見た目はサトシとの見分けつけるために、リメイクレッドを想定。
ポケットモンスター……縮めてポケモンは1996年に赤・緑の2バージョンが発売されたロールプレイングゲームの名称である。最初期の売上こそふるわなかったものの、育成・通信・対戦などの画期的な要素がウケて絶大な人気を誇った作品だ。その人気は今や海外にも波及し、現在に至っている。
かく言う私も、ポケモンと共に育ったものだ。
ダイヤモンド・パールから始めて、黒白2辺りまでやっていた。それ以降はゲーム実況でたまに見るぐらいだ。
そんな私でも、赤緑版の内容ぐらいは知っていた。ポケモンシリーズの始まりだし、アニメも再放送があったので一話から通して見ていた。
そんな初代ポケモンの特徴は何か……となると、やはりバグ技になる。
シナリオ上に登場するも、通常プレイでは捕まえることの出来ないポケモン。そのデータがゲームカセットの中に残っており、バグによって捕まえられる。多くの人が、ミュウを求めてポケモンにのめり込むこととなった。
直接の要因ではないが、バグ技もこのゲームの流行の一端を担っていたと思われる。
そんな初代ポケモンが、3○Sのバーチャルコンソール版として発売されたときは、すぐさま購入しバグ技を試みた。
そりゃあ私は、ダイパの謎の場所世代だったから、興奮しないはずがない。
道具欄を拡張したり、タマムシでミュウを釣り上げたり、相棒のヒトカゲを犠牲にアネ゙デパミ゙を錬成したり。
そんな風に遊んでいたら、データはすぐに吹っ飛んだが、私は懲りずにバグ技で遊び続けた。
今となっては、それがいけなかったのだと分かる。
時代は変わって3○Sから任○堂ス○ッチに世代が移行し、そんなバグ技で遊んでいたことなんて忘れて仕舞っていたある日のこと。
大体、二十歳になって暫く経ったころ。私は大学に向かい、道を走っていた。前日、夜ふかしをしてしまい寝坊をしてしまったのだ。
そんな私は、道端に落ちていたバナナの皮に気がつかず、滑ってしまった。
こう、クルッと回る感覚で。
頭から鳴っちゃいけないような音が鳴りつつも、地面にダイブした。そして、段々と意識が暗く沈んでいくのが感じられた。
だから私は、そこで事切れたと思っていた。思っていたのだが……。
◆◆
「は……、ここは一体何処?」
大学へと通う途中、バナナの皮に滑って転んだと思ったら、突如として周りの風景が一変していた件。先程まで、見慣れた道路に居たはずなのに、どうしてこんな場所に居るのだろうか。
私は分かりやすく狼狽して辺りを見渡す。自然豊かな場所だ。
ボケーっとしながら辺りを見回していると、少し離れた所に一本の看板が建てられているのが見えた。
私はその看板まで近づき、そこに書かれていた文字を読む。
「ときわしてぃ……トキワシティ?」
目の前の看板にはこう書かれていた。
トキワシティ
トキワは みどり えいえんのいろ
えいえんなる みどりの まち
それも、仮名や漢字でなく、見慣れない文字でそう書かれていた。見たことのない文字なのに、自然とそう読めた。
いや、そんなことより
「……ポケモン?」
そんな呟きが漏れた。この町の名前を私は聞いたことがある。
「これじゃまるで……」
ポケモンの世界に入ったみたいだ。
そんな思考が頭を
……え、もしかして私バナナの皮に滑って死んだの?それで転移して来たの?もしそうなら、家族に顔向け出来ないんだけど。
「いや、待て。何かのドッキリとか?」
現実的な考えが頭に浮かぶ。普通に考えればその線が濃厚だ。そんなことを思いながら、何とはなしに空を見上げてみると、そこには数羽のポッポが空を羽ばたいた。
「……」
現実逃避気味に草むらを見つめてみると、そこにはコラッタが駆け回っているのが見えた。その姿はとてもリアルで、CGや偽物には見えなかった。
ドッキリだとすると、随分と大掛かりなモノだなあ、と私は遠い目でその光景を眺めた。目はかなり死んでいたと思う。
それならばここは夢なのではないか、と私は考えた。そう思い頰を抓ってみたのだが……普通に痛かった。
風が吹けば涼しいし、日が照りつければ暑い。
ここが現実世界だと思わされるものばかり。
「これ、ポケモンの世界に転移しとるやん」
思わず声が出てしまう。マジで言ってるのだろうか。
私自身、本を読むことが好きでラノベや漫画、二次創作にまで手を出していた。だからか、この状況が何なのか容易に理解できる訳で……。これは所謂、転移という奴だ。
私、確実に死んでたよね。頭から落ちて首がゴキッって。アレはヤバい音だった。完全に折れてただろうし、死んでたと思う。
取りあえずジュンサーさんを探して、保護して貰うか?そう思うも、経歴を聞かれたら詰む。最悪、密入国者だと思われるかも知れない。
私は日本生まれ日本育ちだ。
しかし、母親は北欧生まれの純外国人である。
一応両親の馴れ初めを書くと、高校の修学旅行で北欧に行ったときに、ナンパをして引っ掛けたらしい。父は、ワン・ナイトラブの積もりだったらしいが、母は本気だったようで、ヤンデレ化して父に迫ったらしい。
両親のそんな話聞きたくなかったな……。
そんな経緯で、私は所謂ハーフと言うやつだ。そのため髪の色は銀色だ。
ハーフ自慢をしたい訳ではない。
何が言いたいかと言うと、私の見た目はモロ、不法入国者っぽいということだ。
アカン。身元確認出来ない外国人風の人とか、強制送還される。
「共通試験の英語、200点満点中84点やぞ」
この状態で送還されれば軽く死ぬ。ノルウェー語とかスウェーデン語とかも分かる訳がない。こちとら英語やりたくないから、大学の言語選択を中国語と朝鮮語した女やぞ。あの辺の言語とか分かる筈がない。
出来る限りジュンサーさんのお世話にならないでいよう。私はそう決意する。
「あれ?ジュンサーさんってアニオリやっけ?」
そもそもの話、ここは何準拠のポケモン世界なんだろうか。
アニポケだったら、マサラはサートシくんの故郷だけど、ゲーム版だったらレッドくんの故郷になるよね。ポケスペやギエピーでもレッド君だった気がする。電撃は……見たことないな。
ジュンサーさんが存在しない可能性もある?
「何か、身元を確認出来るものとかないかな」
身体を調べてみる。
そして、私はポケットに膨らみがあるのに気がついた。服装は元のままであるし、財布とスマホでも入っているのだろうか。探ってみると財布が一つ入っていた。
ポケモン世界の通貨単位は、確か円だったはず。外国版準拠のポケドルでない限りは使えるよね。
……と言うか、この世界のトレーナーはどうやって旅のお金を稼いでいたのだろう。ゲームみたいにポケモンバトルして、強奪していったのかな。何それ怖い。
そんなことを考えながら財布を覗く。そこには、五千円札1枚に、二千円札1枚、千円札2枚の計九千円。小銭を合わせればギリギリ一万円に届きそうな金額が入っていた。
「これで飢え死ぬことは……って、何だろ?この変なカードは」
財布の中に、青っぽいカードが入っているのが見えた。表面には、さっきの看板と同じような文字で、トレーナーカードと書かれている。そして裏面には、QRコードが記されてあった。
QRコードね。
「このQRコード、スマホで読み取れんかな?」
そう言って私はスマホを取り出そうとする。
しかし、スマホの代わりにポケモンアニメなどで見るポケモン図鑑が出てきた。
「え、私のスマホは?!」
驚いて少しだけ叫ぶ。
あのスマホには、エッチなイラストが大量に保存されていたはず。おねショタとか筆おろしとか、写生管理とか、ちょっと人に見せられないやつが多くある。
私は想像する。
死んだ
司法解剖やら事件性の有無とかで、警察がスマホを調べたとき、私に対し別の容疑を疑う様を。
……これは益々、家には帰れないな。
ポケモン図鑑を見て、中に記録されているポケモンを見ていく。しかし、150+1体しかこの図鑑には載っていないのか。
前から思ってたけど、151匹しかポケモン見つけられなかった博士、無能なんじゃないかな。
そんなことをしている内に、私はようやくカメラ機能を発見した。さっそくQRコードを読み取ってみることにした。
「今まで手に入れたバッジ数と……財布の残高?」
見てみるとバッジがゼロ個に残高が999,999円入っていた。
……うん。なるほど?
「……」
は?……え、ちょっと。残高おかしくない?これ、完全にバグってるよね。バグって。
「私のやってた、赤緑のデータって。どうなってたっけ」
このバッジ数と残高。
ニビシティのジムは壁抜けしてスルーした記憶があるし、バグアイテムを売って、お金をカンストさせていた記憶もある……ような気がする。
今背負っているリュックに、嫌な予感しかしない
私は恐る恐る、背負っていたリュックを見る。何時も大学に行くときに持って行っているリュックを。
何だか、道具欄を拡張していたような思い出がある。
どう考えてもヤバい。
背負っていたリュックをおろし、中を確かめてみる。見てみると中は暗く、渾沌としていた。
「……うわぁ」
予感は的中した。
これ、下手に扱えば世界がバグるんじゃね。イヤな汗が流れてくる感覚がする。現実世界ではセレクトなんてないから、そこまで心配しなくて良いのか?
バッグ拡張バグはセレクトで道具の入替えが出来るからこそヤバいのである。今の状態ではそこまで心配しなくて良いと私は判断する。
私はそう思い直し、物は試しとバッグから一つ、物を取り出してみた。
すると中から『ライバル』が出てきた。
「ライバル!??」
鞄の中から、ライバルとしか名状しがたいものが出てきた件。何と言うか、この物体は完全にライバルだ。確か効果は、壁抜けだったか。
壁抜けだったら、ペゾとかも有名だったけど……。
……しかし、何だコレは。
「まともなアイテム全然持ってないな。モンボとか傷薬ぐらいしか普通なのない」
そもそも、傷薬って大丈夫な奴なのだろうか。傷ついたポケモンを、
あっ、『はやぶさバッヂ』がある。確か使うとメニュー画面を開ける道具だったはず。これでメニュー画面が開けるぜ。
……現実世界でメニュー画面を開くって何だろう?
「……道具、全部で20種類入ってる」
各持ち物99個まで入ってる。相変わらず普通に、物理法則を超越している。
「取りあえず、メニュー画面を開いて……みるか」
はやぶさバッヂを手に取り眺める。
何だろうか、この『はやぶさバッジ』じゃなくて『はやぶさバッヂ』というしかない形状は。
しばらくバッヂを弄っていると、裏面にボタンのようなものが付いているのが分かった。さっそく押してみる。
「わっ、見知ったメニュー画面出てきた」
空中に立体映像のような形でメニュー画面が開かれる。図鑑にポケモン、道具にトレーナーカード、セーブに設定。
現実世界でセーブとは、一体何なのだろうか。(哲学)
セーブしても再起動方法ないんだが。同じく設定は何を設定するのか。セリフの速さとか、戦闘アクションのカットだろうか。リアル世界の声が速くなるのだろうかな。怖いから触らんとこ。
トレーナーカードは、わざわざQRコード読み込まなくても、残高とバッジを見られるのが便利だ。図鑑欄も、わざわざ図鑑を起動する手間がなくて良いかも。
「ポケモン欄は……わざわざ見なくて良いかな」
私は現実から目をそらした。最後に連れ歩いていたポケモンに良い心当たりがないからだ。
しかし、どうしようか。とりあえず、お金はあるのは嬉しい。デビットカードみたいな感じで使えるのだろうか。
身分証明に関しても、トレーナーカードで代用出来ると思う。と言うか、トレーナーカードって、本来は身分証明書みたいなものだろうし。
一先ず、心配事は片付いた。このあとはどうしようか。ニビシティに行ってジム戦でもしたら良いかな。トレーナーだし。
「──」
いや、ニビジム行くんだったらそれに対応したポケモン捕まえないといけないかも。今の手持ちは、どうせ碌なものではないだろうし。
「あの」
「聞こえてる?」
「へ?」
耳元でとても可愛らしい声が聞こえた。声変わり前の幼い声だ。掛けられた声の方を向くと、そこには幼い顔立ちの少年が立っていた。
「キミはぼくみたいに旅人なのかな?ずっと、入口の看板を見てるみたいだけど」
え、今『旅人』って言った?この小さい子供が旅人?そう言えば、設定に『ポケモン自然保護法』とかあったような気がする。十歳になるとポケモン捕獲の免許取れるみたいな法律。
でも、実際に見ると凄い光景だな。子供が旅って。可愛い子には旅をさせよ、を地で行くとか。凄い世界だと思う。
そんなことを考えていると、少年は声を出す。
「ぼくの名前はレッド。キミは?」
少年は楽しそうに笑って言っ──いや待って。今、この
私はキョトンとした顔で立ち尽くした。
注意
はやぶさバッヂは、メニュー画面から使用するとフリーズします。メニュー画面を開かずにご使用下さい。