。

 

「ホレェ!!!」

 

 

コンラッドは奇声をあげると、ミサトの胸倉をつかみ工具の棚の中へと叩きつけた。

 

 

「うぐっ!!!」

 

 

コンラッドは怪力の持ち主だった。

また負ける。

すると、ミサトの目の前にコンラッドのブーツがとんできた。

コンラッドはミサトの腹部をサッカーボールのように蹴り上げると、また別の工具棚へと蹴り飛ばした。

 

 

「あうっ!!」

 

 

ミサトは悲鳴をあげた。

殺される、強い。

 

 

「ミサトちゃん、そのタフさはすげえよ。でもな俺には叶わねえのさ。」

 

ふと、ミサトは足元に何かあるのがみえた。

小瓶、名前には『硫酸』と書かれていた。

ミサトはそれを手に持った。

 

「あなたの言う通り、あたしは勝てなかったかもしれない。」

 

「何だ認めるのか?」

 

 

コンラッドはあっけにとられた。

その隙を見逃さなかった。

 

 

「でも、コイツには勝てるかな!?」

 

 

ミサトは勢いよくコンラッドの頭に硫酸の入った瓶を叩きつけた。

コンラッドは悲鳴を上げのたうち回った。

 

「あああああああああああああ…あギャああああああああああああっ!!!!イヒッ!!!!!!!」

 

 

するとミサトはそこが特殊な溶解液のある棚だとわかった。

そうか、こいつらはここで人間を『消してきたんだ』。

ここは奴らのアジトだ。

ミサトは棚を倒すと、そこにある様々な毒液を棚もろともコンラッドにぶちまけた。

 

 

「ぎぃやあああああああああああああああああああああ!!!うわあああああああああああおおおおおおぎゃああああああああああああああああああ!!!」

 

 

悪魔コンラッドはのたうちまわると、そのまま動かなくなっていった。

 

 

「地獄に落ちろ。」

 

 

ミサトは切り捨てた。

 

余りの異様さに怯えた他の仲間は我さきに逃げ始めたのであった。

男たちは消えた。

ヒカリとミサトだけが残った。

ミサトはすぐさまヒカリのそばによった。

そこには涙も声も枯れ、ただ意気消沈しているヒカリの姿があった。

 

 

 

ミサトはヒカリの背中を優しく抱いた。

 

 

「ごめんなさい、洞木さん…。ごめんなさい…。」

 

 

ヒカリはミサトの肩の中で再び声を上げ泣いた。

ミサトはアルピーヌでヒカリを家まで送った。

 

その際にはなにもいわなかった。

 

彼女にはヒカリの悲しみを抱いてあげることしか負担する術はしらなかった。

 

 

 

ミサトはコンラッドに完膚なきまでにやられた。

兵士としても、戦略家としても…。

 

あいつは強かった。

結局、私はシンジ君がいなければ何もできない。

 

 

ミサトは途方に打ちひしがれた。

 

その後、リツコが病院にいることシンジが本部で初号機に乗ったまま暴れていたことを聞いた。

そして、参号機パイロット鈴原トウジは死亡してしまった。

コンラッドの目的はこれだったのか。

ただ、やられるだけではない私に完璧なる敗北を経験させたかったのだ。

 

シンジ君から友情を奪いとろうとした。

 

それは成功してしまった。

 

 

ミサトはギリと唇をかんだ。

 

シンジ君。

もう笑顔には戻れない。

彼は人が死ぬということをわかってしまった。

もう彼は元には戻れない。

 

 

「シンジ君…。」

 

 

ミサトは苦虫を嚙んだ。

結局、何もできない小娘のままだった。

 

 

 

 

 

 

ゲンドウはどれだけシンジに嫌われても構わなかった。

息子を助けるためには親として当然のことをやったまで。

あのままむざむざとシンジが殺されるのは我慢ならない。

 

「ユイ、お前ならわかってくれるはず。」

 

 

ゲンドウは発令所に残る初号機に話かけた。

例えシンジが私を嫌っても、殺してもあいつには葛城ミサトがいる。

全てはそれでいい。

憎しみは私が背負い、地獄までもっていく。

 

 

 

 

とある病院。

ミサトとヒカリが去ったのを観たコンラッドの部下たちはコンラッドを連れて、闇医者のもとへと連れていった。

そこはゼーレやヤクザの構成員が利用する施設。

通常の人間が死ぬケガでも彼は生きていた。

 

「神経はズタズタになっております、ですがかろうじて生存はできております。いかがしましょうキール議長。わかりました。人工皮膚ですね。可能です。ですが、顔面の損傷はあまりにもひどくもしかしたら特別な手術が必要かと…。」

 

 

医師は受話器ごしにそういった。

するとピクっという音が聞こえた。

 

 

「これが終わればドイツに帰ると伝えろ。」

 

 

医師は震えあがった。

そこには包帯まみれの巨漢コンラッドが立っていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続編はやったほうがいいですか?よくないですか。

  • やったほうがいい
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