控え室にて
部屋は少し不穏な雰囲気だった。織斑先生、篠ノ之箒は少し不機嫌になっており、山田先生と一夏はそれを見ておろおろしていた。このままでは話が進まないので自分で進めることにした。
「で、何故私が呼ばれたのですか?そもそもこの試合は一夏君とオルコットの試合でしょう。私は拒否しましたよね」
崇継は山田先生に問うたつもりだったが、答えたのは織斑先生だった。
「あぁ。だがまだ織斑のISが届いていないんだ。届くまであと何分あるかも分からない。なので、お前に出てもらいたい」
どうやら一夏のISが届いていないようだ。
「チッ、あのクソ倉持が。納期すら守れんのか。たかが男性操縦者用ISごときの為に人を蹴り落とすようなやつらを、何故待たねばならんのです」
不快感は隠せなかった。少々言葉が強くなってしまったが後悔はしていない。周りを見渡せば、山田先生と織斑先生は驚いており、篠ノ之箒はこちらを睨んでいた。たかが15歳の睨みで萎縮するほど崇継は柔では無い。だがずっと睨まれていると不快になる。
「何だ、篠ノ之。言いたいことがあるならさっさと言ってくれないか」
「なら言わせてもらおう。たかが男性操縦者のISとはどういうことだ!一夏が乗るISだぞ!大事に決まっているだろう!」
他人の事を考えない自己中心的な考えだ。将来社会で生きていけないだろうが、姉が姉だからどうなるか分からないが正直篠ノ之束を恐れていては何も出来ない。
「そうか。それを被害者の前でも言えるのか?」
「?どういうことだ」
「この学年に、一夏君用のISを作るために、専用機を作る筈の計画が取り潰された者がいる!貴様は、それを知った上で、同じ事をいえるのか、あぁ!?」
いつもの崇継と違いすぎる態度にまた先生2人は驚いている。篠ノ之箒は雰囲気に気圧されて何も喋れず、無意識に一歩下がった。一夏は初めて知った事に衝撃を受けていた。
「で?織斑先生。俺は何をすれば良いんでしたっけ?」
「織斑のISが届くまでオルコットと試合をしてもらいたい。出来れば次の試合に影響がでない範疇で頼みたい」
はっきり言って無茶である。こちらはまだISに乗り始めて1ヶ月しかたっていない。普通なら不可能だ。だが崇継は
「クソつまらない試合になりますがよろしいですね?」
承諾した。別に相手の攻撃に当たらなければ、自分が攻撃しなければ良いのである。今の崇継には簡単な事だ。
「構わん。とりあえず時間を稼いでくれ」
「分かりました。着替えてきます」
そう言って崇継は控え室を出て更衣室に向かい、衛士強化装備に着替えた。着替えの時に、崇継は数日前の事を思い出していた。
崇継はその日、簪と合流せず1人で射撃訓練場にいた。武器が銃メインなのと一応軍人なので訓練しておかなければと思ったからである。ハンドガンからライフルまで一通り試してはみたが、まぁ軍のと変わらない。的当てしか出来ないぶんこちらの方が不便だが、学校にこれほどの設備があるのは此処がIS学園だからだろう。そう納得する事にした。銃を片付け戻ろうとすると、後ろから声をかけられたので振り返った。そこには片や身長が比較的女性としては高く、胸を大胆に晒した制服を身に纏った金髪の美女、片やお世辞にも高いとは言えない身長で、髪を三編みにしている少女がいた。恐らく男性操縦者に接触するよう言われたのだろうと予想して、返答する。
「私に何か用かな?」
すると金髪の方が興味深そうに
「へぇ~、アンタが2人目か。意外とガッチリしてるじゃねぇか」
と冗談めかして言うので
「そういうのがあまり好きではないなら、もう一人の方をおすすめするよ」
こちらも冗談らしく返した。
「こりゃ一本とられたな。アンタ、堅物そうに見えたんだがな」
「はは、猫をかぶっているだけさ。」
「それ、自分で言っちゃうんすか・・・」
「すまないが、名前を教えてくれないか?初対面なのでね」
「あぁ、アタシはダリル・ケイシー。こっちのちんちくりんはフォルテ・サファイアってんだ」
「ちんちくりんって何すかちんちくりんって!」
「そうか。私は・・・流石に知ってるかな」
「結構有名になったぜ、アンタ。」
「私が2人目だからかい?」
自分が有名になるならそれしかないと思った崇継だが、返ってきたのは否という返答だった。
「いーや。クラス代表を辞退した
話が伝わるの早すぎだろ!?と思ったが、女子はそういうのが早いのが特徴だったと今更思い出す。
「なるほどね。別に
「へぇ、じゃあアタシ達とやってみるかい?」
技術者としてはかなり魅力的な提案だが、今はまだデータを渡したくは無いので拒否する事にした。
「いや。申し訳無いが今はやめておこう。また今度にしてもらおうかな」
「えぇ〜?つまんないなぁ。そんなんだから
まぁその通りだな、と苦笑する。
「とりあえずクラス代表決定戦までは私のISをオープンにするつもりは無いのでね。それが終わったら考えさせてもらうよ」
「じゃ、楽しみにしとくぜ。じゃあな!」
「あぁ」
回想終了
着替え終わり、控え室に戻ると織斑先生に声をかけられた。
「斑鳩、あと40分ほどで着くそうだ。だがその後の設定で少なくとも10分かかる。それまで保たせてくれ」
「分かりました」
そう言って今度は一夏を見やる。
「いいか一夏君。君のISで、夢を断たれそうになった者がいる。君が纏うISはその人の恨みも詰まっている。だからこそ君はそれを纏わなければならない。君が望んだ事では無いだろうが、ここに来てしまったからには通用しない。だがその恨みが詰まったISは必ず君の力になる。それを知った上で、ISに乗って欲しい」
そう言って見た一夏の目には光が灯っていた。
「では。『ラプター』」
音声で呼び出しを行う。別にそんな事をしなくても良いのだが、何があるか分からない。定期的に使っておいて損は無いだろう。
ラプターを纏い、カタパルトに接続する。
『斑鳩さん。オルコットさんは準備完了しました。射出準備はよろしいですか?』
「大丈夫です。お願いします」
『分かりました。それでは射出します。3、2、1、射出!』
山田先生の合図と同時にカタパルトが動き、ラプターを射出する。そのままの勢いで地面に降り立ち、上空の
『織斑一夏君のISの到着が遅れているため、エキシビションマッチとして、オルコットさんと斑鳩さんの試合を行います。この試合は通常通りのルールで行いますが、制限時間を50分とします。制限時間内に相手のシールドエネルギーを0にするか、50分たった時点でのシールドエネルギーの残量によって勝敗を決めます』
観客席は盛り上がり、熱気の渦に包まれる。すると、今度はオルコットからコールされる。
『わたくしの相手は貴方ですのね。ハンデはいりますの?いくらでも差し上げますわ』
崇継自身も勝つつもりは無いのでどうでもいいが、ラプターの全力を出せるなら恐らくボコボコにしていただろう。
「いや。要らない。別に一夏君のISが届くまでの消化試合だ。そこまで本気になる理由が無い」
『・・・そう、ですか』
返ってきた声には明らかに怒りが混じっていた。
『その言葉、絶対に後悔させて差し上げます。50分もいりませんわ!5分で終わらせます!』
もちろん崇継は負けるつもりも無いので特に気にするつもりはない。余程やらかさなければ負けないので、相手を応援する事にした。
「そうか。楽しみにしている」
そして試合開始の合図が始まる。
『それでは、試合を始めます』
オルコットはレーザーライフルを構える。崇継は兵装担架に2丁AMWS−21を装備しているが、手には何も持っていない。
『試合、開始!』
始まるや否やオルコットは構えていたレーザーライフルでこちらを撃ってくる。ラプターのメインカメラから得た情報を元に常にライフルのレーザーの弾道を計算しているので当たらない。計算していなくても大体分かるが、なにせ一応ラプターは試作機扱いなのであらゆる機能の実戦におけるデータが必要なのだ。
地面を蹴り、跳び、体を捻り、“飛ぶ”以外の、生身でも出来るあらゆる動きを用いて、最低限の動きでレーザーを避け続ける。体力筋力には自信があるので心配は無い。
10分後
どちらのISにもダメージは無い。流石と言うべきか、オルコットの集中力もまだ尽きないようだ。
「素晴らしい射撃だ。だが既に10分たってしまったね」
『・・・ッ!』
「ま、頑張ってくれ。先生達からしてみればただの時間稼ぎだけどね」
20分後
両者ダメージ無し。崇継の機体は砂で汚れている。
30分後
両者ダメージ無し。ここでオルコットに疲労が見えてきた。だんだん狙いとズレてきたのが崇継にも分かった。レーザーライフルだけでは勝てないと悟ったのか、ビットも使用し始めた。
「なるほど、そう言えばビットも兵装の1つだったか。これを出したと言う事はある程度認められたという認識でいいのかな?」
『えぇ。まさかティアーズを使うことになるとは思いませんでしたわ。これを使って、勝ちます』
「そうか」
もちろん崇継はブルー・ティアーズにビットが積まれている事は知っているし、最大稼働の際の強さも理論上ではあるが知っている。だが彼女は最大稼働は出来ない。ビットか本体のどちらかが動いている間は、もう片方は動けない。それでも対ビットの練習にはなるだろうと思い、まだ避け続ける事にした。
40分後
両者ダメージ無し。観客席からも明確に疲労が分かるようになったらしく、観客席はザワついている。ビットとレーザーライフルによる攻撃で地面はえぐれたり穴があいたりしているが、ラプターは無傷。だが、それでもオルコットは諦めない。素晴らしい事だ。崇継はこれがイギリスからの命令でない事は知っている。だからこそ彼は本心から彼女を讃えた。
「・・・君は、素晴らしいな」
『ハァ、ハァ、それは、嫌味、ですの?』
「いや、紛れもない本心さ。40分間ひたすら攻撃を続ける。休み無しでだ。生半可な精神力では無いね」
『アナタこそ、その攻撃を、ずっと避け続けているでは、ないですか』
「私は大人だからね。でも君はまだ高校生だ。その年齢でその精神力は尊敬に値する」
『レディーの年齢を言うのは、マナー違反ですわ、よ!』
会話のスキをついて崇継の死角からビットで攻撃するが、容易く避けられる。
「それはその通りだ。申し訳無い」
『そう思うなら、早く負けてくれませんこと?』
「いや、ただでさえ君たちとの試合を拒否して
そう言いながらビームの嵐を掻い潜り続ける崇継だが、そろそろ試合の終了時間だ。
「済まないね。このまま避け続けても良かったんだが、攻撃出来ないと思われるのも癪なのでね」
そう言って崇継は膝部ナイフシースから
『機体本体に武装を!?』
オルコットは動揺するが、そこが分水嶺となってしまった。動揺した一瞬を逃さず、跳躍ユニットを噴かして、ナイフを振りかぶりながらオルコットに近づく。
ナイフが当たるその瞬間ーーーーーー
ピーーーーー!
試合終了のブザーが鳴り響く。
「え・・・?」
オルコットは当たることを想定し、腕を構えていたが、ゆっくり目を開けると交差した腕に当たるぎりぎりのところでナイフが止まっていた。すると、目の前に居る崇継からコールされる。
『やれやれ。私もツイてないな。ま、素晴らしいものを見せてもらった。ありがとう』
そう言って手を出して来たので。オルコットも恐る恐る手を出し、握手した。
すると、緊張の糸が切れたのか、突然オルコットのISが解除されてしまう。
『ッ!』
運良く崇継がオルコットの手を握っていたので。そのまま引っ張り、右肩部装甲だけ解除し、肩で担いで地面に降りた。
「あ、ありがとうございます」
「大丈夫だ。怪我はないか?」
「大丈夫です」
「そうか。君はこの後もう1試合控えているが、キツそうだったら織斑先生に言ってくれ。あの試合を見て文句は言わないだろう。じゃ」
そう言ってを崇継はアリーナを出ていった。
それを見送るセシリアの頬には朱がさしていた。それは担がれた恥ずかしさからか。それとも・・・
次回でクラス代表は決定します。主人公ではありませんが。セシリアは一夏のヒロインか主人公のヒロインか迷ってるので、そちらもアンケート取ろうと思います。亡国3人組は味方にします。ヒロインにもしようかな。
前回のあらすじいる?
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いる
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いらない