モンド・グロッソ2日目
今日も今日とて大会である。午前に準決勝、午後から決勝という風になっている。先に織斑千冬が決勝進出を確定させ、俺たちの試合。昨日会ったリヴィエール対イルフィとなっている。格闘部門という名前だが実際の所銃器さえ使わなければいいだけの総合部門だ。
昨日あちらの武装を調べたところ、戦術機(ラファール)の武装であったフォルケイトソードを主に使っていた。恐らくだがリーチと一撃の破壊力を重視していると思われる。
「という訳でイルフィ。彼女の攻略法は彼女に有利な間合いに入らない事だ・・・と言い切ることが出来れば良かったんだが」
「何よ?それでいいじゃない。何か問題でもあった?」
「いや、何か嫌な予感がするのでね。それに、どんな時でも警戒しておいて損はないと思う。切り札とは、ギリギリで状況をひっくり返すからこそ切り札たり得るからね」
「わかった。でも勝てばいいのよ。そうでしょ?」
「あぁ、そうだな。・・・油断するなよ」
「えぇ。勝ってくるわ」
さぁ、どうなるこの試合。
Side イルフリーデ
私がスタジアムの観客の前に姿を見せた所からカウントが始まった。大丈夫、私なら勝てる。落ち着いて、焦らず、確実に。
Side 三人称
「試合開始!」
合図が出るのと同時に彼女は相手に向かって飛んでいく。両手にフリューゲルベルテを持つと相手も拡張領域から武器を取り出して振り下ろしてくる。両手をクロスして防御すると凄まじい重さが襲いかかってきたようで、彼女の口からぐっ、という声が聞こえる。跳ね返せないと悟った彼女はその重さに敢えて逆らわずに体を前屈みにしてフリューゲルベルテを前方にスライドさせながら加速してそのまま相手を切りつけ、そのまま相手から距離を取るが、すぐに距離を詰めて、斬り合う。
それが何回も続き、両者のシールドエネルギーが減って行き、遂にあと一撃と言う所まで来た。どちらが先に一撃を入れるか。2人は打ち合わせもなしに距離を取り、己の武器を構え、お互いをジッと見つめ合って牽制している。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「「「「「「・・・・・・・」」」」」」
何秒、何分経ったかその場にいた全員の時間感覚を麻痺させるほどの静寂が訪れる。
「・・・・ゴクッ」
誰かが唾を飲み込んだ音によってその静寂は崩れ去った。
「「ハァァァァァァッッッッ!!!」」
お互い一直線に相手に向かって行く。リヴィエールは自らの得物を振りかぶり、横薙ぎする。イルフィはその攻撃に対して左手のフリューゲルベルテを
(マズイ!)
リヴィエールは地面に刺さった得物から手を離し距離を取ろうとするが、間に合わない。イルフリーデは己が武器を振り下ろした。
「「「ワァァァァァッッッッッッッ!!!!」」」
Side 崇継
「ウォォォォッッ!スゲエエッ!」
「っしゃァッ!」
ツェルべルスの控室は現在お祭り騒ぎです。俺もめちゃくちゃはしゃいで皆んな抱き合ったりしている。が、
「静粛に!」
というか少佐の鶴の一声で鎮まった。イルフィも戻ってきてみんなに囲まれているが、俺は少佐と中尉と共に離れている。
「曹長、君のおかげでここまで来れた。感謝する」
「はは、何言ってるんです少佐。私は何もしてませんよ。アイツが努力したからです。それにまだ総合部門や射撃、飛行部門もあります」
「それでもだ。・・・正念場はまだまだか」
「曹長、どうしても優勝は・・・」
「えぇ。あの
「そう・・・」
「ですから、午後の試合にしろ中尉の試合にしろ何分、もしくは何回攻撃に耐えられるかが大事になってきます」
「わかった。少尉のISの整備を頼む。昼食はそれが終わってから取ってくれ」
「了解です。お〜いお前ら!勝ったのは良いけど午後には決勝もあるからな!さっさと整備おわらせるぞ!」
「「「ウィッス!!」」」
そして整備が終わり、スタジアムに隣接している試合関係者用の食堂に向かった。今日の昼食はカツカレーだ。勝てないと分かっていてもやはりゲン担ぎはしたくなる。食券と交換して空いている場所に座って食べていると
「ねぇ、隣いいかしら」
と声をかけられたので振り返ってみるとリヴィエールさんがいた。別段拒む理由も無いのでいいですよ、と言うと彼女は座った。彼女は何かを言おうとしているが、自分から催促するような事でもないだろうと思ったのでそのまま食べ続ける。
「・・・正直、ここまで強いとは思ってなかったわ。勝てる自信もあった。でもギリギリ、あと少し届かなかった。でも、私は今凄く満足してる。楽しかった。例を言うわ」
「俺は礼を言われるような事はしてませんよ」
「貴方はそう思っていても、私はそうしたかったのよ。私の家の家訓は『ただ1振りの剣たれ』って言ってね。私は試合中、ただ1振りの剣だったから」
「そうですか。・・・・家訓、カッコいいですね」
「私の家の家訓を知ってるのはごく僅かだから。それより、午後の決勝戦頑張りなさいよ」
「それは私ではなくイルフィに言って欲しいのですが、素直に受け取っておきます」
「それより貴方、何で1人称変わってるのよ」
「矯正されました。プライベートでは俺って言ってますよ」
「そう。じゃあね」
そう言って彼女は出て行った。俺は残りのカツカレーを平らげ、控え室へ向かった。既に俺以外は集合していたので焦ったが
「ちゃんと間に合っている。全員緊張していてもたってもいられなかっただけだ」
と少佐に教えてもらい安心した。でもみんな緊張するんだね〜なんて呟いたらめっちゃみんな俺をガン見してきたんだけど!?
「そ・う・ちょ・う?貴方はもう少し自分の立場をですね?」
やっべ中尉もお怒りですね!どうしようかな!
「中尉の言う通りだ。曹長は我々の頭脳だ。あまり能天気では居てほしくない」
「分かりました」
「よし。それでは試合前の確認を行う。曹長以外の整備班はISの最終点検を始めろ!」
「ゑ?何で俺だけ?」
「曹長の意見がとてもとても参考になるからだよ」
大尉が髭を弄りながら教えてくれた。そして俺にホッチキスでとめられた資料を差し出してきた。
「それでは曹長、説明頼んだよ。あれだけ詳しいのだから大丈夫だろう?」
「ハァ。分かりました。では早速」
そう言って脳のスイッチを入れる(真面目にやるだけ)。雰囲気が変わったのを感じたのかみんな真面目にこちらを向いている。
「織斑千冬の専用機、暮桜。この機体は武装がブレードだけの欠陥機と言っても差し支えない機体ですが織斑千冬の技量及び後述する
「はい!」
「どうぞ、イルフィ」
「どうしたら勝てる?」
「・・・零落白夜に1回も当たらずに攻撃出来れば勝てるだろうが、正直に言おう。この試合、いやこの大会に出場している選手で彼女に勝てる人は存在しない。もちろん、イルフィや中尉も含めてだ」
「「「!?」」」
「ふふ、そう。・・・俄然やる気が出てきたわ!崇継!私はこの試合に勝ってアンタを驚かせてやるわ!」
「(やれやれ。流石だな)そうか・・頑張れよ。それと、良いおまじないをかけてやる」
「?」
「俺の本気を思い出せ。俺との特訓を思い出せ。彼女との試合はあれに比べれば何てことは無い」
「えぇ・・・そうね、そうよ!」
「あぁ。勝ってこい。死ぬ気でな」
「行ってくるわ!」
・・・はは。やれやれ、絶対に勝てないとわかっている試合に希望を持たせるような事をするとはな。自分に嫌気がさすな。だが、対織斑千冬の訓練をしたのは事実だ。その上でどこまで行けるか、と言ったところか。
「曹長、どうした」
おっと、顔に出ていたのか。
「正直勝ち目の無い試合に、勝てるかもしれないという希望を持たせて送り出してる自分に嫌気がさしただけですよ」
「・・・」
「試合、始まりますよ」
「あぁ」
そう言って俺は備え付けのモニターに目を向ける。
結果から言おう。イルフィは負けた。・・・
「すごかったぞ!」
「頑張ってたわ!」
俺も声をかけておくか。
「イルフィ」
「崇つg・・曹長」
「いつもの呼び方で良い・・・良くやった、イルフィ」
「・・・・ありがと」
「ハハ、いじける元気があるなら大丈夫だな。強かっただろ?彼女は。だが、彼女こそ私達が乗り越えなければならない壁だ」
「えぇ。でも、今度は勝つわ。そうでしょ?」
イルフィも元気になったみたいだな。
「もちろんだ」
こうして最初の部門は
大会結果報告
格闘部門:イルフリーデ・フォイルナー少尉 準優勝
近接部門:ヘルガローゼ・ファルケンマイヤー少尉 準優勝
射撃部門:ルナテレジア・ヴィッツレーベン少尉 優勝
総合部門:ジークリンデ・ファーレンホルスト中尉 準優勝
今大会の総括
出場した全ての部門において優勝または準優勝という輝かしい成績を叩き出した。射撃部門以外の部門においては全て織斑千冬に決勝戦で敗れたが、今回特筆すべき事項として、当該試合の試合時間が挙げられる。今大会において織斑千冬と当たった選手たちは例外なく一撃で敗北に追い込まれており、持って10秒だったが我が国の選手は全員が少なくとも1分は試合らしい試合を行えていた。
今後の展望
各員の技量の更なる向上も行う。またそもそもの機体性能が違うレベルにある事、今後のIS開発で遅れを取らないようにする為の新機体及び新技術の開発が急務であると思われる。それに付随し、最近勢力を拡大しつつある女性権利団体による不当行為の監視も視野に入れて置いていただきたい。
作成者 斑鳩崇継技術顧問
責任者 ヴィルフリート・アイヒベルガー少佐
辞令
発令者 ジョセフ・エドワーズ大将
該当者 ジョンズ・ホプキンス少将及び第44戦術機甲大隊総員
上記の者は、本日付けで1階級昇進したことを通達する
次回は小話を書こうかと思ってます。
あと一夏についてのアンケートは明日(5月11日)に締め切ります。
前回のあらすじいる?
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