fortissimo~大切な人と日常を護るために~   作:Chelia

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話し合い③

★芳乃零二SIDE★

 

「苺さーん、ご飯できましたよー!」

 

紗雪が先生と出かけていったので、俺はちゃちゃっと晩御飯を作ると苺さんを呼んだ。

紗雪が心配じゃないのかって?

俺はそこまで心配性でも疑り深い性格でもねーよ…今日の話を聞いて、ひとまず俺は天王寺先生という人間を信じることにした。

後押ししていた苺さんの言う事が間違いということはないだろうし、俺と親友だって話も嘘には聞こえなかった。

それにしても未来の俺か…どんななんだろうな。

 

「すまんのう零二…戦いの後なのに作らせてしまって」

 

「いえ、俺は何もできませんでしたから。にしても苺さんは全部知ってたんですか?」

 

「うむ。といっても、私は召喚せし者ではない。れっきとした人間じゃ… まあ、ちょっとばかし特別なことをしていたんじゃよ…」

 

深くは語らずも、自分は関係者だと認める苺。

紗雪も苺さんもそっち方向に関連のある人だったとはな…

何も知らなかったのは俺だけってことか…

 

「あ、どうぞ… 有り合わせの炒飯ですけど」

 

「私はな、オーディンの知り合いなんじゃ…」

 

「えっ…?」

 

オーディンの知り合い?

てことは、苺さんはオーディンが誰なのか知ってるってことか…

 

「だからこそ、こんな馬鹿げた儀式を止めたいと未来のお主が来た時には協力してやったのじゃよ… お主も協力するつもりなら海斗をサポートしてやるとよい。未来世界の奴等は相当やる気満々じゃからな…」

 

「そりゃ、そのつもりですけど… 苺さんはオーディンが誰なのか知ってるってことですよね?」

 

「お主もその時がくればわかるじゃろう… 今は知らなくとも良いことじゃ…」

 

苺さんはそれ以上は何も言わず、ただ食事だけを済ませ食べ終わると部屋に戻っていってしまった。

俺も片付けてさっさと休むか…

紗雪の分も用意して、温めるだけにすると今日の事を振り返ってみる。

里村達と戦い、サクラと出会い、みんなの気持ちを知り、先生や苺さんの正体を知り…その上で、自分は何を知り、何をしなきゃいけないのか…

そんなことを考えながら、俺は体を休めるのであった。

 

★芳乃零二 SIDE END★

 

★皇樹龍一 SIDE★

 

零二の家を出た僕等はまずは里村の家を目指して歩いていた。

本来なら男である僕がみんなを護らなきゃいけないのに、まさか女性に護衛されるなんてね…

でも、正直二人サクラちゃんがいて助かった。

なぎさは召喚せし者らしいけど、まだ覚醒していないし僕と里村はかなりフラフラだ。

魔力が底をつきていて、本来なら立っているのも厳しいくらい…僕の場合は貧血と眩暈が酷いな…

 

「してやられたわーったく…」

 

それでも、無言で歩くなんてつまらないと口を開く里村。

こういった心配をしたり、今日の事を振り返ったりと思考を巡らせる僕にとってこういうマイペースさはあまり理解できないな。

 

「まあまあ… それにしても、今日の話って本当なんだよね… 紅葉達が戦いに巻き込まれてて、先生が未来人だったなんて…」

 

「正直…信用していいのかはまだわかんない。あたし、まだ殆ど話したことないしね…」

 

「それは僕もだよ。裏切るメリットはないにせよ、まだ半信半疑だ。」

 

何も考えてないようで、意外と考えているのか?

残念ながら、僕には里村の思考回路は理解できない。

 

「私は、信じてもいいと思うな…」

 

意外にもそう言ったのはなぎさだった。

 

「…なぎさ?」

 

「一生懸命になってる人の目って、見れば大体わかるよ… 先生は本気になって私達を助けようとしてる。 じゃなかったら、自分の生活を犠牲にしてまで過去になんて来ないよ…」

 

「た、確かに…」

 

「私もなぎさちゃんに賛成なんだよ。確かに私はマスターの戦略破壊魔術兵器(マホウ)で戦うための道具かもしれないけど、私だってこんな戦いは望んでるわけじゃないんだよ…」

 

疑い過ぎるのも悪い癖…か。

なぎさやサクラちゃんに言われて改めて気がついた

最後の一人になるまで戦い続けなければならない最終戦争のルールを知った時、自分が生き残るためにと相手を疑う癖をつけてしまっていたのかもしれない。

戦いを有利にするのは確かに大切だけど、それは友情を深める部分では障害となる。

人を信じる気持ちも、大切にしていかないとね…

 

「なぎさの言う通りかもね… ちょっと、疑い過ぎたかも…」

 

「紅葉の場合は、男の人って時点で棘を刺しちゃうのが良くないから上手く信じられなかったんだと思うよ?その点、芳乃くんって不思議だよね…」

 

「ホント、あの里村が零二だなんて僕もびっくりだよ」

 

「れーじ…か… そうだね、私はなぎさのためなられーじと戦うことも厭わないって思ってたけど、今はれーじと戦わなくて済む可能性もあるんだもんね… せっかくあるならそれに掛けなきゃ…」

 

芳乃零二。

この単語で里村の決意は新たになった

すごいや零二…君はどこまでも不思議な力を持っているね…そんな零二を、僕は本当に羨ましいと思ってるんだよ…

紅葉を送ると、なぎさを送り、僕も帰路についた。

 

★皇樹龍一SIDE END★

 

★天王寺海斗SIDE★

 

外は真っ暗か…結構長い間話し込んでいたんだな…

みんなには悪いことをしてしまった。

まさか、みんなを驚かす立場の俺が、逆に驚かされてしまうとは相楽苺…あなどれん

 

「ごめんな、紗雪…」

 

「昨日夜遊びはダメとか言っておきながら、連れ出しちゃって…とかなら、気にしてないよ?」

 

「なっ………」

 

「ふふっ、海斗って自分の言った発言をすごい気にするよね、少しわかった気がする。」

 

「…こりゃ、紗雪に一本取られちまったな。」

 

まさか会って2日で読まれるとはな。

ついつい苦笑いしてしまったよ…

 

「呼び出しといてなんだが、どこを歩くか全く決めていなかったな…」

 

「ん… なら、商店街とか海の方に行こう?今日は、静かな場所を歩きたい気分だから…」

 

「そうだな… あんな話をしてしまったんだ。少し落ち着きたいものだ…」

 

少しの間、無言で二人で歩く。

紗雪の方も聞きたいことが山ほどあるだろうに…

俺が未来のことを引きずってる場合ではないか。

 

「海斗って、どんな気持ちなの?」

 

「どんな気持ち…?」

 

沈黙を裂いたのは、紗雪の意外な質問だった。

 

「大事な友達…未来の兄さんの頼みっていったって、離れ離れになっちゃったわけだし、この世界に来ても見知った顔はいても誰一人自分の事を知ってくれている人がいない… 辛くないのかなって…」

 

「確かにそうだな… 辛くないといえば嘘になるが、俺も色んなことをしてきたからな。一人には慣れてるんだ。それに、今はそうでもないさ」

 

この世界の紗雪と美樹が友達になってくれたから…

そう素直に伝えると、紗雪は照れたように頬を赤く染めた。

しかし、これだけのことがあってよく紗雪は俺のことを疑わなかったな…

はっきりいって、敵対も少しは覚悟していた。

しかし紗雪は先程の話し合いの時も真っ先に俺に協力すると言ってくれた。

 

「海斗は…何だか嫌な感じがしないの…絡む時は絡んで、嫌がるラインまでは絡んでこないというか… ううっ…うまく言えない」

 

「…パーソナルスペースのことか?」

 

パーソナルスペース。

人には、一人一人自己のエリア…すなわち、空間というものが存在する。

例えば、人が殆ど乗っていないガラガラの電車の中で知らないおっさんが自分の隣に座ったらどうだろうか?

いい思いをする人はいないと思うし、離れた席に座ればいいと思うだろう。

しかし、家に帰って先程の電車とほぼ同じ距離感覚で家族が隣に座っていたら?

特に嫌な感じはしないし、むしろそれが普通だと思うだろう。

このように人には時と場合、そして対象者など…様々な状況で変化する一定の空間というものがあるのだ。それをパーソナルスペースといい、紗雪は俺にそれがあると言いたいらしい。

 

「あ、うんそれ… 昨日美樹さんと買い物に行った時も、海斗とは初めて会ったはずなのに全然嫌な感じがしなかった。だから、そういうのあるのかなって…」

 

「ははっ… そうか…昔、俺の仲間だった奴にも同じ事を言われたよ…」

 

不思議と笑みがこぼれていた。

俺は、ここに来る前も幾多の戦場で戦いを繰り広げていた。

その時に、俺の右腕とも呼べる相棒によく似た事を言われていたっけ…

向ヶ丘楓… 仕事の都合で二年以上会ってないが、元気にしているだろうか?

 

「仲間って…女?」

 

「そうだけど、お前の考えているような展開はないぞ?何せ、向こうは男性恐怖症だからな。」

 

「え、なのに仲間だったの?」

 

「ああ。男性でも俺だけは大丈夫だったらしくてな… その時にパーソナルスペースの話をされたんだよ。」

 

危ない…

紗雪の機嫌を損ねてしまうところだった。

零二が色んな女の子と仲良くする度にヤキモチ焼くもんな…

もう少し同性にも心を広く持とうぜ…

まあ嘘は言ってないし大丈夫だろうが

 

「その人が右腕なら、私は左腕になってもいい?」

 

「あ、ああ…別に構わないが… ここまで素直に信用されると正直俺も驚くな…」

 

「ん… 嫌?」

 

「嫌じゃないが、俺にそこまで優しくする理由がはっきりいって理解できない…」

 

だが、その答えは簡単だった。

「昼間のお礼」

始まりの大地(イザヴェル)から戻ってきて、俺が紗雪を気にして相談に乗った時、紗雪はかなり楽になることができ嬉しかったそうだ。

今回は、俺が寂しそうな顔をしているからそのお返しがしたいとそう言ってきた。

戦闘面でも日常面でも、辛いと思う感情が知らず知らずのうちに俺の表情にも出ていたのかもしれない。

そんな単純な理由で?と思うかもしれない…というか、事実俺がそう思い紗雪に聞いてみたが理由に時間の長さも事の大小も関係ないと笑顔で答えるだけだった。

 

「…絶対に死なせないからな。」

 

「うん、こんな戦争、早く終わらせよう…」

 

二人で笑いあい、握手をするが…

 

「紗雪、手冷たいな… 寒いか?」

 

「ううん… どっちかっていうと、魔力欠乏症かも… さっきから少し眩暈がして…」

 

「あのなぁ… そう言うのは先に言えよ… 俺も病人を無理矢理連れ出したりしないって」

 

「で、でも!海斗と話したかったから!」

 

…何て可愛い奴だ。

自分が具合の悪いのを差し置いて、俺の事を考えてくれていた。

こんな紗雪だからこそ、俺は惚れたのかもしれないな

 

「ったく、お前の魔法は光属性と闇属性だったな。うたまるはどっちだ?」

 

「えっと…右手… でもどうするの?魔力の譲渡なんて…」

 

「あいにく、俺は全属性の魔法が一通り使えるんだ。普通は無理でも俺の場合は対象者と直接繋がることで同属性の魔力を譲渡してやることができる… まあ、お前の場合は2属性だから少々面倒臭いけどな…」

 

「そ、そんなことができるなんて…」

 

ごちゃごちゃ言ってないでさっさと両手を握れ!

黙っていた紗雪へお仕置きとして強引に両手を奪うと握り、互いの額をくっつける。

 

「ひゃっ!?ち、ちょっと!こんな道端で///」

 

紗雪が真っ赤になっているがそんなものは関係ない。

紗雪の右手に光、左手に闇属性の魔力を流し込む

すると、顔色がよくなり体に熱も戻ってきた。

 

「次からは無理せず俺に言うことだな。」

 

「ううっ…」

 

反省するようにシュンとする紗雪。

お互いに心配しあうことで逆に空回りしてしまう…真に通じ合うまでは、これが中々苦労するのだが今ではその行為すらも楽しいと思えた。

 

「体の方は大丈夫か?」

 

「うん。お陰様で楽になった… 明日から大変になるね…」

 

「そうだな。とにかく今は休め… 明日は紗雪にも頑張ってもらうからな」

 

「わかった。兄さんには何か伝えておく?」

 

「いや、今の所はいい… ただ、この最終戦争を乗り切るには零二、そして紗雪…おまえ達がどこまで強くなれるかで全てが決まる。 それだけは肝に銘じておいてくれ…」

 

なんてったって、その無限の可能性を引き出してくれないとオーディンには勝てない。

この時は言っていなかったが、正直な話俺の作戦が成功しハッピーエンドを迎えられる可能性は30%程度しかないのだ。

しかも、それは完全状態での数値…

紗雪や紅葉、なぎさに龍一…

オーディン戦までで必要なピースが減れば減るほどその成功確率は下がる。

みんなの信用がとても重要になる中、紗雪が積極的なのはこれほど幸運なことはない。

紗雪と別れると、俺も一人帰路についた。

 

★天王寺海斗 SIDE END★

 

 

 

 

 

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