fortissimo~大切な人と日常を護るために~ 作:Chelia
★芳乃零二SIDE★
翌朝
今日は日曜日か…
昨日は色んなことがあって、ぶっちゃけ頭の整理が追いついていない。
結局紗雪とは会ってないけど、大丈夫かな?
「ううん… おはよう兄さん…」
と考えていると眠そうに目を擦りながら紗雪が起きてきた。
「うわーーーーっはーーー!!??」
ガラガラガッシャーン。
物凄い音がキッチンから聞こえる
中々出番がなくて本人は不服らしいが、昨日から俺の戦略破壊魔術兵器であるサクラもこうして居候することになった。
朝っぱらから皿を割るという豪快なアクションで紗雪は驚き、目が覚めたみたいだけど。
「おやおや…サクラは慌てんぼうじゃのう…」
「ご、ごめんなさいなんだよ…」
苺さんは笑っているがペコペコサクラは謝っていた。
「…なんだか、凄い賑やかになったね」
「だな。」
俺達は苦笑いして、一緒に朝ご飯を食べた。
そして…
「今日から、色々やんなきゃなんないんだよな… 紗雪、昨日先生は何か言ってたか?」
「ううん…特には… ただ、この戦いを終わらせるには私と兄さんがどれだけ強くなれるかが掛かってるからって…」
「うーん… マスターがロキの魔力を持っているってのは納得だけど、どうして紗雪ちゃんもなんだろう…」
「さぁ… 私にもよくわからない。」
そんな話をしていると、そう言った本人からまとめてメールがきた。
午前10時に公園に集合。
誰か一人でも遅刻したら零二がホモだという噂を学園中に流す by,海斗
「に、兄さん…」
「ドンマイなんだよマスター!」
「まだ流されるって決まったわけじゃねぇぇぇ!!」
てか何なんだよこの緊張感に欠けるメールは!
いや、違う意味で緊張はするが…
昨日真面目に考えて今日からどうやって生きていけばいいのか真剣に悩んだ俺の苦労を…
今度は俺のケータイに電話が掛かってきた。
次から次へとなんなんだ?
「もしもし?おはよう芳乃くん…」
「おっ、鈴白か?どうした?わざわざ…」
「いや、メール見てたんだけど紅葉のこと起こした方がいいんじゃないかなって思って… 紅葉って、こういう約束結構遅刻するタイプなの…というか、こんな内容書かれてたら悪ノリしてワザと遅刻するかもしれないし…」
「確かに、里村ならありえるな… わざわざありがとな。」
「ううん、私も準備するからまた公園でね!」
親切な鈴白のおかげで大事な用事を思い出した。
生徒会の件といい、デートの件といい…里村にはやられっぱなしだからな。
先に打てる手は打っておくか…
「悪い、紗雪、サクラ…先に二人で出かける準備しておいてもらえるか?」
「ん、わかった… 私も着替えるから…」
そういうと紗雪は部屋に戻っていく。
里村と電話しているのを紗雪に見られると厄介そうだからな。
ちゃんと準備しててくれればいいんだが…
そう祈りながら俺は里村に電話をかけた
「はーい♪れーじ専用のアイドル紅葉ちゃんでーす!朝から電話なんて大胆だね!まさか、遂に愛の告白!?」
電話に出るなりマシンガントークでワケのわからないことを言ってくる里村。
「いや、どっから突っ込めばいいんだよ…」
「ま…そんなわけないわよね… よーけんは分かってるよ?遅刻するなでしょ? どーしよっかなー!」
鈴白よ…ホントに里村と親友なんだな…
案の定すぎてため息が出た
「あのなぁ、仮にも俺の事が好きなら少しは俺の事を気遣えよ…」
「それはそれ!これはこれでしょ!実際噂が流れたらおもしろそーだし?あたしはそもそもあの先生をそこまで信用してないし?」
「そこを何とか頼むよ里村… 真面目に頼んでるんだ…」
「………行くわよ。でも、あたしははっきりいってそこまで乗り気じゃない。それは分かってるわよね?」
「ああ。だからこそ、自分の目で見た方がいいと俺は思う。」
「大丈夫よ、ちょっとれーじをからかいたかっただけ… ちゃんと公園で待ってるからさ」
「おう、ありがとな里村。」
…ふぅ。
何とか里村も来てくれそうだな…
俺もさっさと準備をしよう
苺さんに挨拶をすると、紗雪、サクラと共に俺は公園に向かうのであった。
★芳乃零二SIDE END★
★天王寺海斗SIDE★
☆公園☆
約束場所で俺はみんなが来るのを待っていた。
誰が協力的で、誰が疑心暗鬼しているのか、また時間や指示通りに動けるかどうかの簡単なチェックも兼ねて…
最初に来たのは龍一だった。
「ほう、意外だな…お前が最初とは…」
「この島の未来がかかっているんです…むしろ遅いくらいですよ。」
「ったく、相変わらず生真面目な奴だ…」
「やはり、未来の僕とも知り合いなんですね。僕の魔法をみても驚かなかったのはそういう理由でしょう?」
「とは言っても、総てを射抜く雷光(トール・ハンマー)を直接見たのは初めてなんだがな… 俺はロキにデータとして話をしてもらったに過ぎない。」
「なるほど…それであの強さとは恐れ入ります…」
あれだけ鍛えて自分に自信を持っていたのに、こうもあっさりやられてしまってはやはり気になるか…
他に誰もいないからと戦闘面に関してかなり質問された。
しばらくすると、鈴白をはじめ人が集まってきた。
「おはよう、龍一に天王寺先生。」
「ああ…おはよう。」
「来てやったわよー…」
不服そうにしながら紅葉もやってきた。
10時で朝早いとか文句言うならそれはただのぐーたら女だ。
まあ、信用されていないんだろうな…おそらくは
「おはよう紅葉!」
「うん、おはよ。なぎさ今日の私服可愛くない?」
「えっ?そ、そう…?」
「こらこら2人共、今日は遊びの為に集まったわけじゃ…」
「うっさいわねー朴念仁! そりゃ、確かにそうかもしれないけど普段通りに過ごしちゃいけない理由なんて何もないでしょ?」
注意しようとする龍一に反論する紅葉。
確かに、紅葉の言うとおり日常を過ごす権利には誰にでもある。
召喚せし者と言えど、悠久の幻影が発動していない限りは強制的に戦う必要もない。
俺達のように、召喚せし者同士で普段通りに生活していても何もおかしいことはないだろう。
「でも!」
「龍一も落ち着いて…私達の目的は最終戦争を終わらせることなんでしょ?」
「むしろ、そんな事のために一々口喧嘩していては、肝心な戦いの時に思うように力が出せない可能性もある。紅葉やなぎさの言うとおり、ここはお前が引くべきだな…」
「先生まで…」
納得いかないと渋々黙る龍一。
すると突然紅葉がイライラしだした
…紗雪達が来たのか
「悪い、俺達が最後だったか…」
「みんなおはよーなんだよ!」
「おはよう… さて、これで全員揃ったわけだな。」
「それで、具体的に僕達は何をすればいいんですか?」
龍一が質問をすると、俺は説明していく。
「まずは、これを見て欲しい。」
そう言って取り出したものはノートパソコン。
その画面には、月読島全体が写っている大まかな地図が乗っている。
「…島の地図?」
「そうだ。そして、現在この島に存在している召喚せし者はここにいる。」
そう言って俺が画面をクリックすると、島のあちこちにいくつも点が現れた。
基本的に黄色、緑、赤、青の4色で大きさの異なるものがある。
「えっと、これはどうやって見れば?」
「あ!公園には点がたくさんあるんだよ!」
…そりゃ、俺達召喚せし者が今集結してるわけだからな。
黄色が、今回最終戦争に巻き込まれた参加者12人を表している。
緑は参加者以外の召喚せし者…まあ、俺や零二がそれにあたる。
そして青が召喚せし者以下の能力を持つ能力者。これは今は警戒する必要は特にないだろう。
そして、赤は測定不可能な上、俺が要注意人物として危険視している人物がいる地点を表している。
当然、リアルタイム観測で動いている点や動いていない点が存在する。
「す…すごい…」
「どうやって用意したんだ?こんなもん…」
なぎさが素直に驚き、零二は当然の疑問を投げかけてくる。
俺はこの島に来てから最終戦争が始まるまで、準備と称して色々やっていたのは知っていると思う。
描写はカットしていたが、具体的に何をしていたかというと島のあちこちを歩き回り、魔力探知機のようなものを設置して回っていたのだ。
異能の力は、発動していなくてもその異変は僅かに漏れる。
それをキャッチする探知機に、俺の魔力を少々加えることで擬似的だが強力な召喚せし者レーダーの完成と言う訳だ。
「なるほど、先生も先生なりに準備は進めてたってことか…」
「でもこれって、色や大きさでどこに危険人物がいるかはわかるけど、個人の特定はできないんでしょ?」
「まあな。だが、俺は参加者全員の顔を知っている故、殆ど特定できるようなものだ。例えばここに黄色の点が3つあるだろう?」
そういってごく普通の道路上にある点を指さす。
道路上の時点で動いてないと不自然だが、この点は3つとも止まったまま。
つまり、ここから異空間に飛んだと仮定ができる。
異空間や概念魔術空間に飛んだとしても、元の世界に戻るときは同じ座標に飛ぶ。
更に、このレーダーは異空間に飛んでもその飛んだ地点の座標を固定し続ける。
結果
「ここにいるのは有塚陣だな。残りの2つは、奴の側近だろう。」
「本人の洞察力が加われば、ほぼ無敵と言うわけか…」
「そして、俺が見て欲しいのはこの点だ。」
「点…なの?これ…」
場所はこの島唯一の病院である高嶺病院。
そこに病院の敷地よりもずっと大きな黄色い円がある…それを俺は点といったが、点とは言えないくらいの大きさのものだ。
「ああ…こいつは一人の召喚せし者。そして、その名をオーディンという。」
「なっ!?」
「ち、ちょっと待ってくれ!公園にある僕らの点と比較すると…」
「それが現実だ。もちろん、このレーダーとて完璧に測ることはできない。単純に見てもそれくらいの差が俺達とオーディンにはあるということだ。」
勝てるわけがない。
円の大きさが1:100で済めば良いが、下手すればそれよりも全然大きいだろう
「あたしは、この目で見たものしか信じないわ!オーディンの場所がわかってるならさっさと叩くべきよ。大体、今は悠久の幻影を練り直す為に膨大な魔力を使ってるから自由に動けないんでしょ?」
「…俺がそういう作戦で動き、奴を自由に動けなくした状態でこれだと言ってるんだ。信じる信じないの問題じゃない。単独で攻め込んだ所で絶対に勝てないんだよ…」
「くっ…」
紅葉自身も頭ではわかっているのだろう、とても苦い顔をする。
「はっきりいって、絶望的だな。」
零二を始め、そこにいる皆がうんうんと頷いた。
「それでも、俺達は勝たなきゃいけない…それが、ハッピーエンドを目指せる唯一の可能性であり、唯一の手段だから…」
「海斗…」
「俺の提供してやれる情報はこれだけだ… これで俺が信じられなければそのまま帰宅して構わない。共闘する以上は、中途半端な決断は他の仲間に迷惑をかけることになる。改めて、お前達の意思を聞かせてほしい。」
そう言って周りを見渡す。
反論してくるであろうと予想した紅葉と龍一は、何故か逆にやる気になっていたのが意外だった。
「こんな現実を見せつけられたんだ、やはり、みんなで協力するべきだと僕は思うよ…」
「ふん、じょーとーじゃない!あたしを協力させるんだから、オーディンに一発殴る権利くらいくれないと怒るんだからね?」
「よかった…龍一と里村もやってくれそうだ。」
零二は安堵のため息をつく。
俺としても、やる気になってくれたのには安心した
「みんなでオーディンを倒すんだよ!」
「「「「「「おーっ!」」」」」」
こうして、俺達は真に同盟を結ぶこととなった。
いよいよ本題か…この戦争を乗り切り、オーディンを倒すにはどうしたらいいのか?
そんなこと、俺にだってわかるわけもない
だから俺は俺にできることをしていくだけ…それはみんなも同じだ。
「よし、じゃあ共闘するにあたって一人一人に志を持ってもらいたい。」
「えーっ!?なんか面倒臭そう!」
「…人の話は最後まで聞け。」
というか、俺の事を信用したんじゃなかったのかよ…
素直に言う事が聞けなければ、一番面倒な駒はお前になるぞ?紅葉…
「まず、俺達が目指すのは誰もが願いし平和だ。それはお前の嫌いな有塚やオーディンも例外ではない。それに、最終戦争が行われている以上、召喚せし者同士の戦闘は避けられないだろう…」
「それはそうね…立ち塞がるなら倒さなきゃやられるのはこっちだし…」
「だが、俺達にこういう意志があるように、向こうにも勝ち抜く為に大切にしている意志があるんだ。自分の目的のためなら相手の意志を捻じ曲げてまで押し通す。これは簡単なことだが、俺はこれを認めない。」
「相手の戦う理由を聞き出せってことか?」
「そう… だが、そう簡単にはいかないだろう。相手だって人に知られたくないことはあるんだからな。」
「…意味はあるんですか?」
「最終戦争に巻き込まれてしまった召喚せし者の意志… これを零二が知ることで究極魔法の成功率があがるのさ…」
未来世界で零二が失敗した究極魔法。
それは、名前の通り究極…全ての魔法の上に立つ魔法だ。
それを発動させるためには、発動条件もどの世界でよりも究極でなければならない。
零二本人の総魔力も当然大切だが、魔法は純粋な数値だけでは測れない。
人々の「想いの力」も力に変えるのだ
「オーディンを倒せば確かに最終戦争は止まるが、本当の目的はそこではない。零二に究極魔法を使わせ、最高の未来を築き上げるのが目的なんだ」
「究極魔法ってどんな魔法なの?それに、兄さんに使わせるって…」
「逆に、究極魔法は零二しか真の力を発揮する事ができない。零二の魔法復元する世界(ダ・カーポ)とこの魔法を組み合わせることにより全ての概念を書き換えることができるんだ。」
零二が望む限り、どんなものでも元に戻し、どんな願いも叶えることのできるこの魔法。
この魔法があれば、このくだらない戦争で散っていった召喚せし者の蘇生や、崩れてしまった俺達の未来世界の書き換えも行える。
この魔法発動の成功こそが、俺とロキの願いだ
「なるほどな…理由は理解した。つまり、その聞き出すと言う事を戦闘する上で忘れるなってことだろ?」
「本来なら、仲間に加えられるのが一番だがそうもいかない相手もいるだろう… だから、その事だけは絶対に理解しておいてくれ。」
「ま、それが必要ってんならしゃーないわね。了解よ。」
「うん。」
紅葉や紗雪達もオッケーと頷く。
ここからは、個別に指示を出していく
「まずは龍一。お前の強さは信頼している… お前には、単独で島の探索をしてもらいたい。」
「………島の?」
これが俺が龍一に出した指示だ。
龍一はこの中で最も戦闘慣れしていて、強さも兼ね備えている。
だからこそ、一人で行動させても問題はないと踏んだのだ。
やることはといえば、島の簡単なパトロール。
この戦争では12人の召喚せし者が戦うが、それら以外にも危険人物は存在しているのは先ほどレーダーで明らかとなった。
目的とは関係ないが、無視はできない。
それに、こちらは魔法が使えないのだから無理して絡まず行動のみを追跡してもらう。
万が一トラブルが起こっても龍一なら冷静に対処できるだろう
「なるほど。そういうことなら了解したよ」
「次に紅葉となぎさだ。二人は今まで通り普通に生活し、紅葉にはなぎさを守ってもらいたい。」
「言われなくても…」
「ち、ちょっと待って!いざとなったら私も戦う…」
「ダメだ。まず、それは紅葉と龍一が反対するだろうし第一君はまだ召喚せし者として覚醒していないだろう?紅葉のほうも、今までプラス、召喚せし者としての危険がつきまとうと言う事を常に意識しての行動をしてほしい。」
「流石、あたしたちのことを知ってるだけのことはあるわね… 了解よ。りゅーいちも、なぎさのことはあたしに任せて探索に専念しなさい?」
「ああ…。里村もいざとなったら僕をすぐに呼んでくれ…」
龍一、それはわかったとは言わない…
紅葉も呆れてため息をついていた
一方なぎさはうーっ!っと文句を言いつつも渋々了承。
流石に命がけの戦いで二人に迷惑をかけるわけにはいかなかったのだろう。
「次に零二。お前は今から俺と特訓だ。サクラは零二の付き添い、紗雪は後から指示を出すからここに残るように」
「俺は随分ハードな人生になりそうだな…」
「頑張ってね、兄さん…」
一通り指示は終わったか…
「んじゃ、あたしたちはあそびに行こっか!」
「ええーっ…みんな真面目になってるのに?」
「だってそういう指示でしょ?」
「ああ。むしろ、遊べる時に思いっきり遊んでおけ…必要なときはこちらから連絡するからなぎさもあまり気にするな…」
「先生がそういうなら構いませんけど…」
龍一、紅葉、なぎさは出かけていった。
さて、残るは俺達四人…零二の本気を見せてもらうか。
「俺がいる時しかサクラと共闘できないし、今回は二人で全力でかかってこい。紗雪はひとまず零二の戦いを見ていてくれ。」
「ん…わかった。」
紗雪が返事をすると、俺は5本の杖を具現化させ魔法陣を展開する
オーディンの悠久の幻影には全然劣ってしまうが、俺も霧魔法を応用させることで擬似的な幻想空間を作りあげ一般人が立ち入れないようにすることができる。
範囲は自身の周囲だけだがな…特に名前もなかったし霧の戦場(ミストフィールド)とでも命名しておこうか…
俺はその霧の戦場を展開すると、再び零二達に向き直る。
「この空間内では、どれだけ大技を発動しようが現実世界には影響はないし消耗した魔力もこの空間を抜ければ元に戻る。穢れなき桜光の聖剣(レーヴァテイン)も気兼ねなく撃てるよう設定してあるから、遠慮はいらん。」
「昨日の汚名は返上させてもらうんだよ!」
「ああ…トレーニングとはいえ、お前に勝つ気でいかせてもらうぜ!」
「…その意気だ、零二!」
零二&サクラのガチ戦がいよいよ幕開けとなる。