春は好きだ。
快適だ。路上販売にとっては程よく暖かいほうがいい。花見の見物客に格安で売りつけることも大好きなんだ。もちろん高品質。
夏は嫌いだ。
路上販売にとっては暑すぎる。流石に夏場はクールビズだ。冷たい水が一気になくなってしまうのが口惜しい。
秋は好きだ。
旬の食材が増える以上、美味しいご飯がより美味しくなる。里芋の煮っ転がし、秋刀魚の塩焼き、キノコの天ぷら……。想像だけで腹が減る。
冬は大嫌いだ。
俺は冬なんて季節を考えた神を呪いたい。今すぐ冬を
さっきから長々と話してる俺は一体誰かって?
俺の名は『グル』、又の名を『ウルトラマングルッぺ』。ウルトラ親衛隊上級大将である。
地球のドイツ語で『集団』という意味を表す単語としてグルッぺは伝わっている。あるいはとある実況者集団のメンバー、いや彼はグルッぺンか……。
地球では神出鬼没の商人として活動している。ウルトラマンとしてではなく、当座の資金稼ぎのためだ。露店を開いたり路上販売をしたりするのだ。
格安で高品質な宝石を売りつける。基本的には若い男女がターゲットなんで、最近の流行りとかはしっかり把握する必要がある。
「あっ、宝石の露店だ……」
おや、今日もまたお客さんかい。
俺は普段と同じように声をかけた。
「いらっしゃい。何か入り用かい?」
宝石商グルの退屈な日々/ウルトラマングルッぺ
「実は、今度婚約指輪を渡すんです」
「そうかい、おめでとう。こりゃうんと良い奴を売らねえとな」
そう言って取ろうとする俺に、客は待ったをかけた。
「けど、彼女は金属アレルギーなんです」
金属アレルギーか。
ニッケル、コバルト、クロム……ああ、しまったな。俺の作るやつは大抵がそれを混ぜてしまっている。
「金属アレルギーねぇ」
俺はフェルト帽を目深に被る。なんとかして金属アレルギーにもいい指輪を作る必要があるのだ。
俺の脳細胞は必死に解決策を練っている。
────────思いついた。
「そうか、少し時間をくれ」
今、俺の中である案が浮かんだ。
俺はおもむろにあるものを取りだした。クライアントは目を丸くした。
「そ、それを何に」
「なぁに……」
俺はニヤリと笑いながらこう言った。
「金属アレルギーのある方にも付けられる、そんな指輪さ」
俺はまずそれを適当な長さに切った。
それからそれを巻き付けていく。
一周。
二周。
三周、ときてそこで俺は指輪には欠かせない宝石の用意をする。
客いわく「エメラルドを使って欲しい」との事。なので、今回はエメラルドを用いた。
「よし。これでいいだろうよ」
俺は笑みを浮かべ(俗に言う営業スマイルである)、この指輪を渡した。
「ありがとうございます……!! ありがとうございます……っ!!!」
「いちおう彼女さんの指のサイズに関してはお客さんがデータくれたしな、ざっと3500円ってとこか」
「お安いのですね……」
俺は金に関しては気にしない主義なのだ。
「丁度いただくよ、上手くやりなよ」
「ありがとうございます……!」
お客さんは代金を払い、そのまま走り去っていった。
翌日。
俺はいつも通り適当に露店を開いていた。
その時だった。
「先日はどうも」
「……おう、アンタは確か」
「あのあと渡したんですけど、凄く嬉しそうにしてましたよ。彼女の細い白魚のような指にエメラルドがきらきらと映えていて……!」
「そりゃよかった」
なぜ金属アレルギーが出なかったか? それは簡単な事だ。
あれは
竹には金属が含まれる余地もない。故に素材を竹にしたのだ。事実、竹製の指輪ってのは普通にあるものなのだ。
とはいえ竹だけだとかなり寂しい見た目だ。なのでちょいと細かい宝石を散りばめておいた。
お客さんはすごく嬉しそうだった。その時である。
────────警報が鳴り響いた。
『ゴルィイイィ」
「あれは、
身長40m、体重6万t。
まるで獰猛な肉食獣のような怪獣で、口が大きく脚も太い。太い腕から放たれる攻撃はひと振りすれば廃ビル程度なら三棟壊せる。
俺はお客さんを避難させると走り出した。
路地裏に消える。
そして、俺はスーツの内ポケットからあるものを取りだした。
それはラピスラズリでできた不透明のスティックだ。先端にはタンザナイトがついている。
俺はそのスティックを掲げ────────────俺は、巨人になった。
身長68メートル、体重2万2千t。
俺の中で光が渦巻いている。
「……デュワッ」
俺は、ウルトラマンになった。
「デュワッ!」
初手はヤクザキックだ。ゲルミアは大きく吹き飛び、しかしその足でドロップキックをしてきた。
俺はそれを避け、掴んでから地面に叩きつけた。
そこからマウントポジションになり、マウントパンチを繰り出した。
ゲルミアの顔面を鮮血が染める。苦し紛れにゲルミアはその腕を振った。
俺はそれを片手で押さえつけ、頭部の黄色いクリスタルである『グルッぺトルマリン』にエネルギーを込め、斬撃光線 グルッぺスラッガーとして放った。頭部から放たれた斬撃光線はゲルミアの片腕を吹き飛ばした。
そのまま俺はゲルミアにジャイアントスイングをお見舞いしてやった。
その時だ。
空から航空自衛隊が機銃掃射で援護をしてくれた。ゲルミアはその鉛玉の雨の中で左の眼球を喪失した。
ゲルミアは怒りに任せ、俺に突進した。俺はそれを避けようとして失敗した。ゲルミアの口が伸びたのだ。まるで鮫のように。
俺の左腕はしっかりと噛み付かれた。
「いぃいいぁああ……」
『ゴルィイイィ』
ゲルミアは俺の腕を食いちぎろうとしている。
その時、また航空自衛隊が働いた。機銃掃射と爆撃だ。
ゲルミアはその爆撃に怯んだ。俺はゲルミアを蹴飛ばすとバックステップした。
両腕を体の右側面に引き付け、そのまま左腕を掲げる。力を貯め、俺は腕を十字に組み必殺のグルシウム光線を放った!
『ゴル……ィイイイイ!!!!!!』
ゲルミアは爆散した。
「……さて、帰るとするか」
お客さんを守ることも出来た。街もかなり守れた。
「カケルが心配する」
俺は、影の中に消えていった。