「ふざけるな!」
「…本人にも確認を取っています。どうか、納得してほしいのですが…」
リシュリュー級戦艦である二人が口喧嘩を繰り広げていた。
内容はユートの処遇に関してだ。
ユートの実力が高いのはわかった。
何なら自分達よりもよっぽど強いだろう。
だからといって守るべき一般人を戦場に送るなど到底認められる事ではない。
「あの模擬戦はアイツの実力を計る為だってのは分かった。…でも、だからといって普通、そんな提案するか!?」
「しないでしょうね…。でも、今はそうも言っては居られません。」
「だからって!」
「ジャン・バール!…これは既に決定した事なんです!」
「…チッ…!」
盛大な舌打ちをしながらジャン・バールは退出。
すぐに本人の居る場所へ向かうことにした。
「オマエ、なんで戦線に加わろうと思った!」
「…そりゃ、帰るためだよ。この世界も来た海域がいつ現れるか分からない以上、君たちと一緒にドンパチやるのがベストかなぁって。ジャン・バールは嫌だった?」
「そういうことを言ってんじゃねぇ!なんで、オマエが俺たちにてを貸すんだよ!?」
ジャン・バールの言う通りかもしれない。
ユートはあくまでこの世界に迷い込んだだけの存在なのだ。
別に命を懸ける必要なんてどこにもない。
「そんなにリシュリューの決定が不服かい?」
「…当たり前だろ。」
「…なんで不服か、ちゃんと言ったのかい?そんなに部外者である僕に命をかけてほしくないんだ?」
「…そうだ。あくまでオマエは一般人。そんなやつが戦場にでたら顰蹙を買うだろう。」
「…そうかもしれないね。」
「なら―――!」
ジャン・バールの顔がグイっと近づく。
その目は真剣そのものだった。
真剣に考え抜いてなお結論を変えなかったのだろう。
「でも、誰かに強制されたわけじゃない。決めたのは他でもないこの僕だ。」
「…お前は死ぬつもりか?」
「こう見えても数多い視線を潜ってきてるんだけどね。」
そういうとユートは苦笑した。
ジャン・バールは話しても無駄であることを悟ったのか大きなため息を吐くとそのまま退出していった。
「もう一度、リシュリューと話してみなよ。」
「…。」
背中に投げかけられたユートのアドバイスに耳を貸すことなくジャン・バールはその姿を消した。
ただ、何処か腑に落ちたような雰囲気を纏っていたのは気のせいだったのだろうか。
いや。
きっと、思うことがあったのだろう。
こういうことは部外者であるユートよりも本人たちが解決した方がよいのだから。
「はぁ…」
リシュリューは誰にも聞こえないようにため息を吐いた。
最近余り…というよりもかなり妹との関係がぎくしゃくしてしまっている。
理由は自身にあるのは理解しているのだ。
アイリスという組織を率いる手前、皆に本音や弱音をさらすわけにはいかない。
それがこのアイリスという国で上に立つものの義務だ。
もちろんユートが戦場に出るなんてことは認めたくない。
しかし、そんな事を人一倍お人好しな彼が許すはずがないのは分かっていた。
彼は必ず戦場へと向かうのだろう。
だから、初めから許可したのだ。
「…はぁ…やはり私は向いていませんね…」
ただでさえ、他人に―――妹でさえ弱いところを見せない自分はきっといけないんだろう。
だから―――恨まれようと、憎まれようと非情な判断を自分は下さなくてなならない。
その罪は国を率いる者が背負うべきものだ。
愛する妹に、そんな主にを背負わせたくはないのだ。
「…私には皆の偶像であるしか能がありません…」
自分の不甲斐なさにリシュリューは涙を流す。
それは、彼女が初めて見せた弱音だった。
「―――リシュリュー。なんで、そんなになるまで、オレ達に一言も相談しなかった…?」
その弱音を一番見せたくなかった者に―――妹に見られてしまった。
三度くらい書き直しました。
遅くなってすみませんでした。
許してください…