Side 3人称
サァァァァ・・・
セシリアオルコットは一夏との試合終了後、アリーナでシャワーを浴びていた。が、彼女の体はシャワーすらぬるいと感じるほど熱くなっていた。
「斑鳩・・・崇継・・・」
声に出したのは先程対戦した相手、では無くその前に戦った、世界で2人目。自分より一回り近く年上で、自らが忌み嫌っていた筈の男性という部類に入る人。はっきり言わなくても完敗と言われるであろうあの試合で、セシリアはあの男の技量を見た。自分が使用しているIS、試作機とは言え最新鋭の第3世代機を相手に50分も耐えた。避けてただけなのだからそれくらい出来るだろうと言う者もいるだろうがそうは思えない。奥の手を使ってはいないが、レーザーライフルはもちろんのこと、ビットまで使ったのに1撃も当たらず掠りもしなかった。もし彼が最初から武器を持っていたら恐らく負けていた。彼女をしてそう思わせるほどの技量が彼にはあった。
セシリアは彼の事を思い出す度身体が熱くなっていくのを感じる。何故だろう。考える。
『君は、素晴らしいな』
『その年齢でその精神力。尊敬に値する』
『君はこの後もう1試合控えているが、キツそうだったら織斑先生に言ってくれ。あの試合を見て文句は言わないだろう』
心に浮かんでくる、彼の言葉。その全てが、
「・・・そう、ね。私という個人を見て、認めてくれたのですね」
彼女本人を見ている証拠だった。幼き日に家族を失い、その時から当主に成らざるをえなかった彼女にはいつも財産を狙う輩が付きまとっていた。そうで無くとも、セシリアという個人を見てはくれなかった。弱かった父とも、そんな下衆達とも違う彼に、自らは惚れたのだと、彼女は理解した。そうとなったら話は早い。
「・・・オルコット家当主としてでは無く、セシリア・オルコットとして、貴方を」
私の夫にします。そう決意し、彼女はシャワールームを出ていった。
Side 崇継
いやはや、思ってたよりいい線行けてたなぁ一夏君。まぁ装備がブレード1本というのはいただけないが、そこはおいおい織斑先生がどうにかしてくれるでしょうっと、あぁ〜やっぱこのイスが良い。あ、言い忘れてたけど俺丁度今部屋に戻ってきたんだ。
簪のISについても進めなければね。でも、恐らくクラス代表戦には間に合わない。専用機タッグマッチについてはぎりぎりって感じ。全く、専用機開発の手伝いもしないといけないし、中佐にも他の人にバレないよう逐一報告しなきゃいけない。今回のオルコットについてもレポート書かなきゃ。大変だぁ。
コンコン
どうぞー?・・・あぁ、簪。おかえり。
「ちょっと質問良いですか?」
いいよ?疑問に答えてあげるのも大人の仕事だからね。
「何であの時織斑が負けるってわかったんですか?」
あの時?・・・無意識に呟いてたのか。困っちゃうな。え〜っとね。電光掲示版にお互いのSEの残量表示されてたよね。
「はい」
織斑先生のもそうだったけど、あの能力は自分のSEを削って威力を上げる、みたいな能力なんだよね。つまり諸刃の剣ってわけ。で、あの時一夏君が能力を発動しっぱなしで近づいて行ったから急速にSEが減ってた。そのスピードを計算したら恐らく一夏君のSEが尽きる方がオルコットさんに一夏君の剣が当たるより早かった。それだけだよ。
「・・・そう、ですか。納得出来ないけど、納得しときます」
そうか。まぁ何事にも疑いを持ってかからないと頭が固くなってしまう。適度な警戒は必要さ。
夜飯どうする?
「食堂で。本音も誘っていいですか?」
いいよ。
って訳で飯食べてきました。オルコットと一夏君には会っていないが、ま大丈夫でしょ。
それじゃおやすみ
Side 3人称
翌日、教室ではやはり一夏の周りに人が集まっていた。かけられていた言葉はすごかったとか、かっこよかったとか、ありきたりな言葉で。正直半分は媚売りたいだけだろと思ってしまうのが崇継の軍人の、それもかなりの権力闘争に巻き込まれ強くならざるをえなかった者の性格でもあった。
対照的に、オルコットと崇継のところには誰も来なかった。崇継のところに誰も来なかったというのは語弊があるが、本音という顔見知り以外は来なかったという意味である。
チャイムが鳴り、いつもどおりホームルームが進んでいく。途中でオルコットから謝罪があったりしたが、場面は一夏の指導役を決めるところに移る。
「しかし、はっきり言って今の一夏さんは弱いです。このままでは直ぐに負けてしまうでしょうから、ワタクシが鍛えて差し上げましょう。斑鳩さんと一緒に!」
バン!
「いや!一夏の指導は私がやる!」
机を叩いて篠ノ之が立ち上がり自らが行うと主張するが、いきなり巻き込まれた崇継はどうしようか迷っていた。
「あら?適性ランクCの貴方に、指導ができるのですか?男性操縦者の、しかも専用機持ちを?」
「ぐっ……ランクは関係無いだろう!」
すると見かねたのか、遂に織斑先生が話に割って入った。
「はいはい。お前たち、くだらんことで喧嘩するんじゃない。お前たちのなぞ私から見ればランクなど関係なくどれもひよっこだ。両方指導に入れば良いだろう。斑鳩については本人の許可を得てから話をしろ。どうせ言ってないんだろう?」
「……はい」
「よろしい。それではこれでホームルームを終わる。授業の準備をしておけよ」
織斑先生と山田先生は出ていった。斑鳩はといえば、ラプターのデータに目を通したり、次の開発に回せるようなデータの取り出しを行っていた。するとそこに、オルコットが現れる。
「あの、斑鳩さん」
緊張しているのか不安なのか、少しうつむいて話しかけてきた。
「あぁ、オルコットか。さん付けはいらない。好きに呼んでくれていい。一夏君の指導は、………」
別に対してオルコットに怒りを抱いているわけもないので、むず痒いさん付けはやめるよう言ってから、崇継は本題に入った。女子の耳は鋭く、〘一夏〙と〘指導〙というワードを出した瞬間一夏、篠ノ之を含めた教室の生徒の雰囲気が変わった。
「さて、どうしようかな。だがそれ以前に、本人に言わず勝手に巻き込むのはいただけないね」
「それについては、すいませんでした。でも、貴方の操縦技術を一夏さんが身につけられれば、恐らく敵なしだと思いました」
「なるほどね。ま、そう思うのも当然だろう。ともかく、そうだな。一夏君の指導については暇な時があれば行かせてもらおう。一応、私も暇人ではないのでね」
途端に篠ノ之からは不機嫌オーラが、一夏からはよしっ!という声とともに絶好調オーラが出てきた。
すると、今が好機と見たか、機嫌が最高の一夏に女子が再び群がっていく。朝と同じくクラス代表戦の事のようだ。
「ありがとうございます。いつでもお待ちしておりますわ」
「あまり期待しないでくれ」
その日の夜、1組は会議室を貸し切ってパーティーを行っていたが、そこに崇継の姿は無かった。
「それじゃ、一夏君のクラス代表就任を祝って、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
皆が持ち寄ったお菓子や飲み物でささやかながらもきらびやかなパーティーだった。その中で一夏はキョロキョロと辺りを見回してはため息をついていた。
「一夏。男がそのようにため息をつくな。別にあの男がいなくたって何ともないだろう」
「でもさぁ、箒。崇継さんは俺より絶対強いのに納得行かなくてさ。」
「どうせ怖気づいたんだろう。気にするな」
「ま、崇継さんに指導してもらえるかもしれないんだ。役得って思ったほうが良いかもな」
「………」
一夏は本心から笑顔で言ったが、篠ノ之はそれが面白くなかった。
「おっ、いたいた!どうも、新聞部の黛・・・」
一方、当の崇継は今日も簪と一緒にISの作成に励んでいた。そろそろ完成も見えてきたのと、崇継の生活指導により健康そのものである簪は安堵していたが、同時に最近どこからか視線を感じることが多くなった。
「あの、崇継さん」
「ん?どうした」
「相談があって、実はその、最近どこからか視線を感じることが多くなって」
「うんうん」
「多分敵意って訳ではないと思うんですけど、気になって」
「なるほどね」
崇継には思い当たる節があった。自分も最近誰かに見られているからだ。本気を出せば直ぐに特定できるが、あまり公の場で本気を出したくないので放置していた。十中八九あの
「俺は特にそういうのは無いな。敵意がないならまだ大丈夫だろう。ただ、少しでも不安になったら先生に相談しな。なにかあっては遅い」
「分かりました。それじゃあ、今日はこのくらいにしましょう」
使った道具を片付けてから2人は部屋に戻った。
だが、それを見て、歯を食いしばって悔しがる、青髪の少女がいた。
次回の予定は未定です。首を長くして待っていただければ幸いです。
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