fortissimo~大切な人と日常を護るために~   作:Chelia

14 / 19
高次領域展開

対峙する零二&サクラと海斗。

12人の召喚せし者(マホウツカイ)は悠久の幻影の中でしか魔法を使うことはできないが、俺達例外はそのルールの適用外…

零二の修行し放題というのは何かとありがたい話だな。

 

「復元する世界は戻す時間、距離…対象物の大きさや状態…そういった一つ一つのものによって消費魔力が異なる。自由な分、どの程度の魔力を使用するのがベストなのかのコツが必要だ。それを踏まえてかかってくるといい…」

 

「はっ…余裕かましてんなよ… あいにく喧嘩は得意分野だ。練習だろうがなんだろうが、戦う以上そっちも全力できやがれ!」

 

そういうとまずは零二が仕掛る。

龍一同様真正面からの拳でのストレート…

直球勝負したいのはわかるが、これはあまりいい攻め方とは言えない。

隙が多すぎるし、零二の場合は自分が死ねばサクラも死ぬ(逆の場合も同じ)のだからもう少し自分の体を大切にしなければならない。

俺は杖を二本抜くと、拳が当たる射程に零二が入れないように牽制する。

 

「ちっ…」

 

「でかいのいくんだよ!」

 

「ダメだ!お前の切り札は俺が許可するまで使わせない!」

 

「ううっ…マスターがそういうなら…」

 

昨日は散々やられてしまったので主にかっこいいところを見せたいサクラだが、零二に止められる。

サクラの切り札は完全特殊技。昨日の戦闘を見て、俺が特殊技を難なく跳ね返すことのできる三重魔方陣・鏡水を持っていることをちゃんと覚えていたのだろう。

サクラに攻撃させず、打撃攻撃を仕掛けてきたのもそういう理由か?

そういうことならそれなりには考えているのだろうが、まずこの打撃技を当てられると考えている時点で三流だ。

戦闘慣れしている紗雪や龍一ならいかに自分の技を相手に命中させ、決定打を与えることができるかどうかを最重要ポイントに設定するはずだ。

相手に技が決まるということは、そこから敵のバランスを崩すことに繋がる。

勝ちだけに目が眩むとロクなことはないぞ…

そうだろ?と紗雪のほうを見るとうんうんと頷いていた。

 

「とはいったものの…近づくのも難しいんじゃ、工夫が必要だな。サクラ、数を利用して挟み撃ちで攻めるぞ!」

 

「了解なんだよ!」

 

零二は右、サクラは左に飛ぶと零二は拳、サクラは桜色の魔弾を飛ばして攻撃してくる。

物理技と特殊技の組み合わせか…確かに躱しにくいが、できないわけではない。

 

「こういうのはどうだ?孤独な幻影(ミスゲイション)…」

 

孤独な幻影の能力でその場から一瞬で姿を消す海斗。サクラの魔弾は対象を失い、その先にいた零二をそのまま襲った

 

「ぐぁぁっ…」

 

「ま、マスター!」

 

「甘いな。味方の攻撃が自分に当たらないというのはゲームの中の話だ。現実ではそうもいかん…」

 

「ふん、サクラには手加減して撃たせてるから問題ねぇよ… 復元する世界(ダ・カーポ)!」

 

復元する世界を使い、自分の体をサクラの魔弾が命中する前の状態に戻す零二。

ほう…零二といい、サクラといい少しは動けるようになっているか…

持ち技も大体は把握できているようだし、少々こちらも責めさせてもらおうか!

俺は杖を二本持って跳躍すると、障壁を使えない零二を狙う。

狙いは当然拘束の蛇(バインド・スネーク)。

これを喰らうようなら前回と全く同じ手でやられるも同然だ…

敵ながら対抗策を練っていて欲しいという願いとともに零二を切り裂く。

…だが

 

「復元する世界!!」

 

零二がその魔法を唱えると、零二の目の前にサクラが召喚され、それとほぼ同時にサクラが魔法障壁を展開させる。

なるほど、上手く復元する世界の特性を利用したか…

 

「やるな…」

 

「へへっ…同じ手を二度も食うかっつーの!」

 

「これでもくらうんだよ!」

 

サクラが魔弾を連続…喩えるならマシンガンのように放ってくる。

だが、俺はその連射魔弾を全て杖を使って弾ききる

 

「…その程度か?」

 

「人間業じゃ…ないんだよ…」

 

サクラがいうが、まあ俺は召喚せし者だからな。

召喚せし者が人間の体を素体としていたとしても、人間通りの動きしかできないわけではない。

紗雪のように超人的なスピードで動いたり、零二のように傷を負っても治したりと様々な技を組み合わせることで俺達は人間を遥かに超越した存在として戦っているのだからな。

 

「さて、こちらの準備は整った。対抗策がなければフィナーレといこう。」

 

刹那、零二とサクラの足元に巨大な魔法陣をが広がりそれが縦に五つ並んでいく。

 

「先生の神話魔術、御神楽が来るんだよ!」

 

「確か、魔法陣の外に出て躱すのは無理なんだよな… サクラ、撃て!」

 

「了解なんだよ!」

 

俺が神話魔術(いちげき)のルーンを練り上げるのに対抗するように、サクラも神話魔術(いちげき)を放つためルーンを練り上げる。

 

「す、凄まじい魔力量…」

 

見ていた紗雪も、思わずそう呟いていた。

 

「「はぁぁぁぁっ!!」」

 

「五重魔法陣・御神楽!!」

 

「穢れなき桜光の聖剣(レーヴァテイン)!!」

 

俺の白色の巨大レーザーと、サクラの桜色のレーザーがぶつかり合う。

神話魔術と神話魔術の本気の潰しあい…

俺は火力に自信を持っているが、それはサクラも同じ。

その火力を自慢できるほどの圧倒的なものである

だからこそ、互いに自分が負けるなど微塵も予想していなかった…

故に結果は…

 

「相打ちか…」

 

零二が舌打ちする。

 

「まさか俺の御神楽を脳筋火力で止める奴がいるとはな…」

 

「穢れなき桜光の聖剣でも撃ち勝てないなんて…」

 

「だがまだ戦いは終わってねぇよ!」

 

魔法陣が消え、自由を取り戻した零二が大技を使った直後の俺に接近する。

 

「今度こそくらいやがれぇぇっ!!」

 

零二の本気の拳。

その拳に、一瞬だが青い光が灯った…

おっ?まさかこんな初期段階で「あれ」の前兆を見ることができるとはな…

零二に今の感覚を鮮明に記憶してもらうため、この技はあえて受けるとしよう。

 

「ぐっ…」

 

龍一の生の拳を遥かに上回る火力。

俺は10メートルくらい後ろに飛ばされてしまった

その火力に、零二自身も驚いている…拳一発で相手を吹き飛ばすなんて人間世界じゃ、あの朴念仁ですら難しいだろう。

それを自分がやってのけてしまったのだから…

 

「な、なんだこれ………?」

 

「試合はここまでとしよう…」

 

「あ、ああ…」

 

そう言って、俺が霧の戦場を解除すると受けた傷も消耗したみんなの魔力も元に戻っていた。

 

「マスターのパンチ、ちょっと魔法っぽかったんだよ!」

 

「自分の魔力を拳に乗せるようにして本気で殴ったらできたんだ…これは…」

 

零二の見せた蒼いパンチ…

それこそ、零二の持つ攻撃技「神討つ拳狼の蒼槍(フェンリスヴォルフ)」の前兆だ。

 

「神討つ拳狼の蒼槍。お前の使う事のできる神話魔術だ…戦略破壊魔術兵器でないから召喚せし者は倒せないが、その火力は龍一の総てを射抜く雷光(トール・ハンマー)とも互角にやりあえるほどの力を持つ。」

 

「サクラちゃんの神話魔術もすごかったけど、兄さん自身も神話魔術を放てるなんて…」

 

「ここからは、紗雪も含めて説明しよう。」

 

召喚せし者(マホウツカイ)の使用する戦略破壊魔術兵器(マホウ)とは無限大である。

使用者の思い入れによってその形を変えたり、絶対と言われる力を打ち破る力を突然手にしたり…

その無限の潜在能力を引き出す時に唱える名前を高次領域展開(セカンドアクセス)という。

並の召喚せし者ではこれが限度だが、人によっては高次領域展開のその先…超高次領域展開(サードアクセス)や、その人の潜在能力全てを引き出す究極高次領域展開(ファイナルアクセス)まで使用できる者もごく稀に存在する。

 

「零二、紗雪…お前達はその中で第四形態である究極高次領域展開まで到達することのできる非常に優秀な召喚せし者なんだ。」

 

「わ、私達が?」

 

「つまり、俺はその高次領域展開をマスターできれば、神話魔術である神討つ拳狼の蒼槍が撃てるようになるってわけか… その先は何があるんだ?」

 

「それは神討つ拳狼の蒼槍が撃てるようになったら聞きにこい。ただ、紗雪の場合はやろうと思えば今にでも開放できるさ」

 

紗雪の戦略破壊魔術兵器は本来うたまる&アルキメデスだけではない。

召喚せし者は全員綺麗な宝石のような物を過去に拾っていて、それが体内に自動的に埋め込まれることにより召喚せし者として覚醒する。

紗雪はとある事件により、その魔力結晶が半分に割れてしまっていて、現在は通常の召喚せし者の二分の一の戦略破壊魔術兵器と魔力のみで戦っている状態なのだ。

 

「私の戦略破壊魔術兵器が、まだ半分?」

 

「それだけじゃない、総魔力も半分だ。それであの里村紅葉と互角に戦えたお前は俺から見ても相当実力者といえよう…」

 

イメージしろ。

二丁拳銃は、紗雪の師匠である人物への憧れによって具現化した戦略破壊魔術兵器。

なら、お前本来の力とはなんだ?

それを脳内に思い浮かべ、力を開放するときのようにルーンを練り上げろ…

 

「魔法は発動できないけど、魔力を込める時のイメージでいいんだよね?」

 

「ああ。そして、イメージが固定できたら零二がその手助けをするんだ。」

 

「復元する世界…そうか、そういう使い方もできるのか…」

 

24時間以内の物を元に戻す事のできる復元する世界。

この「戻す」という部分だけを都合よく紗雪の魔力結晶に当てることができれば、割れてしまった紗雪の結晶を元に戻すことができるかもしれない。

こんな都合よく魔法を使うなんて普通は無理だが、魔法に絶対はない。

零二と紗雪の絆、そして紗雪の持つ鮮明なイメージと、零二の膨大な総魔力があれば不可能ではない。

 

「紗雪の胸に手を当てて、復元する世界を使い続けろ。」

 

「「………へっ?」」

 

零二と紗雪が二人して変な声を出す。

こいつらは何を言ってるんだ?強くなれるんだからさっさとやればいいのに…

それとも、気にしてるんならあえて言ってやったほうがいいのか?

 

「良かったじゃないか、大好きな妹のおっぱいが触れて。」

 

「…っぅぅぅぅっ!!!!///」

 

紗雪が声にならない声をあげて真っ赤になり、ぼんと爆発した

 

「お、お前のせいで余計に触りにくく…!」

 

零二も顔真っ赤だし…

兄妹なんだし、そこまで気にする必要も…

 

「天王寺先生はデリカシーがなさすぎなんだよ!」

 

サクラに怒られました。はい、すみません!

しかし、人にデリカシーなしの烙印を押した癖に俺の話をサクラは肯定した。

なぁ、女ってズルくね?

 

「でも、正直な話天王寺先生の話は間違ってないんだよ…ただでさえ強引に成功させようとしてるんだし、直接触れて、マスターが紗雪ちゃんのイメージ固定を一緒に手伝わないと多分無理なんだよ…」

 

「に、兄さん!恥ずかしいよぉ…」

 

死にそうなくらいに真っ赤になる紗雪。

俺はあえてそこまでは言わなかったのだが、サクラが言ってしまったので解説しよう

零二が紗雪のイメージ固定の補助を行うということは、言い換えれば、紗雪の心の中を零二が丸々覗くようなもの

胸に触れることで既に真っ赤になっている紗雪には刺激が強すぎると思ったんだがな…

 

「オーディンに勝って、戦争を終わらせるためとお互い念じようぜ…」

 

「ううーっ…」

 

「見られるのが嫌ならそっちでやってこい。俺とサクラはここにいるから…」

 

「紗雪ちゃんが羨ましいけど、ここは我慢なんだよ…」

 

俺達から少し距離を取ると、公園に人が来ないうちにさっさと終わらせようと二人は魔法発動とイメージの固定を始める。

 

「恥ずかしすぎて…死にそうかも…」

 

「わ、悪い紗雪… とりあえず、さっさとやっちまおうぜ…」

 

「兄さんその言い方卑猥…」

 

「わ、悪い…」

 

恋愛初心者じゃあるまいし、なんなんだこのたどたどしい会話は…

え?俺が一番空気読めてないって?

そんなことはわかっているさ、だが、紗雪の胸を人に触らせるなど俺とて断固反対なんだ。

空気読めないヤツのフリをして無理矢理そういう空気を潰す権利くらいくれよ…

 

「復元する世界!」

 

零二が魔法を使い、作業を始めるがどうにもうまくいかない様子。

 

「レガースか?」

 

「う、うん… 私は元々体術のほうが得意だから… でも中々うまくできないね…」

 

「思考にノイズをかけるな。互いに羞恥心か何かが残っていて、恐らく戦略破壊魔術兵器完成の弊害になっているはず。無心になれ…」

 

「んなこと言われても…」

 

「い、意識しないでよ!兄さんのエッチ!」

 

そうやって二人で戯れ合うことで余計に時間がかかってるんだけどなぁ…

まあ、レガースという用語が聞けた時点で大まかには成功しているようだし、後は放っておくか…

 

「マスターにあんなに構ってもらえるなんてズルいんだよ!」

 

「まあまあ、家に帰ったら零二に遊んでもらえよ、お前も…」

 

我慢するとか言っておきながらご機嫌斜めなサクラをあやしながら二人が終わるのを待っていた。

…しばらくすると、紗雪からカシャンという歯車が合わさるような音が聞こえるのでそちらに向かう。

 

「多分…できたと思う。」

 

「双銃双蹴の召喚せし者…それが本来の紗雪の力だ。魔法が4つに増えて、二重魔法(ダブルストック)を得たような錯覚になっていれば成功してるよ。」

 

「う、うん…何か、総魔力が物凄い増えてるのを感じる…」

 

「ひとまずは、これで紗雪ちゃんの強化完了なんだよ!」

 

サクラの笑顔を合図に、今日の特訓はこれにて終了だ。

 

「これから、零二には更なる潜在開放を目指すためサクラと共に特訓を続けていってもらう。紗雪のほうは、悠久の幻影内でしか魔法が使えないからそれはできないがな…」

 

「兄さんは特訓として、私は何をすればいいの?」

 

「紗雪には零二に召喚せし者としての知識を叩き込んでもらいたい。お前は召喚せし者について詳しい熟練者だからな…指導してやってくれないか?」

 

「ん、わかった… じゃあしばらくは兄さん達と一緒にいればいいんだね?」

 

「それと、これはお前達にしか頼めないことだが相楽苺からできる限り情報を引き抜いてほしい。あの人は、俺の知らない事を知っているようだからな… 頼めるか?」

 

「普通に生活してる上で、苺さんに話しかけるくらいならなんて事ないぜ?」

 

「うん、私も機会があったら相楽さんに聞いて見ることにするね。」

 

これで紗雪の指示も終わり…

俺達も一度解散にするか…

 

「天王寺先生は何するの?」

 

「あー…それ聞く?」

 

サクラに突っ込まれると紗雪も興味津々に…

あまり答えたくはないが…

 

「ちょっと邪魔者が現れてな… そいつにお仕置きをしに行ってくるよ。何、俺の方は心配しないでいいから今お前達は零二を強くすることだけ考えていてくれ」

 

「邪魔者…」

 

紗雪の表情が一気に変わる。

…感づかれたか?

とにかく、さっさと解散してしまうか…

 

「それじゃ、俺もここまでだ。また明日学校でな…」

 

「おつかれなんだよ!」

 

「ん…またね、海斗…」

 

邪魔者…か。

俺のレーダーをジャミングし、いいように利用している奴がいるな…

こんなふうに島全体に包囲網を引けるのは、俺以外には一人しかいないし誰かは検討がつくが…

上手く仲間に引き入れられるといいな。

皆それぞれに動き始める中、俺は利用されたレーダーの修復を始めるのであった。

 

★天王寺海斗SIDE END★

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。