ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話   作:井上ああああ

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ゼルエルはちょっと新劇の要素もいれております。


シンジ君が初号機パイロットを辞めてもう一度戻ってくる話。

月、そこにはゼーレの秘密基地があった。

そこで骨壺のような物体から1名の少年がでてきた。

 

「久しぶりだね、リリン。キール議長。僕に音楽を教えてくれた人。」

 

 

彼の声に反応するかのように、モノリスは浮かび上がった。

 

 

「タブリスよ、残された時間は少ない。虚数空間より閉ざされた四号機を蘇らせるときがきた。今すぐネルフに迎え。最強の使徒ゼルエルがくる。初号機の暴走を止めるのだ。」

 

 

「わかったよ、議長。」

 

 

カヲルはふと振り返った。

そこには、白銀のエヴァ四号機が立っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

参号機がバルディエルになってしまってから1日が経過した。

 

シンジは監禁部屋の中にいた。

 

参号機の中にいたのはトウジだった。

わかっていたはずだった。

悩みを聞けば寄り添えたはずなのに、自分はトウジの相談に乗ってやれなかった。

 

 

怒ったシンジはネルフ本部をエヴァ初号機で破壊しようとした。

L.C.L.圧縮濃度をあげられたことで失敗した。

 

トウジはそのまま助からなかった。

 

ずっとこの暗い部屋の中にいる。

 

 

 

もうエヴァのパイロットにはならない。

シンジは決断した。

 

するとドアが開いた。

 

 

「ミサトさん?」

 

そこには首に包帯を巻いたミサトさんがいた。

前の時のようだ。

そういえば昨日の作戦、ミサトさんがいなかった。

 

 

「どうしたんですか、その怪我…まさか松代で。」

 

 

「いいえ、洞木さんが誘拐されて…それを助けに行ったのよ。参号機はわかってるわ。何があったか。私もみさせられていた。」

 

 

「父さんは…僕を…。」

 

 

ミサトはわかっていた。

観たくもないものをみさせられた。

あの悪党の手によって…。

泣きそうになって震えているシンジをミサトは抱きしめた。

 

 

「いいのよ、あなたのせいじゃない。あなたが殺したわけじゃない。決してあなたのせいじゃない。」

 

 

ミサトさんは優しいな、いつも。

でも抱きしめる力はいつもより強かった。

きっと酷いことを経験したんだ。

ボクと同じだ。

 

 

 

「ミサトさん、僕エヴァのパイロットを辞めたいです。」

 

 

ミサトは唇をかんだ。

あれだけ辛い事を経験したんだ、無理はない。

 

 

何よりシンジが無事なことに安心した。

 

 

 

「わかったわ、いいのよ。それがあなたの意志なら…それで構わない。」

 

 

でも、なぜだろう。

ミサトさんと離れたくはない。

だって、ミサトさんが好きだから。

これは声に出さなきゃいけない、アスカが言っていたことだ。

自分の思ったことは素直に言えって。

 

 

 

「ボク…ここにいたいです。だってミサトさんが大好きだから…。でも…。」

 

 

ミサトの顔に笑顔が戻ってきた。

こんな目にあっても私を好きといってくれる。

 

また人を殺してしまった。

参号機を怪物に変え、洞木さんを怖がらせた。

罪もない子供の命を奪った。

不器用な親子の情すら奪った。

地獄すらあいつには生ぬるい。

 

そんな怪物のような男を殺した。

 

人殺しという点では私はシンジ君より黒だ。

 

 

結果的には勝負にはボロ負け完封負けだった。

 

 

こんな弱い私でも受け入れてくれる小さいな王子様。

 

だけど笑顔じゃない。

 

いつものまぶしい笑顔じゃない。

 

まるで曇ったどんよりとした表情。

 

ミサトは、小首をひねった。

 

「僕はここを出ていきます。だってここはいい思い出もたくさんあるから、それが壊れるのが辛いから。離れるのは嫌だけど…ここにいるのもつらいから。」

 

 

言葉に出せて言えた。

ミサトさんは怒っていなかった。

いつものように優しい笑顔だった。

 

でも、少し寂しそうだった。

 

 

 

「シンジ君。」

 

 

ミサトはシンジの頬を優しくなでた。

そして、耳元でささやいた。

 

 

 

「それは私がイヤ。」

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

ミサトはシンジの胸元に自分の頭をつけた。

そして、小さく言った。

 

 

「あなたはなにもしないで私のそばにいて。私のそばにいてくれればそれでいいから。」

 

 

「ミサトさん…。」

 

 

「どこにもいかないで…お願い。私のそばにいて。」

 

 

その体勢のまま、ミサトはシンジの手をつないだ。

強く強く握った。

ダメだ、なにを言ってるの。

彼の人生を自分で縛っていいの。

いい加減にしなさい、ミサト。

そんなリツコの声が頭の中で聞こえた。

 

 

「ごめんなさい、あなたの意志を無視した傲慢よね。あなたの好きにしたらいいわ。出ていくならそれでも…。」

 

 

ミサトはシンジの据わってるベッドの一緒に座った。

 

 

「暗い部屋よね、暗いのは嫌いだわ。」

 

 

そういうミサトはシンジには凄く小さくみえた。

 

 

「ホントの話をいうと私は、シンジ君がそばにいてくれたほうがいい。その方が助かる。私もあなたが好きだもの。」

 

 

辛い、こんなに人から好きって言ってもらえるの初めてだ。

 

 

「ごめんなさい、ミサトさん…。そういってもらえてすごくうれしい。でもボク、ボク…。」

 

 

シンジが言おうとした矢先だった。

 

 

「出たまえ、碇シンジ君。総司令がお会いになる。」

 

 

 

保安部の職員だ。

ミサトは舌打ちをした。

空気の読めない連中だ。

 

 

「ごめんなさい、ミサトさん。ボクの気持ちは変わらない。あなたとの思い出を大事にしたいからボクは去ります。好きだって言ってくれてありがとう、さようなら…。」

 

 

暗い部屋の中でミサトは一人ポツンと座っていた。

 

 

「また暗い部屋に一人か…。」

 

 

 

ミサトはシンジまで失うのか、と思うと力が抜けていくものを感じた。

 

 

 

自販機コーナー、アスカはバツの悪そうな表情をしていた。

鈴原は助からなかった。

バカシンジは初号機をやめるだろう。

内罰的な性格のあいつはきっと…。

 

 

「なにか気になることでもあるの?」

 

 

ファーストチルドレンの綾波が尋ねた。

 

 

「なんでもないわよ。」

 

 

「碇くんがやめるんじゃないかって話聞いた?」

 

 

妙だな、ファーストから話を振ってくるのは珍しい。

 

 

「もう、あいつ立ち直れないわね。もう戻ってこないわよ。」

 

「そうね、私もそう思う。」

 

 

 

アスカは後悔していた。

あの時、鈴原を降りさせていれば

怖いとあることない事植え付けておろしていればこうならずにすんだ。

 

ヒカリも傷ついたのか連絡がとれなくなっている。

 

 

「全部私の責任よ、余計な事いわなきゃよかった。これからはあなたと私二人だけだけど…がんばっていこうね。」

 

 

「ええ‥碇くんがもうエヴァに乗らなくてもいいように。」

 

 

「ファーストって、バカシンジのこと好きなの?」

 

 

「…嫌いではないわ。」

 

 

「そう…。」

 

 

もう、バカシンジはいない。

あいつがエヴァに乗らなくてもいいようにしないと…。

 

 

 

 

 

 

 

総司令執務室。

ゲンドウとシンジは二人だけでいた。

 

 

「命令違反、EVAの私的占有、稚拙な恫喝。これらはすべて犯罪行為だ。何か言いたいことがあるか。」

 

 

ゲンドウはあえてシンジを無視した。

ヨゴレ役は私だけでよい。

 

 

「はい、僕はもう、乗りたくありません。ここにもいたくありません。」

 

 

「葛城くんはどうなる。」

 

 

「彼女は好きです。その気持ちは変わりません。でもここにはいい思い出も辛い思い出もあります。だからいたくない、辛い思い出がいい想いでを汚すのが嫌だから。先生のところに帰ります。」

 

 

「そうか、もう会う事もあるまい。さらばだ、シンジ。」

 

 

「さようなら、父さん。」

 

 

父さんとも仲良くなれたのにな…。

シンジは顔をひきつらせた。

 

それはゲンドウも同じだった。

 

これでよかったのだろうか。

全てはシンジを救うためだった。

 

 

シンジは執務室を後にすると、去っていった。

 

 

一人残された部屋の中でゲンドウは本音を漏らした。

 

 

「……すまなかったな。シンジ」

 

 

小さい声でそういった。

 

 

シンジは俯きながら保安部の職員に連れていかれていた。

リツコがシンジをみて、何かを言おうとしたが口をもごもごとしながら俯いていた。

日向はあえて目を向けようとしなかった。

彼の説得を聞かなかったから。

日向さんには申し訳ない事をした。

今考えれば本部を破壊しようなんてバカげた考えだった。

 

シンジは少し反省した。

 

 

 

ふと、青葉が後ろから走ってきた。

 

 

「ま、待ってくれ!シンジ君。」

 

 

「青葉さん…。」

 

 

「ああ、よかった!間に合った!」

 

 

青葉は息を切らしていた。

今考えれば青葉さんにも世話になったな。

お兄さんのような人だった。

 

 

 

「シンジ君。あれは君のせいじゃないんだ…。君がやったわけじゃない。それだけはいわせてくれ!」

 

 

「ギターを教えてくれてありがとう。青葉さん。」

 

 

「シンジ君…。ごめん!」

 

 

本当は父さんをかばいたかったのかもしれない。

でも、青葉さんは言葉を選んでくれたんだろう。

この人は言葉を選んで使う、典型的な大人の人だ。

 

 

 

 

この人と会うのも最後になるのか。

 

 

「さようなら、青葉さん。」

 

 

 

 

シンジは職員に連れられ車に乗り、駅に向かおうとした。

 

 

 

 

トウジが死んだ。

死か、ボクは人の死を観たのはあれが最初じゃない。

何人もみた。

平気で人を殺すヤツを…。

 

 

『これが自然の摂理だ。世界はな、わかればわかるほど…嫌な物がみえるんだよ!それを受け止めろ。死を受け入れろ。そうすりゃ世界はよりきれいにみえるはずだ。理不尽で残酷で狂っているんだよ、この世界は!』

 

 

理不尽で残酷。

あいつの言うとおりだ。

理不尽で残酷だ、世界は。

死が自然の摂理なら…それでも生きていくしかない。

 

 

 

『じゃあな、坊や。また会おう。碇シンジ君。どこに逃げても俺が追いかける。だから逃げるなよ。お前が逃げれば死体は増える。そしてお前を必ず最後に殺す。誰を殺しても何があっても必ず最後にズタズタにする…。後悔しても手遅れだぞ。』

 

 

あいつ、また追いかけてくるんだろうか。

なぜだろう、嫌な予感がする。

心の中のモヤモヤがとれない。

 

 

でも、あいつに殺されても何か怖くない。

 

 

だってトウジを殺したのは間違いないから。

ボクだって殺されてもおかしくない。

 

 

ふと保安部の職員に手を引かれながら広告をみた。

 

 

『The World is Yours.』

 

 

旅行の広告。

世界はあなたのもの。

 

 

 

 

駅に行くと、意外な人物がいた。

 

 

「よう、お前らあとの仕事は俺が引き継ぐ。」

 

 

加持だ。

保安部の職員は首を縦に振ると去っていった。

 

 

「加持さん。」

 

 

「いやあ、シンジ君。帰っちゃうのか。」

 

 

「はい…。」

 

 

「まあ、その前に話でもしよーか。」

 

 

この人は未だにあまり好きになれない。

よく考えれば僕がいなくなったらミサトさんと付き合うのってこの人になるんだよな。

シンジはそう思うと呆れた顔になってしまった。

 

 

「僕がいなくなって嬉しいですか、ミサトさんが手に入るから。」

 

 

「あのな、そこまでせこくはねえよ俺は。いや、どうだろうな。」

 

 

なんだこいつ。

否定しないじゃないか。

 

 

「んーでもな、俺はキミがいてくれて葛城が成長したのは間違いないと思ってるんだ。というかお前がいないとあいつは狂っちまうんじゃあないかと思ってる。」

 

 

ミサトさんが狂う?

 

 

「どういうことですか?」

 

 

「あいつはセカンドインパクトで親父を失った、だからこの組織に入った。だけどあいつはバカじゃない。この組織の裏で隠れてる背後も突き止めようとする。そういった復讐以外の部分をシンジ君のやさしさがカバーしてたのさ。」

 

 

そうか、そういえばそうだったな。

ずっと前に復讐がしたくてこの組織に入ったといっていた。

 

 

 

「でも、どっちにしろ…トウジが死んでしまったもうここにはいられないですよ。」

 

「ああ、それか…。それちゃんと言ってやらなかったんだな。葛城め、どうしてこういう大事なことをいってやらないんだか。」

 

そんな時だった。

警報が鳴り響いた。

使徒だ。

 

 

「ああ、こんなタイミングで使徒か、また本部に戻るぞ。ついてこい。」

 

「え?」

 

 

加持はシンジの手を引くと無理矢理車に乗せた。

 

 

「また戻るんですか?」

 

「だって、使徒が来たんだから仕方ないだろ。まあコーヒーでも飲もう。」

 

加持がそんな冗談を言ってる最中だった。

 

 

猛スピードで車は元来た道を引き返した。

また『The World is Yours.』の広告がみえた。

シンジが振り返ると、使徒がみえた。

 

空中に浮かんでずんぐりむっくりな体をしていた。

白と黒の皮膚をしたそれは光とともに、第三新東京市を破壊しつくしていた。

 

 

「うわっ!!!」

 

 

シンジは直観でわかった。

あいつは今までのヤツとは違う。

 

 

加持の車は猛ダッシュになった。

アクセルは限界速度を超えていた。

 

パトカーに捕まるんじゃないかと思ったが、そんなことはもう関係ないだろう。

 

 

 

「捕まってろ!」

 

 

加持がアクセルを押すと車はすぐさまネルフ本部へと向かっていった。

使徒を振り切ったようだ。

 

 

「すごいですね、加持さん。」

 

シンジの誉め言葉を加持は無視して話をした。

バックミラーにうつった加持の顔は怖いほど真剣だった。

 

 

「前に君とアスカを誘拐した奴、あいつが参号機をバルディエルに変えた。悪いのはヤツだ。」

 

 

コンラッド。

あいつだったか。

 

 

「あいつがトウジを‥。」

 

 

「あいつの目的は世界を灰にして、自分が中心になる世界を作ろうとしている。世界最強の力を欲しているんだ。使徒が来るまでは俺たちを利用する気でいる。…まああいつは死んだと聞いたからもう会うことはないだろう。会えるかどうかも疑問だけどな。俺たちがあいつのいるところに行くかもしれんぞ。このままだとな。」

 

 

「え?それってどういうことですか。」

 

 

「使徒がここの地下に眠るアダムとあってしまえば、サードインパクトがおきる。それを止めるのはエヴァなのさ。」

 

 

 

シンジはわかった。

加持は戻ってほしいんだ

 

加持の車はミサトがいつも止めているガレージにとまった。

 

 

 

ネルフ本部は装甲を破られて、あちこちに職員がとびかっていた。

シンジは驚愕した。

ラミエル以上だ。

 

 

ふとみると、零号機は大破していた。

あちこちで零号機のものとおもわれる腕・足・頭部、そして青い装甲の1部が抜け落ちていた。

 

「綾波…。」

 

医療班がエントリープラグを抜き、綾波を運んでいた。

 

 

「碇くん?」

 

綾波はそういうと、そのまま担架の中で連れられて行った。

 

 

綾波がああなるってことはアスカも…。

 

アスカ、僕の同居人で友人。

確かにケガしてなければいいのに。

きっと、ボクがいなくても大丈夫だと証明したかったんだろう。

無茶したんだ…。

 

 

きっと、初号機がないと負けてしまうかも・

 

 

「ここから先が避難所だ。」

 

 

「加持さんはいっしょにこないの?」

 

 

「俺か?農園だよ。俺の秘密の農園があるのさ…死ぬならそこがいいからね。」

 

シンジは避難所に向かおうとした。

しかし、加持は引き留めた。

 

 

「シンジ君、俺はあそこで水を撒くことしかできない。だが、君には君にしかできない、君にならできることがあるはずだ。後悔のないようにな。」

 

 

 

みんな死ぬ。

どこに行っても死ぬだけ。

先生の所に行っても同じか。

やがて、夢中で走り始めた。

 

 

 

シンジが本部に入っていく中、ジオフロントの中ではアスカと二号機がいた。

アスカは後悔していた。

自分が余計な事をいって発破なんかかけなければトウジも死ななかった。

繊細なバカシンジのことだ、恐らく自分が悪いとおもいこみ逃げるだろう。

 

それは違う。

 

私のせいだ。

私がバカなことさえ言わなければあいつはエヴァに乗らなかった。

乗る必要がなかったからだ。

なのに乗ってしまった。

おまけにシンジの秘密までばらしてしまった。

 

 

シンジは逃げた。

それは逃げだ。

 

でも、構わない。

逃げても仕方ない。

それ自体は臆病ではない。

 

だからせめて「シンジがエヴァに乗らなくても大丈夫」なように自分ががんばらなきゃいけない。

それがシンジの先輩としての責務。

 

二号機の手にはN2爆弾があった。

いざという時の隠し兵器、通じるかわからない。

相手はゴジラのような強固な皮膚と破壊力を持ったバケモノ。

本部の装甲をあっさり融解しクレーターを産んでやってきた。

 

バカシンジ、かわいい弟分。

ダメな後輩。

一緒に住む中で情が沸いてしまった。

どうしようもない弟。

 

彼がエヴァを辞めるというならその道筋を作ってあげよう。

例え自分が死ぬことになっても。

 

 

 

「来い、バケモノ。」

 

 

弐号機はふんぞり返った。

すると、発令所からミサトと思われる声が響いた。

 

 

「アスカ、何やってるの?死ぬ気?」

 

 

「もしも私が死んだら…ミサト、加持さんとバカシンジとペンペンのことよろしく。」

 

 

「ダメよ!!!」

 

 

「お姫様は騎士でも待ってな!」

 

 

シンジは今でもミサトが好きだ。

いつか迎えに来るだろう。

その時まで、加持さんと仲良くしてろ。

 

 

加持さんごめんね、無茶をするなってなんどもいってたよね。

でも、今は無茶しなきゃいけないの。

例え加持さんの言う事でも反発しなきゃいけない時がある。

 

それが恋人ってものよね。

 

 

アスカは無理矢理音声回路をシャットダウンした。

 

不思議なことにシンクロ率が上がっていった。

なぜだろう、ママを感じる。

エヴァに乗っているとママが近くにいる気がする。

 

 

「行くぞおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

アスカは雄々しい叫び声をあげるとN2爆弾を持ち、ゼルエルの前まで飛び込んでいった。

ゼルエルのATフィールドは強靭だった。

しかし、アスカの今のATフィールドも負けていなかった。

不思議なほどのアスカは絶好調であった。

相手のATフィールドは中和すると少し綻びがみえた。

 

 

「しめた。」

 

 

アスカはそこに腕を伸ばし、N2爆弾をゼルエルの元に送り込んだ。

だが、ゼルエルは危機を察知し弱点のコアを隠した。

 

 

「あ!」

 

 

次の瞬間、N2爆弾の轟音と爆風はジオフロント中に包み込んだ。

二号機も吹き飛ばされ、ボロボロになった。

装甲はドロドロ、おそらく大破だろう。

 

 

ゼルエルは、憎いあん畜生は。

 

 

いた!

無傷だ。

 

「そんな…勝てないの?」

 

 

アスカは絶望感に包まれた。

そして、そのまま気を失った。

 

 

 

 

地下、ゲンドウは何としても初号機をダミープラグで動かそうとしていた。

もうシンジは帰ってこない。

だが、使徒によるサードインパクトが起きれば人類補完計画どころではない。

 

「もう一度ためせ!」

 

 

ダミープラグは拒絶され続けている。

ユイはシンジを求めている。

 

「ユイ、もうシンジはいないんだ。」

 

 

ゲンドウがそう言おうとした矢先だった。

初号機のケージの前にシンジがやってきた。

 

「シンジ、お前なぜここにいる。」

 

シンジは大声で叫んだ。

 

「僕を乗せてください!僕は初号機パイロットの碇シンジですっ!!!」

 

 

 

発令所、ミサトは戦いを観ていた。

零号機もやられた、二号機もやられた。

みんなやられてしまった。

初号機がダミープラグで動けばいいが…。

 

 

「あなた、シンジ君を引き留めたの。」

 

「彼には彼の事情があるの。」

 

「それ、この状況でも言える?」

 

ミサトは沈黙した。

シンジ君がいればこんなことにはならなかったのに。

 

 

「葛城さん!モニターをみてください!」

 

 

日向の悲鳴が聞こえた。

ゼルエルは触手をを広げると動かなくなった二号機の腕と足をつかんでいた。

二号機の装甲はほとんどはがれていた、むき出しの状態だ。

そして、ゼルエルは頭部をみせた。

顎と思われる部分が外れると大きな口を開けた。

 

 

「まさか、こいつ二号機を食う気じゃ!!!」

 

 

青葉は悲鳴をあげた。

 

 

「人の持つ知恵の実を手に入れようとしているのかも…。」

 

リツコは告げた。

 

 

 

「アスカ!!!エントリープラグの強制排出をして!!!」

 

「二号機が受け付けません。」

 

それってどういうことだ?

 

 

「二号機の中にある母性がアスカを感知した、離さないようにしているんだわ。ようやく見つけた子供だもの。どうせ死ぬなら使徒の中でと…。」

 

 

加持が言っていた、エヴァの中にはコアがある。

コアの中には魂がある。

 

 

「そんな!!!」

 

 

ダメだ…食われる。

アスカが絶望としたその時だった。

 

 

機械音が響くと、ケージの中から出てきた。

紫色の初号機だ。

 

 

「あれは…まさか…。」

 

 

間違いない、シンジ君だ。

戻ってきたんだ。

 

 

「シンジ君…。」

 

初号機はかけよると、ジャンプしてゼルエルの背中を蹴り飛ばした。

ゼルエルは触手を離すと、二号機を地面に置いた。

 

そして、触手を初号機の方に伸ばした。

初号機はしゃがんでそれをよけた。

 

バシュッ!!!

 

 

ミサトはその際にみた初号機にはアンビリカブルケーブルがつないでいない。

5分しか活動できないんだ!

 

 

初号機はゼルエルの触手をつかむと思いっきり地面に叩きつけた。

何度も何度も、何度も。

 

そして、倒れたゼルエルの真上にたつと何度も何度もマウントポジションで決めるパンチを繰り出していった。

 

「お前のせいで、綾波が!アスカが!」

 

ゼルエルは初号機の動きに翻弄されているのかされるがままになっていた。

固かったゼルエルの皮膚は傷つき、血が流れていた。

 

 

「二度と出てくるな!二度とくるな!」

 

 

たちあがるとゼルエルのコアめがけて初号機はなんどもなんども足で踏みつけた。

まるでいじめられっ子が不良にされるがままになっているようだ。

 

 

「強い、初号機は…。」

 

ミサトは思わず言ってしまった。

やはり、初号機は一番強く作っているのか。

 

 

シンジは倒れたゼルエルの半身を両足でつかむと、両腕で思いっきり空中高く持ち上げ地面に叩きつけた。

青葉さんとプロレス動画を観た時に覚えた技の一つパワーボムだ。

 

 

シンジはトドメをさそうとした。

その瞬間だった。

 

 

ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

 

「動かない。」

 

 

活動限界か!

 

 

「動け、動け、動け!動け、動いてよ!今動かなきゃ、何にもならないんだ!」

 

 

 

 

 

 

シンジの悲痛は悲鳴をが発令所に響いた。

 

 

「今動かなきゃ、今やらなきゃ、みんな死んじゃうんだ!もうそんなの嫌なんだよ!」

 

 

これ幸いとゼルエルは触手を伸ばすと、初号機をつかみ地面に叩きつけて寝かせた。

そして、光線を放つと初号機の装甲を一瞬で融解した。

そこには初号機のコアがむき出しになっていた。

ゼルエルは何度も何度も触手を叩きつけ、初号機のコアを攻撃した。

ふと思い出したように攻撃を辞めたゼルエルは再び、触手で初号機の片腕をつかんだ。

そして、だしぬけに近づくと再びアゴを開けて初号機を飲み込もうとした。

 

 

 

「動け!動け!動いてよ!」

 

 

「シンジ君…。」

 

 

帰るといったはずなのに、なぜ戻ってきたの。

嬉しいけど、でも辞めるのがあなたの幸せのはず。

 

 

その時だった。

活動限界を迎えているはずの初号機の腕がわずかに動いた。

そして、ゼルエルの触手を乱暴につかむとそのまま引き千切っていった。

 

 

「エヴァが再起動しました。」

 

「なんですって!!」

 

マヤとリツコの声が聞こえた。

それに続くように日向がいった。

 

 

「初号機のシンクロ率が400%を越えております!!!」

 

 

「彼女が目覚めたのね。」

 

 

ミサトは知っていた。

初号機の中に眠る碇ユイ、シンジ君の母親。

息子を守るために蘇ったのか。

 

 

初号機は白い目を輝かせ、獣のような雄たけびをあげた。

 

そして、ゼルエルの体を蹴り飛ばした。

1㎞先までぶっとんだゼルエルは起き上がり、ATフィールドをはった。

 

だが、無意味だった。

 

 

初号機は起き上がると、片手をそのまま乱暴に振るった。

まるで、ATフィールドを叩きつけるかのように…。

ゼルエルの腹部は真っ二つになれ血を吹き出しながら地面に倒れた。

そして、初号機はライオンのように地面を這いながらゼルエルに食らいついた。

ゼルエルはそのまま動かなくなっていった。

絶命だ。

初号機は勝ち誇った肉食獣のようになんどもなんども、食らいついた。

 

 

 

 

マヤは嘔吐をしそうになって、トイレに駆け込んだ。

 

 

「S2機関を自ら取り込んでいるというのね、初号機が。」

 

 

リツコはつぶやいた。

その顔は絶望そのものだった。

 

 

そして、だしぬけにエヴァ初号機の装甲が抜けていくのを感じた。

 

 

「エヴァの装甲が…。」

 

日向がつぶやいた。

 

 

「いえ、あれは装甲じゃない。拘束具よ。あれで本来のエヴァの力を抑えていたの。それが解かれた今私たちに止められないわ。私たちもこのまま…」

 

じゃあ、このまま私たちも破壊される。

どっちが勝っても意味はなかったのか。

ミサトがそう、絶望した時だった。

 

 

「あれはなんだ?みろ!」

 

 

青葉が叫んだ。

すると、天空から巨人が降ってきた。

それはまるで天使のようだ。

星空を反射するような銀色。

 

 

「エヴァ四号機だ!」

 

 

四号機の手には大きな槍があった。

 

 

「あれはロンギヌスの槍!」

 

 

ずっと、沈黙を守っていた冬月は大きな声をだした。

四号機はロンギヌスの槍を振るうと、覚醒した初号機を沈黙させたのだった。

 

 

「なぜ四号機が…。」

 

 

 

そして、四号機はゆっくりと地面に着地をした。

ゲンドウはわかった。

ゼーレ専属のパイロット。

渚カヲル。

ゼーレがあれを読んだということは、ゼーレは焦っているのだ。

焦る理由はコンラッド。

やはり、ヤツか…。

 

ゼーレの老人たちは死期が迫っているのを悟っている。

コンラッドの謀反がおきるのだ。

そのために、自分たちがいつ死んでもいいようにアレを送り込んだというわけか。

 

 

 

その頃、コンラッドは医療施設にいた職員・他の患者を皆殺しにしていた。

死体の山で彼は新しい皮膚を得たことに満足していた。

医師は尽力を尽くした。

 

だが、コンラッドは怒りに震えた。

なぜ俺様のハンサムフェイスがここまでズタズタにされなきゃいかんのだ。

暴れ狂ったコンラッドはその施設の中にいた全員をことごとく皆殺しにしてしまった。

衝動的に。

 

だが、もう一度見直した。

白い仮面を新しい肌としてそのまま張り付けている。

かっこいいじゃないか。

気に入った!

 

コンラッドはしかし、物足りないと思い殺した女から口紅を奪うと一気に顔に塗りつけた。

口の部分は赤く染まっていた。

まるでそれは「ピエロの怪物」であった。

髪型も黒色じゃああれだと思った彼は紫色に染め直した。

 

 

「待ってな、キール議長。俺が今からドイツに帰ってくるからよ…。」

 

 

不思議なことに彼にはもう痛みがなかった。

痛みもない、悲しみもない。

彼は新しい自分の顔を快く受け入れることにした。

 

 

なぜなら痛みこそ生きている証。

何よりの証拠。

 

 

キール議長にトドメを刺すときはやってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続編はやったほうがいいですか?よくないですか。

  • やったほうがいい
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