マブラヴ大好き青年が行くIS世界   作:王選騎士団

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22話

「う〜ん、何にもねぇなぁ」

 

周囲を探索してみたものの、どんよりした曇りの空と、透き通っているがゆえに曇りの空を映す海、砂浜と限りなく続く緑の草原だけだった。

 

「流石に流されたって事は無いと思うんだけどな〜」

 

   話は数分前に戻る。

 

「……?」

 

斑鳩が目を覚ますとそこには曇りの空。ここはどこだろうと周りを見る為首を回すとどうやら自分が砂浜に寝転がっているという事が分かった。ひとまずうつ伏せになってから立ち上がり、いつの間にか着ていたIS学園の制服から砂を払うと再び周りを見渡した。取り敢えず目前に脅威が無いと悟ると、今度は状況の整理をし始めた。

IS学園を襲撃した正体不明の機体。それを斑鳩は一夏と鈴と協力し撃破しようとしていた。もちろん自分が対応した機体についてはどちらも沈黙したのを確認した。だが自分が担当していない方、一夏と鈴が対応していた機体については注意していなかった。いや、そもそも一夏と鈴ならあのまま倒せていた筈だった。第三者が介入しなければ。

 

「……篠ノ之箒」

 

彼女が一夏達の戦闘に水を差す様な真似をしなければ自分も身を挺して庇う事も無かった、と少しイライラするも起こってしまった事は仕方ないと直ぐに冷静になる。それに、篠ノ之束とも彼女について話はした。おそらく彼女が次に関わるイベントは、………

 

「第四世代機の譲渡。ッは、忌々しい。未だ多くの国が制式第三世代機の確定、運用すら出来ていない。第三世代機用技術の確立もままならない国すらあると言うのにな」

 

タイムリミットはそこだ。それまでに彼女が変わろうとすれば良い。だが、もし第四世代機を手に入れて調子に乗ったならアウトだ。

 

「俺は一応大人だ。子供を正しく育て導く義務がある」

 

如何に斑鳩が暗躍を得意とし、軍人として切り捨てるものは切り捨てられる人間だろうと、彼にも人としての心はある。何より、世界の闇の部分を見てきたからこそ、それを無くす事の出来る次世代の人間の必要性を痛感していた。

ただそれでも限度はある。篠ノ之箒のように自分の都合の悪い事は認めないなどという子供じみた、いや、子供そのものの考え方をする人間ははっきり言って必要ない。

 

現状の整理を終えた所で、斑鳩は再び辺りを見渡した。依然として変化は無く(それほど急激な変化があっても困るが)、ため息をついた。その瞬間突如背後に気配が現れた為、振り返りつつ一歩下がるもそこには何も無かった。

 

「……!?何だ?」

 

「そろそろ、よろしいでしょうか」

 

「!」

 

気配が消えた事に驚いていると、再び背後に気配が現れ、今度は声をかけてきた。攻撃の意思は感じられないのでゆっくり振り返った。

 

「!     崇宰、恭子?」

 

そこに居たのはこの世界には存在しないはずの人間。マブラヴオルタネイティヴ原作には登場しない人間。五摂家が一つ、崇宰家。その当主、崇宰恭子がそこに居た。だが何故?そんな事を考える前に相手は話し始めた。

 

「崇宰恭子?……あぁ、こちらでお会いになるのは初めてでしたね、マスター。私は貴方がラプターに使用しているISコア、コアNo.100です」

 

そう名乗り、彼女は両手を前で重ねてうやうやしく一礼した。取り敢えずそれを見て混乱が一周回り冷静になった。彼女以外に情報源が無い為彼女を頼ることにした。

 

「あっ、あぁ、よろしく。……早速で悪いんだが、質問いいか?」

 

「もちろんです」

 

「ここ、どこ?」

 

斑鳩は率直に疑問をぶつける事にした。

 

「ここはマスター、貴方の心の世界です。マスターが死にかけた事で(コア)の絶対防御が発動。出力が高く、またマスターの適正ランクが高かった事もあり私と共鳴し、こちらでマスターが目を覚ます事となりました」

 

「へぇ〜。死にかけたとか割と洒落にならんこと言ってるけど、ま、大丈夫だろ」

 

「フフ、そうですねマスター。……ところで、私が貴方をここに呼んだのですけれど」

 

彼女は手を口に当てて上品に笑い、その手を降ろすと目を閉じ有無を言わせぬ迫力を纏いこう言った。

 

「マスター。私に名前をつけていただけませんか」

 

だがその口から出た言葉は予想だにしない内容だった為斑鳩はフリーズしてしまう。

その様子を見て拒絶されたと思ったのか不安な表情になった。

 

「嫌、でしたか?」

 

フリーズから回復した斑鳩はその顔を見てアワアワしながら安心させる為に答える。

 

「い、いやいや、嫌な訳じゃ無いよ。ただびっくりして」

 

すると彼女はパァッと花が咲いたような笑顔になった。斑鳩の周りにも美人はいて慣れているがそれでも見惚れてしまうような笑顔だった

 

「そうでしたか。そ、それでは早速……」

 

「うん、そうだな……」

 

(恭子とかじゃ呼びづらいからなぁ。どうしよう。1(イチ)

0(ゼロ)0(ゼロ)。ゼロは日本語で零……安直だけどレイにしよう)

 

「よし。それじゃお前の名前は今から“レイ”だ。よろしくな、レイ」

 

「はい!よろしくおねがいしますね、マスター」

 

レイの嬉しそうな笑顔に斑鳩も微笑ましく感じた直後、斑鳩は凄まじい風に見舞われる。

 

「ッ!何だ!?」

 

目を開けていられない風の中で、どこからかレイの声が聞こえる。

 

「時間のようです、マスター。そろそろお目覚めにならないと、あの子達も心配してしまいますから。……また直ぐに会えます」

 

「っ、あぁ、わかった!ありがとよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

    っは、ここは、……そうか、今度は流石に病室か」

 

斑鳩が再び目を覚ますと今度はちゃんとベッドに寝ており周りをカーテンで囲まれていた。ひとまずここがIS学園の保健室である事を備品から確かめる。腕も足も動かせない事は無いだろうが、流石に動かすと激痛が走るであろう事は火を見るより明らかなので動かさなかった。手の感覚から察するにおそらく包帯ぐるぐる巻きにされているのだろう。

先程までの事を思い出すとあれが本当だったのか怪しいところだが、それは再びラプターを纏えば分かることだ。

すると今更になって左手の方から規則的に深呼吸する音が聞こえる。誰だろう。

 

「あぁ、簪か」

 

特徴的なバイザー、眼鏡、青い髪とくれば当てはまる人間は1人しかいない。大方心配で見に来て、緊張の糸が切れたのだろう。スヤスヤととても気持ち良さそうに寝ている。起こすか迷ったが邪魔では無いので起こさないことにした。しばらくは彼女を見て癒やされようと思い、久しぶりにリラックスする時間が取れた斑鳩だが、次の瞬間視界が塞がれた。

 

「ッ!誰d」

 

「し〜っ。あまり騒がない。その子起きちゃうよ?」

 

人の気配を感じなかったところから急に視界が塞がれ焦るも、次に聞こえてきたゆったりとしつつも聞き覚えのある声で緊張が解けた。

 

「ハァ…焦らせないでくれ。今は動けないんだ。何かがあると不味いんだよ」

 

非難するように言う斑鳩だが、おそらく効果は無いだろうなと薄々感じている。

 

「大丈夫だよ。束さんがついてる。ちゃんと君の傷も治したし、君に害意を持つやつは処理するもん」

 

静かに、諭すように彼女は言った。内容はともかくとして、それは、斑鳩が知らない、慈愛に満ちている声だった。だが同時に、裏に苛烈な何かが隠されている声でもあった。それを感じとったが故に斑鳩は彼女に問うた。

 

「………何かあったのか?俺が知ってるお前は、そうだな……唯我独尊と言った感じの振る舞いをするお前だ。簪を起こさないように注意するなどといった“配慮”なんてものは微塵も見られなかったと報告書で見た。そういうところも今のお前とは似ても似つかない」

 

ゆっくりと静かに、だが確実に聞きたいことを聞き出す為の質問だった。斑鳩からは見えないが、彼女は困ったような嬉しいような複雑な表情をしていた。が、一度ゆっくりと目を閉じ、答えた。

 

「……やっぱり、君は何でも分かっちゃうんだね。束さん、こんなに自分の事見抜かれたの初めてだよ」

 

「俺は何でも分かるわけじゃない。お前の事も、悩みらしきものがあるのか無いのか怪しいぐらいまでしか分からん。この程度なら織斑先生でも出来る」

 

「……それでもちーちゃんはそこまで踏み込んで来ないよ。ちーちゃん以外の人は私の事なんて微塵も理解してないしね」

 

静かな部屋に染み渡る様に、彼らの会話はそれぞれの内側へ染み込んでいった。しばらくの間、静寂が部屋を包む。どちらも話そうとはしないが、その静寂が2人にとって心地良かった。

 

何分経ったか分からなくなってきた頃、束が口を開いた。

 

「私はさ、箒ちゃんがああするって事ぐらい、予想がついてたんだ。それも織り込んで計画を立てたつもりだった。それが、いっくんと箒ちゃんの為になると思ったから。……でも、その時になってみて、本当に怖くなった。あの時の束さんは凄く怯えて、自分がちょちょいっと操作すれば良いだけの話なのに何も出来なかった。………本当に……怖かったんだ……!」

 

泣きながら彼女はそう言った。彼女の目的は初めて知ったが、何よりも彼女にもちゃんと家族を思いやる心がある事に安堵した。如何に人をゴミの様に扱えると言っても人は人だ。まともな人間でなくなる最後のラインを、彼女はまだ越えてはいなかった。それは正しい事なのだと、斑鳩は思う。

 

「……だから、ありがとう。箒ちゃんを助けてくれて。……本当に、ありがとう……!」

 

未だ正面を向き続けている斑鳩だったが、振り返らずとも彼女が本気で、誠心誠意感謝しているのだと感じる。おそらく頭も下げているだろう。

 

「……俺が、彼女を守ったのは、あそこに居たのが篠ノ之箒だからじゃ無い。もちろん誰があそこに居ようとも俺は同じ事をしただろう。俺は大人なんだよ。次世代を守り育てる義務がある」

 

「……君らしいね。自分の事だけじゃ無く周りの事、色んな事に目を向けてる。束さん、そんな事出来ないよ」

 

彼女は呆れたように言った。

 

「でも、だから“あの子”は君の事を気に入ったのかな。今ならその気持ちも分かる」

 

「あの子?一体誰の事だ?」

 

斑鳩は率直に疑問をぶつけるも、束はフフッと笑った。

 

「全く君は自分の事は鈍感だねぇ。ま、それはそれで面白いから良いけどね。()()頑張りなよ。そこにいる彼にもう用事は無いからね。それじゃ」

 

そう言って斑鳩の横を通った束はカーテンの奥へ行った。音から察するに窓を開けたのだろう。

 

「また会おうね!ばいば〜い!」

 

そうして凪いだ嵐は去っていった。さて、次の用事は。

 

「……起きているんだろう、簪」

 

自分を涙目、ふくれっ面で見てくる彼女をどうにかしなければ。

 

 

 

 

 

 

 

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