死亡フラグしかない鬼畜人生を生き抜いてやる 作:目からケチャップ
初心者なんで暖かく見守ってくだせぇ……。
母と慕う彼女は親ではない。
共に暮らす彼らは兄弟ではない。
ここ“グレイス=フィールドハウス”は孤児院で、ボクは孤児。
そして、この何不自由ない生活が、偽りで出来ているのを生まれる前から知っていた。
―――――――――――――
グレイス=フィールドハウスの朝は早い。
六時ちょうどに鐘が鳴り、子供達は動き出す。ボクからすればもうちょっと寝かせて欲しいのだが、いつも元気いっぱいな子供達に布団を剥ぎ取られてしまうので最近は早く起きるようになっている。朝っぱらから耳元で騒がれるのは勘弁してほしいよ。頭を直接殴られたように感じるから。
「待て待てーい!」
「待た~ん」
「コラ!遊んでないで支度しなさい」
騒ぎ声を遮るように布団の中に潜る。
ボクは亀だ。そう、動かず喋らず引き籠る。これが一級在宅士の実力ってものだよ。この鉄壁の防御の前にはいかなる攻撃も通用しないのだ。
「おはよー
「げ…………」
ただし、一部はこの防御を突破する者もいるということを忘れてはならない。
ボクの布団を剥ぎ取って二パーっと喜色を浮かばせて笑う彼女もその一人である。
「……はろはろー
「うん!おはよう!」
赤毛の髪に触覚のようなアホ毛が特徴のエマは、ここの最年長組で物語の主人公である。運動神経が高く、学習能力も高いというチート成長型で何度も現実を見せつけてきた天才児だ。確かボクとは三歳差だった気がする。
仕方なくベッドから降りて食堂に向かう。
「あ、はろはろー
「おはようラルフ」
「ようラルフ」
見慣れた背中を見つけ、後ろから飛びついて声をかけると満面の笑みでノーマンが返してくれた。レイはいつもどおりの微笑だ。ほんと対照的な二人だよね。
少し天然パーマが入った白髪に藍色の瞳という王子様のような特徴を持っているのがノーマン。この物語では主役の一人で恐らく作中の中で最も頭がキレる人物である。敵に回したら絶対ヤバい奴ナンバーワンだ。
レイは左目を隠すように伸びた黒髪に灰色の瞳が印象的だ。レイも主役の一人である。正直言うと少し苦手だ。なんていうか何考えてんのか分からないんだよね。こんな平和そうな顔して自分をマッチで燃やそうとするんだぜ?信じられんよな。
「ラルフは今日も髪の毛が爆発してるな」
「あら、爆発なんて心外だわ。個性的で良いって言ってくれるかしら」
「急に女みたいな口調で喋んなよ……気色が悪い」
心底引いたように後ずさりするレイ。ボク泣いていいよね?これでも兄弟なんだぜ?そんなこと言わないでくれよ、ボクたち家族だろ?なあ?
「元々女の子っぽいラルフがそういう口調になると、本当に女の子に見えるしね」
「そう?ちょっと髪が長いだけじゃない?」
「少なくとも腰まで髪伸びてる奴は女子含めお前しかいねぇよ」
「言われてみれば……」
頭の中に家族を思い浮かべるが確かにいないね。
レイの言う通りボクの髪はかなり長い。
前世では珍しかった紅色の髪の毛を気に入っている。だってさ、ただでさえ突出した特徴のないボクが生き残るためには見た目を弄くることぐらいしか出来ないんだよ。ちょっとは活躍したいんだ。ファンとしては当然だよね。
「ふふっ、ラルフはいつも髪の毛が大変なことになってるわね」
微笑みながら近づいてきたのはボクたちのママであるイザベラだ。
黒髪黒眼でアジア系の顔立ちの美人さん、なんでもできるスーパーウーマンである。ぶっちゃけエプロンを着てても分かる胸の押上がとても眼福だ。清潔な生活を推奨しているグレイス=フィールドハウスだがママの胸は男子にとって欲情の的にしかならないと思うんだけどね。
「ママまで……そんなに凄いかなぁ?」
「後で髪の毛を整えてあげるわ」
「ありがと」
「それと、ボタンが一段ズレてるわよ」
「ありが……え?マジで?」
「ええ。マジよ」
「マジか」
笑いながらボタンを直してくれるママ。
「あーっと!」
お礼の代わりというか恒例の朝の挨拶としてママに抱き着く。低反発枕のような感触だ。触ったことないけどたぶんそんな感じだと思う。
ボクの長い髪をかき上げるように耳にかける。ちょっとくすぐったいね、ゾクゾクしちゃうよ本当に。この時期のママは怖いからなぁ。途中から善人に成ってくれるんだけど今は敵側だからね。
「ママ、準備できたよ」
「ありがとうレイ。朝ご飯を始めましょう」
「うん!」
レイに声を掛けられたママに促され自分の席に座る。机の上にはパンやサラダが準備されていた。
「時間通りね。それじゃあ―――――」
「「「いただきます」」」
――――――――
毎日のテストも終わり、待ちに待った遊び時間。今日は鬼ごっこをするらしい。
ん?テストの結果?ははは、聞かないでくれよ。本当に
一応ボクは元受験生なんだけどなぁ……自信なくすよ。てかテストの問題が東大レベルっておかしくない?それなのにノーマンは六歳の頃にたった一回だけ満点を逃したらしい。本当怪物だよアイツは。流石グレイス=フィールドハウス最高傑作なだけはあるね。
「ラルフ―!」
後ろから自分を呼ぶ声が聞こえてきて、笑みを浮かべてしまう。ああいや、コイツヤバい奴だとかは勘違いしないで欲しい。別に女の子に声を掛けられたら誰だって嬉しいだろう?可愛かったら尚更だ。
ハウスを出てこちらに走って来ているのは白髪の少女の名はアンナ。ボクと同い年の兄弟だ。
「鬼ごっこやるの?」
「ん、まあね」
「じゃあ私もやる!」
にっこり笑って靴紐の確認を始めるアンナ。この子のおかげでボクがどれだけ救われたか……。
この牢屋ともいえる孤児院では、自分の記憶が恨やまれた。幸せな生活が虚像であると知っていたボクはどうしても自身の心が絞めつけられるように感じた。
生きなきゃいけない。生き残れなければいけないと無理やり歩いてきたが、彼女のおかげでボクの心は軽くなった。何故か、その理由は……まあ、ありきたりだ。特別話すことではないだろう。
ボクとしてはそんなことより、今日の“アレ”の方が重要だ。
だから今回の鬼ごっこは序盤で捕まって体力を温存することにしよう。
なぜなら今日は、
――――――時刻は夜。
「今日でお別れだねコニー」
「うん。でも毎週手紙を送るからだ大丈夫!」
「ははは、それなら安心だ」
それから少し話をして、一度抱きしめてから離れる。
「いいなー!早く私もお外に行きたいー!」
「外に出ても元気でね。手紙も頂戴ね」
「俺達のこと忘れんなよ!」
扉の前で、コニーを見送るように兄弟たちが並んでいる。ボクはそこから一歩離れたところに立っていた。何が『それなら安心だ』だ。コニーが、殺されることを知っているのにそれを理解してなお嘘を吐くなど惨すぎる。
コニーは六年間一緒に過ごしていた家族だ。こんな惨めな気持ちにならないように関わらないようにしてもエマが距離を近づけさせてくる。
かといって、コニーを救える訳もない。
ボクはこの世界の物語を知っている。知っているから何もできないのだ。
だからボクは何もしない。
“彼ら”に全てを委ね、指示されるがままに生きていく。
所詮ボクは、前世の記憶があるだけの
さよならコニー。
来世は、幸せになれるといいね。
数分後。
(ちょっと待てぇぇぇ!なんでリトルバーニー持ったレイと遭遇しちまうんだよぉぉぉぉ!?)
我、知らぬ間に死亡フラグを設立していたかもしれない。
約ネバ二次創作よ、今こそ立ち上がる時だ!