Side 篠ノ之箒
次にあった事は、食堂での一悶着(?)があったその日。一夏と特訓をしてから部屋へ戻ると、鈴(彼女からそう呼ぶように言われた)が部屋の扉の所で仁王立ちで待っていた。何をするかと思っていると、我々を認識するやいなや開口一番。
「部屋、変わって?」
そう、言われた。彼女の言い分を聞くに、こうだ。一夏は先程食堂でも奴が言っていたように貴重な男性操縦者だ。なるべく強い者が身近にいた方が安心出来るだろうし護衛にもなる。鈴は代表候補生という十分な肩書があるし、幼なじみだから同室でも問題無い。という事だった。そんな事、認められるはずがない!私だって一夏の幼なじみだ。こんな時に一夏が言ってくれれば良いのだが、頬をポリポリとかいて微妙な笑みを浮かべている。役にはたたないだろう。
そして、鈴と口論になって数分後か、はたまた数十分後か。私達には分からなかったが突然一夏が声を上げた。
「あ!崇継さん!」
奴が、そこに居た。前回も私を阻んだ奴が、またここにいる。心底つまらないという目をしていて、傍らには青い髪の毛が特徴的な少女が立っている。奴を見て私は不機嫌に、鈴はゲッとなり、一夏は救われた〜と安堵していた。
よくよく見れば奴の隣にいる少女も不機嫌そうな目をしている。私だって奴がここに居るだけで不機嫌だ!少女を観察しながらそう思っていると、一夏はあっ、その人が崇継さんと同室の人ですか?なんて言いながら近づいていった。一夏は気づいていないが、一夏が近づけば近づくほど彼女は不機嫌というか、親の仇でも見るような目になっていった。
「始めまして、俺、織斑一夏。よろしくな!君の名前は?」
「……」
そして一夏は彼女に手を差し出した。いつもの事だ、握手しようとしたのだろう。だが彼女は手を出さず、あまつさえ反応すらしなかった。一夏が自ら手を出してくれたのだぞ!?何を考えている!
一夏も一夏で、隣にいるあの男を見ているんじゃあない!
そう言おうとしたら、それよりも早く千冬さんがやってきて
「貴様ら、何をやっている。全員部屋へ戻れ!」
生徒達を部屋へ戻るよう言った。あの男とその隣にいた彼女も部屋に戻ろうとしたのだろうがそこに鈴が食って掛かった。
「ちょっと、アンタねぇ!一夏が握手しようとしてんのに無視は無いでしょ!巫山戯てるの!?」
「凰。私は貴様に喋っていいとは言っていないぞ。口を慎め」
千冬さんは鈴に一目向けてピシャっと言い放ち、次いで崇継に目を向けため息をついた。
「また貴様か。つくづくトラブルメーカーだな」
するとあの男は少し不機嫌そうに反論した。
「織斑先生、確かにトラブルに巻き込まれる回数が他より多いとはいえ、私がトラブルを作っているわけではありません。そもそもなぜ私が止められたのです?これは一夏くんと彼女達の問題の筈です」
千冬さんは苦笑してそうか、すまないと謝罪していた。流石に奴もこれには強く出る事が出来無かったし、我々は口をあんぐりと開けたままあ然としているしか無かった。千冬さんがああも簡単に謝るのは見た事が無かったし、自分から謝罪するなんて事があったのか、と。
そう思っている間に千冬さんは自分のペースで話す。
「コイツ等は少し我が強すぎる。それにまだひよっ子だ。状況の説明に主観が入ってしまう。その点、貴様は事件に巻き込まれておらず、私よりも年上、社会を知っている。第三者として、証人として、最も信頼しやすいのだよ」
「なるほど。それはありがたいですね。願わくば私が証人として必要とされる事が起きないのを願うばかりです」
千冬さんはハハッ、違いない!と豪快に笑った後、我々の方へ向き直り、で?何があった?説明しろと奴に問うた。
奴は我々をちらりと見て言った。
「そちらの3人に向いておきながら私に聞くのは意味不明ですが……そうですね、相変わらずの痴話喧嘩です」
「「「ちょっ!」」」
痴話喧嘩とはなんだ痴話喧嘩とは!
「黙れ。人の話を黙って聞けんのか、お前たちは」
一応奴の隣にいる彼女にも何があったか確認したが、彼女も奴と同じことを報告した。
千冬さんは頭を抱えて呆れ果て、鈴には部屋を変えられるのは寮長だけであるから、さっさと戻れと言い、喜んでいる私にも近く部屋替えがある事を伝えた。
奴の方へ向き直って
「済まなかったな更識、斑鳩。部屋に戻っていいぞ」
と言って千冬さんも部屋へ戻っていった。
「…はい」
「では、失礼します」
結局その後も一夏は奴に師事を仰ぎ続けた。奴は決して首を縦に振らないままクラス代表対抗戦が始まる。私は千冬さん、山田先生と共に管制室にいた。
試合は一進一退、少し鈴が押している状況だった。だが一夏には、一夏の機体には必殺の機能がある。当たれば十分に勝機はある。すると
ドガァァァン!!
アリーナの外壁を突き破り、
ISのように見える、異形の何か。その存在によって会場内の生徒は一瞬のうちにパニックに陥った。私も少なからず動揺したが直ぐに収まった。千冬さんはあれの存在を認識して直ぐに取り敢えずの打開策を思いついたのか誰かにコールしている。
『はいはい、斑鳩です』
「斑鳩か!今どこにいる!?」
……コールしていたのは奴のようだ。
『アリーナの観客席です。今出口に向かっていますが、開いてないので出れませんね』
「そうか、分かった。今整備部や生徒会のメンバーを集めて外部からアクセスしているが、セキュリティの突破に時間がかかる。加えてあの愚弟だ。何分持つか分からん」
自分の弟なのにそんなボロカス言う?確かに弱いけど。かんちゃん、そんな事言っちゃだめだよ〜。なんて会話が後ろから聞こえた。おそらく先日あの男と一緒にいた女だろう。にしても千冬さん、愚弟を信じてあげてください。
『で、私がすべき事は生徒の沈静化ですかね』
「あぁ。出来れば内側から物理的に開けられるか試して欲しい。出来るか?」
『織斑先生、NOと答えさせるつもりの無い質問を出すのは止めてくださいよ。一応試してみます』
「ありがとう」
通信を終わり、千冬さんは直ぐに他の所へ通信を入れた。
「織斑先生、大丈夫ですか?」
「わからん。あの愚弟がどこまで行けるかだ。先生方にも一応待機要請はしておいた」
すると、再び通信が入った。
「なんだ」
『取り敢えず生徒は沈静化しました。これからドアを開けられるか調べます』
何かを叩く音がしたあと、直ぐに
『これ多分いけますね。ドア破壊しても大丈夫ですか?』
と言ったので、千冬さんは心底驚いたのか
『壊せるのか!?』
と動揺している。
『ええ、音紋を調べて大体の構造は把握しました。固定具を破壊した後ドアは蹴り飛ばします。危ないのでドア付近から人を退避させて下さい』
千冬さんは直ぐに生徒会に繋ぎドアから全員が離れた事を確認してからあの男にも退避が完了した事を言った。
『斑鳩、ドア付近の生徒の退避が完了した。やってくれ』
しばらくすると外部に居た先生から生徒達が退避した事を確認する通信が入った。今度は生徒会に乱入してきたあの機体について調べるように言ってから通信を切る。織斑先生は今度は落ち着いてコーヒーを淹れ始めた。
「織斑先生、よろしいのですか?」
「あぁ。あの愚弟とは言え凰もいるし、いざとなれば他学年の専用機持ちや今生徒達を誘導している先生方もいる。問題無いだろう」
……普通ならそうだろう。そう思うのだろう。世界最強がそう言っているのだからそうなのだろう。
窓から見下ろしてみれば一夏と鈴が戦っている。一生懸命なのだろう、いつもの優しい顔ではなく凛々しい顔だ。もちろん鈴も。だがどちらも決定打が与えられない。しばらく戦っていると鈴が敵機に不意打ちされそうになった。流石に私も目を見開いたが、そこに飛び込む影があった。……奴だ。
そして奴が来てから、2人の動きが見違えた。先程とは変わり2人でコンビを組んで敵に対抗し始めた。
だが私はイライラしていた。先程までの不甲斐ない戦いに加え、奴が来てから動きが変わったという事実。更には一夏と鈴は2人で1機と戦っているのにあの男は1人で2機抑えているこの状況。全てが情けない。
すると再び通信が入り、織斑先生が今度は頷き、3人に通信を入れた。
「お前たち、聞こえるか!」
『聞こえるよ千冬姉!どうしたんだ!?』
「その機体は無人機だ!手加減をする必要は無い!」
『ようやくですか、もう少し早くしてほしかったですよ』
通信に応えたのは一夏で、聞いたあの男は皮肉げにそう言った。
「それについては済まない。現在教員達も生徒達の誘導に手一杯でそちらへは向かえない。他の専用機持ち達も間に合うかわからん。出来れば倒してくれ」
千冬さんは申し訳無さそうに言った。……なぜ。
『まぁ良いです、取り敢えず間に合いましたから。それじゃ一夏君、鈴音、そちらの機体は任せた』
『おう!』
『ふん、アンタこそ、やられるんじゃないわよ!』
……何故、あの男が居るだけでこうなる?
「ふぅ。奴が来たならもう大丈夫だろう」
何故なんだ!
「っ!篠ノ之さん!?」
私は管制室を飛び出し、アリーナ用の放送室へ向かった。後から考えれば、管制室からでも言えたのだから別にここで行く必要は無かった。だが、私は放送室で言いたかった。少しでも、一夏の近くで言いたかった。だから、大きく息を吸い、言った。
『何をしている!2人がかりで相手するなど、それでも男か!』
「「!?」」
これで一夏ももう少しシャキッと、いつもの実力を発揮出来るだろう。一夏の実力はこの程度では決して……
「ッ、箒ぃぃぃッ!!」
「!?」
な、何だ!?一夏の声?何で私を呼んだのだ?
光が収束する。
何故、彼処に光が集まっている?
篠ノ之箒はこれまでの行動が悪いところがあるが、決して馬鹿ではない。それは倍率がかなり高いここIS学園に入れた事からも分かる。少し暴走してしまっているだけだ。だから。だからこそこれから何が起こるのか、考えなくても分かってしまったが故に彼女は迫りくる死に怯え、その場で動けなくなってしまう。
「「「!!」」」
だがその程度では止まらない。機械はどこまでも冷徹に、その腕から光条を打ち出す。
その間に割り込む陰。再び彼は彼の友人が大切にしている人を守る為にその身を盾とした。
「ぐ、が、アァァァァァッッッッ!」
数秒は装甲が耐えてくれたのだろうが、直ぐにそれも無くなったようで、耳を裂くような悲鳴が聞こえる。
「アァァァァァッッッッッ!、 」
だが遂に意識を失い、その場に倒れ伏す。ISは倒れる途中で解除されたが、周囲はおびただしい光景がひろがっている。少女は目の前の光景が受け入れられない。
「な……!」
「崇継さん!」
いつの間にか居た一夏は一直線に斑鳩の元へ行った。凰は先程の放送について篠ノ之箒に問いただす為に彼女に近づいた。
一夏は斑鳩を見て絶句した。幸いというべきなのか血は流れていない事から失血になるような事が無いのは分かった。取り敢えず一刻でも早く保健室に運ぶべきと思い触れようとすると背後から静止の声がかかる。
「あなたは…?」
静止の声をかけた青髪の少女は声をかけたは良いものの、一夏が振り返った際に一夏の体によって見えていなかった部分がみえてしまい、斑鳩の状態に絶句した。
何を考えているのかはわからないが自分に声をかけてから何もしない彼女に苛立ち声を荒らげた。
「今は崇継さんの命がかかってるかもしれないんですよ!?どいてください!…鈴!保健室の場所ってどこだ!?」
一夏の発言によりハッとした彼女は
「っ!ま、待って!保健室へは私が誘導するわ!貴方達は自室で待機していなさい!」
と言い反転して走り始めた。勿論一夏もそれに追走し去っていく。
「……行くわよ、箒。自室で待機していましょ」
「……」
何時までも下を向いたままの篠ノ之に業を煮やした鈴は彼女を無理矢理立たせ、彼女の部屋まで付き添った。
篠ノ之箒は彼女のベッドの上で足を抱えていた。
「いったい、何なんだ……。何が悪かったんだ……?悪い事を、したのか……?」
何時もの快活な雰囲気はそこには無く、ひたすら下を向いて自問自答を繰り返す少女がいた。十数分もそうした頃だろうか。
「私にも専用機があれば、あの場に居られた……あの男に一夏を取られる事も、一夏をサポートしながら直接共に戦う事も出来る……仕方ない、か」
彼女は結論を出したようだ。
『もすもすひねもす?』
「私です。私用の専用機を作って下さい。なるべく早く。それじゃあ」
そう言って相手の返答を聞くこともなく電話を切った。
ようやくマブラヴオルタネイティヴアニメの一気見が出来ました。やっぱラプターってかっこいいすわ。2期はいきなりあのシーンからなんすかね……?
前回のあらすじいる?
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いる
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いらない