fortissimo~大切な人と日常を護るために~ 作:Chelia
★芳乃零二 SIDE★
「えー…というわけで、刀狩を行った豊臣秀吉の狙いとしては…」
翌日。
月曜日になったので、普通通りに学校へ行くと紗雪や里村をはじめ、鈴白、龍一、天王寺先生と召喚せし者のみんなは学校に通い普通通りの生活を送っていた。
恐らく、先日の話し合いが上手く行ったんだろうな… 探索を優先して学校には来ないと思われた龍一もきちんと学校へ来て授業を受けている。
俺達のクラスは今、教育実習生である天王寺先生の授業を受けているわけだがわかりやすいなこりゃ…
たいして集中してるわけでもなく、流しながら聞いているだけなのに物凄くわかった気分になるぞ。
仮の姿的なこと言っておきながら、やろうと思えば教員できちゃう頭なんて羨ましいもんだな。
キーンコーンカーンコーン
チャイムと共に授業が終わる。
退屈しない授業で助かった… さて、休み時間だし誰に話しかけようか…
「れーじれーじ!!」
おっと、向こうからお呼び出しが来ちまったみたいだな
「どうした?里村。」
「今日のお昼も、生徒会室行くよね?」
「ああ。曲がりなりにもメンバーにされちまったからな。雨宮にもきちんと挨拶しておかねえといけないし…」
「芳乃くん達はあの後何したの?私達は紅葉がはしゃぎまくっちゃって結局遊んじゃったんだけど…」
昨日に続き、今日もハイテンションな里村を見ながら申し訳なさそうに鈴白が話しかけてくる。
「俺達は、少しトレーニングをしただけだ。その後は、召喚せし者(マホウツカイ)についての勉強してたよ」
「えーっ!?それ、私も行きたかったよ!私だって召喚せし者について何も知らないのに…」
「いーのよ、なぎさは… なぎさはあたしとりゅーいちが絶対守るんだから、余計なこと勉強しなくても大丈夫よ」
「それが不服だって言ってるんだよー!」
そんな話をしつつ、授業も受け普段通りに過ごした俺達は生徒会室で雨宮と談笑したあと無事に放課後を迎える。
「ふーっ…おつかれー!ダルいと思ってた学校に通うのがこんなに嬉しいと思えたのなんてあたしはじめてかも…」
「だな。それじゃ、帰るとするか…」
里村、鈴白と三人で校門を出て、家に帰ろうかと思ったその時…
悲劇の時は唐突に訪れるのであった。
雫の垂れる音がすると、世界が青色に変わる。
「なっ!?」
「悠久の幻影(アイ・スペース)だと!?」
「な、なんで… 確か、天王寺先生の話しだとしばらくの間は発動できなくなったんじゃ…」
三人とも驚く。しかし、目の前に起こったことは紛れもない真実だ
すかさず零二の携帯に電話が入ってくる。
相手は先生だった
「…もしもし?」
「俺だ。大切な事を忘れていたから、あえて連絡しようと思ってな… 盲点だったよ。オーディンさえ止めれば悠久の幻影は発動できないと踏んでいたが、オーディン以外にもう一人、あの空間を発動できる奴が残っていたな。」
「ゲームマスターである有塚陣…か…」
昨日紗雪に色々教えてもらったので、俺もその辺に関してはだいぶ詳しくなっている。
先生の発言で言いたいことは簡単に理解できた。
「御明察だ。今その場には、お前と紅葉、なぎさの三人がいるな?」
「なんで知ってんだよ…」
「レーダーで見てるだけだ。別につけてはいないさ… サクラを召喚し、今すぐサクラとなぎさを商店街エリアへ走らせろ。」
「はっ!?なんで!?」
「龍一の援護だ。詳しく説明している時間はない。有塚陣がこの空間を発動させたということは、奴が動き出した証拠だ。いくら龍一が強いとはいえ、今は魔力を消耗しきったボロボロの状態…わかったらさっさと行かせろ…」
「あ、ああ… 復元する世界(ダ・カーポ)!」
俺は言われた通りサクラを召喚し、先程受けた一通りの説明を三人にする。
「つまり、私達は今危険な状態にある龍一くんの援護をすればいいってこと?」
「そうだ。それに、ゲームマスターである有塚の力はこちらとしても把握しておきたい。サクラ、お前の対魔術兵器戦略思考(ミーミスブルン)を使って、できるだけ奴の力を記録しておいてくれ。」
「わかったんだよ!マスターを守れないのは残念だけど、今回はその役目を紅葉ちゃんに任せるんだよ…」
「ふん、上等よ。そっちこそ、なぎさに傷つけないでよね?」
「任せるんだよ!」
サクラと里村が意気投合した所で、先生から新たな指示が入る。
「零二、紅葉はそこで待機だ。敵が近づいているから迎撃しろ…」
「戦闘か…わかった。」
そういうと電話は切れた。
なぎさも納得し、サクラと共に商店街へ向けて走っていく。
「れーじ、あたしたちは?」
「この場所に敵が来るらしいから、そいつを迎撃しろってさ…」
「あ、あのね?れーじ…」
何だかすごく申し訳なさそうな顔をする里村。
どうかしたんだろうか?
「どうした?」
「あたしもりゅーいちと同じで、今魔力殆ど使い切っちゃってるの… なぎさやサクラの手前だから見栄張っちゃったけど、もしかしたら足手まといになるかも…」
そういうことか…ま、龍一の野郎がきついって先生が判断してるんだ…同じように倒れた里村もその可能性があることくらい俺も想定はしている。
つまり、俺が修行の成果を発揮してやればいいってことだろ?
「心配すんな。里村は俺が守ってやるよ… そういうのは、男の役目だからな。」
「れ、れーじ…///」
頬を染める里村。
嬉しそうにしてるし何よりだ…
さあ、誰でもかかってきやがれ!
「なんや… 熱々のラブラブやないけ…」
そう自分の中で意気込んでいると、目の前に敵が現れた。
しかし、それは見知った人物であった…
「霧崎…」
「は?誰よアンタ?」
「紅葉ちゃん酷いわー… たった2クラスしかない星見学園でしかも同じクラスやない… せめて、名前くらい覚えてもらいたいわー」
「お生憎、あたしは大抵の男にはきょーみないから。…それに、アンタはこの空間の中であたし達の前に現れた… それは、敵対の意思を表してるってことでしょ?」
霧崎が甘い言葉で近づこうとするも、完全に警戒して全く寄せ付けないようにする里村。
残念とため息をつくと、二人は睨み合いを始める。
「霧崎…お前はどこまで知ってるんだ?」
「ある程度のことはな… まあ、ワイもこの戦争に巻き込まれた被害者っちゅーわけやが、お生憎、こんなトコロで死にたくないんでな。 芳やんとはええダチになれそうやったんやが…残念や。」
「待ってくれ霧崎… 確かに、この戦争のルールは残酷だ。だけど、誰も死なずに済む方法だってある!」
「オーディン討伐やろ?ワイも噂程度には聞いたわ… けどな芳やん… 確かにその案は魅力的やが、成功率が低すぎると思わんか? 申し訳ないが、ワイは自分の生存率を下げる選択はするわけにはあかんのや…」
自分が生き残ることを最優先とする霧崎。
しかし、これは決して悪いことではない…むしろ当たり前のことなのだ。
ただでさえこんな理不尽な戦争に巻き込まれ最後の一人になるまで戦わなければならない
しかも、現実世界に自分を必要としている大切な存在がいるなら生き残りたいと思って何が悪いのだろうか?
理由は若干異なるが、里村も自分のために他人を犠牲にするという決断を当初はしていたし、俺や紗雪だって、同じ召喚せし者に身内がいなければそういう選択をしていた可能性だってあるのだから…
「交渉の余地なしってことかよ…」
「ふん、ならさっさと始めようじゃない?2対1だし、アンタなんか瞬殺してやるわ!」
「うっひょー!ええ殺気やないか紅葉ちゃん!思いっきりやらせてもらうで!」
その言葉が戦いのゴングとなり、二人は同時にあの言葉を口にした。
「「魔術兵装(ゲート・オープン)!!」」
里村の周りには相手に攻撃を掠らせただけで罪と言う名の追加効果を与えることのできる、チートのような武器である七つの大罪(グリモワール)が…
対する霧崎はというと、小型のナイフを一本手にしているだけだった。
まずは挨拶代わりにと霧崎が里村にそのナイフを投げつける。
「ベルフェゴール!」
紅葉が得意のレーザーを放つと、パリンという音と共に霧崎のナイフがあっさり砕け散った。
相変わらず凄まじい火力だな…里村の一撃は…
「ひゅーっ!ワイの戦略破壊魔術兵器(マホウ)が破壊されてしもうたわー…」
「嘘ね… この悠久の幻影の中でマホウを破壊されたマホウツカイは死ぬ… アンタが生きてる以上、それはありえないわ。」
「なんや…そっちも詳しいんじゃ面白くないわな…」
「ふざけんじゃないわよ!アンタもさっさと本気出して来なさい!」
「待て里村…ここからは、俺に任せてくれないか?」
里村の前回の敗因…それは、感情に身を任せ過ぎて冷静な判断を怠ったことにある。
それを覚えていた俺は、作戦指揮を取らせて欲しいと里村に申し出たのだ。これからは、サクラの対魔術兵器戦略思考を利用しつつ自分の戦闘スタイルを貫いていくこととなる。
それには、幾多の戦場での戦闘を生かし、知識と経験を積んでいかなければならない。
「なるほどね… 確かに、れーじに指示してもらうのも面白そうかも… けど、先に言っておくと今のアタシに極光の断罪者(ジャッジメント)を放てるだけの力はないわ… そこは頭に入れといてね。」
「了解だ。サンキューな里村…」
「作戦会議は終わったんか?なら、紅葉ちゃんのリクエスト通りにワイの本気で二人を屠ることとしますか…」
霧崎がそういうと、霧崎の周りに先程と同じ形のナイフが次々と大量に出現していく。
「大量の…ナイフ?」
「せや、これがワイの戦略破壊魔術兵器…ストリームフィールドって言うんや。よろしゅうな?」
「なるほどね…おそらく、その大量のナイフを全て破壊しないとアンタは倒せない。だから、さっき一本破壊した所で大したダメージにならなかったのね…」
「なんせ、ワイのストリームフィールドは666本まで同時に展開することができるんや。これだけの数を一度に破壊するのは困難やで?紅葉ちゃんは切り札を使えないようやし、このチャンスを生かさせてもらうわ!」
「俺を忘れるなよ霧崎… あんまり舐めてると痛い目を見るぜ?」
とはいえ、どうやって霧崎に対抗するべきか…
先程、里村のベルフェゴールは霧崎のナイフに命中しているが罪を背負った様子はない。
恐らく、当てた物質自体が消滅してしまっているのが原因だろう。
里村の七つの大罪の力で罪を背負わせ、霧崎の動きが鈍った所を俺が攻め、里村が極光の断罪者でトドメを刺すのがセオリーな攻め方だが…
里村は今極光の断罪者を放てない。
俺の方は戦略破壊魔術兵器がいないので霧崎の戦略破壊魔術兵器を破壊することはできないし、高火力技の神討つ拳狼の蒼槍(フェンリスヴォルフ)は未だ未完成だ。
一見すると俺達が有利なように見えるが、よくよく推理するとかなり不利と言えるだろう。
こうなったら俺が囮になって霧崎のナイフの注意を引き、里村が確実に霧崎本体に技を決められるようにするしかない…
そっから先は、正直運任せだな…
「行くぜ霧崎!うおおおおお!!」
「はぁ…興醒めやな芳やん… これだけのナイフを相手に拳で正面から突っ込むなんて… 召喚せし者どころか、ガキの喧嘩のほうが可愛いレベルやで?」
正面から突っ込む俺に案の定霧崎はナイフの一部を飛ばしてきた。
けど、ここまでは想定通りだぜ!
「行け!里村!」
「オッケーれーじ!レヴィアタン!ルシファー!」
俺に飛ばすため霧崎のナイフ陣に空いた僅かな穴を里村は見逃さず、そこに的確にレーザーを叩き込んでくれる。流石、大して説明もしていないのに俺の考え通りに動いてくれるとは頼りになるぜ。
「甘いわ!その程度でワイは倒せないで!」
前方と後方から同時に放たれたレーザーの箇所に2本という必要最低限のナイフを当てると、それを犠牲に攻撃を防ぐ霧崎。
死角からの攻撃はダメ…更にダメージも通らないし、追加効果の罪も背負わせられない…
こいつはかなり厄介だな…
「踊り狂う悪魔(エイレナイオス)!」
霧崎が必殺技と思われる魔法名を唱えると大量のナイフがマシンガンのように連続で襲いかかってきた。
しかも、銃口のように狭い範囲からではなく霧崎自身の周りあちこちから飛んでくる
速度的には紗雪の弾丸と大して変わりはなく、躱すのは難しくないが、これだけの数と範囲ではそれも不可能に近い。
「復元する世界!」
「はぁぁっ!!」
俺は復元する世界を使い、踊り狂う悪魔が発動する前の状態に戻すことによって躱し、里村は防御用の結晶を集めシールドを展開することで攻撃を防いでいた。
「防御が得意のようやが…いつまでもつかな?そらそらそら!!」
ナイフを飛ばし続ける霧崎。
ここからは総魔力の高い順に勝利を収めることになる…
霧崎がどの程度の魔力量を持っているのかは不明だが、里村は魔力が風前の灯の状態から強引に戦闘を行っている。
しかも、七つの大罪自身が破壊されれば死んでしまうので魔力をシールド用の結晶に送り込むことで、自らの意思で硬質化しているのだ。
「ど、どーするれーじ… このままじゃ…」
「一つ一つの破壊力は大したことなくても、これだけの数となりゃ厄介だな…」
「そろそろ…くたばってもらうで!!」
霧崎が飛ばすナイフの数を格段にあげてきた。
俺はその魔法であるストリームフィールドをずっと観察し続けていたが、どうやらあれは自動召喚されているわけではなくテレキネシスのようなもので霧崎自身が宙に浮かせていると取って間違いないだろう。
あれだけの数があるなら、里村のように自由自在な方向(死角)などからナイフを飛ばしたほうが火力の低さを補えるので明らかに有利となるが今までの攻撃は全て直線一方…
俺のように覚醒したての召喚せし者であるとするならば、まだその能力を充分に発揮できていない可能性もある…
「里村、もう一回コンビネーションでいくぞ!」
「う、うん!」
「今度こそくらいやがれええ!!復元する世界!!!!」
復元する世界を再度発動する。
しかし、今度の対象は自分ではなく霧崎…
攻撃を続ける霧崎を空中に召喚したのだ。
これで、俺達がナイフの射程から外れれば、自動追尾などの厄介な追加効果はないと考えていい。
案の定、霧崎のナイフは空中を真っ直ぐに進むだけだった
「下がガラ空きよ!!サタン!」
そこをすかさず里村が攻め込む。
自身の周りにナイフを展開しているといっても、地面に足をつく以上普通は下にはナイフをはらない。
状況が飲み込めていないうちに速攻攻撃を決める事で、高火力の技でなくとも効果は絶大…
ましてや、戦闘経験がそこまで豊富ではない霧崎はこの連携を躱すことはできなかった。
「ぐぁぁっ!?な、なんや!?」
突然宙に浮いたかと思えばレーザーでダメージを負い、その上急に目が見えなくなる。
混乱しないわけがない…
「あたしの持つこの七つの大罪には、一つ一つに罪を背負わせる能力があるの。魔法障壁だろうがなんだろうが、相手に命中さえすれば命中させたレーザーと同じ罪を相手に与える事ができる。あたしが当てたのはサタン…これでアンタは視覚を失った…」
「ば、馬鹿な… たった一発もろうただけで視力喪失やと…?そんなんチートや!!」
「召喚せし者同士の戦いにズルも何もない… 勝ったほうが勝者って教わらなかったの?関西弁のお・に・い・さ・ん♪」
満面の笑みで霧崎を煽りまくる里村
掠っただけでも数分の間は追加効果が発動する七つの大罪だが、今回は直撃。
しかも、先ほどの攻撃で霧崎は自身のテレキネシスでナイフの軌道を調節していることが判明した。
しかし、肝心な「眼」を潰されてしまいナイフを飛ばすに飛ばせない。
終わったな…あいつ…
「このやろおおおお!!ワイは、ワイはこんな所では負けんで!二人まとめてくたばれやぁぁぁぁ!!」
ヤケクソになったのか長期戦は不利と取ったのかわからないが膨大なルーンを練りはじめた。
奴の本気を受けるには、未完成でも成功させるしかない…か…
「高次領域展開・魔術兵装(セカンドアクセス・ゲート・オープン)!!」
俺はそう唱えると、自身の中に溢れる膨大な魔力を一気に解放した。
その魔力量が高すぎて、蒼色のオーラのように俺の周りを回り、今か今かとその放出の時を待っている。
「な、何この力………れーじ?」
「さ、流石やな芳やん… 目は見えないが、物凄い力を感じるで… 思わず身震いしてもうたわ… けど…それでもワイは負けん! 将来の親友とも呼べるダチ同士の本気の一発(いちげき)…ぶつけ合おうやないか!!」
「ああ… 決着をつけよう…霧崎。」
「れーじ!アンタの技じゃ戦略破壊魔術兵器は壊せないでしょ?あたしの力も受け取っときなさい!」
そういうと、里村が自分を守る大切な七つの大罪を全て俺の周りに置いてくれる。
それだけ俺のことを信用してくれるのか…
ここで俺が負ければ、自動的に里村、サクラを失うことに繋がる。
俺だって負けられねえ… もう互いに言葉は交わさず、ありったけの魔力を力に変えて…今放つ!!
「これがワイの全力… 666本のナイフ全てを使った神の一撃や!! 黙示録に記されし皇帝(ネロ・アポカリュプス)!!」
霧崎の言葉通り、全てのナイフが一点に集中し、一本の巨大な刃物となって俺に襲い掛かってくる。
おそらく、目が見えないので感じ取れる膨大な魔力に向けて撃ったのだろう…
だがそれであってるぜ?俺はここにいる…
お前の666本…俺の拳で全部打ち砕いてやるよ!!
俺の全力…里村の全力…
俺達の力をくらいやがれ!
「これが俺と里村の力だ!神討つ蒼槍の断罪者(ジャッジメント・ヴォルフ)!!」
神討つ拳狼の蒼槍(フェンリス・ヴォルフ)+七つの大罪・全弾発射(グリモワール・フルスロットル)
2つの魔法が合体し、奇跡にも近いまぐれの一撃が発動した。
俺の神話魔術に里村の虹色の光が重なり、凄まじい威力の拳が霧崎のナイフと正面からぶつかり合う。
巨大な爆発音と共に、ついに決着はつくのであった。
「ワイの負けやな…芳やん…」
立っていたのは俺と里村。膝をつき崩れ落ちるは霧崎であった。
戦略破壊魔術兵器を全て同時に破壊された霧崎からは、緑色の消滅光のようなものが出ていた。
これが召喚せし者の死より重い死…
里村も見るのは初めてらしく目を丸くしている。
召喚せし者はこの最終戦争(ラグナロク)で敗北すると、存在ごと全て消滅してしまう。
つまり、自分がこの世界で生きていたということさえみんなに忘れられてしまい覚えていられるのは同じ召喚せし者だけ…
家族も、友人も、大切な想い人も…みんな自分の事を忘れてしまうのだ
「なぁ霧崎… お前はどうしてそこまで生きようと必死だったんだ?」
「ワイの?そんなことを聞いてどうするっちゅーねん…」
「ただ、自分のためだけじゃないってのは戦うことで伝わってきた。だから俺は、お前の全てを聞いた上で、お前の想いを引き継ぎたいんだ… それが勝った奴のやるべきことだ…」
こうして俺は霧崎が消える前に、彼の想いを聞くことにした。