Re:ゼロから始めるダンジョン生活   作:Hi-Speed

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第二章スタートです。


第二章
第九話


朝を迎え、ナツキ・スバルのオラリオ生活三日目がスタートした。

 

「おはよう、オットー」

 

オットーというのは黄昏の館においてスバルのルームメイトとなった元商人のヒューマンのことだ。彼とは気が合い、一昨日の夜に出会ったばかりだが既にかなりの言葉を交わしている。

 

「おはようございます、ナツキさん。もうここでの生活には慣れてきましたか?」

 

「いや、まだ3日目だぞ?って言いたいところだが、みんなが優しいおかげでもうだいぶ慣れてきたな。いや、心が落ち着いてきた、とでも言うべきか」

 

「それは良かったですね。顔色もだいぶ良くなったようですし」

 

そんなに悪かったのか?とスバルは思うが、「死」を何度も経験したのだから当然と言えば当然だった。

 

「そういえば今日は怪物祭(モンスターフィリア)ですね。ナツキさんは行くんですか?」

 

オットーも口にした「怪物祭(モンスターフィリア)」はやはりオラリオでは大きなイベントの一つなのだろうか、とスバルは思う。

 

「ああ、一昨日ティオナに誘われてな。ただ、どんなことをやる祭なのかは全然知らないけどな」

 

「そうなんですね、楽しんできてください」

 

「オットーも来るか?」

 

「僕は今日、ちょっと用事があるのでお断りします」

 

「なんだ、またゾッタムシとデートか?」

 

「違います!!」

 

ちなみにスバルが口にした“ゾッタムシ”とは日本でいうGみたいな虫のことだ。

 

このオットー・スーウェン、こう見えてスキルが発現しており、生き物とのコミュニケーションが取れるようだ。一昨日がスバルとオットーの同室初日だったわけだが、早速その晩スバルの枕元に出たゾッタムシがきっかけで、彼のスキルについて知ることになった。ただ彼曰く、モンスターとは話すことができないらしい。

 

「まあ良い、早く飯食いに行こうぜ」

 

「そうですね、行きましょう。お腹空きましたし」

 

そんなオットーと共にスバルは朝食を摂るために食堂へ向かった。

 

 

***

 

 

「えー?アイズはロキと怪物祭に行くの!?」

 

食堂についた2人の耳に届くのは、ティオナのそんな声だった。

 

「ああ、一人で勝手にダンジョンにこもってた罰や。アイズたんは今日一日うちに付き合ってもらうで」

 

「ごめん、ティオナ」

 

ロキのそんな声と、アイズの少ししょんぼりした声が聞こえる。

 

どうやら、アイズは昨日ティオナ達と買い物に行った後、一人でダンジョンに篭っていたらしい。それも20階層。まあ、昨日のロキの『遠征後でも構わずダンジョンに突っ込む』という話を踏まえると、元気が出たってことでいいのか?

 

「うーん、でもしょうがないか。さっさと声をかけなかった私のせいだし。ロキに先越されちゃった」

 

ティオナはしつこく迫ることはしなかった。

 

「あたし達はすぐに東のメインストリートへ行くけどさ、あっちで合流できたら一緒に祭り見ようね!」

 

「うん」

 

そんなティオナの言葉にアイズは淡く微笑んだ。

 

「あっ、バルス、それにオットットー、おはよー!」

 

と、ここでティオナが食堂に入ってきていたスバルとオットーに気がつく。スバルはともかく、オットーまで変なあだ名をつけているようだった。

 

「良い加減僕の名前覚えてくれませんかねぇ?」

 

「えー?いいじゃーん、ええと、オットットー・スーダン?」

 

「誰ですかそれ!?」

 

単純に名前を覚えられていなかったらしい。仕方ないよな、オットーだし。

 

「はぁ、まあ良いです。もうこのような会話、数え切れないほどしてますし」

 

そんなオットーの諦めかけている様子を見て、さすがになんか大変そうだなと思うスバル。

 

「あっそうだ、オットットー。今日バルスを連れて怪物祭に行くんだけど、オットットーも来る?」

 

「いえ、今日は用事があるのでお断りします」

 

ティオナの誘いもスバルの時と同様に断るオットー。

 

「何、またゾッタムシ?」

 

「ゾッタムシかぁ、ほどほどにねー」

 

そんなオットーにティオネとティオナがそう言った。このファミリアの中ではやはりオットーと言えばゾッタムシ、みたいなことになっているのだろうか?

 

「アンタら本当に僕のことなんだと思ってるんですかね!?」

 

「オットー。食事の場だぞ、口を慎め」

 

「すみません」

 

リヴェリアに食事の場で虫のことを口にしたことで叱られて謝るオットーだが、その顔はまるで「なぜ僕が怒られなきゃいけないんですかね!?」と言いたそうだった。そして、そのようなオットーの姿を見て思わずスバルは吹き出しそうになったが、何とか堪える。そんな平和な時間が今朝もそこには流れていた。

 

 

***

 

 

「これが“ジャガ丸くん”か」

 

朝食後、怪物祭へと出発してその会場付近に着いたスバル、ティオネ、ティオナ、そしてレフィーヤの4人は早速屋台で名物の「ジャガ丸くん」を購入し、食べ歩きをしていた。スバルは、一昨日ダンジョンに行く前にロリ巨乳の店員が売っていたハッシュドポテトのようなものの正体を知ることができた。

 

「うん、とっても美味しいよー!はやくバルスも食べなよ!」

 

ティオナに勧められる。

 

「いや、さっき朝食食ったばかりなんだが……」

 

そう言いつつもスバルは一口食べてみる。衣がサクッとしつつも中はホクホクで、ジャガイモの甘さが口の中に広がる。

 

「これは美味いな」

 

「そうですね」

 

気がつくとレフィーヤもジャガ丸くんを食べていた。やはり男女問わず人気なのだろう。

 

「そういえばアイズの大好物よね」

 

ティオネが言う。

 

「そうなのか」

 

にしても、とスバルは言葉を続ける。

 

「本当に人が多いなぁ」

 

オラリオにはこんなにたくさんの人がいるのか、と言う意味も含めてスバルは言った。

 

「そうですね」

 

レフィーヤもスバルの言葉に賛同する。

 

「ほら、アンタ達!もう始まっちゃうわよ?」

 

「そうだな、行くぞ!」

 

「おぉー!」

 

ティオネの言葉にハッとしたスバルは掛け声をかける。そして、その声に乗っかるティオナ。そうして彼女達は祭の会場である闘技場の中へ入っていった。

 

 

***

 

 

「これはすげーな」

 

思わずそんな言葉をこぼしたスバル。

 

『怪物祭』は、スペインの闘牛祭のように調教者がダンジョンの中やオラリオの外から連れてきたモンスターを調教し、それを見せ物として行うものだった。

 

「流石は【ガネーシャ・ファミリア】ね」

 

「凄いなぁ、調教を簡単に成功させちゃって」

 

「そうですね、ただでさえ成功率が少ないのにこんな大舞台で……」

 

彼女達の話によると、モンスターはそう簡単に調教できるものではなさそうだ。「確かに、それができるならダンジョンで殺しあったりする必要もないもんな」とスバルは思う。

 

「でも、何で祭りなのに“フィリア”って言うんだろうな?」

 

スバルは少し疑問に思う。

 

「さぁ?」

 

「考えたこともなかったですね」

 

ティオナ、レフィーヤは心当たりはなさそうだ。

 

スバルが日本でまだ学校へ行っていた頃、社会の授業でフィリアとは友愛のことを示すのだと習ったことを思い出した。

 

と、その時だった。

 

「ん?なんか向こうの方、騒がしくない?」

 

ティオネが指を差しながら言った。

そちらをみると、どうやら【ガネーシャ・ファミリア】の団員達の動きが激しくなっているように見えた。

 

「なになに??」

 

「少し様子を見てきましょうか」

 

ティオナ、ティオネがそれぞれ言う。

 

「あ、あのスバルは……?」

 

レフィーヤがスバルの身を案じる。

 

「うーん、仕方ない、バルスも一緒に来て!」

 

「わ、わかった」

 

スバルはティオナの言われるがままについていき、闘技場の外へと急ぐ。スバルを含め、全員が何か嫌なことが起こりそうな予感がしていた。

 

 

***

 

 

「モンスターが逃げ出した?」

 

闘技場の外でギルドの職員と話をしていたロキと合流し、その事実を知る。

 

「ああ、やからティオナ達はアイズがモンスターを討ちもらしたら叩いてくれんか?そうやな、うちももう移動するから、見晴らしの良いとこにでも陣取っといて」

 

「アイズさんはもうモンスターの元へ向かったんですか?」

 

レフィーヤが尋ねる。

 

「いや、まだ行っとらん」

 

そんなレフィーヤの問いにあっけらかんと答えるロキ。

 

「え?」

 

しかし、アイズの姿はここにはない。スバルも疑問に思う。

 

「はあ?じゃあどこにいるのよ?」

 

ロキの言葉を聞いたティオネが少し語気を強めて言う。

 

「あそこ」

 

そんなロキは闘技場の上を指した。確かによく目を凝らせば、金色の髪が風でたなびいているように見える。

 

「ちゅーことでよろしく頼むで」

 

ロキの声を受け、ティオナ達も家屋の屋根伝いに移動を始める。

 

しかし、

 

「あれが、【剣姫】か……」

 

アイズが戦っているところを初めて見たスバルはそう言いつつも、さらに「すげー」と心の中で呟く。

 

「うわー、本当に出番なさそー」

 

「餌を用意されておいて、そのままお預けを食らった気分ね」

 

ティオナ、ティオネがそれぞれ言う。

 

「餌って……まあティオネ達からすればそうなのかもしれないけど……」

 

スバルからすれば強敵なモンスターだが、彼女達からすれば本当に餌のような相手なのだろう。

 

「あれくらいならバルスもすぐ倒せるようになるよ」

 

ティオナがアイズを眺めながらそういった。

 

そして、そんなアイズがモンスターを追ってそれらを倒すスピードはとてつもなく速く、どうやら家屋の屋根の上でアイズを眺めているだけのティオナ達には出番はなさそうだ。

 

と、そこにいる誰もがそう思った時だった。

 

「地面、揺れてない?」

 

ティオナが言う。

 

「……本当ね」

 

ティオネもティオナの言葉に賛同する。

 

「地震……じゃないですよね」

 

レフィーヤも呟く。

 

「そうだな……」

 

スバルは嫌な予感がした。いや、スバル以外のメンバーも感じていた。そして、その予感が的中したことを知らせるかのように、彼女達の元に何かが爆発したような轟音が届く。

 

『きゃあああ!!』

 

そして響き渡る女性の声。その声のした方向を向いたスバル達の目は、蛇のような巨大なモンスターが地面から出現している様子を捉えた。

 

「な、何だあれ!?やばくないか!?」

 

見たことないモンスターにスバルは困惑する。流石のティオナ達も顔色を変える。

 

「あいつ、やばい!!」

 

「行くわよ!」

 

まず最初に動き出したのはティオネ、ティオナのアマゾネス姉妹だった。

 

「こんなモンスター、ガネーシャのところはどっから引っ張ってきたのよ……」

 

「【ガネーシャ・ファミリア】、しっかりしてくれよ……」

 

スバルも思わず、ティオナ達を追いかけながらどんな人がいるのかも知らない【ガネーシャ・ファミリア】に対してそんな悪態をつく。

 

「いや、新種、これ……?」

 

レフィーヤが呟く。

 

どう言うことなんだ?とスバルは疑問に思うが、今はそれどころではないとあまり気に留めなかった。

 

「ティオナ、叩くわよ」

 

「わかった」

 

そんなレフィーヤの声が届いたかどうかはわからないが、アマゾネスの姉妹はモンスターに接近し、既に戦闘態勢に入っていた。

 

「アイズはまだ遠いわね。レフィーヤは詠唱の準備、スバルは周囲の人の安全確保!」

 

ティオネはそれぞれに対してすぐに指示を飛ばす。

 

「分かりました!」

 

「わかった!」

 

レフィーヤ、スバルはティオネの指示に反応する。そしてモンスターも同様にティオネ達に反応した。モンスターはティオナ達を迎え撃たんとばかりに、その蔦を伸ばして攻撃してくる。

 

そんな中スバルは周りに目を向け、市民の安全を図ろうとする。

 

「子供?」

 

そこには一人の子供が蹲っていた。その子は屋台の影に隠れていて、少し見にくいところにいた。

 

「ここは危ないぜ、安全なところへ行こう」

 

スバルは子供の手を引いてレフィーヤのいる方へと走っていきモンスターから距離を取る。そして、スバルの安全確保を確認したアマゾネスの姉妹はそのモンスターに向かって拳を突きつける。

 

しかし、

 

「かってーな、おい」

 

「かったーい!手が痛いよー」

 

素手とはいえLv.5の打撃、それも2発。当然痛そうな素振りを見せたのはティオネ達だけではなかった。モンスターも例外なく攻撃に悶え苦しんでいる。そして、モンスターは怒りを表すかのようにその身体をうねらせる。

 

「打撃じゃ埒があかない!」

 

「武器持ってこればよかったー!」

 

「にしてもティオナたち、やっぱ凄えな……」

 

「武器も持ってないのに」と、彼女達の戦闘を初めて間近でみたスバルは感嘆の声を漏らす。

 

その時、

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり】」

 

鈴のような声で紡がれる詠唱。自分のすぐ横へと魔力が集まっているのがスバルにも感じられた。やはりレフィーヤも強いんだな、と思わされた。

 

「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」

 

最後の韻を終え、解放を前に魔力が集束した直後、ぐるんとモンスターがスバル達、さらに言えばレフィーヤの方に振り向いた。

 

「ーーぇ」

 

地面から伸びる黄緑色の触手が、異様な速さでレフィーヤへと襲いかかる。

 

「ーーぁ」

 

レフィーヤの心臓は悪寒と共に震え上がる。

 

その刹那、

 

「レフィーヤ!!」

 

そう彼女の名を叫びながら、スバルはレフィーヤと迫り来るモンスターの触手との間に自らの身体を捩じ込んだ。

 

「え?」

 

レフィーヤは驚き、危うく自身の詠唱により溜め込んだ魔力を暴発させてしまうところだったが、それでもなんとか魔力が暴発するのを防いだ。しかし次の瞬間、レフィーヤの頬に生温い液体が掛かる。そして、それに続きレフィーヤの身体にもスバルの身体と触手が到達する。

 

「くはっ……」

 

スバルと共にレフィーヤも吹き飛ばされ、地面に数回バウンドさせられる。

 

Lv.3の強靭さではあるが、それでも口の中には鉄の匂いが充満していた。内臓が少し傷ついたのかもしれない、と思う。

 

「っっ……?」

 

口から血を吐くレフィーヤ。そして、ここでレフィーヤは手の生ぬるい感覚と共に、とてつもなく嫌な予感を覚えた。

 

「え……?」

 

彼女の手は真っ赤に染まっていて、辺り一面血の海が出来ていた。そして、その真ん中には腹に大きな穴を開けたスバルがいた。ただでさえLv.1の駆け出し冒険者であるのに防具も何もつけない無防備な身体が、石畳を抉るほどの衝撃に耐えられるはずもなく、一本の蔦のような触手がスバルの胸を貫いていたのだ。

 

「クハッ……!」

 

辛い辛い辛い痛い痛い痛い痛い熱い熱い熱い熱いあついあついあつ……あっ……

 

スバルはヒューヒュー言いながら呼吸をしていた。しかし、息はあるもののもう彼の内臓はその大きく空いた穴から飛び出しており、血の匂いとともにその光景がレフィーヤの心を抉る。

 

「ウッ……」

 

レフィーヤはその場で吐瀉する。先ほど食べたものと血とが混ざってとにかく気持ちが悪かった。

 

「す、スバル!レフィーヤ!」

 

「バルス!?」

 

アマゾネスの姉妹は二人を助けようとスバル達の方へ駆け寄る。

 

「っっ……す、スバル……」

 

レフィーヤは溢れ出しそうになるものを抑え、何とか声をかける。しかし見るも無惨なスバルの身体からは血が止まらない。

 

「バルス!?嘘だよね……?」

 

ティオナも顔から表情をなくし、そう呟く。

 

「ティオナ!」

 

「わっ!」

 

モンスターは蔦を伸ばして攻撃を続け、彼女達にスバル達を気遣う余裕を与えない。

 

しかし、彼女達がいくらスバルを気遣ったところで、もうすでにスバルの意識は無くなっていた。

 

こうして、スバルは再び死に戻りのループに潜り込む……




今回から登場したオットーですが、彼はリゼロの世界から異世界召喚されたわけではなく、もともとこの世界(ダンまちの世界)にいたと言う設定です。(今後リゼロのキャラが出てきたとしても、同じような設定です)
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