「はぁ!?あんなのがうようよしてるってのか!?」
「…うん。」
火竜を討伐した、ユートに待っていたのは、説教でもなんでもなく、あきれたような視線を向けるリシュリューとジャン・バールだった。
「おいおい…。どうする?オマエが本格的にこっちに力を貸してくれるってのいいんだが…。」
「……やはり、貴方に聞くしかありませんか」
しかしあきれた視線を向けているのはユートに対してだけではない。
むしろ、そこにあるものに対しての呆れの感情が強かった。
「貴方の世界に生きる生物って、討伐すると防具に───」
「ファンタジーやメルヘンじゃないんだから。」
「いや、ワイバーンが存在している時点で相当ファンタジーやメルヘンだと思うのだけど…」
そう。
討伐した火竜が変化した防具だ。
明らかにユートのサイズに調整されているそれは、当人達にとっても謎の多い存在だった。
ユートが検分した限りでは完全に"レウスX"と呼ばれる最高級の防具そのものだった。
「おかしい。普通は素材を集めて工房で鍛えて上げる事で防具武具も生産される。…だから、こんな風に防具がポンと出てくるなんてあり得ない。…多分、こっちで何かしらの細工を施されたんだと思う。」
「細工、ですか?」
「うん。細工。…ついさっきダンケルクに教えて貰ったこの世界の敵───セイレーンだっけか。多分、ソイツらだろうね。」
「……おい、今さらっととんでもねぇ事言わなかったか?」
一旦、話を切ってダンケルクにジト目を向けるジャン・バール。
ダンケルクはというと冷や汗を流しながらそっぽを向いていた。
「おい。」
「…色々と説明しなきゃいけなかったので、つい───」
「…まぁ、確認取らずに喋ってしまったダンケルクもそうですが、ずっと黙ってた私達も同類でしょう。」
自分達が兵器である事を黙っていた時点で、信頼もへったくれもあったもんじゃない。
「…次からは相談するようにしろ。それこそ、コイツが戦線に出ないようにするためにな。」
「……」
「おい、なんでまた目を反らした。なんでお前まで目を反らす。ちょっと待て。オレの頭が混乱してきた。一から十までちゃんと説明しろ。」
「……分かったわ。実は────」
ダンケルクは、この世界の事、この世界の敵───セイレーンの事、二人についての事、この全てをユートに語った事を白状した。
その上でユートがこの世界に介入する事を決めたことも、全てを話した。
その上で、ユートはここが彼自身にとっての"異世界"という位しか知識が無かった事を白状。
ダンケルクに問い詰め、彼女が全てを話したと証言。
「…聞けば聞くほどこっちの方が悪い気がしてくるのはどうしてでしょう…?」
「……なんというか、スマン。」
結局の所、巻き込むわけにはいかないと思っていたユートを思いっきり巻き込んでしまったのだ。
しかも、情報を全く与えなかったせいで。
これでダンケルクを攻めるのは少し、利にかなっていない気がする。
「ま、まあ、話を戻します。とりあえず、この防具──"レウスX"は少し解析しますね。後、ダンケルクは立場上として説教しますから覚悟の方を。」
「やっぱり、逃げられないわよねぇ…」
こうして、解析にかけられた"レウスX"が自分達の"艤装"と同類だった事に、ジャン・バールのストレスが限界を突破。
胃潰瘍を発症し、回復薬グレートの偉大さを思い知る事になったのはまた、別の話である。
今回は短い。
ちゃんと報連相しないとこうなるっていう教訓