fortissimo~大切な人と日常を護るために~   作:Chelia

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天才同士の駆け引き

「なるほどな… けど、そんなに重い話でもないで? 芳やんには恥ずかしいからあまりいいとうないが、どうせ消えちまうんなら話してもええか…」

 

☆霧崎回想☆

 

霧崎剣悟。

幼い頃から自由気ままに生きるヤンチャな少年だった…

巧みなトークを使い、何人もの女と付き合っては別れるを繰り返し女たらしと呼ばれたり、時には喧嘩をしまくってその戦いに勝ちまくったりと若いからこそできるような行動だけを自分の気の向くままに繰り返していた。

だが、そんな霧崎に今まで経験して来なかったような出来事が突然起こることになる。

ある日、学校の帰り道…また新しい女と喧嘩をし別れてイライラしている霧崎。

そんな霧崎の前に、横断歩道を渡りきれず車に引かれそうになっているお婆さんがいた。

 

(ワイには関係ないが、目の前で死なれたら胸糞悪いからな…)

 

そう思い、ダッシュでお婆さんに駆け寄り、助けてやる

 

「大丈夫か?ばーちゃん… この辺は運転荒いおっちゃんもいるからきいつけてぇな…」

 

そのお婆さんは霧崎にとても感謝をした。

手料理を振る舞うと霧崎を誘うが、面倒くさいので正直断りたい…

しかし、そのお婆さんの心からの笑顔を見てしまってはそういうわけにもいかなかった。

 

「まっ、お礼っちゅーんならもらってやってもええけどな…」

 

そういってお婆さんについていく。

しかし、手料理を振る舞う理由はお礼ではなかった。

ご近所の方に聞いた話だが、自分の事を、死んだはずの夫と勘違いをしていたらしい…

このお婆さんの夫はもう何年も前に亡くなっているのだが、お婆さんにその自覚はなく何年も何年も帰りを待ち続けているのだとか…

自分は違う…そう何度言っても、お婆さんが理解することはなかった。

 

「でも、知っちまった以上は無視はできへんがな…」

 

いつもはチャラチャラしているが、根はとても優しい生活を持つ霧崎はそのお婆さんと「霧崎剣悟」として友達になるという決断をしたのだ。

 

「ほな、また来てやったで?ばーちゃん…」

 

こうして、友達として自分の身の回りに起こったことなどをお婆さんのためにたくさん話してあげる。

流石に年代が違うし、お婆さんも相当弱っているのであまり話は繋がらないのだが、とても楽しそうに話す霧崎を見ると、そのお婆さんも笑顔になるのだった。

 

「また来るでばーちゃん!楽しみにしててな!」

 

そうお婆さんと約束をして霧崎は今日を迎えていたのであった。

 

☆霧崎回想END☆

 

「ワイはただの悪ガキや… けどな、心からの笑顔でワイのことを待っててくれるダチがおる… だから生きて…生き抜いて…もう一度、ワイの話をダチに聞かせてやりたかった…」

 

しかし、零二と紅葉に敗北した今、その願いは当然叶わない。

召喚せし者(マホウツカイ)の死は現実より思い。

死んでしまえば、その存在を通常の人間は忘れてしまう…

夫が生きていると信じ、自分の帰りを待ち続けているお婆さん。

霧崎がいなくなれば、また孤独に戻ってしまうだろう

 

「へー… アンタ中々良い奴なのね…」

 

「お前にそんなことが…」

 

「ま、けどワイはもうダメや… だから芳やん…たまにでええ…ワイの想いを受け継いでくれるんなら、そのばーちゃんの話し相手になってやってくれんか?紅葉ちゃんもこの通りや…」

 

自分が消え続けている状況で、泣きながら二人に頭を下げる霧崎。

男の頼みなど軽く蹴り飛ばしてしまう紅葉にも、その願いは届いたようだ。

 

「わかったわ… けど、戦いに関して情けはかけない。安心して逝きなさい?断罪者の私が、アンタを無罪にしてあげるから。」

 

「俺達の目的はオーディンを倒して究極魔法を発動させることだ。その時に霧崎…もし、お前を復活させてやることができたら…お前もちゃんと会いに行ってやれ…」

 

「本当にあんがとな二人共… ま、期待せえへんで待ってるで…」

 

そういうと霧崎は消滅し、消えていった…

最後はあっけないものなんだな…

それは、零二と紅葉…二人が思った同じ感情だった。

 

★芳乃零二 SIDE END★

 

★天王寺海斗 SIDE★

 

零二達が霧崎と戦闘を行う前…

そう、丁度零二との電話が終わった時の話である。

電話を切った俺は、俺のやるべきことのため目的地に向かっていた。

前に紹介した俺の魔力探知レーダー…それを利用し、自分の能力に役立てている奴がいる

俺とそいつ…この二人は今、どこに誰がいるか全てわかっている状態と言うわけだ。

だから俺が接近しているのにも気づいているはずだが、動く様子はない。

こちらが来るのを待ち構えているのか?

まあいいさ…俺はミストガンに変装すると対象の人物の元へと辿り着いた。

 

「………」

 

俺を待っていたのは、黒服の女。

俺のようにベールで顔を隠し、特徴的な金色の髪をなびかせながらこちらを無言で見つめている。

始まりの大地(イザヴェル)で無言を貫いていた女の方といえばわかるだろうか?

だが、俺は未来人…常人なら知り得ないことも知っているのさ。

だからそのアドバンテージを利用してこちらから仕掛けてやる。

 

「俺も正体を明かす… だからお前も正体を明かせ。俺のレーダーを利用している天才ハッカーさん?」

 

「………」

 

しかし相手は無言のまま。

おそらく、こちらのことを観察しているのだろう…

俺がどこまで知っているのか?俺は何者なのか?俺の強さはどの程度か?まあ、そんな所を観察しようとしているのだろうが、俺は暇人じゃない。

さっさとこの用件を済ませ、零二や龍一の様子を見に行ってやりたいのが本音だ。

 

「ちっ…面倒ごとは嫌いなんだよ… ここまで言わなきゃ動けないのか?星見学園3年、生徒会長の雨宮綾音さん?」

 

「………!?」

 

明らかに動揺した。

俺も龍一に正体を見破られた時は驚いたが、相手側から見るとこんな反応になるのか…

こちらも正体を明かすと言ってしまったので、先に俺が顔を隠している布をとることにする。

 

「あらあら… そういうこと… まさか、貴方がこの戦争に絡んでいるだなんて私もびっくりだわ…」

 

俺の素顔を見ると、諦めたかのように綾音もベールを外す。

 

「高校生がハックなんてしちゃダメだぞ?それを注意してやろうと思ってな。」

 

「先生に怒られちゃったわー… こんなことは今までなかったから中々新鮮ね… 悠久の幻影(アイ・スペース)にまで来て教育指導されるなんて、思ってもみなかったけど…」

 

「先に言っておくが、俺に戦闘の意思はない。冷静なお前なら理解した上で真偽を確かめられるだろうからな… 少々、この戦争についての話をしにきただけだ。」

 

だが、状況が状況だけに流石に警戒される。

やらなければやられるだけの空間で自分の正体を見破った相手なのだから当然だろう。

 

「言っておくけど、私は最終戦争(ラグナロク)のルールや召喚せし者の知識については詳しい方よ?それに、誰が召喚せし者なのかも貴方のレーダーと私の脳力を合わせたことで大体は把握してる。情報の取引であるなら応じるつもりはないわ…」

 

雨宮綾音。

みんなも知っての通り、この人は星見学園のスーパー生徒会長…故に、どんなことにも弱点なんてないのだ

俺は、零二達のように綾音を味方に引き入れたいのが狙い。

紅葉といい綾音といい、味方に加わればこれほどまでに戦力になる召喚せし者も中々いない

しかし、直線的な紅葉と違い、この女を口説くには相当な苦労が必要となるだろう。

さて…どうしたらいいものか…

 

「なら、不意打ちされない程度に好きなだけ距離を取れ。その他、お前が指定する条件はすべてのもう。その上で会話をするというのはどうだ?」

 

「気前いいのね… なら、貴方の戦略破壊魔術兵器(マホウ)である背中に刺さった5本の杖… それを全て私の前に置きなさい?」

 

綾音の条件は相当厳しい。

戦略破壊魔術兵器を破壊されれば召喚せし者は死ぬ。

それを敵の前に置くというのは、俺の命を綾音に差し出すといっても過言ではない

だが、俺はそれを即答で答えた。

 

「いいだろう。」

 

「なっ!?あ、貴方馬鹿じゃないの!?戦略破壊魔術兵器を失えば召喚せし者は死ぬ…そんなこともわからないで!」

 

「わかった上で良いと答えたんだ。ほらよ…」

 

綾音は驚くが、俺は杖を全て言われた通り彼女の目の前に投げ捨てた。

 

「これで俺の話を聞いてもらえるんだろう?」

 

「貴方って馬鹿なのね… まあいいわ…面白そうだし聞いてあげる…」

 

ちょっとした刺激を与える事でこちらに興味を持ってくれたな…

それは好都合。

俺はオーディンの件や、それに関して零二達がみんな協力してくれていることなどの現状説明を全てする。

 

「…というわけだ、だから紅葉達の友人である君には敵対するのではなくできれば味方になってもらいたいんだが」

 

「なるほどね… 確かに、理には叶っているし貴方の言う通りに事が進めば召喚せし者同士の殺し合いは避けられるかもしれないわ…」

 

「だがオーディンは強い… だからこそ、みんなの力が必要なんだ…」

 

おそらく綾音のことだ…それ以上は語らずもそのために俺が学校に潜入したことや、こうしてみんなに近づいていることなども全て理解しているだろう。

その上で、彼女の決断を変えたい

かなり考え込んだ表情を見せたあと、綾音が答える。

 

「魅力的ではある… けど、私は最悪の場合紅葉達がどうなっても構わないと思っているわよ? そういうふうに「決断」してるの。」

 

「それほどまでに大事か?零二のことが…」

 

「な、何故それを!?」

 

驚く綾音。

綾音の決断…それは、この戦争において芳乃零二を守り抜くことだ。

そのためには、どんな犠牲も厭わない…

それほどまでに零二に惚れているのさ…病気のようにな

本当に役立つな、未来人ってのは…何だか最近つくづくそう思う

 

「俺が油断ならない相手なのは今の会話で充分わかっただろう?そんな俺を敵に回し零二を守るか、それとも俺と協力関係になりオーディンを倒すか… 後者なら紅葉やなぎさも死ぬことはないし、悪い話ではないと思うんだが?」

 

「そうね… 確かに、情報面に関しては中々やるわ… けど、戦闘面はどうなのかしら?もし貴方の「本気」で私を倒すようなことができれば、その強さを認めて協力してあげてもいいわよ?」

 

「本気だと?」

 

「そう。貴方の戦略破壊魔術兵器って、この杖じゃないでしょ?でなければ、いつ殺しにくるかも分からない相手の前に晒すはずがない。おそらくは戦略破壊魔術兵器のように見せかけるダミーってとこかしら?」

 

…読まれたか。

流石は綾音だな。

確かに、俺の戦略破壊魔術兵器は5本の杖ではない。

俺には霧の力の他に、俺本来の魔法である流星の力がある…

自分相手に戦力を隠される行為が気に食わないのと、自分のアドバンテージを増やすためにこちらの手の内を把握しておきたいのが本音だろう。

 

「どちらにせよ…その杖だけでお前に勝てるとは思っていない。お前の言う通り、本気で行かせてもらうことにしよう…」

 

「私も約束は守るわ… そちらも、究極魔法発動のために零二くんを守るのが目的のようだし、利害自体は一致しているから… ただ、弱い男に女は釣られない。それだけよ…」

 

「ふっ…面白い。戦乙女(ワルキューレ)の力、俺に見せてみろ!!」

 

「あっ…」

 

「なんだよ…こっちをやる気にさせておいて…」

 

やる気満々になった俺を、綾音のしょぼい呟きが潰した。

おいおい…何だかちょっと恥ずかしいじゃないか…

 

「ほーら猫ちゃん出ておいで? そこにいるのはわかってるから…」

 

「………!?」

 

綾音が悪魔のような笑みで俺の背後にそう囁くと、ビクッとしたように影から紗雪がでてきた。

 

「さ、紗雪!?」

 

「ば…バレたなんて… 気配は消していたのに…」

 

俺ですら尾行に気づけなかったのだ。

紗雪はそれで自信を持ったようだが、それを綾音は見抜いた。

えっへんと自慢する綾音に紗雪は悔しそうに唇を噛む。

 

「私を甘く見ないことね… とはいえ、天王寺先生の伏兵というわけではなさそうだけど?」

 

「私は私の意思で行動していたに過ぎない。海斗が邪魔者を何とかするって言った時、悠久の幻影が発動するときに動きをみせるって思った」

 

「だから、悠久の幻影の発動に合わせて俺を尾行したというわけか…」

 

「まさかその相手が生徒会長さんだなんて私も驚いたけど…」

 

やれやれ…紗雪に一本取られてしまったな。

俺は汚い仕事をすることも少なくないし、こういった行動はできれば今後はやめてもらいたいものなんだが…

 

「で?ストーカーさんは何の用事?」

 

「兄さんのストーカーしてる貴女には言われたくない… 話は聞かせてもらったけど、海斗に手を出すなら、私も黙ってはいないのだけど?」

 

「いいわ… 貴女も協力関係の一人のようだし、二人まとめてかかってきなさい。」

 

俺と紗雪。その二人を同時に相手すると宣言する綾音…

相当な自信を持っているな…

だが、それは過信ではない。はっきりいって綾音は相当な強者な上に戦闘経験もある

それに、俺はこいつの魔法は苦手分野の一つなんだよな…

対策を練りにくいのと、相手の動きを予想し辛いのが何ともイライラする。

 

「そういうことだから、私も一緒に戦うね?足手まといにはならないから。」

 

「はぁ…どうせ断ってもしつこく参戦したがるんだろ?だが、綾音の魔法はかなり強力だ。手強い相手になる以上、戦うなら出し惜しみせず本気で行け。」

 

「ん、わかった…」

 

「決まりのようね… じゃあ、私を協力させるのに相応しいかどうか、直々に見てあげるわ!!」

 

海斗&紗雪VS綾音

戦闘開始(バトルスタート)…

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