三話目です。
ジャン・バールは姉であるリシュリューにコンプレックスを抱いている。
リシュリューは妹であるジャン・バールを大切に思っている。
そして、二人は決別。
ジャン・バールはヴィシアを率い、リシュリューはアイリスを率いる。
そして、国は分裂する。
これがこの世界におけるこの姉妹の正史だ。
本来ならば今日、ジャン・バールはリシュリューに自分の意思を伝えに行く――――はずだった。
「海岸で人が倒れてた…だと?」
「はい…見たこともないものを携えていましたけど…」
ル・マルスの報告にジャン・バールは頭を抱えたくなった。
「…リシュリューにはもう伝えたのか?」
「…はい。リシュリューさんの方にはルピニャートが報告しに行きましたけど…。」
ジャン・バールはより深く頭を抱えた。
恐らくあの姉の事だ。大した事情を聴かずに受け入れてしまうのだろう。
「誰が最初に発見したか聞いたか?」
「あ、…ダンケルクさんです。」
そうか、とジャン・バールはそっけなく返す。
だがダンケルクが第一発見者なのは僥倖だ。おそらく彼女なら、敵対する意思がある者なら容赦無く返送なりなんなりするだろう。
…善人の場合、話は別だろうが。
ダンケルクは自分が救助した青年を問いただしていた。
急いでた時には気づかなかったが背中に何やら物騒な太刀を背負っていたからだ。
すでに聞き出せたことは
まず青年の名は「ユート」ということ。
次に普段発生しない濃霧が発生したことの調査を行ったということ。
この二つだ。
ダンケルクにとっては初めて聞く話ばかりだったが、それよりもダンケルクには聞きたいことがあった。
「―――今、あなたの得物はこっちで預かってるわ。―――貴方はあれでなにをしようとしたの?」
彼の得物で、何をしようとしていたかだ。
「その話は―――本来は守秘義務があるからなぁ…。でも助けてくれた恩人に嘘はつきたくないし…」
「やっぱりやましいことなのね?」
「そうじゃない。ただ、―――僕の仕事の中には極悪人を始末する―――あ。」
「…それ、守秘義務のある話じゃないの?」
うっかり守秘義務の内容を喋ってしまうあたり警戒心がないというか信頼されているというか。
ダンケルクは今まで目の前の男が詐欺にあっていないことが奇跡に近いと感じた。
「ま、まあ、君は僕を助けてくれたんだろ?じゃあこっちも害を為す気は無いよ。恩を仇で返すほど腐っちゃいないさ。」
「それって害を与えたら手を出すってこと?」
結局の所はそこなのだ。
結局、彼の持つ力が自分達に牙を剥くかどうかが重要なのだ。
「まあ、死にかけるとか、じゃなければ手を出さないさ。基本的には、この武器は人を脅かす存在に振るうべきものだからなぁ…」
「……そう。少なくとも害するつもりは無いってことね。」
よかった、と胸を撫で下ろすダンケルク。
その姿を見て心底不思議そうに首をかしげるユート。
「貴方ねぇ…なんというか、物凄く正直なのね」
「まぁ、いろいろ裏のある仕事、してるからねぇ…。せめて、誠実に生きていこうって決めたんだ。」
「誠実すぎて笑うレベルだけれど?」
自然と会話が弾む。
ユートと会話をすることそのものがダンケルクにとって貴重な体験だった。
「なにやってんだ、お前ら…」
その後、すっかり打ち解けたダンケルクとユートを見たジャン・バールは微かに胃に痛みを覚えたという。
「つまり、なんだ。オレ達でいう
「そう、なりますね。一応は護教騎士団とにたような扱いになるのでしょうか…?」
その後何とか立て直したジャン・バールと遅れてやってきたリシュリュー、それにポンコツ軽巡ジャンヌ・ダルク、そしてダンケルクとユートの五人で話し合うことになった。
そしてダンケルクの話したユートの概要と本人にこちらを害する気がないという事実。
そしてユートが「異世界から来た」という証拠のために差し出したエルトライト鉱石と呼ばれる鉱石。
以上の事実を以てユートは正式に別世界から来た存在とされた。
そして、この四人に共有しておきたい守秘義務としてギルドナイトの事を語った。
その反応がこれである。
色々と酷い言われようだが異世界のそれも割と重要な役職に就いている人間だ。
さらに追い打ちのように"孤島"と呼ばれる場所からここに流れ着いたのか覚えていないときた。
「さて、貴方の処遇を決めなくてはなりませんね。ユートさん。」
「…まぁ、悪人じゃないのなら受け入れることに文句はない。ただ、コイツが問題行動を起こさないとは限らない。さて、どうする?監視をつけるか?」
ジャン・バールの言っていることは概ね正しい。
向こうの世界では常識でもこっちの世界では問題になる行動だってあるだろう。
それを教えるために監視役という名の教育係が必要だった。
「…そうですね。なら、監視役はこちらで決めてしまいましょうか」
リシュリューは至って普通の結論というような対応を取った。
何かしらの危機の訪れを感じたユートはここで切り札を切る。
ユートはその女性のように美しい顔をダンケルクの方に向けた。
言ってしまえばこの男、媚びたのである。
知らない女性に監視されるよりかは知り合った女性―――ダンケルクに監視してもらえる方がありがたい。
「―――ッ」
そして、ダンケルクは不覚にもときめいてしまった。
つまりは―――
「その監視役は私がやるわ。―――ちょっとでも知り合っている私の方が色々と彼も楽だと思うわ。」
監視役を引き受けた。
(成し遂げたぜ)
内心ガッツポーズを取るがそれを表には出さない。
こうして、少女達の生活に新たな風が吹き込んだ。
それは、新たな始まりを告げる、優しく、力強い風だった。
そして彼女達の進路は大きくずれることになる。
アイリス・ヴィシアに合流!
さてこの先彼はどうなることやら。
まあ、アイリス・ヴィシアを選んだのは割とあっさり受け入れてくれそうっていうのと光と影のアイリスで非業の末路を迎えたヴィシア勢を救済して神穹を衝く聖歌を未然に防ぐためですね。要するにアイリス・ヴィシア勢の救済です。
まぁ好きな陣営ですからね…やべーやついないし