新版:とある狩人の指揮官生活   作:ダンちゃん1号

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【抜錨】:いつも通りで

火竜の襲撃からおよそ一時間が経過。

その間もたった一人でユートは火竜相手に大立ち回りを繰り広げる。

一撃一撃を確実に弱点にねじ込み、なるべくダンケルク達の居る建造物に気を引かせない立ち回りをしていた。

攻めきれない。

つまり―――

 

「せりゃああ!」

 

ユートと火竜は一進一退の攻防を繰り広げていた。

しかし、火竜に比べてユートは人間だ。

大自然の猛威の前に人間の力など矮小に等しい。

人がどれほど力を付けようと、思わぬ事態にひっくり返されることもある。

例えば―――――

 

「何とか気を引きませんと…!」

 

善意からの行動が裏目に出た場合とかである。

 

何故か海に浮いているル・トリオンファンが放った一撃が火竜を直撃。

 

「今です!ユートさん!撤退を―――!」

「逃げろッ!今すぐその場を全力で離れろぉぉおおぉ!」

「えッ――――」

 

今の一撃で火竜の気は完全に、トリオンファンに移った。

そして、トリオンファンは次の言葉を発することなく―――

 

『ガァアァァアア!』

「あうッ!?」

 

火竜の爪に傷つけられた。

 

(マズイ―――!)

 

火竜の爪には毒が仕込まれている。毒で体力を奪い、弱ったところを捕食するのだ。

そしてその毒はかなり強力な物だ。

やはりというか、毒爪を喰らったトリオンファンは顔色がどんどん悪くなる。

 

「そこにいる子たちも!ぼさっとするな!トリオンファンを連れて撤退を!」

 

トリオンファンとは2,3回話お茶した程度の仲だ。

それでも知人を守ることを最優先としユートの体を突き動かす。

 

「うぐっ…!」

 

トリオンファン目掛けて放たれた火球はユートがその身を盾にして防ぐ。

至近距離で放たれたそれはほぼすべてのエネルギーを爆発させて、ユートの体に深い傷を残す。

しかし、ここでめげないのが狩人だ。

海水で延焼した炎を鎮火すると―――

 

「ちょっと目を瞑ってて!」

 

ユートはこぶし大の何かを火竜の顔面に投げつける。

それは閃光をまき散らし、辺り一面を白く染めた。

 

「うぅ…」

「しっかり、気を持って…!取り敢えずは…!」

 

トリオンファンを曳航してくれたル・マランに感謝しつつついでとばかりに二つの瓶を投げ渡した。

 

「これは…」

「回復薬と解毒薬。効果は保証するよ。ギルドのお墨付きだ。」

「…ありがとうございます。貴方はどうするつもりですか?」

「…簡単だよ。リオレウス(アイツ)を狩る。」

「し…正気ですか?」

 

思わず正気を疑ってしまうル・マラン。

しかし、目の前の男はこう言い放ったのだ。

 

「任せろ」

 

と。

いつもの優しげで儚げな雰囲気は何処かへと消え去り、残っていたのは闘争本能―――狩猟本能と、底なしの闘志だけだった。

 

「さあ、始めようか…!」

 

人は守る者を守り切って初めて英雄になれる。

だから、ここにいる誰かが死ぬのであれば、"白銀の英雄"の名を捨てる覚悟があった。

 

「行くぞ…!」

 

その日、ユートは何年か振りに吼えた。

そんなユートを口から火を漏らした火竜が見つめていた。

 

 

 

ダンケルクは明らかに動きに精彩を欠いたユートを見て、飛び出していた。

何故かはわからない。監視役とその対象―――自分たちの関係はたったそれだけ。

なのにどうして出てしまったのだろうか。

明らかにあの動きの鈍さはトリオンファンを庇ったことが原因だ。

そのせいで動きがなまったのならば誰かがサポートしなくてはならない。

しかし、ジャン・バールもリシュリューも動きを決めかねているし、軽巡のジャンヌ・ダルクやラ・ガリソニエールは明らかに足手纏いになると思っていて動こうともしない。

 

「…ああもう!」

 

だから、自分が行くしかないのだ。

それなりに火力が出て、尚且つ彼に合わせられるかもしれない自分が。

 

 

 

「…チィッ!」

 

あそこで啖呵を切ったはいいが体が思うように動かない。

本来、この程度の不調ならば回復薬一本でどうとでもなる。

しかし、一対一では回復する隙もない。

こんな時にあと一人居ればなんて思ってしまう。

だが、こんなタイミングで合わせられる人間など居るのだろうか?

 

ダンケルクならあるいは―――

 

「いや、ダメだ…!」

 

一人でやらなくては。彼女たちを巻き込むわけにはいかない。

そうして挫けかけた心に喝を入れると、再び天上天下無双刀を構える。

ダメージを喰らっている以上は深く踏み込めない。

なんとか、相手のバランスを崩してその隙に回復するのがベストだろう。

余りにも荒唐無稽な、だがそれしかない戦術を執るしかないこの状況に歯噛みをした。

だが、()()()()()()()()

 

「全く…!クエストレベル爆上がりじゃないかな…!?」

 

ユートはぼやきながらも火竜に立ち向かう。

狩猟失敗条件は至って簡単だ。

――――何かしらの被害が出ること。

 

「さて、第二ラウンドと行こうか!」

 

 

 

ダンケルクはユートが叫んでいたことを聞いていなかったわけではない。

それでも、「死ぬ気」にしかダンケルクには見えなかった。

彼はかれこれ二時間近くあのプレッシャーと相対し続けている。

精神的な疲労もあるだろう。

 

「こっちよ!化け物!」

 

故に戦場に出た彼女が一番初めにやったことは挑発だった。

少しでも気を引いてユートが回復するための時間を稼がなくてはならない。

そもそもの話、あちらとこちらの世界での狩猟では色々と相違点が多い。

きっと、本来、彼の言う「狩り」は大自然の中で行われるのだろう。

あんなモンスターが頻繁に人里にやってきたのならばそもそもが人類は滅亡しているだろうからだ。

そして、どんな環境であれ、大自然ならば隠れて回復する場所くらいならばあるはずだ。

しかし、ここはどうだ。

後ろには化け物の攻撃一発で倒壊しそうな建物がチラホラあるし、なんなら、自分達KAN-SENが艤装を付けずにいるかもしれない。

だから、常に、自分に気を引かせておく必要があるのだ。

 

「全く…無茶しすぎなのよ…!」

 

後で正座させる事を誓いながら水面に跳躍した。

 

「ダンケルク…抜錨するわ!」

 

跳躍して着水するまでに淡い青色の立方体―――メンタルキューブが艤装を形作る。

そして、着水から滑るように水面を滑走。

反転して火竜を睨みつけた。

 

「すまない…敵に手加減するほど甘くはないわよ…!」

 

ダンケルクはユートに対して初めて兵器(KAN-SEN)としての姿を見せた。

 

 

ユートはダンケルクの変身としか呼べないものを見て自分の目を疑っていた。

彼女を包むように砲塔が展開していく様を見て美しいと思った。

 

「って!そんなこと考えている場合じゃない!」

 

ダンケルクに注意が行かないようになんとか立ち回らねば―――。

そんな事を思っていたその時だった。

 

―――ガシャン!

「…ん?」

 

なんと、ダンケルクが火竜に対してその砲塔を向けたではないか。

 

「…まさか!」

 

物凄く嫌な予感がしたユートは全力でその場を離脱した。

それでも、間に合わないと踏んだユートは全力で跳躍した。

その数瞬後――――

 

爆風と爆音がユートの体を揺らした。

 

「…へ?」

 

その威力は絶大で背中、頭部の甲殻だったり、翼が一瞬でボロボロになっていた。

いくら攻撃していたとはいえ、このざまである。

 

「…なるほどね…」

 

彼女のおかげで何とか体制を立て直すことができた。

 

「まだまだ…だね。僕も。」

 

そう思いながら天上天下無双刀を振り下ろす。

その一撃は火竜の命の残滓を簡単に消し飛ばした。

 

「剥ぎ取り、剥ぎ取りっと…」

 

討伐したモンスターからは素材がはぎ取れる。

その回数はモンスターのサイズにもよるが、火竜クラスのモンスターなら三回と取り決められていた。

たまに、剥ぎ取りが上手くなり、もう一回はぎ取れることもあるとかないとか。

しかし、今回、ユートが火竜の遺体から素材をはぎ取ることは無かった。

何故ならば――――

 

 

火竜が、防具へとその姿を変えたからである。

 

「…どう、なっている?」

 

海に浮く少女達に防具に変わった火竜の死体。

どうやら、この世界の闇は思ったよりも深いものらしい。

 

「厄介な所に来ちゃったなぁ…」

 

ユートのつぶやきは波間に消えていくのであった。

 




火竜戦の最後雑だったかなぁ…

取り敢えずこれで序章的な何かは終了です。
次回から本格的にユートがアズレン世界に介入していきます。


まあ、すでに一つ改変してるんですけどね!
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