マブラヴ大好き青年が行くIS世界   作:王選騎士団

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21話

アリーナ中央では鈴と一夏が正体不明の機体を相手していた。試合で戦っていた2人であったが、それが乱入してきたので中断となった。織斑先生から通信が来てそれが敵だと分かってから2人はそれと戦っていたが、これといった決定打は与えられずジワジワとSEを削られていった。そもそも武装がSEを消費する一夏の白式は試合の分も合わせて既に半分を切っており、鈴の甲龍も7割を切っている。SEの残量も不安要素ではあるが、2人共ジワジワと削られ、決定打を与えられていない事が何より彼らの精神を削っていた。

今この瞬間も一夏は敵機に斬りかかり、鈴は龍砲で攻撃するが前者は当たらず、後者は当たってはいるが、そこまでダメージを受けたわけではない様だ。

 

「くそっ!当たらねえ!」

 

「一夏、落ち着きなさい!無闇に突っ込んでも意味ないわ!」

 

突撃しようとした一夏を鈴が止めたが、鈴も焦っている。

 

(コイツら、一体何なのよ!)

 

「こんな時に崇継さんが居てくれれば…」

 

一夏はこの場にいない、彼が姉以外で最も頼れる人の名前を無意識に口にするが、鈴にはそれが気に入らなかった。いや、気に入らなかったは正しくない。正しくは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から。彼女は崇継が戦っているところを見たことがない。クラス代表決定戦の映像は見たが、彼女からしてみれば避け続ける事に意味は無い。敵は撃破するべきだと思っているからだ。だから、彼女は敵を攻撃しようとしない様な彼が自らの背中を預けるに足る人物なのかわからなかった。だから、一夏に強く言ってしまう。

 

「こんな時に何言ってんのよ!ここに居ないやつの事を考えても意味無いでしょ!」

 

だがそして、その一言が彼女の命取りになる。

 

「鈴!」

 

「え?」

 

彼女の後ろに1機、それが迫っていた。それは鈴に対し、その腕を振り下ろそうとしていた。否、それは既に腕を振り下ろしていた。当然、鈴は動けない。一夏も間に合わない。彼の機体のスペックなら、本気になればギリギリ間に合う。だが彼はこの機体に乗り始めて、そもそもISに初めて触れてからそう長くない。機体のスペックを十全に引き出せないのは自明だった。彼女の目の前に迫った死が彼女を動けなくさせていた。死の間際にいる彼女が出来た事は、腕を前に出して少しでも衝撃をやわらげようとする事。そして、死の恐怖から目を瞑る事だった。

彼女に死が訪れるその瞬間、そこに割り込む影があった。

 

「そう、ここに居ない奴の事なんて考えても無駄なのさ。だからこそ、考えたその一瞬が命取りになる」

 

恐れていた衝撃が来ないこと、何よりここに居るはずの無いものの声がしたと理解した彼女が目を開けると、そこには両手で相手の腕を防ぐ黒い機体がいた。

 

「アンタ……なんで……」

 

鈴が呆然とつぶやくと、斑鳩は敵機の腕を弾き蹴りとばし答えた

 

「なんだ、助けて欲しく無かったのかい?でも流石に目の前で死にかけてる人を助けない程私は薄情じゃないんだ。自殺はよそでやってくれるかな」

 

顔は見えないが、声からすると呆れているのが分かった。

 

「崇継さん!」

 

自分を心配していた一夏も鈴が助かった事と斑鳩が駆けつけたことに安堵している。

 

「余所見するなよ一夏くん。味方が来たからといって緊張をといてはいけない。先程の彼女の様になるぞ」

 

「っうっさいわね!」

 

皮肉げにそう言う崇継とそれに噛みつく鈴。言葉遣いは乱暴だが自然と棘は感じず意外に仲の良さを感じた一夏。

 

「ハハ、そんなに元気なら大丈夫そうだ。っと!」

 

3人が仲良くしている間も敵は動いていた。そのうちの1機が腕を斑鳩に向けていたので120mm弾で腕をずらし、動かないまま避ける。

それを合図に一夏と鈴も各々の武器を持ってかかっていく。先程の反省をしたのか、2人で1機を相手にしている。幼なじみ故か、2人のコンビネーションは抜群だ。一夏は斑鳩の参戦、鈴は一夏との共闘により士気が上がり先程までとはうってかわって2人が押し始めていた。

一方の斑鳩は2人が1機を抑えている間に2機を相手にしていた。斑鳩の戦術により、2機は一夏達を相手にしたいが斑鳩の事を無視できず、かと言って2機でゴリ押ししようとしても斑鳩を仕留めきれない。しかし一夏達も相手が有人機だと思っているので最後の一撃を叩き込めない。だが、一夏達と斑鳩に押されている3機に焦りの色は見えない。すると、3人に向けて回線が開かれた。

 

『お前たち、聞こえるか!』

 

管制室にいる、織斑先生からだった。

 

『聞こえるよ千冬姉!どうしたんだ!?』

 

『その機体は無人機だ!手加減をする必要は無い!』

 

「ようやくですか、もう少し早くしてほしかったですよ」

 

斑鳩は皮肉げにそう言った。

 

『それについては済まない。現在教員達も生徒達の誘導に手一杯でそちらへは向かえない。他の専用機持ち達も間に合うかわからん。出来れば倒してくれ』

 

織斑先生は申し訳無さそうに言った。

 

「まぁ良いです、取り敢えず間に合いましたから。それじゃ一夏君、鈴音、そちらの機体は任せた」

 

『おう!』

 

『ふん、アンタこそ、やられるんじゃないわよ!』

 

通信が終わると斑鳩は会話しながらも抑えていた2機に改めて相対し深く息を吐いた。

 

「さ、始めようか。今までの余興じゃ、不完全燃焼だろう?」

 

言うが早いか両手の突撃砲を相手の頭部に向け、120mm弾を打った。相手も避けようと対応するが、次の瞬間弾が爆発した。斑鳩が打ったのは焼夷弾と呼ばれる類の弾であり、斑鳩の意思で自由に爆発させられるようにしてあった。

物理的に斑鳩の視認が不可能になった2機はセンサーで観測しようとしたが、センサーで斑鳩の機体(ラプター)のマーカーを認識した瞬間にマーカーが消えた。

 

「チェックメイトだ」

 

最後に機体が認識した音声はそれだった。

 

この時斑鳩は焼夷弾を打ち、爆破させた瞬間に爆炎で見えない事を利用して2機の間に跳躍ユニットを使い踏み込んで、両手に持っていた突撃砲の粘着榴弾*1で頭部のセンサーを破壊、SEを削りきった。

機体も搭載しているAIでできる限りの事はしようとしたようだが、この時は斑鳩が上手だった。

背中の方に目を向ければ、一夏と鈴がさっきよりも巧みな連携で無人機を相手していた。段々と削れてきたようで、どちらの表情にも翳りは無い。このまま順調に行ってほしいと切に願う斑鳩だったが、そうは問屋が卸さない。

 

 

『何をしている!2人がかりで相手するなど、それでも男か!』

 

 

「「!?」」

 

突如アリーナに放送がかかったかと思えば、有名なイベントの発生だ。かかるはずの無い放送、居ないはずの者の声に、一夏は動揺し、鈴も驚いてしまった。二人の連携から抜け出せなかった敵機もここぞとばかりに二人から距離を取り、そのまま両手を合わせ……

 

「ッ、箒ぃぃぃッ!!」

 

『!?』

 

これから何が起こるのか、考えなくても分かる死の予感が二人を襲う。

一夏は動けない。彼の機体性能を十分に引き出す事ができれば可能性はあるかも知れないが、先程と同様に彼はまだ不可解だった。

鈴は先程と違い、咄嗟に動くことが出来た。だが、()()()()()()()()()()()()が必ずしも()()()()()()()()()()()()()という事では無い。敵機が取った距離のせいで彼女の武装は全て射程が足りなかった。

一方斑鳩、

 

(ッ、あいつ、やっぱりか!だが一夏は間に合わん、鈴もだ。……やるしかないかッ!俺を守ってくれよ、F-22A(ラプター)!)

 

彼はその一部始終を第三者として見ている事が出来た。だからこそ、自分が守らなければならない事は理解出来た。あのレーザーを受けて篠ノ之箒が死ぬかは分からないし、篠ノ之束がそんな事させないとは思っているがいかんせん原作知識も曖昧だ。何があるか分からない。

そしてこの状況で何よりまずいのは斑鳩が敵機の発射するレーザーを止める手段が無いという事。一夏の様にレーザーを切れる武装は持っていないし、一夏達が削ったとはいえ未だ敵機のSEもある程度残っている。120mm弾をある程度当てれば削りきれない事も無いがそんな余裕は無い。

だからこそ、斑鳩は自分を盾にする決意をした。

敵機の腕の延長線上に全力で向かい、立ちはだかった。

 

「「「!!」」」

 

そして機械はどこまでも冷徹に、その腕から光条を打ち出した。

 

斑鳩は腕を開き、体を大の字にしてなるべく後ろにレーザーを通さないようにした。だがそれはそのまま斑鳩がその分のダメージをそのまま受けるという事だ。

 

「ぐ、が、アァァァァァッッッッ!」

 

数秒は装甲が耐えてくれたが、直ぐにそれも無くなり、血液が沸騰するような熱さが斑鳩を襲う。

 

「アァァァァァッッッッッ!、      

 

そして斑鳩は意識を失い、真っ黒の中へ落ちていった

 

 

 

*1
弾着時に爆発せず、当たった標的の内部を攻撃する弾




今後も不定期になると思いますが、よろしくおねがいします

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