【交差】:交わる前の前日譚
異なる世界が交わるとき、新たな物語が幕を開ける。
「白銀の英雄」
そう呼ばれる男によって青き航路に新たな始まりの風が吹き抜ける。
古き風が吹く街、ドンドルマ。
そのドンドルマを治める者たちが住まう大老殿に大きな声が響き渡った。
「孤島エリア10が霧に包まれている!?」
「うむ。」
驚愕に満ちた青年の問に重々しく佇む老人が答える。
「我々ハンターズギルドはこの異常な事態を鑑み、
「わかりました。大長老様。」
青年は大長老の頼みに即答。
「…そうか。調査員達が幾人も行方知らずとなっておる。…覚悟はできておる、ということか。」
「はい。…ですが、一つだけ。もし、私が帰れなければ、その時はまだ幼い妹――アレナを頼んでも…」
「任せるがよい。」
「ありがとうございます。大長老様。」
青年は恭しく一礼すると背中を向けた。
「頼んだぞ、ギルドナイト、ユートよ。」
青年は振り向くことなく大老殿から出て行った。
「じゃあ、ユート。今度の仕事は例の【孤島】の異常の調査かい?」
「まぁ、ね。僕のやることは異常の原因を突き止めること。それ以上でもそれ以下でもないさ。」
青年―――ユートはアリーナで同僚のハンターと酒を酌み交わしていた。
同僚のハンターもまたギルドナイトである。
ハンターとしては同期だがギルドナイトとしてはユートの方がほんの数か月だけ長かった。
「それにしてもあの"白銀の英雄"がこんな優男だなんて誰が信じるんだろうな。」
「…ああ、まあ、ね。」
同僚のハンターはある程度酒が入るといつもこの話をする。
「女に見間違うような美丈夫だもんな。オマエ。髪型も相まってとても女らしく見えるもんな。しかもそんな顔して希少種ばっか遭遇する運のよさよ。羨ましいったらありゃしないぜ。」
「まったく君は僕の事をなんだと思ってるんだ!?」
「男も女も関係なく誑かす魔性の青年?」
「よし、殴ろう」
同僚のハンターはいつも女性にもてまくるユートに嫉妬しているのだ。
―――確かに美しい金色の髪を後ろで結んでポニーテールにしていて、その上さらに女性のような美しい顔立ちをしているのだ。それこそ彼が男性用の装備を着ていてようやく性別が判別できるようなレベルの美青年がもてないわけがない。
まあ、私服姿のユートに見ほれる男がチラホラいるので同僚のハンターの言っていることは概ね正しいのだが。
「…もうあれから二年か。"白銀の英雄"が生まれてから。」
「そう、だね。あの【炎王龍】と【炎妃龍】の同時襲来からもう二年…。」
二年前に二体の古龍の襲撃があった。
ドンドルマは守られたがそれでも多くの勇気ある狩人達が散っていった。
その中には二人とパーティーを組んだ者たちも多かった。
そんな話をしていると、途端に同僚のハンターの目つきが真剣になる。
「必ず、生きて戻れよ。」
「もちろん」
あの時の
「じゃあ、行ってくる。」
「おう」
そういうとユートは席を離れていった。
「ふふふ…そっちはどうかしら?テスター。」
「勿論、完璧よ。新たな世界はどんなところなの?オブザーバー。」
「強力な生物―――モンスターと共生している世界よ。さて、そろそろ来てくれるといいんだけど…」
誰も居ないはずの孤島、エリア10に声が響く。
おおいなる悪意が今、ユート達に牙を向く。
「さあ、楽しませて頂戴?狩人さん。」
二つの世界は、今、交わる。