警告:乙種機密指定
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あきつ丸であります。
とりあえず、島風殿の腕が圧し折れたままでは、比叡殿に抱きつぶされる拷問タイムが長引くので、可愛そうなので、工廠に修理に向かったのであります。
工廠は各鎮守府に設置された、艦娘の建造や修理、また装備品の開発などを行う施設の総称であります。大抵の鎮守府では、殆ど怪我した艦娘によって医務室みたいなイメージで活用されることが多いでありますな。
建造に関する施設の中核部分はブラックボックスとなっており、連合海軍運営本部か、宮内庁の人間でもなければ中身は把握していないのであります。だからほんのちょっとした不具合でも、面倒な書類を積んでお伺いを立てなければならないのであります。
陸軍の技術者達も必死こいて研究してるでありますけど、これが全く。宮内庁はもはや陸軍からは完全に離れてるでありますからなあ。陰陽寮は殆どの術者ごと海軍に移籍しちゃったでありますし。
まあ、ともかく普通に工廠といったら医務室みたいなもんとでも思っておけば大丈夫であります。
その工廠にたどり着くと、目の下に濃い隈をつくった、バリキドリンクの瓶でタワーを築き、ズバリガムの徳用ボックスを積んだ、工具と設計図とマックス・コーヒーの空き缶で荒れ果てたデスクでヨーカンを齧る艦娘が出迎えてくれたであります。
えーと、これは……。
「あちゃあ………明石、また徹夜? いい加減艦娘でも体壊すよ?」
比叡殿が呆れたように仰るでありますが………え、これ明石? 明石モデル?
適当に結い上げた髪に、オイルと皮脂と緑色の粘液で汚れた顔。もはや汚れなのかもとの色なのか判然としない複雑な色合いのつなぎ。忌々しげにヨーカンを飲み下し、新たなマックスコーヒーとバリキのブレンドを煽るこの艦娘が?
「うるっさいですねえ元凶そのいちィ……その気力変換装置とか言う異世界チートアイテムがこっちの睡眠時間を何時間削ってると思ってんれすかァ………?」
がらがらと荒れ果てた声でぼやきながら、シャカリキ・タブレットをがりがりと齧る明石殿。
複数の薬物と糖分、そして疲弊と苦悩によってにごった目が、島風殿を、正確にはその骨折した腕を見た瞬間、ぼろぼろと大粒の涙を声もなく零し始めたのでありました。
「しぃいいまぁあああかぁああぜぇええええさぁあああんんんん……ッ」
「ヒィ!? 悪かったからそのホラー映像やめて!?」
「あんたらクソ特化型の定期メンテだけで必死なとこに怪我までこさえやがってェ……!」
「え、その、あの、あ! こいつ! こいつ犯人!」
びし、とこちらを指差す島風殿。ぎょろん、と向けられる明石殿の胡乱気な瞳。
え。
ずもももも、と詰め寄ってくる明石殿の強烈な体臭! いや、体臭と言うかなんだろうこれ。ドリンク剤とマックス・コーヒーと羊羹の甘ったるい匂いと、オイルの匂いとアルコールの刺激臭とその他よくわからんもののブレンドであります。
「特化型の修理がどんだけ面倒か解ってますかこのクソ虫風情がァ……!」
「ヒィッ!?」
いや、違うでありますし。島風殿の腕圧し折ったのは比叡殿でありますし。確かに特殊モリブデン鋼製有刺鋼線とか超高張力ワイヤとか重力地雷とか使ったでありますけど!?
今にもレンチで殴りかかりそうな亡者が、ぴたりと動きを止めて、まじまじとこちらの顔を眺めてくるであります。すげぇ怖い。ゾンビ映画に特殊メイク無しで出れる面でありますよ、これ。
「特殊モリブデン鋼?」
え。
「超高張力ワイヤ?」
エ、ハイ。
「重力地雷?」
アッハイ。
無言の視線が、痛い!
「もしかして、あれ、あの………この前きたっていう、陸軍のあきつ丸さん?」
え、はい、そうであります。
「じゃあそのモリブデンとか、ワイヤとか、重力地雷って言うのは、陸軍の……?」
えー、まー、その、あんまり表沙汰にしたくないでありますけど、そうであります。
「仮に、仮にですよ? もしそれ見たいなーとか言ったら、どうなんですかねェ……?」
もじもじと蠢くおぶtもとい明石殿。
ちらっと比叡殿たちを見やると、そっと視線をそらされたであります。
あー……………この人、もしかしてマッドでナードでギークなフリークさんなのでありますかね………?
[◆◇◆◇◆]
工作艦明石です!
いやー、先程はごめんなさい。ちょっと一週間ほどまともに寝てないわ、研究が行き詰ってるわで、ちょっと頭が飛んでました!
お風呂入って着替えも済ませて、すっきりした所で、さ、早くッ、早くッ、特殊モリブデン鋼くださいよォ、陸軍の硬くて丈夫なモリブデン! ああ、それにぎちぎちした対艦超高張力ワイヤーに、足腰砕けちゃいそうな重力地雷ちゃんッ!
へぁっ!? ああ、すみません、メートル下げます。ふへぇー………。
よし、大丈夫。わかりました。インタビューが先ですね。インタビューに答えたらそれくれるんですね。大丈夫です。明石大丈夫です。大丈夫だっつってんだろッ!
え? 島風ちゃん? 腕折れてる? あー………このくらいなら軽く入渠してくりゃ治りますよ。島風ちゃんは素体は規格品ですからねー、このくらいなら楽でいいですよ。ただし時間兵装、てめーは駄目だ。
あきつ丸さんもちょっと打ち身あるみたいですね、あとで一緒に行くといいですよ。比叡さん? 精神コマンドでも使っときゃいいでしょ。
えー、なんでしたっけ。そうそう、私のことですね。うん。私は別にそこの特化型みたいな馬鹿みたいな馬鹿艦娘じゃないですよ。普通の、ごく普通の艦娘です。別に特別な事情も特別な能力もない、普通の艦娘です。研究所でいろんなお手伝いしてました。
毎日真面目に働いてたんですよー、これでも。仕事好きですしね。いろんな技術に触れて、いろんな技術を試せるんです。技術者としてこれ以上はないですよ。そんなの優秀じゃないかもだけど、それでも自分なりに頑張って働いてました。
ただなー、唯一つ問題があるとすれば上司がマッドでクレイジーなナードのギークだったてことくらいですかねェ………。
買い出し終わって研究所に帰ってきたらですよ、目の前で研究所が大爆発ですよ?
やー、疲れたー、コーヒーでも淹れよー、とか思ってたら目の前で全て灰燼に帰しましたからね。
私は内容教えてもらえなかったんですけど、極秘の研究やってたみたいで、しかも危険すぎるから止めろって上の人に言われてたみたいで、こっそり人が出払ってる隙にやらかしたみたいでして……。
やるなよって言われたら、絶対やるなよって言われたら、フリだと思っちゃう人でしたからねえ、博士………。何が起こったのかわからずしばらく呆然としちゃいましたよ。
デスクに隠してた、買ったばかりの徳用懐中汁粉の箱もパー。皆で相談して買ったばかりの新しいコーヒーメイカーも粉々。頑張って一人で組んだエンジンも粉砕。使う当てがあんまりなかったのでちまちま溜めてた100万円貯金箱も燃え尽きました。
ガラガラと崩れ落ちて崖の下の海へと落ちていく研究所跡地を前にして、どれだけ茫然自失していたのか。気づいたら海軍の偉い人がやってきて、色々質問攻めにされましたけど、私が何にも知らないって知ってがっかりしてたみたいでした。
それで、行く宛てがない私に、新しい職場としてここを紹介してくれたんです。秘密研究所で、もう二度と出られないかもしれないけどとは言われましたけど、それ以上に新技術に目を惹かれて心惹かれて、いやもう、我ながら単純でした。
最初のうちこそそれで喜んでましたけど、だんだん面子が増えるにつれて手が回らなくなってきましてね………。何なんですか特化型って。一隻一隻殆ど完全オーダーメイド。使われてる技術は分野ごとのハイエンド。互換性は最悪。
仕様書やら何やらも貰いましたけどね、一介の技術者にゃ全然わからないんですよこんなもん! 天才とかマッドとかそんな連中の考えてることなんて解るわけないでしょ!?
大和さんはまあ、ここで建造されたし、研究者も技術者もチーム単位でくっついてるからいいですけど、他は全部私の担当ですよ!? 担当の技術者も引き抜いてこいよちくしょぉおおおッ!
すぅー………はぁー………ばり、ばりばりっ、んぐっ、んっ、んぅ、んくっ。
はあ……大丈夫です…………落ち着いてきました………アーイイ……遥かに良い……。
まあ、そんなわけでして、ようやく全員分の定期メンテナンス要綱は組めたんですけど、まだまだブラックボックス部分が多くてですね。新しい技術に触れるのは楽しいけど、理解できず苦しむと言う天国と地獄の狭間なんですよ……。
せめて助手でもいればいいのに…………みんな労働環境がどうとかいって嫌がるんですよ………折角労働組合も艦娘人権団体も介入してこない環境で思う存分研究できるのに………予算で一日三食も確保してるのに………みんなバリキとかヨーカン嫌いなのかなぁ……。
私が話せるのはこれくらいですね。専門的な技術の話とかは、一応極秘扱いなので。だから、もう、いいでしょ? ね? 欲しいのォッ! 陸軍さんの重力地雷欲しいのォッ!
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。
ズバリとバリキのもたらす冷静と情熱の間で、長虫の這い回る混濁した幻覚と、ゴキブリの這い回るおぞましい現実の二重写しの世界を見ながら、重力地雷に涎を垂らす明石殿とのインタビューは終わりでいいでありますよね。
いやぁ、身奇麗にしても小奇麗にしても、内面からにじみ出るガイキチっぷりはなかなか見物でありましたなあ。表面取り繕うのも苦手なタイプでありますな、あれは。どれだけ偏った環境で育ったのやら。
下手すると生まれたての艦娘は、生まれたての人間より環境の影響を受けやすいでありますからなあ。多分マッドでクレイジーなナードのギークの博士の影響でマッドでナードでギークなフリークになっちゃったんでありましょうな。
比叡殿も島風殿も突っ込み放棄して二人の世界に入ってしまってたでありますけど、あの明石殿、研究所が爆発したにもかかわらず、博士やら職員の安否全く気にしてなかったでありますし、他人が労働環境についてどう考えてるか微塵も理解できないんでありましょうなあ。
というか労働と言う言葉は使ってるでありますけど、本人はあれが趣味で生き甲斐で生き方で生態でありますから、休暇だとかそういうの理解できないんでありましょうなあ。むしろ研究の枷とでも思ってるんでありましょうな。
まあ、あの手の手合いにしては最低限コミュニケーション能力と自制心があるだけまだましな部類ではありますけど。人間と接する時間が長いほど人間らしくはなるでありますけど、人間の偏った部分を強調して学んでしまうこともあるので諸刃であります。
いやはや。あんなの相手に重力地雷程度の餌で済んでよかったであります。痛いは痛いでありますけど、自分のこの身体を調べられるほうが不味かったでありますからな。陸情の機密の塊みたいなこの体。
まあ、ようやくあの魔窟から逃げ出せたことでありますし、折角でありますから三人で入渠といくであります。軽度の負傷などに使われる、共用入渠ドック。
いわゆる、大浴場なのであります。
あきつ丸であります。
艦娘は何かと怪我の多い生き物であります。打ち身に擦り傷切り傷、脱臼骨折心臓破裂。手がもげたり足がもげたり首が転がってたり、まあ、深海棲艦とやり合って無傷であることの方が珍しい。
そうなると、いちいち修理のために手術用具と工具を揃えたり、小さな傷に一人ひとり手当てなんてやってられるもんではないのであります。そのためある程度軽度の負傷に関しては、手間を省く為にも艦娘の自己治癒能力を高める治療法が選ばれるのであります。
それがいわゆる入渠ドック。俗に言う浴場であります。
造りから内容まで基本的には一般的な浴場と同じで、脱衣所もあればコーヒー牛乳を販売する自販機も置いてあるし、扇風機も回っていれば艦娘用の体重計だってあるのであります。
鎮守府によってはマッサージルームなんかもあるとか。
ここにはサウナもあるし、艦娘用のマッサージチェアもあるし、アイスの自販機もあるしと、結構予算が潤沢でありますなあ。一応人間も利用できるよう、分湯も出来てるみたいでありますな。人間の職員がどれくらいいるかは知らんでありますが。
脱衣所で手早く服を脱ぎ、いざ浴場へ。艦娘はあんまり新陳代謝で体が汚れる事は少ないのでありますけど、風呂は命の洗濯、ここは一つ心に溜まったストレスやら何やらを洗い流していきたいところ。
浴場への扉を開くと、もわっともれ出る湯気。うーん、いいでありますな。この雰囲気。しかも丁度誰もいないようで、貸しきり気分まで味わえるであります。
比叡殿と島風殿と三人、手早く身体を洗っていくであります。
一応女子の身ともなれば色々気を遣うべきなのでありましょうが、こちとら陸軍でしごかれた身。手早く無駄なくが叩き込まれているのであります。
まあ、そうでなくても艦娘って素体がそもそも人間より優れていて全然汚れないし、汚れても落ちやすいし、下手すると水浴びだけでも一般的な人間よりよっぽど清潔に保てるんでありますよね。
明石殿? あれは知らんであります。
そこらへんは海軍所属の艦娘であるお二方も同じようで、せいぜい島風殿の長い髪を、比叡殿がわしゃわしゃ丁寧に泡立てるのに時間がかかるくらいでありますな。
うーん、色気も何もない。
さあ、泡も流し終え、いざ浴槽へ。
人間用の普通の浴槽と、艦娘用の修復浴槽に分かれているので、間違えないよう注意であります。
鎮守府によって泉質とか違うので、楽しみでありますなあ。
あきつ丸であります。
比叡殿と島風殿と、やってきました大浴場。そしてざばーふ。かけ湯して浴槽に足を踏み入れ、ゆっくりと肩までつかるであります。
「あ゛ぁ゛ー………」
「んっ………ふぅ……」
二人して魂まで抜けそうなほど心地よさ気に声を漏らす比叡殿と島風殿。
環境変化に強い艦娘も、温かい湯につかればこのように、心地よさにすっかり身体もリラックスするのであります。そして勿論自分も………ふぃー………。
とはいえ、普通の人間が入ると大変危険なので、そこらへんは注意であります。
艦娘用の入渠ドックであるこの浴槽。中になみなみ満たされているぬるりと白濁したこのお湯は、実はただの湯ではないのであります。艦娘の素体の自己治癒能力を高め、見る見る怪我を治してしまう実に気持ちの悪い修復剤なのであります、これ。
正確には贋湯花擬(ニセユノハナモドキ)を混ぜ込んだお湯で、このニセユノハナモドキが艦娘細胞を励起状態にし、速やかなる自己修復をさせしめ、また毒素や疲労物質を食べてしまうことで細胞を癒し、更には熱量を与えて活力まで分けてくれるのであります。
理論上、ニセユノハナモドキ溶液だけで生きていくことも可能なほどの素晴らしく不思議なお湯なのでありますよ、これ。
さて、このニセユノハナモドキ。名前のとおり、ユノハナモドキの亜種と言うか、ユノハナモドキを参考に合成された合成蟲なのであります。これも海軍、より正確には宮内庁の発明なのであります。
ユノハナモドキは名前のとおり、温泉地などに生息する蟲で、皮膚から浸透したり、湯気と共に吸い込んだりされると、活力がみなぎる良い効能があるのであります。日頃から飲泉などして活力を保つ人々もいるのだとか。
ユノハナモドキはある程度までは汗や尿と共に排出されるのでありますが、この自然排出量を摂取量が上回ってしまうと、どんどん熱が高まり、下がらなくなってしまうのであります。用量用法、入浴法はよくよく守っていただきたい。
ニセユノハナモドキはこれを参考にして宮付の蟲師が長年かけて改良したもので、艦霊とも相性がよく、広く鎮守府で使われているのであります。ただ、人間には少々効果がありすぎるので、薄めるなり控えるなり、こちらもご注意を。
さて、ニセユノハナモドキはいまやいくつかの種類が存在し、鎮守府ごとに違う効能が楽しめるのであります。これはニセユノハナモドキが繁殖過程でどのような泉質で育ったかが、後々好みとする泉質を決定し、また強化される効能に著しい変化を及ぼす習性を利用したもので、
え、長い。こりゃまた失礼。
まあそんなわけで、入渠ドックは艦娘にとって、全身の細胞と言う細胞を癒してくれるこれ以上ないリラックスできる場なのでありますよ。怪我をしてなくても利用できるのは、このリラックス効果や疲労回復効果が認められているからなのでありますなあ。
何時からか流行している艦娘流の入浴法として、珈琲をたしなみながら入浴もいいでありますが、零すといけないのできちんと事前に許可を取るか、珈琲可のマークがないかきちんと探す事、これ大事。
あきつ丸であります。
ニセユノハナモドキについての薀蓄はお求めではない?
結構。残念であります。
なお、壁に掲げられていた温泉分析書によれば、余り硫黄臭くはないでありますが硫黄泉の一種のようでありますな。皮膚病や婦人病の他、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、また切り傷にも良いらしいでありますな。美肌効果もあるとのことで、風呂上りが楽しみであります。
まあ、それは人間用の表示で、艦娘用の方には、裂傷創傷骨折火傷、四肢切断、内臓破裂、戦意高揚になどと書いてあったので見なかったフリであります。なんで最前線ばりの仕様なんでありますかこれ。
まあ普通につかってる分には気持ちが良いだけでありますし、気にしないのが一番でありますな。ここ最近、というかこの鎮守府に来てから、濃いイベント続きでありましたからなあ。実はいま、まだここに来てから二日目の晩飯前なんでありますよ。二日目て。
もうすっかりくたびれたでありますよ。くったり脱力して、この心地よさに身を任せるのであります………などと極楽気分でいたら、横から視線が。
「あきつ丸ってさ」
なんでありますか島風殿、そのねっとりした視線は。
「…………大きいよね」
「………くっ……大きい」
比叡殿まで何を悔しそうに……。
まあ、確かに自分の胸は平均より少し大き目かもしれないでありますな。比叡殿みたいに胸筋で盛ってるわけでもなし、完全に自前のバストであります。でもなあ。
これ、駱駝の瘤みたいなもんでありまして。
「どういうこと?」
安定してエネルギー摂取できるときはこうして脂肪の形で蓄えて、長期間の任務に備える構造になってるのでありますよ。
中東の『混迷海域』を彷徨ってた頃は、最後の方完全にぺったんこだったでありますからなあ。そんな実用性一点張りみたいな乳に、もはや何の感慨も抱けんのであります。
「それでも―――おっぱいはおっぱいだもん。全ておっぱいに貴賎の差はないもん」
なにいい事言ったみたいな面してるんでありますかこのバカ。
「くっそう………摂取した端から筋肉の維持に回されてるから……ッ!」
あとそこ本気で悔しがらないように。なんかオーラ漏れてるでありますから。
むぎゅむぎゅと乳にまとわりついてお゛っお゛っとアザラシめいた声を上げる島風殿と、悔しそうにそれを身ながら豊胸運動をする比叡殿。その運動、胸筋が発達するだけで脂肪組織は増えないであります、とはさすがに面と向かってはいえなかったのでありました。
あきつ丸であります。
風呂でゆっくりしたので、生き返ったようになったであります。
思えば遠くへ来たものであります……とと、風呂でこの台詞は長メッセージが表示されかねないであります。
自分の腕のしびれも取れ、島風殿の骨折も無事治ったので、そろそろ上がるでありますか。
しっかし、何度見てもこの勝手に骨接いでみちみち音立てて治ってくの気持ち悪いでありますなあ。
ニセユノハナモドキが作用する際に、細胞記憶から元の形に再現しようとする働きがあるとか何とか眉唾臭い理由があるそうでありますが、何にせよ勝手に骨接ぎがされるので、あんまり骨がずれてたり、複雑骨折だったりするとある程度整えてからでないと滅茶苦茶痛いであります。
最前線がヘビーローテーション組んで出撃してるときなんか、ニセユノハナモドキの摂食分解が間に合わず、傷だらけの艦娘たちが呻き声と唸り声と喘ぎ声を上げながら、血で濁った湯の中に犇めいていると言うアビ・インフェルノめいた光景がチャメシ・インシデントであります。
あんまり酷い怪我で芋を洗うが如く密着してると、ニセユノハナモドキが誤って傷口同士を癒着させてしまい、団子状態になりかねないので、どんなに気を失いそうでも互いに距離に気をつけるのがマナーであります。
更に同面積で一度の入渠者数を稼ぐため、深さを取って直立姿勢での入浴をさせる鎮守府もあり、激痛と失血から意識を失いかけつつも、溺れ死なないよう必死で吊革に掴まる艦娘達の姿は、一層のインフェルノ・ジゴク・アトモスフィアを感じさせるであります。
まあ予算と備蓄のあるところは、帰投した艦娘のうち大破したものだけに高速修復剤をぶち込み、数秒で身体を再構築される激痛に絶叫する艦娘に『アイス』を捻じ込んで強制的に戦意を高揚させ戦線に放り出すと言う暗黒っぷりであります。
因みに高速修復剤とアイスも宮内庁の蟲師が、ああ、はいはい、今出るでありますよー、島風殿ー。おっそーいじゃねえぞこちとらてめえの骨折治るまで待ってたんでありますからなー。
あきつ丸であります。
皆さん、風呂上りといえばなんでありますか。
牛乳。コーヒー牛乳。フルーツ牛乳。いいでありますなあ。
しかし風呂上りに冷えた飲み物は、実は消化器官が全然吸収できず、むくみとかの原因になったりするので、人間の皆様はご注意を。まあ人間と言うのは効率と嗜好であれば嗜好を重視する生き物でありますけどね。効率重視って人は単に効率が嗜好ってだけであります。
艦娘に人気なのはそう、風呂上りの内臓に優しい常温の、軽油であります。
あとはガソリンとか、灯油とか艦娘用精製燃料。工業用アルコールも人気であります。
重油はちょっと粘つくし重いかなー、とそんなに人気はないであります。
いやー、ほんともう馬鹿じゃねえのこんなの置いてある自販機って。というかもはや自販機じゃねえでありますよ。ガソリン・スタンドでありますよこれ。そりゃ喫煙スペースの換気機能が滅茶苦茶いいわけでありますよ。気化爆弾がお手軽に自然発生しちゃうでありますよ。
毎度毎度どの鎮守府行っても見かけるこの燃料自販機って概念だけは理解できねーであります。自分が好んで燃料飲むような生活習慣のない環境で育ったせいなのであって、艦娘たちには自然だし、嬉しいことなのは確かみたいでありますけど、マジ理解できんであります。
イギリス人の半分が好んで半分が厭うマーマイトをはじめて喰ったときと同じ気分にさせられるであります。自分食べ物で好き嫌いってあんまりないでありますけど、あんまり好きじゃないであります、あれ。慣れればいけるかもでありますが……。
幸いにも今回は燃料一気を無理強いしてくるメンバーではなかったので助かったであります。比叡殿はドリンクタイプのカ□リーメイト(ココア味)。島風殿は安定のバリキ・ドリンクであります。
自分はホットの缶珈琲であります。暖かい方が内臓への負担も少ないでありますし、何より風呂と珈琲の組み合わせは昔から艦娘の間では好まれているのであります。何でも『境界』の向こうから来たよくわからん丸っこい生物からの伝来だとか。もくせいさんだとかかせいさんだとか。
因みに島風殿は風呂の中では自分の乳にくっついていたでありますが、風呂上がってからは定位置の比叡殿の膝の上でバリキを啜っております。比叡殿はご満悦でありますが、それ背凭れにするには平坦な胸の方がいいってだけでは……。
さーて。ゆっくり身体も休めて心もリフレッシュ。時間もいい感じにつぶせて晩飯時でありますけど、金剛殿に貰ったスコーンでちょっと腹も膨れて、まだそんなに空腹じゃないのでありますよなあ。
どうしたものかとぼんやりコーヒーを啜る中、扇風機を前に宇宙人ジョーンズごっこに戯れる島風殿と、それを微笑ましげに眺めながらスチール缶をパチンコ玉みたいに丸めて遊んでるであります。なんか色々感覚が麻痺してきたのか何が可笑しいかわからなくなってきたでありますな。
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Tips.
>小ネタ
・・バリキドリンク
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)に登場するドリンク剤。ヨロシサン製薬なる製薬会社の代表的な商品で興奮・覚醒作用がある。
・ズバリガム
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)において、ヨロシサン製薬なる製薬会社が製造する薬品、「ズバリ・アドレナリン」を配合したガム。精神安定系の薬剤。
・マックス・コーヒー
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)には登場しない。
はコカ・コーライーストジャパンプロダクツ等が製造するコーヒー飲料。糖分量が9.8%つまりほぼ一割が糖分で、コーラとほぼ同じ。原材料表記においても練乳と砂糖の方がコーヒーより先に来ている。
・ヨーカン
羊羹。ヨーカン表記だと「ニンジャスレイヤー」に出てきそうだが、我々の知る甘味としてのヨーカンそのものが出てきたことはなかったと記憶している。糖分が高く真空パックの物が多い為、常温で一年以上保管が可能と非常食としても有用である。
・緑色の粘液
不明。
・異世界チートアイテム
大抵はファンタジー世界に銃器や現代知識などを持ち込んで無双するパターンが多いが、魔法やファンタジー技術が現代社会に紛れ込んだ場合も、同等かそれ以上の混乱を招くだろう。
・シャカリキ・タブレット
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)に登場する違法薬物とされる。清涼感と高揚感を与え、恐怖を取り除く。当然、他の薬剤と併用して大丈夫な成分ではないだろう。
・ゾンビ映画に特殊メイク無しで出れる面
全然関係ないが、「猿の惑星」には特殊メイクなしで出れるようなエキストラもいたとかいう都市伝説を聞いたことがある。
・アッハイ。
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)に頻出する、咄嗟の返答。
・メートル下げます
「戯言シリーズ」(西尾維新)にて狂言回し「いーちゃん」がテンションの上がった「玖渚友」を宥めるために用いた表現。
・ただし時間兵装、てめーは駄目だ
「ボボボーボ・ボーボボ」(澤井啓夫)のボーボボの台詞「ただしつけもの、テメーはダメだ」から。
・目の前で研究所が大爆発
もしかして最終兵器吹雪の研究所なのか、というご質問がありましたが、別のマッドのところです。技術が氾濫した世界なので、マッドも腐るほどいます。
・懐中汁粉
餡子・片栗粉などを乾燥させて最中の中に閉じ込めたもの。脆い最中なので、懐中とつくように携帯できるかどうかは微妙。椀などに入れて熱湯を注ぐと汁粉になる。
「大砲とスタンプ」(速水螺旋人)の登場人物マルチナ・M・マヤコフスカヤ少尉の好物。
・担当の技術者も引き抜いてこいよ
明石の憤りももっともだが、特化型艦娘を製造できる技術者となるとその分野の神と言ってもいいハイエンドなので、勿論どこも手放さなかった。もしくは放置できないので既に『引退』して頂いているケースも。
・アーイイ……遥かに良い
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)で使用される表現。主に薬物などが回って気分がよくなってきた時に用いられる。
・長虫の這い回る混濁した幻覚
アルコール中毒者は蛇などの幻覚を見るという。
・ニセユノハナモドキ
「蟲師 外譚集」(原作:漆原友紀。漫画:芦奈野ひとし、今井哲也、熊倉隆敏、豊田徹也、吉田基已)の一篇、「滾る湯」(吉田基已)に登場する「蟲」のひとつであるユノハナモドキが元。
この世界には「蟲」が存在し、「蟲師」が職業として存在するようだ。
・珈琲をたしなみながら入浴
「MOTHER2」(任天堂)に登場する種族「どせいさん」は温泉で珈琲を飲む習性がある。
・思えば遠くへ来たものであります
「MOTHER2」(任天堂)でサターンバレーなるどせいさんの住む土地で温泉に入ると、「思えば遠く来たものだ。」から始まる長メッセージが流れる。
・アビ・インフェルノ
「ニンジャスレイヤー」において阿鼻叫喚の地獄絵図をさして言う言葉。アビ・インフェルノ・ジゴクとも。
・チャメシ・インシデント
「ニンジャスレイヤー」における「日常茶飯事」のこと。
・アトモスフィア
「ニンジャスレイヤー」で多用される表現。空気、雰囲気など。
・『アイス』
間宮などとも呼称される戦意高揚剤。
・燃料自販機
艦娘にとってはごく普通の存在だが、あきつ丸はどうも感覚的に馴染め無いようだ。
・マーマイト
リアル合成食品。ビールを醸造する際に底に沈殿する酵母、所謂ビールの酒粕をもとに作られる食品。独特の臭気がありイギリスでも好みがわかれる。
・もくせいさんだとかかせいさん
上述の温泉で珈琲を飲む習性のある生き物。でごじます。
・宇宙人ジョーンズごっこ
サントリー缶コーヒーBOSSレインボーマウンテンのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」に出演する宇宙人を演じるトミー・リー・ジョーンズの物真似。別にワレワレハウチュウジンダとかはやらない。