fortissimo~大切な人と日常を護るために~   作:Chelia

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長ったらしい説明フェイズです


話し合い①

摩天楼が炸裂し、龍一が魔物に飲み込まれていくシーンが見える。

だが、当の本人である俺は悔しそうに表情を作るも内心は物凄く笑っていた。

 

「命拾いしたな…」

 

だがそれは映像だけ…一つの光とともに世界が一変する。

宇宙空間が消え、悠久の幻影(アイ・スペース)も消え、戻された場所は今まで自分達が過ごしてきた日常の世界だった。

 

「手も足も…でなかったってことか…」

 

一方龍一は悔しそうにしながらその場に倒れ、意識を失った。

むしろ俺の五重魔法陣・御神楽を直で受けてよく生きていたと褒めてやりたい。

この魔法は神話魔術…故に、紅葉やサクラの切り札と同等の威力を持つ神の一撃なのだ

本来なら、肉体など跡形もなく消えていてもおかしくはない。

 

「悠久の幻影が消えた…ってことは、誰か召喚せし者(マホウツカイ)が死んだってこと!?」

 

「いや、それはないよ紗雪。それに関してはこれから説明しよう」

 

不安になる紗雪に優しく声をかける。

しかし、紗雪の方は全く安心できなかった

それは海斗を信用していないのではなくツッコミどころが多すぎて何から聞けばいいのかわからないからだ。

 

「紗雪からも質問があるんだろうが、当然俺からもあるぜ?どういうことなんだこれは。」

 

零二も俺を見て睨みつけてくる。

大切な人たちを傷つけられて怒るのはこの時から一緒か…

 

「…まあいいさ、俺が勝てば龍一に俺の話を聞かせる予定だった。その話を聞きたければお前達もくればいいさ」

 

「だけどその龍一はお前が倒しちまったじゃねえか!里村だって!」

 

「お、落ち着いて兄さん!私達召喚せし者は肉体がいくら傷ついても戦略破壊魔術兵器さえ破壊されなければ死なない… 多分、その事をわかってての行動だと思うから…」

 

「とりあえずマスターは、みんなの話を聞いた方がいいと思うんだよ!私から提供できる情報は、私の知る大まかなルールだけだから、現場の細かいみんなの考えなんかは全然わからないんだよ…」

 

流石に龍一のように直情的ではないのか、紗雪とサクラに言われて熱くなっていたことに気づく零二。

 

「そう…だな。俺に足りないのは戦闘と経験か… だが、本当にどうするつもりなんだ?意識不明の相手に話なんてできるわけねぇし、これ以上みんなを傷つけるなら俺は…」

 

「………すまなかった。」

 

俺は素直に謝る。

目的のためとはいえ、俺は自分の護りたい者達を傷つけてしまった。

これは決して言い訳して許されることではない。

膝をつき、頭を下げて謝ると、もう一言付け加える。

 

「そして、信じられないかもしれないが聞いて欲しい。俺はもう二度とお前達を傷つけることはない。俺はお前達の味方だからな。」

 

「………!!」

 

それを聞いた紗雪はとても嬉しそうな顔をしていた。

 

「紗雪。信じるにはまだ早い… 証拠はあるか?」

 

戦闘慣れしていないとはいえ、その龍一をも上回る冷静な判断は素直に評価しよう…

それも含め、これから話をする。

 

「かっかっか!それならウチに来るが良い!!」

 

「「「「…えっ!?」」」」

 

俺、紗雪、零二、サクラ。

この場にいる俺達全員が素っ頓狂な声をあげた。

声をかけてきたのは、何と零二達の家主である苺だ…っておいおい!これはヤバイだろう!

俺は龍一にボコボコに殴られ口から血を吐いているし、紗雪は魔力の使い過ぎと長時間の戦いで相当体力を消耗している。

更に、紅葉と龍一は全身傷だらけで意識不明ときた。

色々と見られてはいけないものを見られた気がする

てかお前いつからいたんだよ

 

「い、苺さん… これは…その…」

 

零二が何か言おうとするが、対して苺は冷静だった。

 

「細かい話は後にせい… どちらにせよ、道端でそんな状況じゃ、目を付けられるぞ?話をするにも、家の中の方がいいはずじゃ…」

 

「…確かに、相楽さんの言う通り。ここじゃ目立ちすぎる。兄さん、皇樹さんを運んでもらえない?他の私たちはみんな手負いで厳しいから…」

 

「そうだな…って、おい!里村は!?」

 

「…?そんなヤツおいてけばいいじゃない。家にあげるなんて家が腐る… 絶対イヤ!」

 

「ったく。サクラ…里村を運んで貰えるか?」

 

「マスターの頼みならなんでも聞くよ!了解なんだよ!」

 

ったく、下手すりゃオーディン打倒より紗雪と紅葉の和解の方が難易度高いんじゃないか?

仲が悪いとは聞いていたがまさかここまでとはな…

 

零二とサクラが怪我人を背負うと、俺達はみんなで相楽家に移動した。

 

到着。

まずは病人を部屋に寝かせる

紗雪が気を利かせて救急箱を持ってきたが、あまり出番はなさそうだ。

 

「それじゃ、私は下で待っておるよ… 必要になれば、降りてくるが良い」

 

「いいんですか?そんなんで…」

 

「うむ。私に構わずまずはそちらの方で話の整理をつけてくるのじゃ。」

 

零二が呼びとめるも苺はさっさと降りていってしまった。

あの女がどこまで知っているかも後で調べなければならなさそうだな。

 

「………信じていいんだよね?」

 

「ああ、俺を信じろ。とはいえ、話す事が多すぎるな…」

 

紗雪が心配そうに見てくる…

こんなに不安にさせてしまうとは俺もまだまだだな…自分を貫き通せとか偉そうに言っておきながら、紗雪はずっと心配し続けている。

俺と零二がまた戦ってしまわないかと…

 

「はっきり言って、俺は完全にパニックだ… 里村に襲われたと思ったら紗雪が出てきて、先生が出てきて、サクラが出てきて龍一が出てきて… もう何なんだよ…」

 

「じゃあ、まずは私とマスターの話しからするんだよ! マスターには脳内で情報は伝えてあるけど、おさらいもかねて、後は紗雪ちゃん達にも説明するんだよ!」

 

零二の戦略破壊魔術兵器サクラ。

そのマホウは、通常のマホウを遥かに逸脱している人型のマホウなのだ。

紗雪の言葉を借りれば、魔力を使い続けるという事は例えるなら自らが出血し続けている状態とイコール。

だから紗雪は弾丸を放つ時にいかに魔力を消費できるかを考え出し、今のような持久力に長けた戦いをすることができるのだ。

しかし、零二の出したサクラという名のマホウはその努力を全て無下にするかのような圧倒的なものだった。

本来、人型というのは物凄く燃費の悪い魔法である。

おまけに果てしなく弱い…これだけ大きな魔法を具現化させるなら、どう考えても四足歩行動物を召喚した方が強いだろう。

だから、例えできたとしても普通は召喚などしない。

先程の戦いで圧倒的な強さを誇った海斗ですら人型召喚系の魔法は使わないのだから。

 

「でも、マスターは苦もなく私を召喚し続けているんだよ!」

 

「…どういうことなの?」

 

サクラの説明は回りくどいな…

時間もないし、めんどいのでさっさと結論を言ってやる。

 

「つまり、その人型魔法を召喚していても何とも思わないくらいに零二の総魔力量は高いという事だ。」

 

「おまけに、私は完全自律思考型(スタンドアロン)だから、召喚する時以外はマスターの魔力は消費しない。つまり、マスターに魔力を注いでもらわなくてもある程度は自分自身で魔力を供給できるってことなんだよ。」

 

「なっ………!?」

 

「ずっと戦ってるらしい紗雪が目を丸くしてるのには驚くが、何かそんなすげえもん持ってるって言われても実感がわかないのが本音だな…」

 

(現にさっきはなんの役にも立てなかったし…)

 

「それは自分の力をまだコントロールできていないのと、単純な知識不足だ。サクラの話をしたのならついでの零二のマホウについても話をしておこう。」

 

「兄さんのマホウはサクラちゃんじゃないの?」

 

確かに零二はサクラを召喚するのがマホウのメインとなるが、零二自身もマホウを使うことができる特殊人材

…俺はそんな零二の能力を説明する。

芳乃零二の力…その魔法名は復元する世界(ダ・カーポ)。

対象物を24時間以内の状態に「戻す」ことのできる能力だ…

それは、人であろうと物であろうと関係ない。更に、24時間以内に出会った人物であれば自分の手元に召喚することもできるのだ。

 

「確かにすごい能力だが、それって戦闘じゃあんま役に立たないんじゃないか?」

 

「言ったろ?それは知識不足だと。確かに攻撃技ではないが、相手を思ってもみない場所に召喚することで隙を作り出したりすることもできる。補助魔法だけでもどれだけ強く立ち回れるかは、さっき身をもって教えてやったはずだが?」

 

「そ、そう言えば天王寺先生はさっき私達と戦った時、一度も攻撃技を使ってないんだよ!」

 

「い、言われてみれば…」

 

言われなければ全く気づくことがなかったのであろう、思い出したように紗雪とサクラが唖然とする。

 

「さ、流石に俺にはあれは無理だわ…」

 

「そうだな。確かに俺が使った唯一の攻撃魔法は龍一に使った御神楽だけ。お前達には攻撃技は使っていない… そもそも、できるだけ傷つけたくなかったのが本音だからな… だが、零二も慣れればあのくらいできるようになるさ。」

 

(なるさ、ではなく本来はなってもらわなきゃ困る。俺はそのためにこの世界にやってきたんだからな…)

 

まあ、話がこんがらがりそうなのでその話はぶった切ってしまった。

自分の力の話をされて、今零二が気づいたようなので。

 

「戻すってことは、24時間前の状態に傷も戻せるってことだよな!?」

 

「その通りだ。だからこそ、俺はお前達を攻撃できた… でなければもっと躊躇っていただろうな…」

 

「兄さんの持つ能力まで戦闘の計算に入れてるなんて… 海斗…貴方は一体…」

 

「………魔力を練り上げろ。使い方は、お前自身が教えてくれる。」

 

あ、ああ…と零二が返事し集中を始める。

紗雪の言葉に返事をしなかったのは、まだ俺自身に悩みがあったからだ。

本当に全てを話してしまっていいのか?

未来世界で恋人同士だったため、どうしても紗雪に色々聞かれると心が痛い。

…おかしいよな。今の紗雪にとって俺は会って2日の友達…下手すりゃ、愛しい兄を襲った敵のはずなのに…

今日一日でどれだけ紗雪に嫌な思いをさせ続けてしまっただろう…さっきから、そんなことばかりを考え続けている自分に情けなさを感じていた。

 

「よしっ、復元する世界!」

 

零二がその呪文を唱えると、龍一と紅葉の傷がみるみるうちに消えていく。ただ、少々魔力加減が上手くいってないな…強すぎて周りにいる俺や紗雪の傷まで一瞬で治っている。

それだけ二人が心配ということか…

 

「はぁっ…はぁっ… これでいいのか?」

 

「ああ、だが少し魔力を放出する勢いが強すぎるな。紗雪の話しじゃないが、次に使うときはもう少し抑えてみろ。」

 

「わかった…けど先生…意識回復してないんじゃないか?」

 

「人間と召喚せし者では造りが違う。召喚せし者にとっては、傷よりも魔力の消費のほうが何倍も負担になるんだ。だから、最低限の魔力が戻るまでは意識の回復は難しいだろう。とは言っても、この調子なら2,3分で目は覚める。心配するな。」

 

というわけで、二人が起きる前に次の話を進めておく。

それは、何故俺と零二が悠久の幻影以外で魔法を使えるのか?ということ。悠久の幻影が消えても、俺の5本の杖や零二のサクラが出たままなことに疑問を持った紗雪からの質問だった。

 

答えは俺達は元々最終戦争の参加者ではないから。

零二が参加者ではないのに、何故この戦争に無理矢理割り込めたのかは正直言って俺にもわからない。

だからそれ以上の説明はできなかった。

俺の方は理由は説明できるが、それはこれから話そう。

丁度寝ていた二人が目を覚ましたからな…

 

「んっ…」

 

「ここは…」

 

ほぼ同時に目を開ける二人。

 

「そっか…あたし…」

 

「おはよう、里村。」

 

「って、れ、れれれ零二!?」

 

ハッと周りを見ると慌てだす紅葉。

まあ、敵と認識した奴らが囲んでるわけだからな

 

「心配するな… もう悠久の幻影は消えてる。今は戦う必要はないってことだ…」

 

先程話してた内容を簡単に紅葉と龍一にもする。

 

「そうか…零二達も無事でよかったよ。」

 

「お前もよく死ななかったな…」

 

もう龍一の方は落ち着いたらしい。

隣でパニックに陥っている紅葉に気を使おうと、それ以上は何も話すつもりはないようだ

 

「あたし…」

 

「しょうがねぇよ… 誰だってそんなルール聞かされたら、戦わなきゃって思って当然だ。だから里村は間違ってない…」

 

「れーじも全部知ったんだね… 大切な者を護るためには、他の全てを倒さなきゃいけないって現実を…」

 

「いや、それがそうでもないんだな。」

 

……………

 

「「「「「えええええっ!?」」」」」

 

何気なく言った俺の一言に全員が驚愕する。

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