fortissimo~大切な人と日常を護るために~   作:Chelia

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放課後の零二と海斗

放課後

今日は通常通りの学校なので、日暮れまで2時間ほどしかないが俺は里村とデートすることになった。

 

「あーあ… 初デートは思いっきりおしゃれしようって決めてたのに…」

 

「ま、お互い制服ってのも学生らしくていいじゃねえか。 それで、どこ行くんだ?」

 

里村をなだめつつ、行き先を尋ねると自信満々に「ないっ!」って言い切ってきた。

お前から誘ってきたんじゃないのかよ…

 

「とは言っても、まだお互いのことよく知らないわけだし今日は雑談でもしながらショッピングモールでも歩くか?」

 

「うん、それでいーよ? 流石にこの時間じゃ行ける場所も限られてくるからね。」

 

「んじゃ、適当に歩きますか」

 

里村が手をつなごうとしてくるが、さり気なく避ける。

まあ、今回は付き合ううんぬんの答えを探す為に里村のことを知るのが目的だしな…

 

「里村は島人なのか?」

 

「うん、生まれた時からずっとそーだよ? 島の外には数回は出たことあるけど、それでもやっぱ都会から来たれーじには興味津々って感じだね!」

 

「おいおい、前にも話したが俺も島人だぞ? それに、そこまで都心のような所には住んでないし月読島にもショッピングモールができたからたいしてかわらねえって…」

 

「そっか… でもさ、島の外…ううん 正確には世界中の色んなとこ見て回るのってあたしの夢なんだよね…」

 

二人で歩きながら話をしていると里村がいきなり夢について話してきた。

そう、この頃の俺は全く知らなかったことだが最終戦争のルールにより里村を始め、12人の召喚せし者は島からでることすら許されない。

元々「外」に興味があった里村としてはかなり不服のものだったのだろう…そして、それが原因で尚更外の世界に興味を持ったってところか

 

そんな話以前に、あいつは人に縛られるのが大嫌いだからって理由でも充分納得は行くけどな…

 

「島の外に興味があるのか?」

 

「うん。あたしってさ、人に縛られるのが嫌いなんだよね… どんな時でもあたしらしく真っ直ぐに生きていきたい… だから、風の音が聞こえる方に旅するーとかって話、結構好きなのよね」

 

「なんかそれだと、男のロマンみたいに聞こえるな」

 

「なによー!別にいいじゃない!」

 

苦笑いしつつも軽くからかってやると頬を膨らませて怒ったが、やがては里村も笑顔を見せ二人で笑った。

っと、そんな話をしているうちに目的地についたな。

 

「ついたー! れーじ!れーじ!どこから見る!?」

 

「相変わらずテンション高いな… 里村はどこに行きたいんだ?」

 

「うーんとね…うーんとね… 全部!」

 

「い、いや全部は無理だろ! というか、こんなでかい店丸一日あっても全部は見れないな…」

 

「じゃ、少なくともここ全部見終わるまではデートしてもらうからね? れーじから言い出したんだし、逃さないんだから!」

 

してやられた…

やっぱ小悪魔だなこいつは。でも、その真っ直ぐなアピールを素直に嬉しいと思ってしまう自分もいる。

美樹の事とかがなければ、それこそ里村の告白を受け入れてしまっていたかもしれない。

 

「わーったよ… んじゃ、今日はその辺から見ていこうぜ?」

 

「あいあいさ!」

 

やべっ…ビシッと決めてくる敬礼ポーズがやけに可愛かった。

て言うか、着替え覗いた時も何やら色々かんがえてたみたいだし油断は禁物だな

恋愛経験無いくせに人を魅了する何かを持ってるなぁ里村は。

 

「うわーきもーい!!」

 

何か変なぬいぐるみを片手でつまみながら里村が叫ぶ。

おいおい、確か似可愛くはないがここは店の中だぞ…少しは遠慮しろよ

とにかく、別の話題を振ってなんとかしなければ

 

「そういえば、里村は鈴白や龍一たちと面識はあるんだよな?どんな関係なんだ?」

 

「そうだねー… 難しい説明省いて恥ずかしい言葉を使えば、なぎさは親友かな?りゅーいちは、なぎさの幼馴染だからある程度は話すけど、フツーの男ならまず会話すらしてなかったでしょうね。」

 

「どんだけ男嫌いなんだよ…」

 

「ま、あたしにも色々あるのよ。かいちょーとももちろん仲はいいよ?昼間話しそびれたけど、あの人は一人で生徒会の職務を全部こなしてるの。」

 

「た、たった一人で全部!?」

 

「うん、あたしとなぎさは名目だけ生徒会メンバーだけどそれはかいちょーとあそこでお昼を食べるためだったり」

 

おいおい…仕事全部押し付けるだけ押し付けて、お前ら遊んでるだけだったのかよ…

それにしても、雨宮は想像以上にできる生徒会長だったんだな。

あれ?まてよ…てことは…

 

「それだと、俺が今日行ったのはまずかったんじゃないか?」

 

「うん、だからかいちょーに頼んでれーじは生徒会副会長にしといたから!」

 

…………………………

…………………………

……………………ん?

 

「お、おい!ちょっと待てえぇぇぇぇ!!」

 

「ち・な・み・に!拒否権とかないから!今日書類書いて職員室出しちゃったし」

 

と、言いながら悪魔の笑みを浮かべどこから持ち出したのか芳乃家のハンコを指先でくるくると回し出す。

 

「芳乃家のハンコ…だと!?」

 

「かいちょーにかかれば、れーじの文字体なんて簡単にマネて貰えるからねー 後は、100均でハンコ買ってくれば万事解決!てなわけで、ようこそ生徒会へ!」

 

「あ…が… ちょっ、おまっ!」

 

「あはは!れーじってば変な声!おもしろーい!」

 

悪魔だ…こいつは悪魔だ!

おそらく雨宮がノッたのだろう、どこにも隙がない完璧な計画で俺はまんまと生徒会副会長にさせられてしまった。

くそう…やられてるだけなんて俺には似合わないが、あいにく反撃の手段が思いつかない。

今日は里村にやられっぱなしだな

 

「まあ、さっきも言ったけど仕事はかいちょーがみんなやってくれるから生徒会室でお弁当食べられるチケットだと思って、気楽に職についてよ。」

 

「い、いや…そういうわけにもな… その気はなかったとはいえ、曲がりなりにもなってしまったからには雨宮の負担も減らしてやるのが生徒会メンバーだろうし、男だろうしな…」

 

「やっぱり、れーじは優しいね… そういうとこ、好きだよ」

 

ドクン…

真っ直ぐな目で里村が改めて告白してくる。

俺も理屈ではわかっている。恋愛に過ごした時間なんて関係ないって

しかし、里村には失礼だとわかっていながら、俺は過去に付き合っていた美樹への思いが振り切れずにいた。

 

「あたしね、こう見えても人を見る目あるほうだと思うの。今まで男なんてどうでもいいって思ってたあたしが、れーじを見て躊躇わずに向かって行けたのは、きっとれーじがこういう良い人なんだって確信が自分の何処かにあったからだと思うの。」

 

「里村…」

 

「ねぇれーじ… すぐに答えをくれなんて言わない… だけど、私は真っ直ぐなんだってことだけわかって欲しいの。今日はこれだけで充分だよ」

 

「ああ、わかった。里村の思い、受け止めておくよ。時間も丁度いいし、送ってくか?」

 

「ううん、大丈夫。何気ない買い物だけど、れーじと二人きりでいっぱい話せて楽しかったよ!またね、れーじ!」

 

帰ると決めたら真っ直ぐ帰るらしく、俺に元気よく手を振ると里村は帰っていった。

里村の思いと自分の気持ちに葛藤しながら、俺も帰路につくのであった。

 

★芳乃零二 SIDE END★

 

★天王寺海斗 SIDE★

 

零二と紅葉が放課後デートに向かう中、零二の妹こと黒羽紗雪は学校の中庭で人を待っていた。

 

「…遅い」

 

頬をぷくっと膨らませ、ふてくされる紗雪。

そんな子を見つけたら例え時代が違く、自分のことを知らなかったとしても話しかけてみたくなるというものだ。

 

「こんにちは」

 

「あ、…えっと、天王寺先生?」

 

「へぇ、ちゃんと先生の名前覚えるんだね、黒羽さんは。」

 

「自己紹介が面白かったから印象に残ってるだけ… 授業楽しみです。」

 

「そうか、残念ながら隣のクラスは放課後での紹介になってしまったから時間が取れなかったんだけどね。そう言ってもらえると嬉しいよ。」

 

零二達のクラスの前に、紗雪達のクラスで自己紹介をした俺は早くクラスに溶け込むために色々と面白い話などをしてクラスを盛り上げていた。

…というのは建前で、本音は早い段階で召喚せし者と接点を持つきっかけを増やしていたに過ぎないんだけどな。

 

「君の愛しのお兄さんは帰ってしまったけど、違う人を待っているのかい?」

 

「えっ!?」

 

そこで紗雪は驚く。

今日出会ったばかりなのに、自分のことを知られているという不自然さに疑問を持ったのだ。

 

「どうして、私と兄さんのことを?」

 

「いや、何、兄の零二くんのほうと少し喋ってね…中々面白いことをしていたから調べたら、家族名簿に君の名前があったからね。同い年の居候なんて中々大変だろ?」

 

「そういうことですか… そんなことないですよ? 兄さん、ああ見えて家事とかキチンとしてくれるので私はむしろ助かってます。」

 

「へぇ…零二くんにそんな一面がね… 仲良くて何よりだよ。」

 

零二と紗雪の家族トークに華を咲かせていると、紗雪の待ち人と思われる人が急いで走ってきた。

 

「はぁっ…はぁっ…ごめんね紗雪ちゃん!」

 

「ん、大丈夫…お疲れ様。」

 

なるほど…そういうことか…

紗雪が待っていた相手はクラスメイトであり零二の元カノでもある水坂美樹だった。

 

「あ、先生とお話してたの?こんにちはです!」

 

「うん、こんにちは。さて、黒羽さんの時間潰しに慣れたみたいだし僕はこれで失礼するよ」

 

「あ、待って!」

 

女子同士の会話に水を指すのも悪いと思い、帰ろうとすると以外にも美樹の方に呼び止められた。

 

「ん?」

 

「私達、これから商店街の方に買い物に行くんですけど、先生もよかったら一緒にどうですか?教育実習生なら残業とかないですよね?」

 

「えっ?」

 

「ち、ちょっと美樹さん!?」

 

美樹の突然の誘いに俺はもちろん、紗雪まで驚いていた。

 

「い、いやぁ… ここに来る前に零二の話ししてるの聞こえたから、できれば私も混ざりたいなぁー…なんて ダメですか?」

 

「なるほど…そういうことか… 確かに、僕も帰るところだし構わないけど黒羽さんはいいのかい?」

 

「…私のいないところで兄さんの話されるよりはマシなので行きます。」

 

普段は仲良くても、やはり美樹から零二の話を聞くのは機嫌が悪くなるのかプイッとそっぽを向きながら承諾する。

まさかこんなところで過去世界の紗雪と接点を持つことになるとはな…

美樹には感謝しておくか…心の中で

 

というわけで、商店街に向けて歩く俺達三人。

 

「さて、学校は出たわけだしもう教師として扱わなくていいぞ?授業の時も言ったけど、俺はお前等とは年も一個しか違わないしな」

 

「わっ?口調が変わった…」

 

「でも私達より一つ先輩ですよね?流石に呼び捨ては…」

 

驚く紗雪と申し訳なく苦笑いする美樹。

 

「まあ、そりゃそうなんだけど、俺は目上として見られるのが好きじゃないんだ。星見学園の生徒会長さんだって、年下に呼び捨てで名前を呼ばせてる噂もあるらしいし俺の事も気楽に呼んでくれると嬉しいんだけどな。」

 

「じゃあ、海斗でいいですか?」

 

「ああ、それで構わないよ。俺の方も紗雪と美樹って呼ばせてもらう。」

 

紗雪が案外素直に呼んでくれるようなので、こちらも呼び捨てで呼ばせてもらうことに。

そりゃそうだ。誰だって24時間教師としての誇りを持って生きている熱血野郎なんてそうはいない。

普通の人間なら、仕事が終われば家に帰って、自分の自由な時間を過ごすのが普通の社会人ではないだろうか?

それはサラリーマンだろうが教員だろうが関係ないし、その自由な時間を俺は生徒である紗雪達と一緒に使っているだけのこと。

そういう話をすると、美樹も納得して呼び捨てで呼んでくれた。

その後は、零二の話題で盛り上がっていた。

美樹が元カノだった話や、紗雪が尊敬している兄として見ていることなどが話題の中心となったが、案外暗くならず盛り上がっていた。

まあ、零二の覗きの話をしてやってもよかったのだが、一応彼の名誉のために聞きに徹していた。

(あれでも一応将来のロキだしな…)

 

そして、話が一通り終わると商店街についた。

 

「ついたね!」

 

「二人はよくここに来るのか?」

 

「うん、美樹さんとよく買い物にくるの。もちろん、ショッピングモールも嫌いではないけど私はずっとこの島で育ってるからこういう空気のお店も好き。」

 

「私は、バイト先があっちだからなぁ… やっぱりこっちの方が落ち着くの。特にプライベートのときはね。」

 

「なるほどな… 俺も商店街の空気は嫌いではない。この島は不慣れだし、何かいいお店があるなら教えてもらおうかな。」

 

「私達はこのお店によく行くのです!」

 

美樹と紗雪に連れられ、来た場所は大判焼き屋さんだった。

 

「…大判焼き?」

 

「うん、ここの大判焼きはおいしいからよく二人で食べに来るの。」

 

「私のオススメはこれ!納豆苺ヨーグルトソース!!」

 

「私は、普通にこれかな?兄さんがよく買ってきてくれてたからだけど…」

 

何なんだこの女の食センスは…

納豆苺ヨーグルトソースだと?

俺は料理はできるほう…というか、むしろ得意分野で過去の戦闘でも食事は全て自分で確保し作っていた。

だが、そんな俺でもこんな大判焼きはかつて見たことがない。

それ以前にそんなもん売ってて売れるのか?

紗雪のオススメはクリームだったので遠慮なくそちらを選ばせてもらおう。

 

「大変申し訳ないが、紗雪と同じので頼む…」

 

「えーっ!?海斗も零二と同じこというの!?食わず嫌いは損するよ損!」

 

「その理屈は大変よくわかるが、あいにく明日は腹を壊したくないのでな」

 

「全く、失礼しちゃう!」

 

「ふふっ…」

 

紗雪が笑いながら三人分の大判焼きを買ってきて渡してくれる。

 

「悪いな、奢ろうか?」

 

「ううん、100円くらい自分で出す… 美樹さんはいつもこうだから… 兄さんも料理は得意なんだけど、美樹さんに出す料理だけはかなり苦戦したんだって。」

 

ま、そりゃそうだわな。

俺ですらこいつが彼女だったら正直何出してやればいいか検討もつかない。

 

「うーん!おいしい!」

 

「確かにこれは美味いな。」

 

納豆苺ヨーグルトソースに満面の笑みでかぶりつく美樹。

クリームの方は普通に美味しかった。

言葉では言い表しにくい、昔懐かしい旨味が口の中に広がり近代の調理器具では出せない味を味わうことができた。

こりゃ、料理界の原点に帰りたくなっちまうような味だ。

 

「ふう…あまり遅くなると、晩御飯遅れちゃう…今日は私が作る番だから…」

 

「それもそうだな… 俺も立場上、学生の女の子に夜遊びを推奨するわけにも行かないしここら辺でお開きにしよう。」

 

「海斗との買い物楽しかった!機会があればまた誘うね?」

 

「私も…楽しかった… それじゃあまた…」

 

「ああ、二人共気をつけて帰れよ?」

 

まさか最終戦争直前にこんなことが起こるなんてな。

絶対に紗雪を護り抜きたいという思いを更に固める中、俺は帰路につくのであった。

 

★天王寺海斗 SIDE END★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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