fortissimo~大切な人と日常を護るために~ 作:Chelia
今回の話は6666文字丁度でございます!!
…だから何だって言われても何もないのですが、今回の龍一と海斗のガチンコ勝負は、私の中でもお気に入りの話なのでゾロ目を見た時はなんだか嬉しい気分に(笑)
てなわけでお楽しみください!
(龍一とコードギアスのスザクってホント性格似てるよね…ボソッ)
俺の魔法発動を妨害した龍一は、零二達を庇うように立ち、俺を睨みつけた。
「そんな………龍一まで………」
その光景をみた紅葉には絶望しかなかった。
何で…何で私の知り合いばっかりこの戦争に参加しているの?
心身共に耐えられなくなった紅葉はついに意識を失った。
「ごめんよ… 里村。 さあ、今すぐこんな戦いはやめるんだ!これだけのことをして、許されることじゃない…でも、今すぐ手を引くというのならまだやり直せる!」
紅葉に謝罪の言葉を言うと、今度は俺に警察みたいなことを言い始める龍一。
おそらく、オレがここにいる4人をまとめてやったと勘違いしているのだろう。
俺とて、元々ここで始まった戦いを止めに来ただけなんだがな…
「……………」
龍一の言葉を聞いているかいないかわからないように無視する。
今まで順調に進んでいた計画は、ぶっちゃけこいつのせいで台無しになったようなものだ
「聞いているのか!」
「…俺は俺の目的のために動いている。皇樹龍一…始めに言っておくが、俺は戦うつもりはない。戦わない条件はお前が俺に従うことだ」
「何を馬鹿なことを… 僕の友人達をこんな状態にした君の言う事なんて、聞けるわけないだろう!」
なんてご都合主義だ。
人には偉そうに命令しておいて、自分は要求を一切受け付けない。
まるでダメな政治家そのものだな…はっきり言って、俺はこういう偽善者が大嫌いだ
本当の苦しみを知らないくせに偉そうに正義を語る…それは、苦しみを知った者にとっては苦痛でしかないのだ。
当初の予定にはないが、こいつを野放しにするわけにもいかないし、少し実力というものを教えてやろう
「意見の相違だな。この場合、どうすれば俺は従う? 自分の正義を押し通す為に、相手を力によって制圧するというなら受けて立とう。」
「くっ… 僕だって、本当は戦いたくないさ…だけど、貴方なんだろう?「天王寺先生」!!」
「………は?」
「なっ!?」
龍一から出た意外な言葉に零二も紗雪も驚いていた。
それに加え、態度や表情には出さないが俺自身も驚いていた。
特にバレる言動や行動をこいつの前でした覚えはない。
前言撤回…こいつを野放しにしておくと危険だ。
一度叩き潰し、こちらの味方になるように誘導するしかないだろう
皇樹龍一…オーディン、ロキに並ぶ三極神「トール」の力を持つものか…
「ふふふっ…ふはははははっ! まさかこうも早くバレてしまうとはな…
何故わかった?」
「嘘…でしょ…?」
顔を隠していたベールを取り素顔を晒し、龍一を睨みつける俺を見て紗雪は絶望した。
短いつきあいとはいえ、美樹たちと一緒に遊んだ友人であり学校では頭の良い先生である海斗
今日だって、私を見つけるために一生懸命探してくれたし、私が悩んでいる時も相談に乗ってくれたりと色々助けてもらった。
そんな海斗が今、自分達の敵として目の前に現れ私達を傷つけているなんてどうしたって信じれるわけがない。
「簡単なことだよ。僕や零二の転入に合わせて学校に入り込み、その行動を監視する…その時点で怪しいと思っていたさ。僕は今まで多くの戦場を駆け抜けてきた… その程度のトーンの変更と変装程度では僕を欺くことはできない!」
「なるほどな… 学校で見られているとは流石の俺も気づかなかった。その点に関しては認めよう… だが、俺とて目的がある お前も男なら一つ賭け事をしないか?」
「…賭け事?」
「男同士の決め事のようなものだ。お前が勝ったら、お前の言う事を聞いてやる。戦うなと言われれば戦わないし、戦線も離脱しよう。だが、俺が勝ったら大人しく俺の話を聞け。どうだ?」
「…僕は負けても話を聞くだけでいいのかい?」
「その通りだ。二言はない。」
…迷ってる迷ってる。
龍一は俺を睨みつけたまま考えていた。おそらくは、俺がこんな提案をしている真意を探っているのだろうが見つかるわけがない。
本当にそれ以上の意味なんてないからな…それに、俺の話を聞けば龍一は賛同せざるを得ないのは既にわかっていること。
未来世界のロキに話を聞いて、それを記憶していたからこそ出せる破格の条件というわけだ。
「わかった… その条件を飲もう。約束は守ってもらうよ?」
「始めから勝つ気満々だな… せいぜい楽しませてくれよ。皇樹龍一。」
こうして、俺と龍一の戦いが始まった。
戦のプロ同士の戦いは戦闘技術のみにあらず。
相手の行動、言葉、表情の読み合い…その全てが戦闘なのだ。
だから学校での俺の目的を当てられてしまった俺は、龍一に一本取られているということになる…
もうお互いに会話もなく、ただ敵の行動を探り合う無言の時間。
こういうのって、大抵先に動いたほうが負けなんだよな…
「行くぞ!破ぁぁぁぁぁっ!!」
龍一は自分の戦略破壊魔術兵器である右手の雷光を打ち砕く者(イルアン・グライベル)を全面に押し出し、真正面から全力の拳をぶつけにくる。
「そんな直線的な攻撃が当たるか…」
当然のごとく躱してやると、そこからターンし連続で拳を放ってくる。
「まだだ!そこっ!」
速い。
だが、そこまでだ…龍一の戦略破壊魔術兵器は雷属性。
雷神トールの力を使い、雷速での連続パンチ…攻め方は悪くないが紗雪の瞬間魔力換装の速度にはかなっていない。
その程度なら特に能力を使わなくとも躱しきれる…
だが、龍一の拳は止まない…
まずは相手が回避を苦手とする太腿を狙いにくる。
人間が一番機敏に動かせない部位だな。
おそらくはまずはそこに当て、相手の体制を崩してから弱点部位に徹底的に連続パンチを浴びせる戦法なんだろう。
良い攻め方ではあるが、所詮は教本に乗っていそうな安定の攻め。
教科書レベルの戦い方では俺は倒せないぞ?
「その程度の拳なら、俺に届く事はないな。」
「反応速度は桁違いレベルか… なら、僕も出し惜しみしている場合じゃないな!」
バギィと雷の轟音とともに龍一の髪が金色に光る。
本気を出してきたか…「疾風迅雷」(タービュランス)。龍一の魔法である。
拳だけでなく、自らをも雷と化し恐るべきスピードを破壊力を合わせ持つ拳を放ってくる。
「疾風迅雷(タービュランス)!!」
案の定だ…俺はそれに対抗すべく杖を二本抜きリーチを生かして反撃する。
龍一の弱点はその射程範囲の低さ
戦略破壊魔術兵器が装備されている右手は杖で弾き返し、生身の素手である左手は牽制を入れることで尽く攻撃を防ぎ続ける。
「…その程度かと聞いているんだが?」
「くっ…疾風迅雷ですら圧倒できないのか…」
龍一は自分の手の内を晒すことをとことん嫌う。
できるだけ大技は使いたくないのだろうが、そんな出し惜しみをしていては俺は倒せない。
「僕にこの技を使わせるなんてね… さあ、この神話魔術(いちげき)を耐えられるものなら耐えてみろ!」
龍一が膨大な魔力を右腕に集めてくる。
でかいのが来るようだが、お生憎俺は未だ「1ダメージも」受けていない。
無傷の状態なら、どれだけ敵の攻撃が強力でも躱す手段はあるだろう…
「拘束の蛇(バインド・スネーク)!」
先程疾風迅雷を防ぐためにぶつかりあった時に仕込んでおいた蛇を使い、龍一の神話魔術を妨害する。
せっかく魔力を大量に消費したのに残念だったな…
…だが、俺は龍一を軽く見すぎていたようだ。
「無駄だよ!」
…何を言っている?
拘束の蛇が体を蝕み、真っ赤になりながらも龍一はルーンを練り続けている。
効いてないのか…?いや、そんなはずはない…
なら、どうして?
「雷光を打ち砕く者(イルアン・グライベル)!!」
ちっ!それか!
人前でわかりやすく使ったことはないためにすっかり忘れていた。
龍一の武器である雷光を打ち砕く者は相手の魔力を吸収し、自分の魔力に変換できる優れもの。
しかし、発動条件が厳しいためあまり使えないのだが今回の場合、拘束の蛇は雷属性、龍一自身も雷属性の好条件に加え、魔力量が総てを射抜く雷光(トール・ハンマー)とほぼ同じなのだ。
「拘束の蛇」。俺にとって敵の動きを封じる絶対的な魔法に対して、龍一にとってこれほど吸収しやすい魔法はないだろう。
俺の魔力を吸収するとみるみるうちに蛇の拘束が溶けていき、でかい神話魔術が振りかかる。
「終わりだ!総てを射抜く雷光(トール・ハンマー)!!」
「くっ…それだけは通すわけにはいかない!三重魔法陣・鏡水!!」
「気をつけろ龍一!その魔法は神話魔術すらも軽々と跳ね返すぞ!」
咄嗟に三本の杖を展開させ、鏡を作り出す。
零二が叫んでいるが、龍一に慌てる様子はなかった。
神話魔術すらも軽々と弾き返す鏡水。だがこの魔法とて無敵ではなく、しかも龍一とはとことん相性が悪いのだ…
ホント、大迷惑もいいところだよ。
鏡水の効果で総てを射抜く雷光は跳ね返され遥か彼方の悠久の幻影の壁にぶつかり大爆発を起こす。
…何て強力な破壊力だ。
流石はトール…俺の全力にも劣らないその火力は素直に褒めよう…
そして、この俺に「一撃」を与えたこともな。
「ぐっ………」
「ついに君に一撃を決められたよ。でも、これだけの魔力を消費して「通常の」拳一発じゃ、かなりディスアドバンテージかな?」
龍一の総てを射抜く雷光は跳ね返された。
しかし、戦略破壊魔術兵器を装備した右手は鏡をすり抜けて俺の腹にしっかりと刺さっていたのだ。
「か…海斗?」
この状況で、心配していいのか悪いのかよくわからいので強くは言えないが、紗雪が心配そうにこちらを見てくる。
三重魔法陣・鏡水。
どんな魔法でも跳ね返すことのできる最強の鏡であるが、所詮跳ね返すことのできるのは「魔法」という名の特殊技に限る。
紅葉のように完全に遠距離射撃系の魔法を跳ね返すのは苦ではないが、龍一のように物理技を生かした魔法では物理部分が跳ね返せないのだ。
しかも、ただの拳とはいえ戦略破壊魔術兵器を装備した状態の龍一の全力の拳を生身で受けたことには変わりない。
相当のダメージをもらってしまったな。
「君の蛇から吸収した魔力のお陰でもう一発打てるよ。君の魔法は強力だけど、やはり弱点はあったね…これなら有効だ!総てを射抜く雷光!」
「クソッ!三重魔法陣・鏡水!!」
孤独な幻影(ミスゲイション)で姿を消したところで、この射程範囲からは逃げ切れない。
故に、俺はこの一撃を防ぐしかなかった。
先程同様遠くで大爆発の音、俺の腹には拳が刺さる。
「ふざけ…やがって………!」
「まだだ!僕は後4発使えるぞ!」
「何だと!?」
4発だと?
いくら龍一の魔力が高いとは言え、総てを射抜く雷光は上位クラスの神話魔術。
自身の力全てを使っても2発打っていいところだ。
それを、更に連続で放つと龍一は宣言した…
もし、それが本当なら俺は大量の拳を奴から受けることになる。
「零二!雷光を打ち砕く者!」
龍一は零二に近づくと、雷光を打ち砕く者の力を使うことで零二の拘束の蛇の拘束を解き魔力を吸収、そのまま総てを射抜く雷光へと装填する。
迂闊だった。龍一の総魔力が桁外れに高いわけではない。
魔力はそこら中に「落ちていた」のだ。
冷静に判断し、周囲の状況を見極めきった龍一が更に一歩俺を上回る。
「総てを射抜く雷光!!」
「鏡水!!」
まだまだ。拳を受けて俺がふらついた瞬間に今度はサクラの拘束を解き、次の神話魔術を放つ。
「総てを射抜く雷光!!」
「くっ…鏡水!!」
雷光を打ち砕く者→総てを射抜く雷光の無限ループ。
しかも、疾風迅雷も同時に展開しているのであろう。
俺が体制を立て直すより、向こうの神話魔術の方が速い。
俺は鏡水を発動し続けるために、魔力を消費し続けなければならなかった。紗雪の拘束を解くと、5発目の総てを射抜く雷光が襲い掛かる。
「総てを射抜く雷光!!」
「鏡水ぃぃぃぃ!!」
まだだ…まだ奴は放てる。
ここで倒れるわけにはいかない…だが、流石の俺もこれだけ連続で龍一の拳を受け続ければぐらりと視界が歪むほどのダメージを受けていた。
それほどまでに彼の拳(いちげき)は重いのだ。幼い頃から現在に至るまで、己の正義を貫くために鍛え続けてきた拳。
それが俺を射抜き続けていた。
紅葉の拘束を解くと、6発目が来る。
「いい加減に倒れてもらうよ!総てを射抜く雷光!!」
「ふざけるな…勝つのは俺だよ!鏡水!!」
6発目の総てを射抜く雷光も何とか拳のみで耐えきる…
だが俺の肉体のほうが悲鳴をあげ、ついに地面に膝をついてしまった。
「ったく、重いな…お前の一撃は」
「どっかの誰かさんのお陰で魔力使い放題だったからね… 総てを射抜く雷光6連発なんて、流石の僕もしたことがないよ。」
尽くうぜぇ…
だいたい、こっちは本来の力を使わずに手加減してんだっつーの…
流星のほうの魔法はオーディン用に取って置かなければならない。
まあ、いずれ使うにせよこんな最初の戦いから大っぴらにするわけにはいかなかった。
だが、龍一は今勝ちを確信している。それこそが、斬り込む最大のチャンスだった。
「だが、それで終わりならお前の負けだ。」
「なっ、何だと!?」
ちっ…吐血したか…
口から血を吐く俺に言われても大した説得力にはならないだろうが、それでも龍一は焦っていた。
敵の魔法を利用した完璧な一撃に相手は崩れた。
それ以外に何があるというのか?
「馬鹿な奴め…俺が何の対抗策も立てずにただお前の攻撃を受けてただけだと本気で思っているのか?」
「なっ………」
「あれだけの神話魔術の連続攻撃を受けながら対抗策を立てるなんて不可能なんだよ!!」
「私もそう思う…鏡水は確かに強力な魔法だけど、あれを6連続使うにはかなりの魔力を消費しているはず…」
拘束の解けた二人はありえないと定義する。
零二は意識を失ってしまった紅葉を抱き上げ、護ろうとしていた。
「ありえない?そんな言葉はマホウツカイには存在しないってどっかの二丁拳銃さんが言ってたよな?その通りだ。お前が紅葉の拘束解除を最後にした時点でお前の負けは決まってるんだよ!」
そう…俺は龍一の攻撃を受け続けながらも膨大なルーン練り続けていた。
俺の得意技は、戦闘を行いながら相手にバレないように魔力をチャージすること。
しかし、その魔法をどこで放出するかが問題だった。
龍一が零二の拘束を解いた時点で全員分解くことは容易に想像できた。
なら、最後に回すのは誰だ?
例外が存在すると、人はそれを特別に扱いたくなる。
今回の場合、紅葉だけが「意識不明」という名の例外だったのだ。
紅葉の近くに用意しておいた巨大な魔法陣が龍一の足元に広がる。
零二は紅葉を連れて咄嗟に躱すが、龍一を捉えた魔法陣はそのまま縦に五つ連なり巨大なタワーのようになっていく。
「な、何だこの魔力量は… 魔法陣から出れない!?」
「俺のその魔法陣に一度入ったものは、技を受けるまででることはできない。俺は霧魔法の使い手。相手の動きを制限したり、封じたりすることが得意な召喚せし者だ。」
「この魔力量…私の切り札や龍一くんの総てを射抜く雷光と同じクラスなんだよ!これを受けたら龍一くんは!」
「なっ…おい龍一!こんなとこで負けんじゃねえよ!」
「ははっ…すまないね零二。これは躱せそうにないや…」
「五重魔法陣・御神楽!!」
用意していた大量の魔力を一気に放つ。
総てを射抜く雷光と同等クラスの破壊力を持つレーザーが、龍一の足から頭へと一気に射抜く。
「ぐぁぁぁぁぁっ!?」
ボロボロになって倒れる龍一。
だが、お前はこの程度では倒れないよなぁ?
「これでトドメだ。死ね。」
「やめっ…やめて!!」
紗雪が叫ぶが無視。
俺は俺の計画のためならどんなことでもやってみせる。
それが悪魔だと言われようとなんだろうとな…
それが俺の「決断」だ。
5本の杖全てを、御神楽とは違うフォーメーションに配置し、魔法陣を展開させるとさっきまでいた場所が突然宇宙空間に変わる。
「宇宙…だと…?」
本や教科書でしか見たことのない幻想の空間に入り込んだ零二、紗雪、サクラはただ唖然とその光景を見ているだけだった。
そんな中、龍一は黒い丈夫な鎖で縛られ吊るされている。
「処刑人の裁きを始めよう。俺を本気にさせたことを後悔せよ… 摩天楼!」
「こんなの…マホウなんてレベルじゃないよ…宇宙空間を作り出し、あの魔物に僕を食わせるんだろ?こんなの…オーディンだって発動できるレベルを軽く超えてる…」
龍一の言う通り。こんな大掛かりで強力な魔法など、発動できる者はまずいないだろう。
「摩天楼」
それがその魔法の名。もちろん弱点はあるが、今彼らの目の前にあるのは絶望。それに変わりはない
火星の向こう側から全長500メートルはある超巨大な獅子の魔物が大口を開き現れた。
(殺される…!)
その言葉を思ったが最後、龍一の人生は幕を閉じた。