ミサトさんを好きになってしまったシンジ君のお話 作:井上ああああ
初号機のサルベージ作業から1月たった。
シンジが戻ってきた。
この事にミサトは大いに喜んだ。
家に帰るとミサトはシンジにキスとスキンシップの雨を降らした。
しかし、お祝い気分というわけにはいかなかった。
シンジの通っていた学校では疎開する生徒が増えた。
洞木ヒカリも相田ケンスケもその内続くだろう。
ヒカリは学校を休んでいる、精神的に疲弊しているからだ。
ケンスケは父親がネルフ本部を退職したのと同じタイミングで、別の国へと引っ越していった。
ケンスケの友人トウジが死んだことを気にしている。
シンジはケンスケは父親に愛されているのだなと羨ましく感じた。
アスカはヒカリは電話に出てくるが「明らかに元気がない」とボヤき、シンジも同じくケンスケは連絡が返ってこないと嘆いていた。
みんな辛い事をもう思い出したくないからだ。
ゼルエルの行う破壊は尋常ではない威力があった。
さらに新しくきたチルドレン、渚カヲルはレイ・アスカを超える高いシンクロ率を誇った。
アスカは彼の存在のせいでさらにイライラしていた。
おまけに二号機はまだ修復作業が終わっていなかった。
ネルフの予算も少なくなっていったからだ。
だが、ミサトはそれ以上に彼を不審に感じていた。
何よりも突然天から降ってきた。
ゼーレの作ったロンギヌスの槍、紛失したはずのエヴァ四号機とともに。
やがて、別の使徒がやってきた。
精神汚染を攻撃とする使徒アラエル。
まだ初号機は沈黙状態であったので出撃はできなかった。
そんな中カヲルは言った。
「僕の実力をみせましょう、たった一人であいつを倒してみせますよ。」
ゲンドウは了承した。
カヲルは四号機でロンギヌスの槍を持つと、精神攻撃をものともせず簡単にアラエルを殲滅した。
その後、別の使徒がやってきた。
アルミサエル。
光の網状の使徒はカヲルの操る四号機だけを襲った。
だが、カヲルは嘲笑った。
「君じゃ僕に勝てないよ。」
カヲルは四号機を使い、凄まじい威力のATフィールドをぶつけた。
まるで覚醒初号機がやったような技だ。
一刀両断されたアルサミエルは沈黙した。
強かった。
その強さは今まで連携しなければ勝てなかったチルドレンたちに差をつけるものだった。
アスカ・レイは彼を嫌い遠ざけていた。
ミサトも正直、馬が合いそうにはならなかった。
他の職員たちも同様であった。
底知れない不気味さ。
カヲルは明らかに異質な存在だった。
『こいつおかしい』
ミサトは気が付いていた。
ミサト含むすべての人間が彼を遠ざけた。
しかし、シンジはどうやら別であった。
カヲルは特別な部屋を設けられそこにピアノが与えられた。
ゼーレの贈り物。
そこでピアノをしながらシンジと談笑するのが彼の日課だった。
彼も音楽が好きであった。
カヲルはピアノをしながら訪ねた。
「シンジ君、君はチェロが好きと聞いたよ。」
「うん、いつかミサトさんに聞かせてあげるんだ。」
カヲルは少しバツが悪そうな顔をした。
「そうか…君は彼女が好きなんだね。」
「うん。」
シンジは頬を染めた。
「青葉さんからギターも教わった、チェロ・ギター・ピアノ。僕は音楽教師になろうかな。」
「シンジ君ならできるさ、なんだってね。」
トウジが死んでからシンジはカヲルが友人になった。
学校にはほとんどだれもいない。
そのうち閉鎖するんじゃないかとすらいわれている。
ケンスケもいない、委員長も、トウジもいない学校はがらんどうとしていた。
「このピアノ、カヲル君の親からだろ?すごいね。」
カヲルはふと思い出した。
自分に音楽を教えたリリン。
キール・ローレンツ。
月にあった基地の中で頻繁に連絡をくれた。
しかし、最近連絡がこない。
忙しいんだろうか。
シンジには隠していたが、カヲルの正体は使徒だった。
アダムの魂をうつした使徒タブリス、それが渚カヲルだった。
そろそろ約束の時が迫っている。
地下にいるアダムと融合しサードインパクトを起こす。
それが計画だ。
シンジ君のことをだましていたのは申し訳ないとおもっている。
だが、ここは嘘をつこう。
リリンどもらしい嘘を。
「そうだよ。」
「君のお父さんってどんな人。」
「昔重い事故があって、体に傷を負ったんだ。でも大金持ちで楽に生きれた。」
カヲルは嘘をついた。
リリンらしい大ウソだ。
郷に入れば郷に従え、これも議長が教えてくれたこと。
リリンは欺瞞の生物だと。
「そうだ、外に出てみたい?」
シンジはカヲルに聞いてみた。
外か、しばらく行ってないな。
「いいよ、行ってみよう。」
カヲルはシンジのことが好きだった。
色眼鏡抜きで自分のことをみてくれる。
ゼーレの議長はいろんなことを教えてくれたし与えてくれた、だが…彼は所詮大人。
裏事情があって自分を利用してるだけに過ぎない。
だが、シンジは違う。
真正面からボクを受け入れ好意をよせてくれる。
こんなシンジのためにカヲルは少しだましているのがイヤになってきていた。
感情が芽生えている。
僕は使徒なのに、なぜ‥。
そんな二人を苦々しくアスカはみていた。
なんであんな胡散臭い奴と仲良くしているんだ。
カヲルとシンジはネルフ本部の外にでてきていた。
街はゼルエルが来て以降、明らかに人が減っていた。
恐らくはゼルエルの想像以上の強さに怯えていたのだろう。
ガレキも多く、壊れたままの街が多かった。
シンジは寂しかった。
『ここがあなたが守った街、第三新東京市よ。』
ふとミサトが自分に街の光景をみせてくれたことを思い出した。
シンジはカヲルを誘って、ミサトが見せてくれた街の光景をみせようとした。
「ここが僕たちが守った街だよ、今はどこも壊れているけど…。」
それにトウジも死んでしまった。
もう戻ってこない。
最近、委員長も学校にこなくなった。
聞いた話ではあのイカレテロリストが委員長を攫って僕がトウジを殺す様をみせつけたらしい。
あいつはミサトさんの話で言えば死んでしまったらしい。
だが、ボクもミサトさんも本音ではヤツは死んでいないと思っている。
「シンジ君、君は悲しみを帯びている…。」
「悲しいこともある、けど嬉しいことだってある。」
シンジはそういった。
父は僕を守るためにダミープラグを使った。
その気になれば助ける事も出来たのに…。
「友達が死んだことにまだ傷ついてるんだね、シンジ君。」
「ああ、永遠に忘れることはないよ。」
「シンジ君…。」
カヲルはふと夕焼けに照らされるシンジの顔をみた。
美しかった。
ああ、僕が使徒だといえば気持ちが楽なのに…。
「大事な話があるんだ、ボクは…。」
カヲルがそう明かそうとした矢先だった。
公園の近くを男たちが集まってくるのがみえた
恰好は普通のスーツから作業服、恐らく普段はまともな仕事をしている人たちだろう。
手には鉄パイプや金属バットを持っている。
そういえばミサトさんが言っていた、街が荒れている。
よくない人種がうろついてるって。
「てめーら、ネルフのガキどもだろ…。」
ネルフの存在を知っている。
住民の1部か?
「お前らが無茶なことしてくれるせいでな、こちとら家失ってんだよ!」
怒っている。
不満を持った人間だろうか。
「シンジ君、帰ろう。」
カヲルは本能的に危険を感じ、シンジに帰宅を促した。
シンジも無言で首を縦に振った、だが四方八方を男たちに取り囲まれていた。
「どうしよう、帰れないよこれじゃ…。」
ふと、男の一人が銃を取り出すのをカヲルはみてしまった。
「てめえらのせいでェ、俺は家がなくなったンだーーーーーーーーー!!!」
シンジは動揺した。
僕は世界を守ってきたのに、傷つく人もいるんだ。
「ごめんなさい…ごめんなさい。」
シンジは思わず言っていた。
カヲルはそんなことはない、僕たちだけのせいじゃないと言おうとした。
だが、遅かった。
男はシンジの前に踊り立つと銃を持ち、乱暴に撃ち始めた。
まずい。
カヲルは反射的に動いた。
カキィィィィン…。
音が聞こえた。
ATフィールド…。
銃弾は凹み、はじけ飛んだ。
男たちは動揺した。
「こいつ、このガキ…バケモノだああああああああああああああああああああああ!!!」
その様子をシンジもみてしまっていた。
カヲルは舌打ちをした。
「ATフィールド、まさか…カヲル君…。使徒なの!!!」
カヲルは黙っていた。
とうとうバレた。
黙ってはいたが、まさかこのタイミングで…。
その時だった。
公園の前に大きな軍用車両が数台止まるのがみえた。
「あれ、ネルフかな。」
シンジがふと漏らした。
すると、軍用車両はチェーンガンを出した。
ネルフ保安部にあんな装備はない。
「あれは…!」
シンジは見覚えがあった。
前に攫われたとき、あいつが使っていたチェーンガン。
軍用車両に張り付けているという事はあいつの部下たちか!!!
ウィーン…。
音が響くとチェーンガンが火を噴いた。
ドドドドドドド…。
シンジに抗議をしに来た市民たちはチェーンガンの犠牲になり、次から次へと倒れていった。
カヲルは再びATフィールドを張り、シンジを守った。
シンジは耳を抑え地面にしゃがみ込むしかなかった。
「一体、何のマネなんだ。」
カヲルは舌打ちをした。
チェーンガンはようやく止まった。
すると、次の瞬間だった。
シンジの背後に男が迫ってきた。
男はシンジの首をつかむと銃をつきつけた。
「もう、よせ。バケモノ。こいつが死んでもいいのかよ。」
「くそっ…。」
カヲルは両手をあげると地面にひざまずいた。
「なにか変なことしてみろ、お前の友達は真っ先に死ぬぞ。」
まずい、敵襲だ。
そうだ、ゼーレはこの時のためにネルフの対人防衛費用を下げていた。
こういうデメリットがあったのか。
でもおかしい、ゼーレなら僕を放置するはず。
「まさか…キール議長がクーデターにあったのか!!」
そうか、そういう事か。
ゼーレの内部にあったクーデター、とうとう実現したんだ。
遅かった。
もっと早く行動すればよかった。
次の瞬間だった。
カヲルの首にバチィ!!!という電撃が走り、カヲルは気を失った。
「カヲル君!!!」
シンジは悲鳴を上げた。
だが、次はシンジの番だった。
「うわっ!!」
シンジとカヲルは気を失うとそのまま軍用車にまとめていれこまれた。
その頃、ネルフ本部。
セントラルドグマ地下、マギ端末。
ミサトはハッキングを行った。
加持にもらった報告書と、ハッキングを行った結果の事実が混ざった。
「父さんはハメられていた。碇司令に。」
セカンドインパクトの裏側、その真実。
やはり、碇司令がかかわっていた。
ミサトのカン通りだった。
ゲンドウは隠していた。
アダムを事前に卵に戻すため、父を利用した。
父を犠牲にしたのか。
アダムをベースとする使徒、リリスをベースとする人間。
二つは相反する存在。
碇司令とゼーレはアダムを意図的に暴走させた
そして自爆させた。
その結果、セカンドインパクトは起きた。
父の探求心を利用した。
アダムがサードインパクトを起こさないために。
シンジ君の父は私の父の仇だった。
私は父の仇の息子を愛していたのか…。
ネルフは所詮形だけの特務機関だった。
「碇司令はセカンドインパクトが起きることを知っていた、父さんを利用していた。」
「そうだ、葛城くん。」
太い声が聞こえた。
碇ゲンドウだ。
ずっとつけていたのか。
「アダムを封じるためだ。」
ミサトは銃を構えた。
「地下にあるあれはアダムじゃない、リリス。」
「そうだ、葛城くん。今までよくやったな。」
何を白々しいことを…。
ミサトは感情をぶつけそうになったが、堪えた。
「お前がシンジに抱いた感情がヤツを変えたこと、組織とシンジに尽くした忠誠、それには感謝している。だから私はもう人類補完計画などやめにした。シンジに必要なのは私でもユイでもない、君だ。」
ゲンドウは手に何も持っていない、丸腰だ。
「でも、あなたは父をはめた。それを私は許せない。」
「それはそうだ。許してもらえると思っていない。だから、私を殺せ。そうでなければ自分のしてきたことの償いはとれない。」
すると、ゲンドウの背後から男が出てきた。
加持だ。
彼の手には銃があった。
「碇司令、今の発言撤回しないでください。」
「する気などない。私を裁くといい。私はもう疲れた。」
「勝手なことをほざくなァ!!」
加持は怒号をあげた。
ミサトもあげたかった。
こいつのせいでどれだけの人間が死んだのか。
加持も大事な人間を失った。
「教えてやろう…もうネルフなどおしまいだ。最後の使徒は誰だと思う。あの四号機パイロットだよ。ヤツを殺せばネルフの存在価値などない。潰されるのみ。アメリカ主導でエヴァ量産機は展開されている、その中には最強の機体があるらしい。」
ゲンドウは付け加えた。
「潰すのはアメリカか、戦自かわからんが気を付けたほうがいいぞ。」
「やっぱり、あの少年は黒か…。」
ミサトはつぶやいた。
あの少年はどうもおかしい。
「あいつはゼーレのスパイだからな。」
その時だった。
ミサトの電話の着信音が鳴り響いた。
知らない番号からだ。
ミサトはあえて電話を取った。
「はい…。」
「ミサトちゃん、元気かな?」
ミサトは震えた。
この声、ドス黒い声。
碇司令のものよりドス黒い声。
コンラッド、殺したはず。
「お前は…。」
「生きていたよ、コンラッドだ。ミサトちゃん、らしくないなあ…ちゃんと殺すときはトドメを刺さねぇと…てめぇのとこのシンジちゃんとカヲルちゃんは預かった。生きてて帰してほしけりゃさっさときな。場所は第二新東京球場跡地。今回はそっちにいけねえ、だけどまた近いうち会えるぞ。」
「シンジ君に手を触れてみなさい、あなたをもう一度地獄に落とすわ。」
「楽しいねェ…。」
ゲンドウの顔が曇った。
「シンジに何があった。」
「また誘拐された。」
加持はこっちを黙って見つめている。
そんな中、ふと加持の電話も鳴り響いた。
「もしもし。加持だが・・・。」
ミサトはゲンドウに銃を向けながら耳を澄ませた。
加持の表情は冷静な怒りに代わっていった。
「もし、彼女に手を出したらお前はただじゃすまないぞ。」
アスカまで誘拐されたのか。
ミサトは苦虫を嚙み潰した表情になった。
加持は電話を切ると、ミサトの方をみつめた。
「アスカもやられた。」
「場所は?」
「第二新東京球場跡地。」
「助けに行きましょう。」
加持とミサトが話し合っていると、間にゲンドウも入ってきた。
「私も行こう。」
「来ても構いませんが、自分の命は自分で守ってください。」
「私も銃ぐらい使える。」
ミサトは加持のほうをみつめた。
「仕方ない、ついてきてもらおう。」
ミサト・加持・ゲンドウ、特殊な経歴とパーソナリティをもった3人は組むことになった。
数時間後
第二新東京球場跡地
ここはかつて、日売ジャイアントアーマーズの専属球場であった。
しかし、再開発が進み、別の場所に移転された。
それ以降は建物だけが残った。
カヲルはふと目を覚ました。
両腕両足は動けない。
観たところ、かつて実況席として使用されていた場所のようだ。
かつて野球をしていたであろうホームは砂だけになり観客席も空洞になっていた。
そこには、銃を持った特殊装甲の人間が数名ほどいた。
手にはアサルトライフルを持っている。
ふと目を覚ますと、シンジが5m先にいた。
「シンジ君…。」
カヲルは声をかけ立ち上がろうとした。
「待て。」
男の一人が銃を向けた。
さらに、シンジの背後にいた人間がシンジに銃を冷たく頭に突き付けていた。
そして、静かに言った。
「殺すぞ。」
シンジは思っていたよりもずっと冷静だった。
もう慣れたことなのだろう。
僕が想像してた以上に修羅場を潜り抜けていたんだ‥。
「シンジ君…。」
シンジはコンラッドの姿を探した。
いない。
だが、あいつの息がかかっている連中なのはわかっている。
以前のような街のチンピラに毛が生えた連中じゃない。
恐らく『戦略自衛隊』。
あいつにここまでの連中が連れてくるのか…。
ふと、シンジは左をみた。
「アスカ…。」
そこにはアスカがいた。
アスカは元気そうだ。
今にも噛みつきそうで怒りで震えていた。
口にはタオルを巻かれている。
両腕両足を縛られているが今にも男たちにとびつきそうだ。
「おじさんたちなんなの。」
シンジがそう質問しようとした矢先だった。
「黙れェ!!!」
男は装甲具のした腕を振るい、シンジの頬を殴り飛ばした。
「ぶっ!!!」
シンジは口から血を出すと地面に倒れた。
「今度無駄口を叩くと容赦しねえぞ!」
そんな時だった。
外で大きな爆破音が起きた。
地鳴りは球場跡地中に鳴り響いた。
「なんだ?!」
「敵襲だああ!!」
「もう来たのか!!」
男たちの内数名は実況席から離れた。
ミサトさんだ。
助けに来てくれたのか。
無事だといいけどなあ‥。
シンジは己の無力さに痛感した。
ミサトはガレージの奥地で戦闘していた。
今までのコンラッドの部下とは違い、本物の軍隊だ。
装備をみると、『戦略自衛隊』のものだ。
彼らのモノと思われるジープに隠れると、銃を構えた。
前から複数人の兵士が迫ってくる。
冷静にヘッドショットをしていった。
「もしかして、彼らをも操っているのか。」
ふと、軍事車両にチェーンガンがあるのがみえた。
ミサトは加持とゲンドウにこっちに来るように指示をだした。
二人は銃弾をかいくぐり、軍事車両の近くまできた。
「これを使いましょ。」
ミサトはドアを開けると、二人を連れ込んだ。
運転席にはいつ死んでもいいようにゲンドウ、後部座席には加持。
ゲンドウがアクセルを踏むと、軍用車両は進撃を開始した。
そして、チェーンガンをミサトがつかんだ。
「コレでも喰らえ!!!:」
ドドドドドドド…。
轟音とともにチェーンガンが放たれた。
男たちは次から次に死亡していった。
「おい、いいものをみつけたぞ。」
加持の手にはロケットランチャーがあった。
加持は窓を開けると、ロケットランチャーを構えた。
そして、一人、また一人とランチャーの餌食にした。
移動しながら、軍車両は次から次へと自衛官たちを血祭にあげていった。
「クソ!!!退避!!!退避ッ!!!」
ゲートから人はいなくなった。
「行こう!」
加持はそういった、ロケットランチャーをもぎ取り肩にさげた。
ミサトもチェーンガンをもぎ取ると、そのまま抱えた。
ゲンドウは銃を構えあとにつづいた。
ゲートを踏み抜け、死体の山を越え、彼女たちはゲートの中に入っていった。
「畜生!!死ねぇ!!!」
残された自衛官たちは銃口を向けると、火を放とうとした。
「死ぬのはお前たちのほうだ。」
ゲンドウは冷たくいうと、ハンドガンを使い自衛官の数名を射殺した。
ミサトと加持はゲンドウを呆然とみつめた。
「なにをみている。」
ゲンドウは少し恥ずかしそうに言った。
すると、応援の部隊がかけつけた。
その隙を加持は見逃さなかった。
ランチャーから2,3発弾を出すと、自衛隊の隊員を一人残らず皆殺しにしていったのだった。
爆音と煙が立ち込める中、地面を這っていた生存者を一人みつけた。
ミサトは冷酷に足でその一人を踏みつけ、銃を突きつけた。
「アンタらが攫った子供はどこにいる。」
「実況席、上の階だ。その内応援がくる。お前らネルフは用済みだ。俺たちがエヴァとパイロットを掌握するのさ。地獄へ落ちろ。」
「お前ひとりで逝け。」
ミサトは冷酷に銃を撃ちぬいた。
その冷酷さに加持は震える思いがした。
まさか、ここまでの兵士になっていたなんて…。
淡々と何もなかったように人を殺す。
『ネルフ本部にも自衛隊がいってるんじゃ…。』
3人はそんな思いに駆られながらも実況席へと向かっていった。
子供たちがいた。
それぞれ縛られているが、特にケガはない。
実況席では自衛官の指揮官と思われる男が誰かと口論していた。
「コンラッドは何をしている!なぜこんな場所を取引の場に使う!なぜ敵がくる!」
指揮官の男は声を荒げた。
その場に不釣り合いな白いスーツをした男はめんどくさそうに背もたれに腰を掛けながら応対していた。
「アナタ、勘違いしてるヨ…戦略自衛隊はあくまで取引相手の一人。私たちはもっと取引相手いるのヨ。あなた方がもってきたお金では残念ながらこの権利売れないヨ。買いたいならもっと下手にでて頼んでヨ。」
あの中国人、リーか。
「俺たちがどんな思いでこいつらを誘拐してたか、またお前たちに協力してやったかわかっているのか!!それもすべてエヴァパイロットを我らが手に入れてもいいという条件だったんだぞ!」
ずっと戦略自衛隊は連中と手を組んでいたのか。
戦自と手を組んでエヴァパイロットを誘拐、それで金のやり取りをしていたはずが戦自が思っているように動かなかったようだ。
そこに私たちを呼んだのは、どの程度強くなったか試すため。
コンラッドのゲーム。
このディールはわざと破綻するために仕組まれた茶番劇で、ゲーム。
そのゲームに戦略自衛隊は巻き込まれた。
「だから、何度も言ってるよネ。あなた方はあくまで取引相手の一人にすぎないッテ、倍の金額で買うヒトいるよ。アメリカ、ロシア、中国…。こんな臭い狭い島国の兵士ごときが偉そうにほざいてルんじゃないよ。300人の兵士があんな二人ごときでやられるなンて…情けないね。」
「畜生ォ!!!なめやがって!!!」
指揮官の男は銃を向けた。
すると、リーはそれよりも素早く蹴りを男の胸に加え壁に蹴りつけた。
「ぐお・・・・。」
「私に銃を向けるなヨ。」
リーは青龍刀を構えると、ザクッと戦自指揮官の胸に突き刺すと引いていった。
ミサトは一人だけ立ち上がると、実況席の近くにいった。
「お久しぶりね、リーさん。」
「おお、おねえさん!久しぶりだネ。」
「戦略自衛隊と手を組んで襲撃したの?」
「こいつら野党に予算減らされて必死、いいことを教えてあげる。コンラッドさんは新しいゼーレのリーダーになったンだよ。キール派と委員会の連中は皆殺しになったてサ…。」
「あいつがゼーレのリーダーに?」
「そうダ。」
コンラッドがゼーレのリーダーになった。
だからこうやって戦自の小隊を呼び寄せることができたのか。
なるほど、人類補完計画はもうほとんどやる気がないのだ。
では、ヤツの目的はなんなのか。
恐らく、ゼーレより恐ろしいことをしでかすはず。
人類補完計画。
ゼーレの悲願であったはず。
それを破棄するとは…。
よくある話か、閉鎖的な反社会集団の中で急進派と保守派が対立をして崩れていく。
コンラッドを完全に絶縁するか、排除していればこうもならなかっただろう。
「そう…で、子供たちを解放してくれるかしら。」
「おっと、そこからは別。返してほしけりゃワタシと勝負しようネ。もちろん銃は無しだヨ。」
「その割には青龍刀は使うのね。」
「これは私の流儀、問題ないならイクよ。」
リーは奇声をあげると、青龍刀を振りかぶった。
ミサトは近くにあるパイプ椅子を持つと、シールド代わりに構えた。
グサッ!!!
パイプ椅子に青龍刀は刺さった。
ミサトはそのままパイプ椅子を捨てた。
リーも青龍刀から手を離すとバク転をしながら回避した。
「ふんっ!」
そして、勢いをつけると左腕で拳を作るとミサトに浴びせてきた。
ミサトは片手を前に出すと、リーの拳を軽く捌いた。
リーは素早く次の裏拳をミサトの顔面に突き出した。
「う!」
裏拳はミサトの頬にクリーンヒットした。
ミサトは姿勢を崩し、地面に倒れそうになった。
やはり強い。
リーは足をあげてミサトの顔を踏みつぶそうとかかと落としをしてきた。
だが、ミサトはそれを片手で受け止めた。
びりびりと片手に激痛が走るのをミサトは我慢した。
そして、立ち上がると余った腕で拳をリーのみぞおちに繰り出した。
「うごっ!」
リーは地面に倒れた。
「おネエサン…ほんと…強いね…。」
ミサトはトドメに顔面を蹴り上げると、リーを沈黙させるのであった。
「続きは今度にしてあげる。」
ミサトは優しくそういった。
そして、手を振るうと加持とゲンドウを呼び寄せた。
加持はアスカを縛っていたロープをナイフで切った。
そして、口輪を解いた。
「待ってた!!」
アスカは加持に抱きつくと、加持もそれを優しく抱きしめた。
ゲンドウはシンジを起こすとナイフを切った。
だが、シンジはトウジのことを忘れていなかった。
ひどく睨みつけた。
「これで感謝すると思ったら大間違いだよ父さん。」
ゲンドウは黙ってシンジの怒りを受け入れた。
ふと、ミサトはカヲルに近づいた。
「渚くん、あなた使徒なんだってね。」
カヲルは俯いた。
もうここでおしまいか。
自分は殺される運命だったんだ。
生と死は同価値。
「話はあとで聞くわ。」
ミサトはロープを切ると少しきつめに言った。
最後のチルドレンは使徒だった。
その時だった。
ドアが開かれると、そこから手榴弾が飛び出した。
「手榴弾よ!!!」
さっきのヤツが言っていた、応援か…。
ゲンドウはシンジに、加持はアスカに覆いかぶさった。
「僕に任せて。」
カヲルはそういうと、手榴弾の前に立った。
「なにをするの!!」
カキィィン…。
ATフィールドだ。
手榴弾の爆風はATフィールドにはじかれた。
守った。
使徒が私たちを守ったのか。
「カヲル君…。」
「葛城さん、ボクを信用して!僕を先頭にするんだ!!」
中々憎い事してくれるじゃないの。
ミサトは感心して微笑んだ。
カヲルを先頭にした一行はまっすぐに進んだ、相手の銃撃や爆撃から守りながら…。
「なんだありゃ。」
「使徒か!?」
「ネルフは使徒も兵器にしたのか!!」
「勝てるのか?」
加持はアスカを抱きながら銃を構えていた。
シンジをゲンドウとミサトが前後で挟み銃を持ちながら進んでいた。
カヲルのATフィールドは絶大だった。
「早く降伏したほうがいい、さもないと皆殺しだよ。」
カヲルは冷酷に言った。
震えた自衛隊の隊員たちは後ろに後ろに後退した。
やがて、指揮官の男が叫んだ。
「撤退だ。」
その男の指示に従うと、我さきに多くの兵士たちが続いていった。
自衛隊が撤退したことを知ると、カヲルはようやくATフィールドを解放した。
「これでもう安心だ。」
「すっごいじゃない、アンタ!!」
アスカはカヲルの肩を叩いた。
カヲルは少し照れ臭そうに嗤った。
「当然だよ。」
ミサトはふと思った。
例え使徒であっても友情は生み出せる。
なら、この子は殺さないほうがいいかもしれない。
「カヲル君、助かったわ、ありがとう。」
ミサトはそういった。
加持も地面に倒れ込むと、大きく息を吐いた。
流石に緊張していたのだろう。
そんな加持をみてアスカは近づくと、頬に思いっきりキスをした。
シンジも肩の力が抜けたのか、ふう‥とため息をついた。
誰もが安心していた。
そんな時だった。
背後からゆっくり迫ってくる人間がいた。
手には銃を持っていた。
『あんなガキのためにここまで殺された、あんな奴いなけりゃいいんだ』
戦自の若い隊員だった。
ショットガンを持つと、シンジの頭にめがけて銃の標準をあわせた。
シンジの背後にいたゲンドウは気が付いた。
そして、シンジを押した。
突然父に押されたシンジは目を見開き地面に倒れた。
次の瞬間だった。
パァン…
軽い音だった。
次の瞬間、ゲンドウの胸に大きな穴がついた。
ミサトは漸く気が付いた。
そして、シンジも…。
庇った。
ゲンドウはシンジを庇い、撃たれた。
「父さん…?」
ミサトは舌打ちをすると、すぐさま銃を取り出した。
そして、自衛官の男の額と心臓に二発放った。
男は頭と胸から血を流すと地面に倒れこと切れた。
「父さん…父さん!!!父さん!!!父さん!!!」
ゲンドウは地面に倒れた。
口には微笑みが浮かんでいた。
「最後の最後に父親らしいことができたな。」
「イヤだよ、父さん!これからなのに!」
「葛城くん、シンジのことは頼んだ。」
ゲンドウは口と胸から血を吐いた。
傷があまりにも多すぎる。
ショットガンだ。
「今すぐ、救急車を!!」
アスカは叫んだ。
「ならん!」
太い声がした。
ゲンドウは血のまじった咳をはくと、体を起こした。
「俺はとんでもない悪事を働いた、これが俺にふさわしい死に方だ。俺に幸せなど相応しくはない。」
ミサトはセカンドインパクトのことか、と感じた。
ゲンドウはミサトとシンジが仲良くするたびに恐らく負い目を感じていったのだろう。
そして、シンジにミサトへの想いがあるとわかったときそれは強くなったのだ。
ゲンドウは、血だまりの中倒れた。
シンジはゲンドウの体に抱きつき、膝でゲンドウの頭を支えた。
「俺がお前を遠ざけた理由はその笑顔だ、その顔はユイに似ている。だからその顔をみると辛くなってくる。だったら離れたほうがいい。だからだ…。お前自身に非はない。」
ゲンドウは不思議なぐらいおしゃべりだった。
だが、時々血のまじった咳をなんどもしていた。
「その結果お前を傷つけてしまった、それは済まなかったと思ってる。」
「父さん…。」
「すべてはこれでいい。」
ゲンドウは優しくシンジの頬を叩いた。
その顔は笑顔だった。
そして、ゆっくりと死んでいった。
シンジは肩を震わせ声にならない声で泣きながらゲンドウを抱いた。
ミサトはそんなシンジを抱きしめ、ともに泣いたのだった。
ドイツ、ゼーレ本部。
コンラッドはほくそ笑んだ。
このテーブルはキールのモノではない、俺のモノ。
邪魔な委員会は全員排除した。
俺の時代が始まる。
そこに秘書と思われる女性がきた。
「エヴァシリーズ、完成しました。」
「13号機は?」
「完了です。」
「わかった。」
コンラッドは立ち上がった。
こんなところで策を弄するのは俺のやり方ではない。
現場第一主義だ。
マギシステムを真似た、俺の人格搭載コンピューターと洗脳パッチについたダミープラグの入った13号機。
俺の分身。
そして、かつてのゼーレが作り上げていたエヴァ量産機、それにも洗脳パッチを入れておいた。
「世界中の各都市にエヴァシリーズを派遣させろ!攻撃命令を出せ!」
とうとう最終決戦の時はきた。
コンラッドの白面は邪悪に、禍々しく輝いた。
次回以降は最終決戦です。
続編はやったほうがいいですか?よくないですか。
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やったほうがいい
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やらなくてもよい