Re:ゼロから始めるダンジョン生活   作:Hi-Speed

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第十一話

「大丈夫ですか、ナツキさん」

 

死を覚悟したスバル。瞑っていた目を見開きそんな声をする方を見ると、そこには緑色の服に灰色の髪をした青年、オットー・スーウェンの姿があった。

 

「お、オットー!?」

 

「はい、ナツキさん」

 

スバルの問いかけに笑顔を浮かべながら返事をするオットー。どうやら幻覚ではないらしいことを頭できちんと認識したスバル。

 

「どうしてここに……?」

 

彼を怪物祭(モンスターフィリア)に誘った際、用があるからといってその誘いを断ったオットーが何故ここにいるのか、スバルは理解が追いつかなかった。

 

「それは後で説明しますから、まずはここを乗り切りますよ」

 

一方、当のオットー本人は落ち着いていた。オットーはまるでスバルを諭すようでありながらも熱のこもった声でそう言う。

 

「ああ……」

 

「良いですか?ティオナさん達の攻撃では致命傷を与えられていません。何とか僕らでアイズさんが来るまでの時間を稼ぎましょう!」

 

オットーは引き続き冷静に状況を見極め、落ち着いてスバルに指示を出す。

 

「簡単に言ってくれるが、相手は厄介なんだぞ?」

 

「魔力に反応するからな」と続けようとしたスバルの声は続くオットーの声でかき消された。

 

「そうですね、あのモンスターはどうやら魔力に反応しているようですし」

 

スバルはハッとする。そして、それがわかっているなら何で、と余計にオットーの言いたいことが分からなくなる。

 

「それがわかってるなら尚更だ!ここからどうやって……」

 

そんなスバルは叫びながら、目を大きく見開きオットーの思考を必死で読もうとする。

 

「そうですね……まあ、一応一つ思いついている案があるんですけど、それには条件がありまして……」

 

オットーは遠慮がちに、そして勿体ぶる感じで言った。

 

「条件?」

 

そんなたいそうな力は持ってないぞ、とスバルは思う。

 

「ええ。その条件なんですがね、ナツキさん、貴方は魔法が使えるなんてそんな都合の良いことあったりしませんよね……?」

 

ここでオットーがスバルに尋ねる。

 

「あ?一応使えるが……」

 

「そうですよね、使えないですよ……ってえっー!?」

 

オットーのうるさい声が響く。あわよくばモンスターたちの気をこちらに引きかねなかった。

 

「ーーオットーさん……うるさい、です……」

 

芸人顔負けのわざとらしいリアクションを取ったオットーに、倒れているレフィーヤが顔を顰めながら言う。

どうやらレフィーヤは意識があるようだが、身体が動かないようだ。

 

「すみませんね」

 

流石のオットーもそんなレフィーヤの言葉に反省した様子で答える。

 

「話を戻すが、確かに俺は魔法を使える。ただ、俺のは相手の視界を奪ったり、ステ……いや、とにかくそれだけで攻撃力は皆無だ」

 

一瞬「ステイタスを下げる」と口にしようとしたスバルだったが、リヴェリアから口止めされていたことを思い出した。オットーにはホームの部屋で落ち着いた時に伝えることはいくらでもできると思い、一応この公共の場で伝えるのはやめた。こんな状況でも誰が聞き耳を立てているかわからない。

 

「いいえ、どんな魔法であれ魔力を集めることができればいいので。ナツキさんが魔法を使えるのならば大丈夫です」

 

「何が大丈夫なんだ?」

 

スバルは必死で考える。しかし、なかなかオットーの言いたいことが分からない。

 

「僕が思い付いている、現状で一番効果的に時間稼ぎができる方法です」

 

オットーはその顔と声に自信を滲ませながら言う。

 

「そんなものどうやって……はっ!」

 

そう言っている途中でスバルは先程の光景を思い出す。そう、オットーが作り出したあの土の壁だ。そしてやっとスバルはオットーの考えを悟る。

 

「さすがナツキさん、話が早くて助かります」

 

スバルは口角を上げてオットーを見る。

 

「俺があのモンスターを惹きつける!お前は詠唱の準備な!お前と俺、初の共同作業だ!張り切っていくぜ!!」

 

「了解です!」

 

オットーもそんなスバルの様子を見て、自身の顔に笑みを浮かべる。そしてスバルは次に今も必死でモンスターと戦っているティオネ達に向かって叫ぶ。

 

「ティオネ!ティオナ!俺らが時間を稼ぐ!その間にお前らは周りの安全確保を頼む!」

 

「ふっ、Lv.1の新参者のくせに!」

 

ティオネは言葉こそ棘があるように聞こえるが、顔は笑っていた。

 

「わかった!」

 

ティオナもそんな姉の声に続く。

 

「レフィーヤ、オットーのそばで少し待っててくれ」

 

最後にスバルは自身の後ろで倒れているレフィーヤに声をかける。

 

「ーーはい……」

 

そしてスバルは作戦を実行しようとしたその時、

 

「スバル君!」

 

スバルの背後から彼の名を呼ぶ女性の声がした。

 

「え、エイナさん?」

 

そこには先日スバルが世話になったギルドの職員、エイナ・チュールの姿があった。どうやら、モンスターが市街地に現れたということでギルドの職員が情報収集や騒ぎの沈静化のために駆り出されているようだった。

 

「大丈夫?」

 

緊迫した状況ではあるが、天使のような声でそうスバルに尋ねるエイナ。

場違いにもスバルは心の中で『E・M・T』と呟いていた。

 

「ああ、俺は大丈夫です。それよりレフィーヤを、この子のこと、お願いできますか?」

 

「うん、わかった!ウィリディス氏、こっちです」

 

レフィーヤをエイナに任せたスバルは、全力で蔦に向かって走り出した。モンスターたちは動いているスバルに気づきはするが、攻撃まではしてこなかった。どうやら、スバルは相手ではないとモンスターは判断したようだった。

 

「チッ、舐めやがって......目にモノ見せてやる!」

 

そして、スバルは声高らかに叫ぶ。

 

「シャマク」

 

モンスターに向かって自身の魔法を行使する。そして、魔力が黒い霧となって現れる。スバルは、今までよりも霧の濃さや範囲が大きくなっているように感じた。その魔力の霧に釣られたモンスターは、ついにその巨躯を一気にスバルへと向け攻撃を始める。

 

「やっぱ身体、軽いな。これもステイタスのおかげか?恩恵の名は伊達じゃねえってか」

 

ここでスバルは先程のステイタスの更新により上昇した敏捷を目一杯活用してモンスター達の攻撃を避けつつ、できるだけたくさんのモンスターを引きつけて一目散にオットーの元へ駆け寄る。

 

「【母なる大地よ。願わくば音を奏で、声を交わし、我に力を】」

 

オットーは魔法行使のための相性を紡いでいた。

 

「確かあれで終わり!」

 

そして、先ほど聞こえた詠唱の切れ目を自身の記憶を辿り何とか思い出したスバルは、オットーの詠唱が終わるのを見事に見計らい、彼の魔法の範囲内に自分の身体をねじ込む。

 

「今だ、オットー!!」

 

「【ウル・ドーナ】!」

 

スバルの声に応じて、オットーが魔法を行使する。するとスバルとモンスターの間に一瞬で壁が出来上がった。そして当然スバルを追いかけていたモンスター達は、突然止まることもできず地面から反り立った土の壁、否、岩の壁にドドドと音を立てながら次々にぶつかる。

 

「おい、これ大丈夫か?」

 

壁に次々とぶつかるモンスターの威力にこの壁は耐えられるのかとスバルは不安になる。

 

「耐えてもらうのを願うしかないですよ!」

 

そう、このようにスバル達の作戦とは、2人で魔力を高めモンスターの気を引き、伸びてきたモンスター達をオットーの【ウル・ドーナ】で防ぐ、と言ったものだった。攻撃力こそ皆無だが、時間稼ぎには有効だった。壁にぶつかったモンスター達は、意思を持ったかのようにうねっていた。これならレフィーヤの安全を確保できる、と思った時だった。

 

「なっ?」

 

岩の壁の隙間から戦況を確認していたスバル達は、壁の向こう側で蛇状のモンスターの先から、色鮮やかな何かが広がり出した。

 

「これって蛇じゃなくて花!?」

 

スバルやティオネが驚きの声をあげる。そう、蔦の先からは気色の悪い食虫植物のような花弁が開かれた。

 

「ナツキさん!壁が消えます!!」

 

オットーが悲痛の叫びをあげる。モンスターの状態が変化した最悪のタイミングだった。そして、数多く生えてきた気色悪い花の一輪が、壁に当たった衝撃から解放され、レフィーヤを目掛けて勢いよく伸びていっていた。

 

「まずい」

 

間に合わない、と思った。

 

『フワッ』

 

その時、スバルの目の前で風が吹いた。

 

『キンッ』

 

そして、金属の甲高い音が鳴った次の瞬間、その花は額から先をへし折られていた。その折れた花弁の先には、金色の髪を靡かせた剣士の姿があった。

 

「アイズ!」

 

ティオナが彼女の名を呼ぶ。

 

「やっときてくれたか!」

 

スバルもやっと笑みを浮かべ、彼女の登場を喜ぶ。そう、その戦場にいた全員が待ちわびていた【剣姫】の登場。

 

「うん。スバル、よく頑張ったね。助けに来たよ」

 

「僕もいたんですけどねぇ!?」

 

オットーがボヤく。

 

「あ、オットー。いたんだ」

 

「やっぱりこのファミリアでの僕の扱いひどすぎませんかねえ!?」

 

「ううん、頑張ったね」

 

そして、オットーに向けて一瞬微笑んだアイズはすぐに鋭い表情に変わり、

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】」

 

短文詠唱を口にし、風をその身に纏いモンスターに向かっていった。

 

「すげー」

 

先ほどまでと違い、アイズが戦っているところを間近で見て驚くスバル。

 

「ふう、これならひと段落つきそうですね」

 

そんなアイズの様子を見て、安心したオットーがそのように言った。

 

「おい、フラグ立てんなオットー!」

 

そして、やはりスバルの嫌な予感が当たった。いきなり、一本の蔦が予期せぬ方向へと進み出したのだ。

 

「なんであんな方向に……って子供!?」

 

建物の影で子供が蹲っていた。スバルはもちろんのこと、ティオネ達も気づいていなかったようだ」

 

「やばい!」

 

先程の周回でも同じように子供があの場所にいることを確認しておきながら失念していたのは完全にスバルのミスだった。

 

「ナツキさん!?」

 

そんな自身のミスは自分で取り戻さなければと、すでにスバルは走り出していた。

 

「シャマク!!」

 

蔦に向けて魔法を唱える。そして、魔力により少しでも自分に気を引こうとした。立ち込める魔力に気付き、一瞬蔦は躊躇うかのように進行をストップさせた。その隙にスバルは子供を抱き抱え、何とか直撃を避けた。しかし、当然スバルがその直撃を喰らう羽目になり、結果、スバルは頭、そして全身を強く打った。スピードを落としてくれたおかげで、また、ステイタスを更新したことで耐久の値も上がり、スバルの体を貫通することはなかったが、それでも軽くはないダメージを受けたスバル。

 

「バルス!」

 

「スバル!?」

 

「ナツキさん!!」

 

遠くで仲間の声が聞こえる中、スバルは胸に抱きかかえる熱を離さないようにしつつも、だんだんと意識を失っていった……




お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、オットーはリゼロの作中では「ウル・ドーナ」を使っていませんでした。
(みんな大好きペテルギウスさんが使った魔法でした。また、リゼロの原作によると地属性の魔法は舗装された場所だとあんまり効果ないみたいなので、そこは少し改変しました)
あと、ダンまちでは詠唱式のない魔法はほとんどないので、それっぽい詠唱式を勝手につけさせていただきました。(ダサいかもしれませんが、悪しからず)
また、忙しい日々が続いているため、これからは不定期更新になります。
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