レッドきゅんをhshsしたい 作:ミ゙ヅヅヅ
──ポケモンセンター
それは、言わずと知れた回復施設である。ポケモンの体力やPPを回復させたり、ゲーム通信を行ったり、パソコンを使ったり出来る施設である。最近のシリーズでは、フレンドリーショップと合併をしていた記憶もある。
(そりゃあポケモン世界だし、ポケモンセンターも当然あるよね)
私は心の中で、そう感嘆する。
ゲームのトキワシティは、ポケセンにフレンドリーショップ。トレーナーハウスにトキワジム。後は少しの住宅が存在する町だった。しかし、現実のトキワシティはそれとは比べ物にならないほど大きかった。仮にも〝シティ〟と名乗っているのだ。生活に困らないだけの店と、住宅がそこにはあった。
そんな町を歩いて行き、漸く辿り着いたのがこのポケモンセンターだ。
四角い建物に、何故か読める謎の文字でPOKEと書かれている。何だ、この豆腐みたいな建物は……。想定していたよりも大きいし、訳が分からん。
そして、そろそろこの文字が読めてしまうことにも恐怖を覚える。これって、
「……ここが、ポケセン」
思わず呟いてしまう。
中に入ると、内装はゲームとは違っていた。何だかアニメ版のポケセンみたいな内装だ。あの建物のシルエットから、こんな内装になるんか?
この世界の物理法則に、疑問を覚えていると、レッド君が私に話し掛けてきた。
「そう言えば、何処出身か聞いてなかったよね?」
言ってなかったどころか、私はまだ全然言葉を発していない。かれこれ、ここに辿り着くまで十分ほど一緒に歩いていたのだが、その間ずっと無言だった。
(まあレッド君、無口設定やし問題ないかな)
そんなことを思い何も言わずにいたのだが、レッド君はこの無言の状況に耐えられなかったようだ。しかし、出身地か。私は何も考えずに出身地を答える。
「……奈良……かな?」
「ナラ?」
彼は少し怪訝な表情を出す。はい、私は奈良出身です。大学は関東に出て居たけど、出身は普通に関西だ。関西弁が出るのはその影響。エセ関西弁じゃないよ。
しかし、この反応……。もしかして、この世界に奈良県が存在していない可能性ある?そうなると、私の出身地は何処になるんだろ。関西……じゃなくてジョウト地方の何処にあたるのだろう。ジョウトの……。
「ジョウト地方……の遺跡のある所?」
「遺跡、アルフの遺跡とか?」
地名弱いからよく分からん。アルフの遺跡って奥吉野辺りかな。南北朝時代に、南朝政府があった辺り。私の出身は奈良市辺りになるから、多分そこじゃない。奈良市って、ポケモン世界では何シティになるんだろ?
「……その近くの町」
「もしかして、キキョウシティ?」
彼の言葉にピンときた。それだ。キキョウだよ、桔梗。キキョウシティだわ。私は大きく項突く。
私はそう愕然としていたが、レッド君の言葉に引き戻された。
「へえ。ここから、随分と離れてるね」
そう言うレッド君は、何処出身か……と思うもマサラタウン出身だと思い出す。マサラタウン出身って、総じてスーパーマサラ人だったりするのだろうか。
でも、彼のシロガネ山の武者修行を考えると、少し信憑性を感じてしまうのも確かだ。
この子、将来無口になってシロガネ山に閉じこもるってマ?ストーリー終了後何があったのだろう。
「……レッド君って、シロガネ山。好き?」
「……?」
「何でもない」
直接聞けるわけもない。
将来シロガネ山に閉じ籠もるけど、何かシロガネ山に思い入れあるの……?なんて、意味不明過ぎて聞けない。それに、コミュ力皆無の私に、自然な聞き込みなんて出来てたまるか。
私は心の中で憤る。彼はキョトンとして、私を見つめるばかり。
……キョトンとしたレッドきゅんって、何か可愛いなあ。写真って撮ったら駄目かな?
ポケモン図鑑にカメラ機能があったのは、遠の昔に発見している。撮ったら駄目かな。え、はい、ダメですよね。すみません。
「まあ、いいや。ぼくはポケモンを回復させるよ。キミはどうするの?」
盗撮を悩んでいる私に、彼はそう話し掛けてきた。
預けるって、あのバグポケモンたちをだろうか。モンスターボールから出したら瞬間、周囲がパニックに陥りそうなんだけど。
ゲーム形式みたいに、ボールから出さずにセットするだけなら良いのだけど。
いや、パニックになるだけなら、別に良い。本当は良くないけど、万歩譲って良いよ。
でも、けつばんとか、一部のポケモンに関しては出しただけで、フリーズしかねないのだよ。そんなパンドラ早く手放したいな。パンドラの箱と違う点としては、中に希望がないこと。絶望だけのパンドラって開く必要、なくない?
早めに、けつばんを処分したい。でも、逃がすときにボール開くの怖い。パソコンにでも預けようかしら。
「……パソコンを、先に使いたい」
私はそう宣言して、パソコンが置いてある場所を指さした。パソコンの位置はゲームと同じく、入って右手側にあった。
「〝ポケモン預かりシステム〟を使うの?」
レッド君は首を傾げてそう言った。名前は知らないけど、多分それだと思う。取りあえず、パソコンにポケモンを預けたいのだ。……冷静に考えてみると、パソコンでポケモンの転送できるって凄いよね。
開発者のソネザキ・マサキさんマジパないな。
そんなことを思い、パソコンの前まで行き電源を入れた。
……。うん?
「……やり方分からないの?」
彼の言葉に、私はコクリと項突いた。
逆にこの機械、どうやって扱えば良いんだろう。何か、めっちゃ分厚いのに、機能がめちゃくちゃ存在している。試しに検索エンジン使ってみたら、スイスイ動く。物凄くハイテクだ。でも、それ以外の機能が分からない。
検索エンジンは、私の本能で見つけた。ネット検索をして、生きてきた私を舐めるなよ。
うーむ。このパソコンって、転送装置とか搭載するために、こんなに分厚くなってるのかな。転送装置って、運搬業に大きな打撃与えてそう。
そうこうしている間にレッド君の手で、ポケモンの整理の画面までを進められたみたいだ。凄く慣れてるな。部屋にパソコン有るだけある。
私はボックスを碌に見ずに、けつばんとミュウの入れ替えをした。チラッと見えただけで、アウト判定が出た。何で、見えた範囲だけでも全部バグってるんだよ。
このラインナップ、バグポケ縛りをしているとしか思えない面子なんだけど。
私は戻るボタンを押して、パソコンの電源を切った。早く新しいポケモン捕まえることを誓う。……よし、取りあえず、ポケモンの回復させて貰うか。
私はポケモン回復の預かり場まで移動する。
「お預かりしますね」
リボンを付けた、ロング髪の女性が対応してくれる。ジョーイさんは居なかった。物凄く期待していたのに……。ジョーイさんって、第何世代からの登場なのだろうか。
彼女は、モンスターボールを何かの機械に入れる。そして、暫くすると回復完了の音楽のようなものが流れる。この時間僅か7秒。
「お待ちどうさまでした」
速くない?
本当に回復出来ているのか、心配になるほどの速さだ。流石に技術の発展が凄まじい。
「これで回復は終わったね。それじゃあ、旅に必要なものを、買いに行こう!」
同じく、回復を終えたレッドにそう言われ、私はポケモンセンターを出た。
……レッドきゅんって、本当に無口設定なのだろうか?私の方が喋れていないんだけど。私はそんなことを思った。
◆◆
「一日が終わった。ポケモンセンター凄すぎるんやけど……」
ポケモンセンターはトレーナーの宿でもあったのだ。だから、あんなにデカかったのか。尚、物理法則の問題は解決出来ていないものとする。
初代ポケモンで宿屋は一つしか存在していなかったけれど、その理由がポケセンが宿をしていたからだなんて。
……こら。ゲームのシステム上、宿なんて必要なかったからとか言わない。例え、辻褄合わせだろうと、私が休めているのだから
取りあえず、ポケモンセンターには安価で泊まれた。トレーナーカードを出せば割引されるらしい。レッド君曰く、国からの補助がどうたら言っていた。
何で国が、トレーナーの優遇政策をしているのだろうか。永遠の謎である。
「しかし、風呂まであるとは思わなんだよ」
お金は取られたが、良い浴場だった。
ここって、本当に何の施設なんだろうか。
後、お風呂上がりの感想なんだけど、レッドきゅんの髪、めっちゃくちゃサラサラしてた。普段は髪がハネているのに、風呂上がりだけ真っ直ぐなのは反則だと思う。とても触りたかったです。現場からは以上です。
……いかん、思考が
「今、しんとアカンことあんのに」
私には今、やらなくてはならないことがあるのだ。それは、手持ちのポケモンの確認だ。現在の手持ちはこうなっている。
・ ミュウ
・
・ベアビヲ9
・
・9パゾ9な゙
・ミュウ
Oh……嫌な面子だなあ。
この中でミュウが一番まともと言うのが嫌な所だ。そして、空白ポケモンが怖い。
ベアビヲ9は、立ち絵がシオンタウンのゆうれいなのを覚えているので、まだ気が楽だ。
そして、9パゾ9な゙とか言う、全く知らないポケモン。どんなポケモンかすら覚えていない。絶対ヤバいよね。
取りあえず、ミュウを二体出してみる。
「いけ、ミュウ!」
「みゅうみゅ」
「みゅうー」
ボールから出てくると、空中を踊るように飛び回る。可愛い。
ミュウって確か、フジ博士が南アメリカで発見した、新種のポケモンだったよね?ポケモン世界って、南米はあるのか。そう言えば、ジムリーダーのマチスはアメリカの軍人だっけ。地理関係ってどうなってるんだろ。
アメリカに、イッシュ・アローラ・オーレなどの州があるのかな。
まあ、良い。今回の本題はミュウでないのだ。
「いけ、ベアビヲ9」
「 !!」
そう、このポケモンたちだ。ベアビヲ9の姿を見る。完全に、シオンタウンの幽霊であった。尚、それは前だけで、後ろ姿はモザイクであった。脳がバグりゅ。
鳴き声も当然のように聞こえない。何か言っているのが分かる程度だ。いや、声が出ていると分かる分余計に異様だ。
いや、ちょ、待って。何で擦り寄って来るんだ。懐いているのは分かるが、それ以上に恐怖が勝つ。
えーと、図鑑。ベアビヲ9。電気タイプで種族値はサンダースと同じ。……これって、初めからサンダースを使った方が早いと思うのですが(凡推理)。
いやまあ、幽霊を捕まえるのは浪漫だからしょうがないよね。どうしても捕まえられない相手、幽霊を捕まえるとか浪漫でしかない。だからって、恐怖が和らぐ訳ではないが。
次に私は、9パゾ9な゙のモンスターボールを手に取る。そして大きく振りかぶってボールからポケモンを出した。
「ぎゅい!!」
すると、サンドパンの鳴き声をした、ニドリーノが出てきた。何言ってるか分からないだろう。私もだ。
お前、正体ニドリーノだったんかよ。
圧倒的普通のポケモン感が凄い。正直、全身モザイクや、バーコードのヤバいポケモンだと思っていた。
さっきからSAN値がだだ下がりだったので、とても助かる。
何も変わったところのない、普通のニドリーノだ。前から見ても、後ろから見ても変わらない。ただ、声がサンドパンなだけだ。何でもう少し頑張ってくれなかったんだ。
しかし、これは良いな。これからはコイツを使って、野生のポケモンとバトルしようかしら。そう思い、出したポケモンをボールに仕舞う。
そして、私は残ったボールを見つめる。ハッキリ言って、物凄く出したくない。でも、手持ちに入れていたってことは、少なくとも戦えるポケモンだってことだろう。けつばん……?アイツも戦えると思うけど、フリーズを起こす〝けつばん〟も存在するんだよ。何かの間違いが起こらないように預けた寸法。
私は覚悟を決めて、ボールに手を掛けた。ボールから二匹のポケモンが出てくる。
「ピィㇼイ!!」
「 !!」
空白のポケモンの二匹だ。サイドンの鳴き声をしたモザイクと、声が訳の分からないコラッタの二匹が出てきた。
……イロモノだなあ。
ポケモン愛好家とかに見せたら、SAN値吹っ切れてぶっ倒れそう。非常に冒瀆的だ。
「想像以上にキツいものがある」
私はそう呟く。コレはダメだ。グレーゾーンが多すぎる。何なら完全にアウトだとも思う。
「バグアイテムもさっき使って、危うく壁に埋まりかけたし。あんまりバグったものと関わりたくない」
本当にバグって碌でもないな。
バグポケの確認を行う前に、壁抜けアイテムの確認をしてみたのだ。少し試してみると、マップ移動がないためか、ゲームと違いドアをすり抜けて外にも出られた。物凄く便利だ、と思い調子に乗って色々試していたら、壁に埋まってしまった。歩数制限があったのだ。
生き埋めになりかけて、めっちゃびびった。ミュウがテレポート覚えてなかったら、本当に死んでたと思う。
非常にシュールな光景だったと自負している。でも、最後にポケセンの職員に見つかりかけて、叫ばれたのだけが気がかりだ。
都市伝説になったらごめんね、と私は心の中で謝った。
誤字脱字の多すぎ問題。誤字ってるの見かけたら、報告お願い……。