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[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。
吹雪殿がヤバイ最終兵器という話しかと思ったら、金剛殿のメンタルがヤバヤバだった件。
こいつもまともじゃなかったかというもはや慣れきった諦めが胸に重たいであります。
第一艦娘がまともな恋愛って結構稀でありますからなあ。そもそも恋愛感情というものを人間の期待する形で理解できている艦娘が少ないのであります。たいていが性欲と混同してるか直結してるかであります。
普通の女の子みたいに普通の恋愛する艦娘って、まあ、いないわけじゃないでありますけど、いてもよっぽどいいとこの艦娘くらいでありますからなあ。
いいとこ……つまり、教育の行き届いた鎮守府でありますな。艦娘を兵器として運用すると同時に、人間性を育てることまでしようとする余裕のある鎮守府ってのは意外と少ないのでありますよ、まだまだ。
前線間近だと兵器としての運用にウェイトをおくのは当然。内地の鎮守府もノルマや予算など問題は山積。どちらも余裕を持ってこなせるのは、海軍直轄の鎮守府や、艦娘人権派の運営する鎮守府、または企業イメージのために率先して教育を打ち出す企業鎮守府などであります。
そういうところできちんとした人格形成がなされた艦娘は、ある程度人間に近い感性を得ることもあります。時間と手間はかかるでありますが、第三世代型の建造より低コストでありますし、需要もあるので、専門の教育機関もちらほら出てきたとか。
そうそう、この鎮守府で言えば摩耶殿はいいとこの出っぽい感じはするでありますよね。詳しくはまだ聞き出せていないでありますけど、もしかしたらそういうところの出なのかもしれないでありますな。
「そういう訳で、私は吹雪の一番傍で吹雪を独占できるのでこーしてこのプリズンみたいな鎮守府で生活してるヨー」
あ、まだその話続いてたんでありますね。
「そういえばあきつ丸は、レポート書いてるって言ってマシター。ここにきてから今まで何人くらい盗聴してきたデースカー?」
盗聴とは失敬な。相手が気にしないように配慮して記録をとっているだけであります。
さて、何人か。ちゃんとまとめたのは雪風殿に青葉殿、綾波殿、瑞鶴殿、天龍殿。それに話にだけ聞いた大和殿に、軽い会話だけの古鷹殿に加賀殿。吹雪殿と金剛殿が今回。考えてみれば摩耶殿とは結構おしゃべりしてるでありますけど、まだインタビューはしてないであります。
「ヘー、結構色々なのとお話してるネー。ウチの特化型そろそろコンプリートしそうデース」
え、そうなんでありますか。というかまだコンプしてなかったのでありますね。特化型って相当レアでありますから、他の鎮守府だとまず見かけないのでありますけど。
まあ、大鑑巨砲主義のモーター理論掲げる企業なんかは火力特化型すれすれの重武装艦娘をダース単位で揃えてたりする頭おかしいところもあるとは聞くでありますけど。
「ウチに所属してる特化型は全部で十隻ネ。勿論、私も入れて」
フムン。十隻、というのはかなり多い数であります。
特化型艦娘を建造できるのは極めて高い技術水準の一部の鎮守府や研究所のみ。コストが高くつき、一芸には秀でるけれど他に難があることも多いと言う癖の強い艦娘。これは建造だけでなく運用にも色々厳しいのであります。
一隻だけでもアホほどコストとリスクが付きまとうのに、必要とする技術分野も理論体系も違う複数の特化型を建造するというのは一つの鎮守府ではまず無理なのであります。ここのように、他から回されてきた、という経緯でもないとなかなか難しいでありましょう。
しかし十隻。偵察特化型の雪風殿。諜報特化型の青葉殿。電脳特化型の綾波殿。多分砲撃特化型の大和殿。物理保護特化型の金剛殿。これで五隻でありますから、残りは半分の五隻でありますな。もう半分と思うべきか、まだ半分と思うべきか。
「半分じゃないヨー。もう二隻会ってるネ、あきつ丸」
え。
「瑞鶴と加賀も特化型デース。詳しくは本人から聞きだせるとイイネ!」
そのアニメスマイル止めろ腹立つであります。
えーと、何の特化型か不明でありますがあの二人がそうだとすると、残り三隻、でありますな。残り三割と考えると、成程コンプも近いと感じるでありますなあ。
「ンー、そうネー。ちょっと吹雪の件で迷惑もかけたデスし、ヒントはあげるデス」
紅茶を飲み干し、ティーセットの片づけを始めながら、金剛殿が残り三隻の情報を提供してくれたであります。さわりだけ。
「残りの三隻は、時間兵装特化型と、電脳特化型の亜種。そして最後の一人は私の妹、比叡デス。今頃は多分機関室で仕事中ヨ。私からも連絡入れとくから会いに行くとイイネ」
あと勿体無いから食べるネ、と近所のおばちゃんよろしくスコーンを包んで山とくれたであります。
そろそろ吹雪分が切れてきたから帰るデース、などと言い残して去っていった金剛殿を見送り、スコーンのつつみを片手に、思案しながら取り合えず歩き始めるであります。
はて、機関部って、どこでありますか?
「機関部? あー………比叡かー」
「彼女は現在機関部で勤務中ね。そろそろ休憩時間のはずだけど」
「まあ仕事の邪魔にならないならいいよ」
「相変わらずあんた軽いわねえ」
「機械人の故郷の陸軍に隠してもねえ」
「だからこそでしょうが……」
「第一もともと陸軍お膝もとの技研から投げられたんだし」
「はあ…………あんたそれ陸軍への嫌味?」
「へ? いや、元気にしてますよーって」
「はあ……仕方ないわね。金剛からも連絡は行ってるってことだし……あんたの端末に機関部までのルートを送っておくわ」
「最近あの娘、機関部とトレーニングルームの往復で顔見てないし、よろしく伝えておいてねー」
あきつ丸であります。そんな具合で提督殿に道も聞いてきたので、機関部へと降りているところであります。しっかし、ほんとこの船どうなってるでありますか。見た目は赤城型空母に艦橋ぶっさして巨大化したような外観でありますけど、内部はでたらめであります。
いろんな鎮守府巡ってきたでありますけど、ここみたいな構造は初めてであります。建材もちょっと見たことがないでありますし………いや。中東の『混迷海域』で見た海軍の不明兵器に似ているような………いや、まあ、妙な詮索はやめておくであります。
それにしても、陸軍の技研がどうの、機械人がどうのといろいろと聞き捨てならない情報をぼろぼろ漏らしてくれやがったでありますが、どういうことでありますかな。陸軍の技術が詰まった艦娘が海軍施設に丸投げされてたら責任問題でありますよこれ。
さて、階段を降り、複数のエレベーターを乗り換え、巨大な鉄の化け物の腹の底であります。これはルートを教えてもらわなかったら迷子確実でありますな………こういうところのマッピングはまるゆ殿の方が得意でありますし、暫く妙なところには入らないようにしないと。
さて、明らかに通路が人間よりも機械や物品の移動を目的とした殺伐とした造りになってきたあたりで、ようやく機関部に到着であります。多分。
恐らく位置的には鎮守府の中央やや後方寄り。かなり巨大な隔壁の向こう側から、ごうんごうんと耳に煩い駆動音が響いてくるであります。人間・艦娘用の通用口を通って内部に入ると、巨大な球状のリアクターとそれにつながる複雑な配管・配線の化け物が待ち構えていたであります。
フムン。これは……………なんでありますかな。
はじめてみる形式でありますなあ。
火力発電でも原子炉でもなさそうであります。
大抵の鎮守府は火力発電炉か原子炉を積んでいるのが普通であります。珍しいとこだと波力発電や風力発電、バイオマス発電なんかもあるみたいであります。実験的には、艦娘技術を応用した縮退炉もあるとかないとか。
でもここのははじめて見るでありますなあ。
見たところ従業員も見当たらないでありますから、無人運用を前提にしているみたいでありますけど、そうするとここで働いている比叡殿というのは………。
と、機関部全体に響き渡るようなサイレンが鳴り響き、ついでボーカロイドじみた音声で放送が入るであります。
《本日分の発電量を達成しました。サイ・リアクターの冷却に入ります。発電者・比叡は退出をお願いします》
再度のサイレンと共に、サイ・リアクターと呼ばれた球状機関に取り付けられた扉が開き、中から勢いよく一人の少女が飛び出したのであります。
明るい髪色。それ以上に明るい笑みを浮かべて、タラップに降り立ち、少女はこちらに気づいた様で駆け下りてきたであります。
「あきつ丸さんですねッ!? お姉様から話は聞いてますッ! お姉様の妹分、比叡ですッ! よくわからないですけどインタビュー、気合! 入れて! 行きまァすッ!」
高潮した頬。きらめく汗。清々しい声。健康的で快活な、エネルギッシュなパワーを感じるであります。
でも、取り合えず、何よりも前に。
服を着ろ。
あきつ丸であります。
併設されたシャワールームで汗を流し、こざっぱりとしたトレーニングウェアに着替えた比叡殿と、トレーニングルームに移動中であります。
走って。
「いやぁ、お姉様から連絡が入ったときは驚きましたッ! お姉様は吹雪ちゃんのことしか見えてないからすっかり忘れられてると思ってましたよッ! 吹雪ちゃんの危険性考えてってのもあるんでしょうけどッ!」
「ぜっ……はっ……」
「多分九割九分吹雪ちゃん取られるのが嫌で、私の心配は一分くらいなんでしょうけど、一パーセントでも他人の心配に向けられるのってあのお姉様にとって相当なことなんですよねッ!」
「ぜっ……はっ……」
「あッ! 別にお姉様のコト悪く思ってる訳じゃないですよッ!? お姉様が吹雪ちゃん以外目に入っていない世間と没交渉の自己中ヤンデレというのは否定できないですけどッ!」
「ぜっ………はっ………」
「でもお姉さまはアレはアレで最低限の愛想はありますし、お茶会に誘ってくれることもあるんですよッ! 姉妹仲決して悪くないですしッ! まあ多分九割九分九厘吹雪ちゃんとの会話に幅持たせるための道具としか思ってないですけどッ!」
「ぜっ……はっ……」
「それにしても吹雪ちゃん今はどんな感じなんですかねッ! 前に遇った時は表情パターンが三種類しかないし会話も噛み合わない人工無能みたいだったんですけどッ! お姉様よくあれで一目惚れしましたよねどんだけ会話下手だったんですかねあの人ッ!」
「ぜ……は……」
「あッ! 私ばっかりお喋りしてごめんなさいッ! しかもお姉さまのことばっかりッ! たしかあきつ丸さん甘いものがお好きとかッ! カ□リーメイト要りますッ!?」
「うるせー水寄越せ水ッ!」
ひたすら走ること、どれほどでありましょうか。いくら艦娘がタフに出来ているとはいえ、こんな硬い床と階段を、大して準備もしてないのに荷物背負ってキロ単位で走らされて平気なようには出来てねーであります。
それを健康そうな汗を額に浮かべる程度で平然とこなして、しかもその上馬鹿みたいにでかい声でしゃべくりやがって化け物かよこいつ、であります。というかこのルート絶対遠回りでありますよな。こいつトレーニングスケジュールに自分を巻き込みやがって……。
結局その後、直前に腹に詰め込んだスコーンをリバースしないよう堪えつつダウン。激しい上下動を伴うお姫様抱っこという精神的・肉体的苦痛を伴う拷問じみた状況で、フル・マラソンの残りを消化する羽目になるのでありました。
あきつ丸であります。
なんとかリバースを防ぎ、乙女の危機を回避したものの、暫く身動きもとれず悶絶する羽目に陥ったでありますおのれ。
乙女の憧れであるお姫様抱っこがあんなにも過酷な死のジェットコースターになるとは思わなかったであります。振り落とさないようにとか言ってがっしり拘束されるし、汗ばんでじっとりとした暑苦しい体温が伝わってくるし、足手纏いが減った途端速度上げやがって……。
自分、艦娘の中では軽いほうとはいえこれでも80キロ超えてるでありますからね? それをお姫様抱っこしたまま雑談交じりに短距離走の走りで駆け抜けるとか馬鹿なんじゃねえの?であります。
こうして自分が息を整えている間もベンチプレスなどたしなみやがって。あれか。金剛殿はなんの特化型か言ってなかったでありますけど、筋肉特化型とかそういう脳筋なのこれ。
もしや先程機関部から出てきたのも、中でひたすら自転車をこぐ人力ならぬ艦娘力発電なのでは………?
「えーっと、もう、大丈夫ですか、あきつ丸さん?」
ようやく息を整えて立ち上がったところで、マシントレーニングを切り上げて、タオルで汗をぬぐいながら笑いかける比叡殿。白い歯が眩しい。くそ、爽やかだ。
「すみません。機関部での勤務後は物凄く気が昂ぶっちゃって。いつもああやって、走って熱を発散してるんですよ」
発散する以上の熱量を発生させてる気がするんでありますがねえ……。
「改めてはじめまして。金剛型二番艦、比叡です。機械人部隊の開発もした、あの恩田技研の生み出した、気合特化型艦娘です!」
…………KIAI……?
[◆◇◆◇◆]
えっと、金剛型二番艦、気合特化型艦娘の比叡です。
こういうのって初めてで、なんだか緊張しますね……。
深呼吸、そうですねっ。深呼吸しましょう!
すー…………カーッ…………すー……………カーッ!
はい、落ち着きました。
え? 深呼吸ですけど………空手家に習った。
えーと、比叡です。好きな食べ物はササミで、好きなプロテインはココア味ですっ。
好きな筋肉は大腿筋で、座右の銘は「健全なる精神は健全なるバルクに宿る」です。
え? そういうのはプライベートで聞く? はあ。
えっと、気合特化型艦娘についで、ですね。うーん。私もあんまり難しい事はよくわからないんですけど、正確には恩田式試製高効率気力変換装置搭載艦娘、ということになるみたいです。よくわからないんですけど。確か以前貰った説明書が……。
えっと。気力変換装置は、サイ・コンバーターとしてもよく知られている、機械人の動力機関として開発されたシステムです。単機での長距離移動・長時間戦闘を前提とした機械人構想を実現に導いた画期的な発明なんですよ!
それまで機械人計画は、実現できれば勝利は間違いないけれど、どう足掻いても実現のしようがないという机上の空論そのものでした。それというのも、機械人に要求されるスペックが非常に高水準で、ただでさえコストがかかるのにそれを叶えるエネルギーが存在しなかったのです。
たとえ燃料をかき集めても、その人間大の身体に詰め込むエンジンがない。エンジンの小型化に成功しても、燃料消費が激し過ぎて戦闘にまで持ち込めない。それを解決したのが恩田技研の最初の気力変換装置『闘志一発』です。
気力変換装置は極めて小型の動力機関で、赤石と呼ばれる希少な生体鉱石を原料とした心材に、精神波を照射することで、胸に収まるサイズながら既存のエンジンをはるかに超越するエネルギーを生み出すことに成功しました。
気力変換装置を主機として搭載し、本人の精神力一つでその莫大なエネルギーを発生させることで、他のどんなエンジンでも動力不足で動かすことの出来なかった決戦兵器機械人は初めて机上の空論から現実のものとして生れ落ちたのです。
まあ、ほんのちょっとした些細な問題としては、起動させるだけの精神力の持ち主が稀有であることと、安定して運用できる適合者が更に選ばれること、それに赤石がかなり希少なので生産コストが初期案より跳ね上がったことくらいですかね。
赤石の人工合成も進んでいるらしいんですけど、今のところコストが大して変わらないくらいで、一向に廉価版が普及させられないみたいです。なので、恩田技研の目指していた気合で走る国民車は暫く棚上げ、専ら機械人の交換用としてのみ生産していました。
しかしある日、恩田技研の偉い人はこう考えたのです。機械人よりよっぽど安価で建造できる艦娘に気力変換装置を組み込んだら、いけるんちゃう? と。なにがいけるのかはよくわからないですけど。
その試作実験機として建造されたのがこの比叡なのです!
私の基幹部には艦霊によって駆動する動力機関の他に、最新式の恩田式試製高効率気力変換装置通称『凝り火』が搭載され、見事! 莫大なエネルギーを生み出す艦娘が誕生したのです!
まあ、ちょーっぴり予定と違って、艦霊駆動と干渉しないように上手いこと調整したり、発生するエネルギーを上手く運用できるよう素体を一から調整したり、まあ、そんなことしてるうちに廉価版とはとても言えない高価な品になったのは否めません。
あ、あと思いの外に艦娘の機械知性に気合が足りず、というか精神力とか根性とかそういう概念とあんまり相性がよくなくて、識臣による特別刷り込みメニューの作成や特別コーチによる特訓とか、諸々が積み重なって青天井。
しかもその挙句、結局成功したのが私だけだったので、採算どころか費用の回収もままならずあわや破産、というところで手を差し伸べてくれたのが海軍本部なのでした。
海軍は私を買い取って、ここ、アーセナルに所蔵しておくことにしたんです。まあ私にはよくわからない難しいあれこれが裏にはあったんでしょうけれど、円満といえば円満、恙無くお別れを済ませてここにやってきたんですよねえ。
それで暇を持て余してトレーニング三昧の私を見かねて、今の提督さんがサイ・リアクター、つまり気力発電装置を設置して、鎮守府の発電係として使ってくれるようになった、というような成り行きなのです。
え? 具体的にはどんなことが出来るか、ですか?
うーん………あ、サイコガンは撃てます!
こんな感じでいいでしょうか? 比叡でした。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。親が親なら子も子と言うでありますが、艦娘が阿呆なのは設計者が阿呆だったからなのでありますねえ。脳筋にもほどがある思いつき設計であります……。
恩田技研と言えば機械人の開発・整備で大いに名を上げた大企業。気力変換装置は余所では真似できない特許技術の塊で、業界では空中元素固定装置並みに絶賛されているとかいないとか。
しかし、そういう尖った技術の持ち主ってやっぱりイッちゃった尖りすぎの感性持ってるんでありますなあ。社訓が「健全な筋肉に健全な精神で倍率ドン」だったり、悩んだり行き詰まったら筋トレと言うバルク理論の信者だったり、歴代社長の写真がボディビルだったり、うん。
気合気合と口で言うだけならともかく、実現してしまうだけの技術力と発想力、そして運に恵まれているチート企業でありますなあ。まあ、メガコーポは大抵そういうイカレた発想とイカレた技術力を併せ持つ変体企業共でありますけど。まったく度し難い。
しかし、そのイカレた技術を搭載した艦娘でありますか。気力変換装置は極めて使い勝手の悪い、使用者を選ぶピーキーな一品。
自分も仕事上やプライベートで何人か機械人と会ったことがありますが、基本的にまともな精神構造ではない、といって差支えがないと思うであります。彼ら彼女らは、そこにいるだけで威圧感を感じるほどのエネルギッシュな人種でありますからなあ。
リアルロボット系で進めている所に、唐突に現れて生身でスーパーロボット撃退しちゃう系の人種であります。人間飛翔体殿なんかアレ、もろに超級覇王電影弾みたいであります。
あれは、彼らがそれこそ世界を相手に戦おうと言う覚悟を持って機械人になったからこその精神なのでありましょうな。生活が安定し、戦いが他人事になった現代の子供たちには、もう気力変換装置は起動できないことでありましょう。
艦娘の精神は気力変換装置に向かない、というのは残念ながら事実であります。というのも、兵器として作られた艦娘の精神はなんというか、人間と比べタフなのであります。ある程度まで平然と受け入れてしまえる、このくらいはと飲み込んで戦える。
だからこそ。だからこそ人間の持つ、感情の大きな波と言うものが生まれづらい。絶望から希望へ。挫折から奮起へ。激しい精神のうねり。それが艦娘にはなかなか難しい。艦娘の精神の波は巨視的に見ればフラットであるとさえいえるのであります。
感情がないわけではないのであります。当たり前のように笑ったり泣いたり怒ったり、それはできるのであります。しかし条理を覆すだけの壮絶な魂の輝きを、艦娘は生み出せない。艦娘の強靭な精神が、かえって法外な気力を生み出すことを妨げるのであります。
比叡殿の機械知性は、気力変換装置を起動させるためだけに、何体もの失敗を重ねた上にようよう完成した人間の技術と維持の結晶。技術者の魂と祈りの果て。
気合特化型艦娘。それは或いはその機能ではなく、その精神のことを指すのかもしれませんなあ。
あきつ丸であります。
比叡殿とのインタビューを終え、トレーニングルームで二人して健全な汗を流し、健全に親交を深め、健全にお別れしてきたであります。健全であります。
比叡殿にも次のインタビュー対象に適した相手がいないか聞いてみたのでありますが、機関室とトレーニングルームの往復で一日を過ごしているような生活なだけに、あまりよく知らないとのことでありました。
金剛型の他の姉妹についても聞いてみたのでありますが、よくは知らないようでありました。
「うーん………霧島は事務仕事してるとは聞きますね。電算室だか電信室だかの駆逐艦の娘のお世話もしてるとか」
綾波殿のことでありますかね。仕事は一人でこなしてるとか言ってたでありますが、どう見ても生活無能力者でありますからなあ。
ではもう一人の、榛名殿は?
「榛名は大丈夫です」
大丈夫って……………何が大丈夫なのでありますか?
「榛名は大丈夫です」
あの……。
「榛名は大丈夫です」
ハイライト消えてたのでそれ以上は突っ込まないことにして、引き上げることにしたでありますが………一体何なのでありましょうな、榛名殿。まあ、大丈夫なんでありましょう、きっと。
さて、比叡殿から他に入手できたのは、時間兵装特化型艦娘の、島風殿の情報でありました。
何でも、島風殿がこの鎮守府にきた当初は、比叡殿がお世話役だったとか。根は素直で明るい娘ではあるものの、その能力や経歴から気難しく捻くれた現在の性格に至ってしまったとか、そんな話をしていただけたであります。
比叡殿の献身的なお節介によってだんだんと懐いてくれて、トレーニングルームで遊ぶくらいには仲良くなったそうでありますが、ちょっとした行き違いから離れていってしまい。それ以来会っていないとか。
もし良かったら、出来ればでいいのだけれど、もしも心があるなら、島風ちゃんに会って比叡は全然気にしていないからと伝えてほしい、などと言われたのでありますが、そういうお使いイベントはホントもう勘弁してほしいんでありますが。
お使いイベントって大抵ろくなことにならねーでありますし、そもそも比叡殿が自分で会いに行けばいいだけの話では、むしろ自分から会いに行って話をつけるほうがお互いのため、と言い逃れてみようとしたのでありますが、比叡殿は悲しそうに首を振るばかり。
「私じゃ、絶対に捕まえられないんです、島風ちゃんのこと」
ルームランナーで時速40kmを『軽く』流しながら悲しそうに呟く化け物で無理なら、自分には尚更無理なのでは………?
まあ、初対面の自分の方がいろいろ話しやすいこともあるかもしれないでありますし、カロリーメイトとスポーツドリンクも貰ったでありますし、なんだかんだ比叡殿のからっとした感じ嫌いじゃないでありますし、まあ仕方ねーでありますなーもー。
頻出ポイントは一応押さえたので、これから向かってみるとするであります。
運がよければ会えることでしょう。中東の『混迷海域』で一度だけ見た――いえ、見ることさえ出来なかった、時間兵装バンダースナッチを搭載した艦娘に。
あきつ丸であります。
健全なるバルクに健全なる精神を宿した比叡殿のお願いで、時間兵装特化型艦娘島風殿の捕獲もといえーとお話、そう、話し合いをすることになったであります。
結論から言うであります。
これ無理。無理ゲー。
挨拶くらいは、まあ、させてもらえたであります。
島風殿がよくいるという、休憩スペースの一つでバリキドリンクを飲んでいるところに運よく遭遇できたのであります。
「ああ、陸軍の」
「研修生でありますバンザイ」
という定番のご挨拶を交わしまして、さり気なく比叡殿の話に持っていこうとしたら、急に衝撃が走って意識が落ちかけたであります。
警戒して瞬きした記憶すらなかったのでありますが、気づいたら顎に一発喰らって膝が崩れていたので、多分チンジャブ、だと思うであります。見えなかったでありますが。
そしてこちらが回復するのを待たず、島風殿は悠々と歩き去ってしまったのであります。
『歩き』去って………小走りですらねえであります。逃げるとかじゃなく、単に立ち去っただけでありますよアレ。舐められてるであります。
その後も島風殿出現ポイントとされる複数の休憩所を廻ったでありますが、遭遇する度に一発貰って去られるであります。別に自分も無防備に挑んだわけじゃないでありますよ? 補強装備入れたりガードしたりしてたでありますけど、そこ以外の急所を狙われては……。
一度などは痺れを切らして強化外骨格で全身防護して挑んだでありますけど、気がついたら顔面に落書き入れられて床に転がされていたであります。
完全に遊ばれてるであります……。
時間兵装バンダースナッチ。『混迷海域』で実戦投入されるほどの実績を持つ海軍の試験兵器。その影を踏むことさえ困難とはいえ、陸軍も陸情も目を付けていた極秘技術。自分も参考程度とはいえ、遭遇時を想定した仮想訓練くらいはしてたであります。
しかし余りにも甘かった。対処できると思っていたのは余りにも浅はかでありました。『混迷海域』でその破壊を観測したときは、その被害にばかり眼を取られていたでありますが、時間兵装の本当の脅威はそんなところにはないのであります。
『時間を止める』。超スピードだとか催眠術だとかそんなチャチなもんではない、時間兵装バンダースナッチの恐ろしい能力。その片鱗を体験したでありますが、あんなものどう対応しろと……。
自分は揚陸艇とはいえ、人類の悪意の結晶陸軍情報部三課で鍛え上げられた諜報員。既に遭遇した特化型数名に関して、やりよう次第で対応できると自負しているであります。
それなりに情報を集められた偵察特化型の雪風殿、諜報特化型の青葉殿、電脳特化型の綾波殿、物理保護特化型の金剛殿の四隻に関しては、簡単にとは言わないまでも一対一なら十分対応可能であります。
しかし、『時間を止める』。このシンプルにして出鱈目な能力は、まともに対応しようがない。なるほど、比叡殿には確かに、絶対に捕まえることが出来ないでありましょう。
比叡殿がどれだけの出力を誇ろうと、どれだけ素体の限界に迫る身体能力を示そうと、島風殿にはまるで関係がない。時間を止めてのんびり歩み寄り、急所に一発致命打を放つ。それで終わりであります。
こんなもの、正攻法ではどうしようもないであります。
無理であります。無理ゲーであります。
だからもうやめであります。
正々堂々正攻法でやるなんざもうやめであります。
比叡殿に感化されて清く正しく健全に、ぬるく優しく甘っちょろくやろうなんてのがそもそもの間違いだったのであります。そーゆーの全然自分のキャラじゃねーであります。寸鉄一つ帯びてない顔してハメ殺す、コレね。
こんなクソかったるいお使いイベントにちまちま手間かけて時間かけて、気持ち込めて心込めて、傷心のひねくれたガキの心を解き解して揉み解してやるなんざ、やってられねーのであります。
出現ポイント三巡する間に仕込みは終えたであります。至極やましく剣呑に、冷たく厳しく辛口で、とっ捕まえてふん縛ってぶん殴って比叡殿に放り投げて終わらせてやるであります。
嫌われるのも馬鹿にされるのも軽蔑されるのも平気でありますが、舐められるのだけは我慢なら無い。おちょくられた分はお返しさせてもらうでありますよ。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。リベンジであります。
計6ヶ所の島風殿出現ポイントに仕掛けた小型カメラの映像から現在位置を特定、少々の準備をした上で、のんびり向かうであります。
到着すると、丁度島風殿が自販機を蹴りつけているところでありました。
まあそれは苛立つでありますよねえ、自販機にトークン飲み込まれた挙句、直後に全商品売り切れになったら、ねえ。
え、やだなあ、誤解でありますよ。
ちょっと自販機に細工して、自分の持ってる携帯端末一つで操作できるようにしたアプリでありますよ。偶然なわけないじゃないでありますか。
島風殿を追って休憩所を三巡もする間に、島風殿の行動パターンは解析済みであります。出現ポイントとされる休憩所は全てバリキドリンクを販売する自販機が設置されているところであり、休憩所を訪れるたびに必ず自販機でバリキドリンクを購入。
さあて。補給が出来ず苛立った所で、追い掛け回してる自分が現れたらどうなるでありますかなあ、ねえ、島風殿。
「………ッ。悪いけど、いま遊んでる気分じゃないんだけど」
こっちももう遊ぶ気はねーであります。鬼ごっこはもう終わり。後片付けの時間でありますよ、クソガキ。
苛立たしげにため息を吐いて、島風殿は弾かれたように後方に転げてのたうったであります。
おお、今の瞬間に時間を止めたのでありますな。やっぱり目視じゃ全然わかんなかったであります。
へいへーい、どうしたでありますか。また自分をぶん殴って足止めつもりじゃあなかったでありますか?
「こッのくそガエル……! 光学迷彩で隠した有刺鉄線!? 抜け目ないカエル!」
出血した拳を振りながら、わめく島風殿。
島風殿が素手、或いは足で攻撃を仕掛けてきていることは、ダメージから推測済み。感触から素体強度は並程度。特殊モリブデン鋼の有刺鋼線で十分対処可能であります。電流が停止した世界で流れるかはわからなかったでありますし、シンプルイズベスト。
「別にあんたをどうにかしなくても、問題ないもん!」
捨て台詞を残して掻き消える島風殿。時間停止を逃亡のためだけに使ったのはこれが始めてでありますが、まあこれも予想通り。
一瞬後に響き渡る悲鳴にほくそ笑みながら追跡を開始であります。
島風殿は常に各休憩所間の最短ルートを選んで移動するであります。出現ポイントである6箇所に順番通り、規定のルートで訪れてくれると言うことでありますよ。
その程度は念のため二巡目に仕掛けた各種センサーで判明済みであります。
そして現在、移動中の島風殿を襲うのは三巡目に仕掛けたブービートラップであります。
時間さえかければ避けられる代物であります。時間さえあれば。
電子機器やスイッチによる反応式のトラップは静止した時の世界で機能するかは不明だったため、今回用いたのはシンプルなワイヤートラップ。
廊下に張り巡らせた無数の超高張力ワイヤーによるトラップであります。
艦娘の皮膚を傷付けるにはちょっと足りない程度の殺傷力でありますが、並の素体程度の筋力しかない島風殿には切断は不可能。よっていちいち丁寧に回避せざるを得なくなるであります。 訓練したサーカス団でもなけりゃ、走り抜けられない配置でありますよ。
のんびりとワイヤーを回避しながら進んでいくと、いくつか発動済みの、しかし標的を捉え損ねたトラップ痕。転んだのか鼻血かなにかの血痕。時間停止で緊急回避しながら進んでいるようであります。重畳重畳。
次の休憩所で自販機を殴りつける島風殿を発見。残念。それも自分特製アプリの支配下であります。自販機を破壊する程度の打撃力もないようでよかったであります。
こちらを発見するなり苛立たしげに地団駄を踏み、再び姿を消す島風殿。大分消耗してきてるみたいでありますし、一巡くらいで片付きそうでありますな。
唯一の懸念は、島風殿がこれ以上の面倒を嫌って離脱し、何処かへ行ってしまうことでありますが、執拗に自販機を叩いていた様子からも予想は的中の模様。六ヶ所全てを確認するまでは諦めないでありましょうな。
その後も追跡を繰り返し、五ヶ所目。姿を消して最後の地点に向かった島風殿を追う前に、自販機にトークンを投入。バリキドリンクを購入であります。仕込みは上々。あとは仕上げをごろうじろ。
あきつ丸であります。
六ヶ所目。最後の休憩所で、島風殿は疲労した様子で自販機にもたれかかっていました。
やはり時間停止には結構なエネルギーを消費するようでありますな。
「……おまえ……ッ!」
自分の言葉に、顔を上げて睨みつけてくる島風殿。
時間兵装バンダースナッチ。時間を止められるなら、自分を拘束するも何処か全然別の場所に放り出すのも簡単のはず。しかし、最初は遊んでいたとはいえ、攻撃時の僅かな時間にしか時間停止しなかったのは何故か?
こたえはエネルギー消費が激しいから。恐らく数秒程度……時間が止まっているのに数秒と言うのも変な話でありますが、とにかく数秒程度の時間停止、それが島風殿の限界。そしてその消費を克服するのがバリキドリンクでのエネルギー補給であります。
艦娘仕様のバリキドリンクは用法用量を守って使用する分にはかなり効率のいいエネルギー補給物資。過剰摂取はエネルギー過多で異常発熱しかねない代物。それを短時間で何本も空けるということは、相応のエネルギーを消費しているからこそ。
それを絶たれた状態で時間停止を繰り返すのはさぞかし疲れたことでありましょうなあ。
まさか偶然全ての自販機が故障するなんて運がないでありますなあ、島風殿。
「さてはお前が……ッ!」
さあて、何のことやら。
とぼけつつ、懐から先程購入したバリキドリンクの瓶を掲げるであります。
バリキ切れのところに、唯一手に入るバリキドリンク。となればどうなるかは火を見るよりも明らか。
瞬時に島風殿の姿が消え、背後で一気飲みする音。振り返れば必死に瓶を呷る島風殿の姿。
罠だとは思うでありましょうが、ワイヤートラップに散々時間停止を使わされ、エネルギーは完全に枯渇状態。背に腹は変えられんでありましょうな。
まあ、当然罠でありますけど。
飲み干した途端、ふらつき始める島風殿。艦娘の臓器は人間のそれより解毒機能が高いのが基本なので、島風殿の素体が平均レベルでホント助かるであります。艦娘用筋弛緩剤が効いてくれてよかったでありますよォ。手持ちで安全なのコレくらいでありますし。
がくがくと震えながらも、こちらを睨みつける眼光はまだ鋭いまま。そうでありますなあ。筋弛緩剤交じりとはいえ燃料補給はできたでありますから、逃げ出す分くらいの時間停止はできそうでありますものなあ。
瞬きの一瞬に姿を消す島風殿。
まあ、それで、逃げられると思ってるんなら、随分舐められたものであります。
硝子がきしむような音と共に、最後の罠の起動を確認。
重たい荷物を叩きつけるような音と共に、背後で島風殿が通路に倒れこんだであります。
振り返った先では、不可視の鎖にでも縛り付けられたように、身動きもとれず床に這い蹲る島風殿の姿。何が起こったのかわからないようでありますなあ。わからんでありましょうなあ。
これはちょっと自分にも賭けでありましたからな。成功してよかった。
静止した時の世界では、電流は流れないかもしれない。電子機器は働かず、トラップは役立たずかもしれない。
しかし時間が止まってもなお、働く力はあるだろう、と推測したのでありますよ。
それがなければ全てのものは形を保てない。世界全てに働く『力』。艦霊の齎す異能の基幹となる『力』。
重力、であります。
全く、まさかこんなことで使わされることになるとは思わなかったでありますよ。海上では効果が薄いため、地面のある所でしか使えないってんで、陸軍しか研究してないようなこんな兵器。
陸軍謹製重力地雷。直上一メートル程度しか働かないでありますが、それでも十倍の重力負荷は疲労した身体では抗えまい、であります。
もとは、艦娘が砲撃時に使ったり、鎮守府を海上に固定する為に使う重力アンカーが基礎でありますが、実践に適うだけの機能を果たす重力地雷は陸軍製のみなのであります。むっはははは。 時間を止めるのはバンダースナッチを繋ぎ止めるより難しいそうでありますが、肝心のバンダースナッチがこの程度ではねえ。
さーて、どう料理してやろうk
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
絶叫。走行音。破壊音。
「ひ……えい……?」
咄嗟に見上げた先には、超高張力ワイヤーをものともせず廊下を疾走する、健全なるバルクの姿がありました。
あきつ丸でありm
「うぉぉおおおおッ! 島風ちゃああああんッ!」
「ひえい……なんで……」
改めてあきつ丸であります。
クソ生意気な捻くれ小娘を大人の大人気なさ全開で捕獲したところ、トレーニングウェアで保護者が駆けつけてきやがったであります。
戦艦とはいえ、どういうパワーと頑丈さでありますかこのバケモン。並の巡洋艦程度なら完全拘束できる高張力ワイヤーを引きちぎりながら、全く速度が落ちないであります。これが東洋の神秘、気(qi)でありますか。
どうやら完全に頭に血が上っているようでありますし、ここは逃げるが勝ちと言いたい所でありますが………二つしかない通路には重力地雷をセット済み。それを超えても通路は自分には切断できない時間稼ぎ用高張力ワイヤートラップの群れ。
自分で設置したとはいえ、いやあ、完全に檻の中でありますなこれ、はははは。
はは。
は。
詰んだであります。
助走つけた拳が咄嗟の防御体勢の上から叩き込まれ、ピンボールめいて弾かれる中、重力地雷の凶悪な呪縛を物ともせずに島風殿を抱き上げ、まだ高重力負荷に縛られていた島風殿のか細い腕を圧し折ると言うコントみたいな光景が、視界の端で見えたような見えなかったような……。
目覚めると、自分は休憩所のベッドで横になっていたであります。
どうやら気絶していたようでありますな。脳を揺らさないように気をつけて身を起こすと、比叡殿の慌てたような声。
「あ、お、お目覚めですか!? さっきはすみません!」
目をやれば、同じくベンチに腰掛ける申し訳なさそうな比叡殿と、その膝の上で逃げ出さないよう抱きかかえられている仏頂面の島風殿。
圧し折られた腕は添え木を当てられ、三角巾で吊り下げられているようであります。うーん。さすが健全爽やかスポーツマンシップ(艦)。応急手当もちゃんと習得しているようであります。
自分の方は、さて、どうなったか。特に処置がされているようには見えないので、怪我はしてないっぽいでありますが………。
防御した腕を軽く振り、袖からクロスカーボン製装甲板を取り出すであります。
さすがに避け切れなかったので、咄嗟にコレを出して防御したでありますが………うわ、拳型にべっこり凹んでるであります。最大限体重移動でインパクトずらしたはずなんでありますが……こえー。もはや喧嘩沙汰じゃなくて交通事故でありますよコレ。
一応上手く受けられたのか骨に皹は入ってないみたいでありますけど、かなりの妙な痺れがありますなあ。発勁や気、波紋のダメージ特有のしびれであります。あとは頭を打ったみたいで、後頭部がちょっと痛いであります。
自己診断を終え、改めて比叡殿に向き合うことに。
えーと。色々言いたい事はあるでありますけど、どうしてまたここに?
「えっと………あのあと、暫くしてやっぱり気になったんで、霧島に島風ちゃんがよくいる休憩所がどうなってるか聞いてみたんです。霧島なら、電算室から監視カメラの確認が出来ますから。でも、そしたら霧島、休憩所には誰もいませんけど、どうかしましたかって。おかしいと思ったんです。いつもなら島風ちゃんはこの時間、休憩所でテレビ見てるはずだから。好きな番組があるんだって。それにあきつ丸さんが休憩所に向かったはずなのに誰もいないって言うのはおかしいと思って。それで確認しにきたら、なんだか廊下中にワイヤーが張り巡らされてるし、血痕も残ってて。島風ちゃん大分グレちゃったしあきつ丸さんもなんだかんだ短気そうだし、もしかしたら取っ組み合いの喧嘩にでもなってるんじゃないかって慌てて二人を探して。そしたらそしたらあきつ丸さんと倒れてる島風ちゃんが見えて、もう、なんていうかこう、頭にかーっと血が上って、気づいたらあんなことに………」
などと述べており。
いやはや、島風殿を取り押さえるまで横槍が入らないよう、監視カメラに偽装情報流してたのが裏目に出たみたいでありますな。
まあ自分も大分大人気なく頭に血を上らせてたでありますし、この一撃は頭を冷やしてくれるための一撃だったと思うことにするであります。
さて。それで、島風殿の捕獲には成功したわけでありますが、自分が気絶している間にお話は済んだでありますかな。
「あー………えっと、それが、まだ……」
困ったように笑う比叡殿。やれやれ、潔く口を割ればいいものを。
あれじゃないですか? 比叡殿実は嫌われてるんじゃないでありますか?
だから話してくれな「違うッ!」
噛み付くように叫ぶ島風殿。そしてすぐに比叡殿から顔をそらして黙り込んでしまうであります。比叡殿も困惑している様子でありますし、えー、これほんと面倒臭いんでありますけど、まあ、乗りかかった船とかいうでありますし、ああくそ面倒臭い。
島風殿、ここはいい加減腹を割って話すいい機会でありますよ。
「うっさい」
意地になってしまっているだけで、本当は機会を探していたのでありましょう。
「だまれ」
本当はずっと仲直りがしたかったのでありましょう。
「だまれって、言ってるの! あんたに何がわかるの!? カエルなんかになにが!」
「し、島風ちゃん、落ち着いてっ」
さあ、共感はできないでありますし、同情する気もないでありますし、わかったような顔する気もないであります。
でもまあ、そんなことくらい想像できるよ。
私もそんな時期があったし、大学は教職課程だったからね。小学校や中学校、そんな思春期の娘の考えることくらいはわかるよ。
「………? 何言って……?」
さあ、どうでもいいことでありますよ。ちゃっちゃと吐かないと、自分が勝手に想像して悪意ある編集を施した島風レポートを赤裸々に語ることになるでありますよ。
「うぐぐぐぐ……わかった。わかった! もう!」
諦めたようにため息を吐いて、強張った体から力を抜いて、ゆったりと比叡殿の身体に体重を預けて、島風殿は語り始めたのでありました。
[◆◇◆◇◆]
時間兵装特化型駆逐艦、島風よ。
今は艤装制限されてるし、大分デチューンされてるから後れを取っただけなんだから。ホントはもっと凄いんだからね! フル装備だったら負けるわけないんだもん!
まあ、凄いのは私じゃなくて、時間兵装なんだけど………。
さって。どこから話そっか。まず、誤解は解いておきたいんだけど、比叡のこと、嫌いじゃないよ。比叡はすっごくいい人だし、私に凄く優しかった。
比叡に遊んでもらってるときは、うん、大袈裟かもしれないけどさ、凄く救われてたと思う。比叡がちゃんと子ども扱いしてくれて、ちゃんと大人扱いもしてくれて、構ってくれて、放っておいてくれて、贅沢な時間だったと思う。
でも、でもね。比叡が発電機で働いて、一人で過ごしてるとき。比叡がトレーニングしてる姿を見てるとき。そういう時、私はすっごく嫌な気持ちだったんだ。比叡が遊んでくれてるときは、無邪気でいていいときは、何も考えなくていいのに、そういう時は無駄に頭が働くんだもん。
ね、比叡。私ね、比叡のこと大好きだよ。優しいもん。
でもね、比叡。私ね、比叡のこと大っ嫌いだった。優しいんだもん。
優しい比叡を見ているとね、私、自分のことがすごく嫌なやつに思えて、もう頭の中がめちゃくちゃだった。
比叡は何にも悪くないのに、比叡が妬ましくって、そう感じるたびに自分が嫌いになった。
比叡が走ってるところ見るの、大好きで、大嫌いだったんだ。
だって、比叡は速いもん。
島風より、ずっと。
私のさ、島風モデルの、標準素体ってさ、速い速いとは言うけど、実は大したことないんだ。
海上なら、40ノットくらい。時速80kmいかないくらい。陸で走ったら、もっと遅くて、時速38kmくらいが限度かな。全速力で。
私の全速力ってさ、比叡が軽く流して走ってるときより遅いんだよ。知ってた? 知ってたよね。私と鬼ごっこだってしてくれたんだもん。手抜かりなく手を抜いて、気付かれないよう気を遣って、ホント、比叡は優しいね。優しくて、酷い人。
私は、速くなりたかった。速く走りたかった。あとほんの少し届かない、時速80kmを目指して、ずっと走り続けてた。練度を上げて、走り込みを続けて、それでも届かない時速80kmの壁を目指して。
時間兵装の実験の話が来たとき、すぐに食いついたのもそう、速くなりたかったから。ただただ、速くなりたかったから。それだけだった。
そんな単純だから、自分勝手に失望して、自分勝手に羨望する羽目になるんだ。結局、そう、子供だもん。
時間兵装は、バンダースナッチは、私に世界中の全てを置き去りにする速さをくれた。
そして、時速80kmの壁を越える速さを、私から永遠に奪っていった。壁の向こうに走り去ったバンダースナッチはもう捕まえられない。時間を止めるよりも、それは難しいもん。
時間兵装特化型艦娘、島風だよ。
ごめんね、比叡。比叡が悪いんじゃないんだよ。私が悪いんだ。子供みたいな理由で、子供みたいにむくれて、子供みたいに塞いで、子供みたいに飛び出しただけなんだ。
時間の止まった世界って、凄く寂しいんだ。
奥歯のスイッチをカチリと入れると、全てが灰色に凍り付いた静かな世界が訪れるんだ。色彩は全て失われて、音を立てるものは何もなくなって、温もりも冷たさも感じない。
前に、雪が積もったことがあったよね。朝方、まだ誰も起きてきていないような早朝、日が出るか出ないかの彼は誰時。あの、雪の中に一人佇んでいるときの、世界に自分一人しかいないような静けさ。あれに似てるかな。
雪が音を吸って、風もなくちらちらと雪が積もっていく、あのどこまでも静かな世界。比叡はあの時、一人でずっとどこかを見てたよね。知ってるよ。私もあの時、あそこにいたもん。比叡が感じていたよりも静かな世界で。
雪は静かだけど、それでも耳を澄ますとね、雪の積もる音が聞こえるんだ。きしきし、きしきし。でもバンダースナッチの世界には、どんな音もしないんだ。
怖くなるくらい静かなの。空気が震えないから、自分の声だって聞こえない。じっとしていると、自分の心臓がとくとく言う音、筋肉がぎゅうぎゅうしなる音、基幹部が駆動するくるぐる言う音、そういうのが、身体を伝わって聞こえてくる。
そのままじっとしていると、その音さえ何処か遠く感じられて、目をつぶると光さえなくて、ちかちかと私の中で光るものだけが見え隠れして、それもやっぱりどんどん遠くへ行っちゃうんだ。
そうなるともう、何処かへめちゃくちゃに走り出して、響かないとわかってもわめき散らして、腕を、足を、でたらめに振り回して、そうでもしないと気が狂ってしまいそうになるんだ。
そうして走った先で、誰か見知った顔を見つけても、その人は私のことを見てくれないし、笑いかけてくれないし、声だってかけてくれやしない。触っても、叩いても、ゆすっても、抱きしめてすがり付いても、冷たい石でも抱いているみたいに、報われないんだ。
ああ、寒いほど独りぼっちだ!
最初は、最初こそは、凄い力を手に入れたって、誰よりも速くなれたんだって、そりゃもう嬉しかったよ。でもね、違うんだ。全力で走ったって、もうあの風は感じられない。温度のないゼリーの中を漂ってる気分になる。
当たり前だよねえ、考えてみたら。時間が止まっても、私は私のままだもん。凍った世界を走り抜けても、私にとってそれは時速38kmの世界のままなんだ。
もう、あの風は感じられない。
あの風を感じたくて、時速80kmの壁を越えたくて、ただそれだけで走り続けてきたのに、もう、私には、できないもん。バンダースナッチは、時間は私に少しだけ味方してくれる。でも風はもう応えてくれない。私が、速さを裏切ったから。
『混迷海域』で試験運用されてたときも、私の心にあったのは絶望だけだったよ。信じられなくて、信じたくなくて、バンダースナッチの生み出す静止した世界を、艤装の生み出す暴力的な加速と破壊に身を任せた暴れに暴れて、でもそうさせたのはただの現実逃避。
結局私は、私の精神は静止した時の世界に適応できないって烙印を捺されて、時間兵装の研究は次の娘に受け継がれて、私はこうして玩具箱の底。
比叡に会えたことは、凄く嬉しいんだ。嘘じゃないよ? 何もかもが凍りついた世界で、比叡だけが、色鮮やかに見えたんだ。比叡が抱きしめてくれるの、嫌いじゃないよ。比叡が笑いかけてくれると、私まで笑顔になっちゃう。
大好きだよ、比叡。
でも、だから私は逃げ出したの。大好きな比叡を見るたびに、どうして私はもう走れないんだろう。どうして私はもう駄目なんだろうって、そう思っちゃうもん。
自分を嫌いになるのは慣れてる。でも、でもね、比叡。私、比叡まで嫌いになりたくなかったよ。だから、比叡から逃げ出したんだ。
ごめんね。大好きだよ。ごめんね。大嫌いだよ。比叡。比叡。比叡。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸でありm
「おぉぉおおおンッ、島風ちゃぁぁぁああんッ!」
改めてあきつ丸であります。
語り終えた島風殿と、それを抱きしめておんおんと泣く比叡殿。
しかし毎度うるっせえでありますなア、この比叡殿。
「ごめんねッ、ごめんね島風ちゃんッ!」
「ううん、私が悪いんだもん」
「島風ちゃぁぁあああんッ!」
「いいの、だから、比叡、」
「ごめんねぇええッ、ごべんねぇええええッ!」
「比叡、いいの、私が悪いん、だ、もん………」
「気づいてあげられなくてごべんねぇえええッ!」
「あの、比叡、比叡、もう、」
「ごべんねぇええええええッ!」
「折れた腕が痛いっていってるのッ!」
コレ知ってる。こういう拷問器具見たことあるであります。
とりあえず島風殿に使った艦娘用の筋弛緩剤を二、三本まとめ打ちして、鎮静剤を心臓付近に打ち込んでやってようやく落ち着いてくれたであります。インド象かよこいつ。なんかの精神コマンドでもキメてんでありますか?
「カエ………あきつ丸」
ん。なんでありますか、島風殿。
暫く本当に嫌そうに顔をしかめたまま、苦虫でもダース単位で頬張ったような本当に嫌そうな顔でこちらをじっと見ていたかと思うと、島風殿が呟くようにおっしゃいました。
「ありがと」
フムン。
「機会を探してたのは本当。意地になってたのも本当。比叡にまた会いたいなって、また遊んでもらいたいなって、また抱きしめてもらいたいなって、全部全部本当。
だから、ありがと」
まあ、別に、自分は何もしてないでありますけど。ちょっと自販機でバリキドリンク買おうとしたら、悪戯っ子と追いかけっこして、感動の再開に立ち合わせてしまっただけでありますよ。
そういうお涙頂戴な展開、根無し草のケロケロガエルにゃむかないでありますよ。
だからこれは、島風殿が勝手に覚悟を決めて、勝手に内心を打ち明けて、勝手に仲直りした、それだけの話でありますよ。
「そう、じゃあ、勝手に感謝しとくもん」
へえへえ、ご勝手に、であります。
まだえぐえぐと泣きながら、腕の中の島風殿を抱きしめている比叡殿と、仕方がないという顔でそれを甘受する聞き分けの良い猫のような島風殿。
艦娘の機械知性は、人間とは明確に異なる精神構造を持っているであります。表層が似通っているだけに、本質が、根源が異なっていることが、大きな溝となって感じられるであります。そこには大きな谷が横たわっているのであります。
しかし、こうしてみている分には、まるで年の離れた姉妹のように、有り触れた友達のように、のどかな光景にしか見えないのであります。
まあ、片や身長190cm越えの高速戦艦が、片や身長140cmそこそこの駆逐艦を抱きしめている姿は、下手するとぬいぐるみを抱いているところか、遠近法の混乱に見えかねないであります。
ところで、島風殿は随分速さというものに執着しておられるようでありますが、そこまで拘るのは何か理由がおありなのですか?
島風モデルは基本として速さを誇る傾向があるとは聞くでありますが………。
「ああ、それかぁ」
比叡殿の腕の中で、もぞもぞと居心地の良いポジションを探しながら、島風殿は苦笑いなさいました。つい先程まであれほど熱弁されたのでありますから、少し気恥ずかしいのでありましょう。
「昔はね、私も普通の島風モデルだった。自分の速さに自信もあったし、毎日がそこそこ充実した艦生だったと思うよ」
ようやくポジションが決定したらしく、だらんと脱力した姿勢で語り始める島風殿。
「でも、ある日、提督が話してるのが聞こえたんだ。あ、提督ってのは、最初にいた鎮守府のね。
『この間、内地に顔出してきたときさー、久しぶりに運転してみたんだよ。船じゃねえよ。車だよ。マイカー。高速走るのもう何年ぶりかって話でな。最初は少し緊張したんだが、慣れてくるとなかなか気持ちのいいもんでな。それで、ふと昔聞いた話を思い出してな。時速80kmで走行中に窓から手を出すと、Cカップの感触がする、ってな』」
え。
え?
「それを聞いて以来、私は時速80kmを目指し続けたの。ひたすら、ただひたすら、全身でCカップのおっぱいを味わう為に。その為だけに。全身おっぱい体験という、未知の黄金領域の為だけに………!」
こいつ死ねばいいんじゃないでありますかね………。
こんなクソ煩悩の塊のためだけに、綾波殿に貸し作るつもりで監視映像艤装して、手札を二枚も三枚も切ったかと思うと胃が痛くなるであります………。
「島風ちゃん、そんなにおっぱいが欲しかったら私がいくらでも抱きしめてあげるのに!」
「比叡Aカップだもん………」
「Bはあるからね!?」
「胸筋で盛ってるもん………」
「ちょっとしたプロテインだから!」
何言ってんだこいつ。
むぎゅむぎゅとササミめいたプロテイン胸に抱きしめられる島風殿。比叡殿のバストは実際(筋肉が)豊満でありました。
[◆◇◆◇◆]
Tips.
>訂正
・火力特化型をダース単位で揃えてたりする→火力特化型すれすれの重武装艦娘をダース単位で揃えてたりする
原則として特化型と呼ばれる艦娘はワンオフであり、常に一個体しか存在しないため。
特化型と呼ばれるためには「単一能力において他の追随を許さない圧倒的な能力」が必要なため。例えば雪風の偵察機能は主に強化センサー類と特殊な思考ルーチンからなる索敵機能に特化しているが、これは百年近く前の代物でありながら現在まで記録更新がなされていない。
時雨と瑞鶴もいたじゃんと言われるとその通り。彼女たち偵察特化型はそれぞれ異なるアプローチから偵察機能を高めており、厳密には違う枠。
どれだけ優れた技術でも量産が利くならそれは単に強化型。技術力や価格などの問題で量産が利かない小数がほぼ同率で並んでいたりする場合、複数個体に特化型の呼称を用いることもある。
・フムン。十隻、というのはかなり多い数であります。それも今まで遭遇してきた特化型のように、全て特化部位が違うとなると。→ フムン。十隻、というのはかなり多い数であります。
上述の特化型の原則より。
>小ネタ・解説
・瑞鶴と加賀も特化型デース
本編ではまだ言及されていない。
・電脳特化型の亜種
綾波の場合、ACM、特にクラッキングと防衛に特化している。
ここで紹介されている亜種の場合、ある特定の分野において綾波以上の異能を発揮する。
・あんたそれ陸軍への嫌味?
開発元である恩田技研は、幾つかの鎮守府も保有しているがもともと陸軍系の技研。
比叡の研究で経営が傾き、ただでさえ懐事情の厳しい陸軍が助けようにもお手上げ状態になっていたのを海軍が買い取ってやったことを揶揄する発言かという指摘。
・中東の『混迷海域』
紛争区域である中東の最奥、物理的な海を介さずに『海域』と繋がる二か所のうちの一つ。
『混迷海域』の場合『境界』が非常に曖昧で、物理法則が乱れているとされる。
・艦娘技術を応用した縮退炉
艦娘が重力操作を可能とすることが判明してから結構経つが、それを利用した技術の発展は実のところ遅々たるもの。というのも艦娘自身が感覚だけで利用しているので、理屈が不明な部分が多かったのである。
この縮退炉も専用のオペレーター艦娘が何隻もいてやっと動く有様だという。
・ボーカロイドじみた音声
実はこの音声の持ち主は艦娘。戦闘に出れないので専らこういうことで暇をつぶしている。
・サイ・リアクター
精神力で発電する施設。より正確には気力変換装置サイ・コンバーターによって発生したエネルギーを電力に変換する装置。サイ・エンジンなどとも。
元ネタは「ロストユニバース」(神坂一)に登場するサイ・エンジン。
・カ□リーメイト
伏字になっていない。美味しくカロリー計算も楽だがとにかく口の中の水分を奪う。
・艦娘の中では軽いほうとはいえこれでも80キロ超えてる
大型の戦艦などは身長も高く筋肉量も多く、かなり重い。更にそこに金属の塊である電脳と保護殻等を内包する基幹部がプラスされる。そもそも人間より頑丈に作られた生体素体は細胞レベルで人間より重い。そう考えるとあきつ丸は実はかなり軽い方。
・筋肉特化型
多分いるにはいると思われるが、技術的限界の測定以上の意味がなさそうではある。
・気合特化型艦娘
恩田式試製高効率気力変換装置搭載艦娘。
特化型として呼称する場合は厳密には気力変換機構特化型とでもなるのか。
・機械人構想
少ない資源、少ない燃料で圧倒的戦力をとか言うふざけた構想。百年前に勃発しかけた「最後の再分配戦争」に備えて開発されたが、そのまま深海棲艦戦に流用された。
・実現できれば勝利は間違いない
逆に言えば、実現できなければ勝利できない状況にあった。
そして実現後に横合いから殴りつけてきた深海棲艦との戦いという追試で、欠点も見えてきた。
・『闘志一発』
莫大なエネルギーを生み出すが、起動させるのに必要な精神力も莫大で、更に適正がかなり狭い。とはいえ、最終的に生き残った機械人の多くがこの『闘志一発』搭載型である。
・赤石
RPG「クロノトリガー」に登場するドリストーン、RPG「クロノクロス」に登場する凍てついた炎、また「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第二部に登場するエイジャの赤石をブレンドした。
ある種の生体鉱石で、投射された精神エネルギーに反応して形状・性質を変化させ、内部でエネルギーを複雑に反射・増幅する。
・赤石の人工合成
厳密にはゼロから合成できている訳ではなく、オリジナルから培養している、という表現の方が正しいか。また取り外すと機械人は死んでしまうので、丸ごと交換というよりも損傷部分の補填という方が正しいか。
・気合で走る国民車
元ネタは確か「涼宮ハルヒの憂鬱」の二次創作で出てきた気合いで走るホンダの新自動車だったと思うのだが、ネタ元が見つからないので誰かわかる人は連絡お願いいたします。
・恩田式試製高効率気力変換装置通称『凝り火』
艦娘用に、というよりは殆ど比叡用に調整されたサイ・コンバータ。艦霊との干渉を避ける為に比叡は殆ど艤装をまともに扱うことが出来ず、そのため艦霊の馴染み具合によって規定される公定練度も低いままという、艦娘としては最低レベルの出来。
・機械知性に気合いが足りず
というより、電脳、つまり極端な話コンピューターに精神があるのか、あるとしてそれは精神エネルギーを生むのかという大きな問題があった。結果として成功はしたけれど、結局のところ精神エネルギーとかいうものが電脳から抽出できたのか生体脳から発したのか、気力変換装置の権威であり唯一の成功者である恩田技研すらまともに解明できていない。
・あわや破産
実際は可処分資産の幾らかで十分補填できただろうが、商売気の薄い恩田技研がスポンサーである陸軍からかなり予算を分捕っており、回収できないとわかった陸軍が音を上げたというのが実際のところ。
・サイコガン
「コブラ」(寺沢武一)の主人公コブラが左腕の義手に仕込んだ銃。精神エネルギーを打ち出すコブラの代名詞。あくまで武器の名前である為、どちらかというと比叡が撃てるのは「幽☆遊☆白書」(冨樫義博)の霊丸や「ドラゴンボール」(鳥山明)のかめはめ波などのような技と思われる。
・空中元素固定装置
「キューティーハニー」(永井豪)に登場する、大気中から元素を任意で抽出し、必要な物質をその場で化学合成するという装置のこと。
・プライベートで何人か機械人と会ったこと
さらっと言っているが、早々気軽に会えるような存在ではない。
・超級覇王電影弾
「機動武闘伝Gガンダム」(サンライズ)の登場人物、東方不敗マスターアジアと彼の門派の用いる必殺技。全身にエネルギーを纏い回転しながら突撃する。何故か顔だけは回転しない。数々のロボットアニメのロボットが登場する「スーパーロボット大戦シリーズ」において平然と生身で参戦して生身でロボットを破壊した。
・「榛名は大丈夫です」
大丈夫です。
・ルームランナーで時速40kmを『軽く』流し
なお、人間の100m走での現状での限界が大体時速37㎞くらい。
・時間兵装バンダースナッチ
時間兵装の名は8号氏がPixivで連載している「黒い艦これ漫画」シリーズに登場する時間兵器より頂いた。
バンダースナッチとはルイス・キャロルの詩「ジャバウォックの詩」と「スナーク狩り」で言及される架空の生物。「スナーク狩り」での描写によれば素早く動き、長く伸ばせる頚部と、獲物を捕らえるための燻り狂った顎(frumious jaws)を持っているとされる。
「鏡の国のアリス」において「よいか、一分間というやつは恐ろしく素早く過ぎるでな。まだ一匹のバンダースナッチを押しとどめる方が楽じゃろうよ!(You see, a minute goes by so fearfully quick. You might as well try to stop a Bandersnatch!)」と、時間と比較される形で非常に素早い事が示唆されている。時間兵装バンダースナッチは文字通り一分間という奴を押しとどめる能力装置である。
・バリキドリンク
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)に登場するドリンク剤。ヨロシサン製薬なる製薬会社の代表的な商品で興奮・覚醒作用がある。用法用量を守らずに使用(オーバードーズ)する事でその作用が高まり、麻薬に似た性質を発揮するとか。あきつ丸レポートの世界では手軽なエネルギー補給として艦娘に利用されているようだ。
・強化外骨格
いわゆるパワードスーツ。様々な形状・種類が存在するが、ここであきつ丸が使用したのはスーツ状の簡単なものだったと思われる。
・『時間を止める』
厳密には使用者の主観を世界に押し付けることで情報を改竄するイメージ・アルゴリズム法の産物。
・超スピードだとか催眠術だとかそんなチャチなもんではない
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第三部におけるポルナレフの台詞「やつを追う前に言っておくッ! おれは今やつのスタンドをほんのちょっぴりだが体験した。い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!「おれは奴の前で階段を登っていたと思ったらいつのまにか降りていた」な…何を言っているのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」から。
・光学迷彩で隠した有刺鉄線!? 抜け目ないカエル!
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第三部より、ジョセフ・ジョースターに攻撃する直前でそれを止めたDIOの台詞「連続して自分の体に波紋を流し、ガードしているな?波紋入りハーミットパープルを、高圧電線のように体に巻きつけているだろう?策士だな、抜け目ないジジイめ」から。
・特殊モリブデン鋼
長串さんの好きな素材。「からくりサーカス」(藤田和日朗)に登場するしろがね-O、ジョージ・ラローシュの武装「神秘の球(ボラ・ミステリオサ)」の素材から。
・超高張力ワイヤー
「アルドノア・ゼロ」(A-1 Pictures + TROYCA)に登場する火星カタフラクト「オクタンティス」の武装、超電磁ボビン超々高張力ワイヤーから。
・時間が止まっているのに数秒と言うのも変な話
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第三部より、DIOの台詞「時が止まっているのに、5秒とはおかしいが、とにかく5秒ほどだ……フフ」から。
・時間が止まってもなお、働く力はあるだろう
時間が停止している世界というものはなかなか難しい。大気を構成する分子なども停止しているから本来その中で動けない筈だし、光も止まっているから物をみたりすることもできない筈だ。
時間兵装のイメージ・アルゴリズム法はそのような都合の悪い事柄を見かけ上無視している。なんでだろう。
多分磁力や重力や強い力や弱い力やまあそういうのは働いているのかもしれないし、イメージ・アルゴリズムによって働いていることにしているのかもしれない。
・陸軍謹製重力地雷
本文でも説明がある通り、鎮守府を海上の特定座標に固定したり、海上で艦娘が砲撃する際に反動を押さえこむのに使う重力アンカーを利用したもの。
重力アンカーは上下左右に動こうとする外力を重力で相殺することで座標固定をしているが、重力地雷はここで使用されている重力を全て「下」に向けることで「上」に載ったものを押さえつけるもの。複雑なベクトル計算と出力方向の調整の為に大型化を余儀なくされる人工重力アンカーを、単一方向のみに限定して地球の重力を借りた簡略版。
・東洋の神秘、気(qi)
格闘ゲーム「ギルティギア」シリーズにおいて、吸血鬼スレイヤーが「気」について言及するセリフにおいて特徴的な発音をすることから。
・クロスカーボン製装甲板
元ネタがあったと思うのだが思い出せない。なんだクロスカーボンって。
・発勁や気、波紋のダメージ特有のしびれ
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)に登場する概念「波紋」は、これによってダメージを受けた際、電流が走ったような衝撃を受けるという。この世界でも波紋が存在するようだ。
・大学は教職課程
教育職員の普通免許状(教育職員免許状)の授与を受けるのに必要な単位が修得できるよう所定の科目等を設置した課程。要するに学校の先生になる為に必要な単位が得られる課程。
この世界において艦娘は大学に入学する権利をもっていない。
・奥歯のスイッチをカチリと入れると
「サイボーグ009」(石ノ森章太郎)に登場する加速装置のスイッチは奥歯にあるとされる。
・ああ、寒いほど独りぼっちだ!
「山椒魚」(井伏鱒二)の一文より。
・インド象
ポケモン図鑑に登場する単位の一つ。耐久力を示す。
・精神コマンド
「スーパーロボット大戦」シリーズに登場する概念。精神ポイントなるリソースを消費して超常現象を起こす。RPGにおける魔法のようなものだが、中断メッセージで登場人物に精神コマンドは魔法じゃないなどとも言われている。
・時速80kmで走行中に窓から手を出すと、Cカップの感触がする
時速とカップ数の比例に関しては諸説ある。そもそもカップ数はトップとアンダーの差によって決まるもので、この数字に信憑性はない。
・実際(筋肉が)豊満
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)においてよくバストの豊満さが唐突に描写される。実際そのバストは豊満であった。