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本文は皇国陸軍秘匿第██工廠被験体「███████」よりサルベージされた文字媒体情報群を再構築した文章です。
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[◆◇◆◇◆]
着任二日目、深夜。██████泊地第██司令部提督執務室。
報告に出向いた自分を出迎えたのは、錚々たる面子でありました。
重厚なアンティークのデスクの上に鎮座しているのは、のっぺりと白く塗られた金属の匣。その中には綺麗な娘がぴったり入っているであります。色素の抜けた白い髪に、血色の透ける頬。瞳ばかりが嫌に強い光を宿している。この鎮守府の最高責任者、通称『匣入り提督』であります。
その傍で胡乱げにこちらを見据えているのが秘書艦の叢雲殿。練度はかなり高いようで、デスク越しの距離とはいえ、下手すると瞬きの一瞬で、長物で切り付けられかねない危険な腕前であります。
入り口傍の帽子掛けに場違いな麦藁帽が掛けてあると思えば、応接用の物らしい高級そうなソファに浅く腰掛けているのは大淀殿。紙ばさみに挟んだ書類を繰る手つきはまさしくできる女。眼鏡をかけているときは大人しい大淀殿だとか。
で、応接テーブルを挟んで反対側。実に柔らかそうな長ソファに我が物顔で二メートル半の巨体を横たわらせ、飄々とした態度で雑誌をめくりながら缶珈琲を啜る武蔵殿。一人だけ宿直室で休憩してるおっさんの風情を漂わせているでありますがなんだこいつ。
「さて、さて、さて。まずはお疲れ様。連絡のつかなくなっていた商業地区の暴力装置『アイズ』の捕捉。無事とは言えないけど成し遂げてくれたようだね。君も疲れてるだろうし、ゆっくり休んで報告書をまとめてからとも思ったんだけど、そうもいかなくてね」
悪戯っぽく笑いながら、そう切り出す提督殿。相変わらず何を考えているかよくわからん御仁でありますなあ。表情は大きく、感情はフラットに感じられる。とはいえ心理学は専攻じゃねーので何とも言えんでありますけど。
「正直なところ言っちゃうと、君が無事に戻ってくるとは思ってなくてね」
正直すぎね?
「悪ければ殺されて解されて並べられて揃えられて晒されている頃だと思ってたんだけどね。いやあ、叢雲も心配してたんだけどねー」
「してない」
「所がどっこい、生きて帰ってくるどころかまさか『アイズ』を返り討ちにしちゃうとはねー。君の性能試験位の心算だったんだけど、とんだ大番狂わせだよ。『アイズ』はあれで弱い艦娘じゃあない。暗殺に徹すれば今まで負けなし。正面からやり合っても、初見の相手ならまずあの異常個体には対応しきれない。筈だったんだけどね。しかも君の方は自分で歩いて帰ってこれる程度のダメージしかない。そりゃ、アイズはあくまで総合的には弱くない程度の部類だ。それにアサシン。正面切ってやりゃうちの艦娘でも対応できる奴は多いさ。そこでだらけてる武蔵だってね。でも」
きょろりと強い瞳がこちらを見据える。
「でもまさか初見の揚陸艦が圧倒するとは思わなかったよ。今まで来たスパイ・シリーズより優秀じゃあないか。ちょっと優秀すぎるんじゃないかってくらい」
ん。んん。なんかちょっと提督殿の眼力が強かったり、叢雲殿の視線がきつかったり、大淀殿が我関せずだったり、武蔵殿が……まあ、武蔵殿は完全に我が道を行ってるでありますけど。とにかくちょっとピリついているのは、警戒させてしまったからでありますかね。
さって、どうするべ。人間工具仕込みのスーパーウルトラサンボマンボマーシャルアーツで楽勝でありましたよとか、既に手傷を負っているところを見つけたのでなんとかとか、適当言っちまうでありますかね。
「言っとくけど」
じとっとした目でにらみながら、叢雲殿。
「あんたが『アイズ』を見つけたっていうか、『アイズ』があんたを捕捉したのよ。不本意ながら、そいつの手引きで」
「おいおい、私は命令に従っただけの中間管理職だぜ?」
「『混じり物』は黙ってなさいよ、武蔵。秘書艦通さずにこんなお膳立てまでして、私がご機嫌だと思ったかしら?」
「おお、怖い怖い」
不機嫌そうに鼻を鳴らす叢雲殿。
「あんたは終始こいつらの掌の上だったって訳。下らない嘘で誤魔化そうたって無駄よ」
フムン。
叢雲殿って意外といい人なんでありますか?
「はアッ!?」
いや、わざわざ嘘ついて心象悪くすんなって助言までくれるでありますし。などと言ったら睨まれたであります。
「まあ、まあ、まあ、叢雲に勝手で手引きしたのは御免ね。まあしたのは武蔵だけど」
「実行犯に全て擦り付けようとするなよ提督。それに私は嘘はついてないぜ」
最初から最後まで大嘘だったと思うでありますけど。
「失敬な奴だ。定期連絡が来なくなって心配なので見つけてきてくれと言っただろう。嘘は言ってない。ただ、定期連絡が来ないのはいつもの事だということを黙っていただけだ」
でも手引きはしたんでありますよね。
「ああ、したさ。言ってなかったが、してないとも言ってない」
全く悪びれる様子もなく寝返りを打つ武蔵殿。まったく、施設管理より広報がお似合いでは。
「まあ、何にせよこの場での虚偽報告は命取りになるからそのつもりで」
さらりと言ってくれるでありますなあ。
「それにほら、どっちにしろ『アイズ』が治ったらそっちからも話聞くからね、精々矛盾が出ない程度には真実を語ってちょうだいな」
「しかし、『アイズ』を生け捕りにするとは恐れ入ったよ。あれは狂犬もいいところの道理知らず。殺しでもしないと止まらない勢いだったから、随分手を焼いていたんだけど。最初から殺す気でやればもっと楽だったと思うんだけど、なかなか人情家なのかな君は」
別に人情とかそういうのじゃないでありますしー。ただ一応要人みたいでありますから殺したらあとが面倒になるかと思っただけでありますしー。別にそういうのじゃ全然ないでありますしー。
「あ、そう。まあ別にどうでもいいんだけど。ただねー、問題があってねー。大淀」
「はい、提督」
手元の書類を捲りながらも、できる女ボイスの返事。叢雲殿より余程秘書艦が合っているのでは? あ、睨まれた。
「これを」
手渡されたのはえーと、カルテでありますかね。あ、艦娘のカルテか。なになに。右手が粉砕骨折及び特殊臓器破裂。左前腕部が複合骨折及び特殊臓器破裂。鼻骨が第二度骨折。全身に激しい疲労。神経系に不明の汚染痕跡。その他裂傷打撲のオンパレード。こりゃ酷い。
あ、不知火殿のカルテか。こっちがぶん殴ったのは二発だけなんでありますけど、艦隊相手にすることを前提に設計されたもんで駆逐艦ぶん殴ったらこうなるでありますよなあ。というかよくこれくらいで済ませられたもんでありますよ、自分。
で、これが何か?
「下に明石の所見が書いてありますので」
どれどれ。見てみると、なんだか読むだけでSAN値を削られそうな怨讐に満ちた、血が滲んだ様な文字で何やら書かれているであります。
えーと……陽炎型特殊生体兵装は技術難度から現在交換用の医療農作物の合成が不可能であり、また毒腺の再生事故が懸念されるため高速修復剤の使用ができません。
応急処置は的確で、命に別状はありませんが、毒腺類に関しては手つかずであり、工廠としても対処のしようがありません。
よってニセユノハナモドキ溶液による細胞記憶を基にした再生に頼らざるを得ません。
そのため入渠時間が…………にじゅうよじかん?
「はい、24時間。丸一日です」
粉砕骨折が24時間で治るなんてスゲー、と人間ならばそう思うかもしれないであります。しかし患者は艦娘であります。修復剤ぶちこみゃすぐ出撃できる兵器であります。24時間なんてのは戦艦だの航空母艦だのがたたき出す数字であって、間違っても駆逐艦の出す数字ではない。
「もともと里見製薬の生体兵装は特許技術であるだけでなく、基礎の技術力が高すぎてね。専門のスタッフが専門の施設で治療しないととてもじゃないけど易々とは治せなくてね。流石にうちも里見のスタッフは引き抜けてないんだ。明石も君を呪いながらバリキ・ドリンクをお供に頑張ってくれたんだけど、まあ、うん、通常入渠での治療しかない、ということになってね。まったく手荒い真似をするからだよ。女の子の顔面潰すかい、普通?」
その女の子に自分は中身を晒されそうになったんでありますけど。まあいい。
しかし24時間の入渠とは、相当な長さであります。精々中破位と思ってたでありますけど、特化した個体はこういう問題もあるのでありますよなあ。
「さて、さて、さて、問題ってのはそれでね。要するに『アイズ』は24時間動けないんだよ」
はあ、それは聞いたでありますけど。
「でも今は居住区の勢力争いがちょっと加熱してる。ところが牽制に出ていた『アイズ』が中途退場。残りの勢力もそれに気づかないほど馬鹿じゃあない」
あらやだ嫌な予感。
「そういやそうな顔するない。嬉しくなるじゃあないか。君も察したところだろうけれど、察したくなかったところだろうけれど、お察しの通りだよ」
「要はあんたに、『アイズ』が復帰するまでの24時間、『アイズ』の名代を務めろってこと」
「まあ別に『アイズ』のやってた見せしめをやれって訳じゃないよ。一日の間、居住区が平穏無事に保てればいいってだけ」
「あんたも簡単に言うんじゃないの」
呆れたような叢雲殿と、飄々とした提督殿。
えー、つまり、なんでありますか。
レクター博士の真似事みたいな死体芸術を見せしめに脅して抑制していた連中を、自分一人でどうにかしろと。
「まー、そんなに気負わなくて大丈夫だよ。たった一日だって。幾ら何でもそんな急に事態が」
prrrrrrr!
提督殿の言葉を遮るように着信! 秘書艦の叢雲殿が素早く受話器を取る。
「こちら提督執務室、秘書艦叢雲よ。……ええ。…………そう、ええ、わかったわ」
かちゃりと丁寧に受話器を戻す叢雲殿。手元にあったペットボトルのミネラルウォーターを一口。
「イクサスの現取締役で文月教徒の司祭が死んだわ。多分ムツリムMNB過激派か、瑞雲教、ぽいぽい教辺りが臭いわね。キャピック工業組合の方では一部区画を閉鎖。でも区画の電力消費量は倍増。大方隠れて新兵器の準備でしょうね」
「…………だーいじょうぶ。たった一日だってー。幾ら何でもそんな急に事態が変わらないって」
ヘーイ提督殿ー、幾ら何でもそのままゴリ押しはないと思うでありますよー。
「仕方ないじゃない。どうせ君に拒否権はないし」
ぐへぇ。
「『アイズ』をばっきばきに圧し折ったのが君なら、その責任とって君がなんとかするべきだよねーあきつ丸」
いや、生死問わずで殺人鬼送り込んできた鬼畜提督殿にそういうこと言われても。
第一そういうことは、客分の自分ではなく専門の戦闘向きの艦娘を配備した方が実害も少ないのではないかと愚考するわけで、
「君客分じゃなくて研修生。建前でも研修生な以上、これも建前上研修ってことで」
研修先がブラックすぎる件。
「まあ別に断ってもいいけど、その場合、居住区で生活している何の罪もなくはないけれど、理不尽で不条理であんまりにも惨たらしい未来を待ち受けることになる住民たちがいるってことをお忘れなく」
あんたもう少し提督業らしい発言しましょうよ。
「艦をその気にさせて荒海に送り出すのが提督の仕事。気分よく仕事したいならこの位のセールストークで済んでるうちに決めてよ」
精神によろしくないセールストークですこと。
まあ、何のかんのと言っても、結局のところとどのつまり、自分には選択権も拒否権もないのでありますから、是非もなし。
着任二日目――もとい三日目マルマルマルマル。研修艦娘あきつ丸、謹んで研修任務を拝命いたしますでありますよコン畜生。
着任三日目〇五〇〇。今朝の珈琲は自販機で購入した缶珈琲。これだけでもう一日のやる気全てが失われていくのを感じるであります。そもそも居住区に関する事前調査したり装備の調整したりなんだりで一睡もしてねーので最初からやる気なんざねーであります。
現在地は居住区へ繋がるゲート前。元からやる気がない上に朝早いこともあって、適当にテレビをザッピングしていた駆逐艦娘に通行証を見せながら挨拶。慣れてきたのかちらりと顔をあげてぞんざいに挨拶を返し、テレビに視線を戻し、そして勢いよく二度見する警備の駆逐艦娘。
「え、なんですかそれ……」
「不審でありますかね」
「不審、です」
「じゃあ、止めるであります?」
「えー……明日から本気出す」
至極スムーズに受付を済ませ、ゲートをくぐると、早朝の冷たい空気。又もやる気減少であります。これは早々にどこかで朝飯でも腹に入れて、活力を得なければならんであります。人と会う約束もあることだし、さっと詰め込めるものがベター。歩きながら食べられるものでも。
振り向けば、並び立つ金剛力士像よろしくゲートの左右に仁王立ちした重武装型の扶桑型姉妹。こちらの装いに胡乱げな眼つきながら、早朝にも関わらず職務に忠実に、ネギトロ製造機こと連装機関砲がこちらをロック。あ、でももそもそ惣菜パン食べながらであります。朝飯か。
速やかに閉じた扉には「関係者以外の立ち入りを禁じます」という丁寧な明朝体。そして命知らずの猛者どもをさえ威圧する筆文字で「コロス」のルビ。そして全身の皮膚を丁寧かつ綺麗に破れなく引きはがされ、裏返しに被された上で逆さづりにされた確定黒潮モデルの艦娘(死)。
『アイズ』不知火殿がダウンして、取り替える人がいなくなったのでありますなー。扉の上部にはご存じロダンの考える男。テーマは「無思慮は罪」。全ての希望を捨てよ。どの鎮守府でも公開処刑や拷問時に掲げられる典型的マスコットであります。
うーん、すっかり見慣れたこの光景。大分毒されてきたでありますなあ。まあ酷いところはもっと酷いでありますから、住民の大半が死刑囚・超長期懲役囚で構成されているという謳い文句としては平和な方でありますよ。支那系は過剰人口を鎮守府で解決しようとしてるでありますし。
さーて、とりあえず飯であります、朝飯。『アイズ』代行をしている間の必要経費は落ちるとのことでありましたから、経費でがっつり食ってやるであります。
どうせこれを逃したらその後ろくなことなんてありゃしないんでありますから……。
着任三日目。〇五一〇。
あきつ丸であります。ゲート前の広場を離れ、商業地区へ。まだ早朝ながら、活気のある雰囲気であります。縦に横に積み重ねられた建築物に、それを三次元的に結ぶ通路。細かい路地に入ると迷子になってしまうので、大通りを選択。
通りはすっかり商売を始めていて、アイズの小旗を掲げた店々が、賑々しく声を掛け合って客引きしているであります。時間が時間なだけに、朝飯用にか色々と出店が出ていていいでありますなあ。甘い匂い、香ばしい匂い、んー、たまらん。
ケバブに、ホッドドッグ、中華風の粥の屋台に、クレープ・シュクレ、クレープ・サレ、蕎麦に饂飩にラーメン、鉄板ナポリタン、寿司、天ぷら、おでん、焼き鳥、ベーグル、パッタイやらサテやら、タコスやらあげバナナやら、ホビロンまである。いやぁ、何でもござれ。
お、あの店、もう暖簾出してるでありますけど、でもどう見ても居酒屋。表に出したメニューをさっと見てみたけれども、どう見ても酒のアテ。ちらっと覗いてみれば、うーん、どうも、確かにみんな呑んでる。こんな朝から飲んでるのか、こんな朝まで飲んでるのか……。
昨夜はクソ疲れた上に、結局仮眠もとれず疲れが取れてない。体力回復にはまずスシでありますから、適当な屋台でスシなり、スシ・ソバなりでも入れていくのもいいでありますな。ここは鎮守府でありますし、安くオーガニック・スシが食べられるのもベネ。
でも折角連れを気にせず歩き回れるので、何か歩きながら食べられるようなものがいいでありますなあ。誰かと食べ歩くのも楽しいでありますが、一人でないとできない楽しみ方というのもあるのでありますよね。
取り合えずといった感じで、通りがかったピサンゴレンの屋台で一袋購入。ぎょっとする店員にトークンを渡し、早速ひとつ。ピサンゴレンというのは揚げバナナの事で、普段皆さんが食べているバナナより大分青い未熟なバナナに衣をつけて揚げたものであります。
店によって衣が違ったり油が違ったり温度が違ったり揚げ時間が違ったりバナナが違ったりそもそもバナナじゃなかったりして味が大分違うので、いろんな店を食べ比べできるのが面白い、インドネシアやマレーシア、ブルネイ泊地などの名物であります。
安物の合成バナナを使っているようでありますが、ほふほふ、揚げたての揚げバナナ、悪くない。うん。全然不味くない。寧ろうまい。これ美味いでありますよ。衣はふわふわもちもちしていて、中のバナナは程よく加熱されてトロッと柔らかく、まるで上質のカスタードクリーム。
元が青いバナナだからか、甘さもくどすぎず、次々食べられてしまうであります。大抵揚げバナナの屋台って昼から出てるイメージなので、朝からって新鮮。他の屋台で購入した竜眼水とやらをちびちびやりながら、揚げバナナをぱくついて屋台を冷やかしていくであります。
この竜眼水ってのは、うーん、なんでありますかな。よくわからん味であります。ライチっぽいというか、それよりちょっと薄いというか。シロップと、何か色々入ってるみたいでありますけど、なんでありますかね。不味くないけど、何者かわからない感じであります。
まだ待ち合わせまでは少し時間がありますし、ゆっくり楽しんでいくでありますかね。
着任三日目。〇五三〇。
あきつ丸であります。うーん。朝から賑やかな商業地区では、実に様々な屋台が楽しめていいであります。行く先々で色々購入してしまって、誘惑の恐ろしさに沈みかけているであります。
ホットドッグとはしまきにケバブサンドにタコス、揚げ春巻き、リンゴ飴、ベーグル、茹でトウモロコシにポテトフライにクレープ・サレ。ワッフルに揚げチーズ。バターフライはさすがにくどいでありますなあ。
ゼリーフライを最後に、腹八分目で止めとくであります。あんまり食べ過ぎて動けなくなったら困るでありますからな。さーて、そろそろ待ち合わせ場所に向かいたいところなのでありますが、ちょっとこの先道が複雑で分かりにくいのでありますよね。
一応アプリを起動させて地図を頼りにルートを決めてはいるのでありますが、もともと大分路地が入り組んでいることもあって、先程から行ったり来たりであります。まだ時間に余裕はあるとたかをくくっていたでありますが、ちょっとまずいでありますかね……。
そんなこんなで迷っていると、
「オネサン、オネサン、アーミーのアキツマルサン、違うアルか?」
と、なにやら片言で話しかけられたであります。
見下ろせば、子供、であります。
北欧系なのでありますかね、銀髪に白い肌の子供で、今まで通りで見てきた子供よりちょっと質のいい服を着てるであります。
まあ陸軍のあきつ丸さんで間違いねーでありますけど、なんでわかったんでありますかね。
「お話聞てるヨー、チョローのトコ、カンムス来るテ。そんな変なカッコしてるの、間違いないアルヨー」
そういって指さす少女に、それもそうかと納得であります。
自分、今日は『アイズ』の名代。今まで公に姿をさらさずに仕事してきた『アイズ』の代わりをするといっても、流石に姿を見せなくては説得力がない。
そこで今回被せられたのが、少女の指差す仮面なのでありました。
白いのっぺりとした面に、『アイズ』のマーク、広げた掌に見開かれた眼という悪趣味なデザイン。Eye have youとかなんとか。
そりゃあ不審者丸出しでありますし、屋台の人に見ビビられるわちょっとおまけしてもらったりするわけでありますよ。悪目立ちもいいところでありますが、まあ今日は目立つのが仕事であります。『アイズ』が倒れた翌日に現れる別の『アイズ』。牽制であります。
「ワタシ、アナタの案内ネ。チョローのとこ連れてくアル。ついてくるヨロシ」
そういって袖を引く少女。フムン。まあ怪しんでも仕方ないでありますし、ここは素直に連れて行ってもらうでありますか。
挨拶代わりに袋に残ったゼリーフライを取り出して、
「お嬢ちゃん、食べるでありますか?」
「食べる! ワタシ知てるアル! コーユーノ事案言うアルネ!」
いい笑顔で。
着任三日目。〇五五〇。
あきつ丸であります。ゼリーフライをお供に現地の少女に案内されてよくわからない路地を進むこと二〇分。帰り道がちょっと怪しくなってきた頃、ようやく目的地に到着であります。
計画無き計画、混沌とした秩序の中に食い込むように、或いは塗りたくられる無秩序に上書きされることなく佇み続けた様な、周囲と隔絶した古い建物でありました。強化コンクリート製の年経たビルディング。
様式はメガフロート時代初期から中期の物でありますかな。まだ『海域』内での建築が一般的でなく、内地で建造したメガフロートが自力航行して目的の『海域』へと移動していた頃の、揺れや敵襲に備えた頑丈な様式。のっぺりとした豆腐のような作りで、窓は船舶用の物に似た丸窓。
この手のビルディングは成型ビルと呼ばれて、企画された型を設置してコンクリを流し込むというお手軽製法で、頑丈さと建て易さ、直し易さを優先した量産ビルであります。形の融通は利かないものの隣接するビルとの連結などもしやすく、古い鎮守府だとまだ多く見られるタイプ。
また深海棲艦の攻撃を受けて壊滅し、再開発地域に指定されていた沿岸都市では、この成型ビルによって素早い復興が成し遂げられたところも多く、当時の街並みがそのまま残っている光景も珍しくはありませんな。
さて、ビルの正面に取り付けられたスチールの扉を開き、案内の少女に先導されて中へ。内装は支那風で、古い映画にでも出てきそうな雰囲気であります。照明は間接照明が多く、柔らかな明かりで照らされ暗く感じることはないものの、ちょくちょく死角があって怖いであります。
少女の先導に任せて廊下を進み、階段を上り、突き当りの部屋に入ると、出迎えたのは年季の入った円卓であります。見た感じ、これ天然物の樫材っぽいでありますな。飴色に年月が刻み込まれたこれ一卓で、自分の給料何年分でありますかねえ。
その円卓の向こう側。深海棲艦を穿つ艦娘の画を背にして座る三人の老人が、今回の待ち合わせ相手であります。
「やあ、待ちかねたよ」
「いらっしゃい、愛らしい化け物」
「まあお座りなさいな」
嗄れ、錆び、尚も生々しい老人たちの声。骨は縮み肉は弛み、もはや性別すら曖昧な痩せさらばえたこの三人の老人こそが、居住区最古の三人にして、商業地区を実際に取り纏めている顔役。所謂ところの長老であります。
一見何の害もない、容易く折れそうな枯れ木じみた老人でありますが、しかし、彼らは死刑囚・超長期懲役囚の坩堝であるこのアーセナル鎮守府居住区において、この年になるまで生き抜いてきて、なおかつ今も多大な影響力を持つ存在なのであります。油断はできますまい。
どちらが化け物だという言葉は抑えて、すすめられた席に着きましょうか。
それに続いて、気配も虚ろに物音も立てず、背後に立つ案内の少女。
……いや。
案内ではなく、監視でありましたか。
背後に感じるプレッシャーに、表面上は営業用の笑顔を崩さず、内心苦虫を噛み潰したような気分であります。油断していたわけではないでありますが……事ここに至るまでこの気配の濃さに気づかないとは。
「ご苦労、リー」
「急な仕事で悪かったわね」
「お駄賃は弾むよ」
「謝々、イツモご贔屓ドーモアルネ」
和やかに会話するこの怪物どもに囲まれて、さて、どこまで虚勢を張れるでありますかねえ。
着任三日目。〇六〇〇。
あきつ丸であります。前には頑丈な天然樫材の円卓越しに微笑む妖怪じみた長老三人衆。背後には正体不明の胡散臭い少女。うーん。たまには普通の会談がしたいであります。
背後に佇む少女……リーとか呼ばれてたでありますか。不知火殿の時みたいに最初から全力で警戒してた訳ではなかったから気付かなかった、という言い訳をさせて頂きたいところでありますが……まあ今回は殺気がなかったのも理由の一つでありますかね。
この少女が実に自然に実力を隠していたのはもちろんのこと、こちらに対して殺気も抱かなければ敵意さえも持っていなかったため、こちらに向けられる意図は、案内役であるという彼女の自称通りのものだと錯覚させられたのでありますな。
実際彼女は嘘はついていないでありますし、自分が油断していたという所に結局は落ち着くでありますけど。
しかし、リーという名前。その言葉の訛り具合。もしや支那系の勢力であるというシャアルゥジァ探偵社の人間なのでありますかね。敵に回すには恐ろしい、味方に回すにも悍ましい、血ではなく流血でつながる傭兵集団。とかなんとか。
「ピンポンアルヨ。ここ暫くはチョロー達の雇われアル。チョロー達は探偵社の使い方よく知てるカラ、お得意様ネ」
あっけらかんとしたものであります。守秘義務とかないんでありますかね。
まあ、ともあれお話といくでありますか。
『アイズ』の名代として残り十八時間、この居住区の安定を守るために。
「我々が君に求めることはそう多くない」
「そうそう、『アイズ』が戻るまで、それまでのことだもの」
「『アイズ』がそうであったように、遣り方も遣り口も、儂等は口を出さんよ」
老人たちはそう切り出したであります。
「君に求めるのは、『アイズ』が戻ってくるまでの安定だ」
「具体的にはキャピック工業組合とイクサスのやんちゃ坊主たちね」
「機を見計らっていたのか、我慢し切れなくなったのかは知らんがね」
「『アイズ』は公には正体不明だ。だがどの勢力も上層部の連中には割れている」
「というより、正確には割ったのだけどね、私らが」
「姿の見えない恐怖は時として侮られる。目に見える脅威が必要だった訳だな」
「今までは脅威を排除しようとする各勢力の攻勢を退け続けてきた」
「でもここにきて、寄りにも寄って余所者の手で倒れちゃった」
「目に見えるが故に、目に見えてこちらの弱体化が知れちまった」
「連中が直接攻勢に打って出るかは不明だ。だが可能性は高い」
「うちとの摩擦以上に、内輪で喧嘩したみたいでね、タカ派が頭取ったのよ」
「三大勢力で一番纏まりがなく、一番うまみがあるのが『アイズ』管轄の商業地となりゃあ」
「まず間違いなく、早晩、連中はこちらを狙うだろう」
「三国志みたいにうまく睨み合ってくれればいいんだけどねえ」
「そうもうまくはいかねえ。二強と一弱だ。早い者勝ちになる」
「重ねるが、君に求めるのは『アイズ』復帰までの間の安定だ」
「無理はしなくていいわ。でも商業地区に被害が出てもダメ」
「何をしろとは言わない。何してもいいから『アイズ』が戻るまで持たせる。これだ」
「最悪君が無理でも問題はない。セカンドプランはある」
「もともと『アイズ』のセカンドプランだったんだけどねえ」
「うちには探偵社とのホットラインがあるからな。最悪、セカンドプラン、リーの出番だ」
ぎょろり、と集まる視線に、背後で少女が笑う。
「イイヨイイヨー。何時でも出れるアルヨ。でもその場合、有象無象も一切合財、老若男女区別なく、纏めて絡げて一緒くたのしっちゃかめっちゃか、敵も味方もネコソギのコトよ」
気負うでもなく気取るでもなく、極自然に極々自然に、すでに終えた仕事の話でもするように気楽にからから笑う少女の声を聴きながら、流石にじゃあセカンドプランに任せて自分は辞退しますとは言えないのでありました。
…………えーと、善処するであります。
着任三日目。〇六三〇。
茶の一杯も出ない妖怪共との会談は恙なく進み、一通り居住区の現状は分かったであります。そして一通り以上は教えて頂けませんでした。後はこれを参考にどうにかしてね、という事みたいであります。
六勢力の内、現在活発に動いている勢力はキャピック工業組合とイクサスの二つ。工場地帯を支配するインテリ技術者集団と、漁業・港湾労働者組合にして複合宗教団体であります。
建設業と街の管理維持をしている平賀ビルヂング・サービスは、ライフラインの整備や修理以外では、今は端の方の開発地区で好き勝手やっているようで我関せずの姿勢。天才肌が多くてキャピックには嫌われてるみたいでありますけど、キャピックも手を出す気はないみたい。
イル・ポスティーノは最初から中立路線。郵便と銀行業の勢力で、どの勢力の支配地にも支局を置いている陽気なイタリア人連中だとか。しかし怒らせると面倒な武闘派でもあるとのこと。巻き込んで暴れてもらうのは、少しリスクが高いでありますかね。
背後のセカンドプラン、正体不明の少女リーが所属するシャアルゥジアァ探偵社は、探偵とは名ばかりの傭兵集団。実力は確かであるらしいのでありますが、大抵碌でもない結果にしかならない最悪の鬼札で、何処も積極的には関わり合いにならないのだとか。
そんな探偵社と懇意にしているらしいこの長老集はちょっとどころではなくヤバいのではないかと思うのでありますが、所詮余所者の自分にはよくわからんところであります。まあリー殿によれば今のところ何処の依頼も受けていないらしいであります。
というか、探偵社が抗争で戦ってくれとか誰か殺してくれとかいう依頼で動くということは、敵味方諸共に甚大な被害が出て、一応依頼は達成されるけど誰も得しない誰もが不幸になるだけのクソみたいな顛末が目に見えているので、こんな時に依頼するのは自殺志願者くらいとか。
本人たちはあくまでも探偵社であってそっち本業じゃねーからとのたまっているそうでありますし、実際人探しや猫探しや物探しの方が依頼多いみたいでありますが、構成員が揃いも揃って大惨事確定の武装・能力持ちなので誰からもその主張は認められてないであります。
で、活発に動いているというキャピックとイクサスでありますが、これがちょっときな臭い。提督殿のところでも聞いたでありますけど、内輪でいろいろと揉めて、嫌な具合に自己完結した感じみたいであります。
キャピックでは穏健派の部長のひとりが、男ばかりの部署でしかも一人一人が個人ブースに籠っている様な職場であるにも関わらず、悪質なセクハラを理由にケジメ処分され、過激派の部長がスムーズに就任。製造ラインの一部区画を閉鎖し、秘密裏に何かを組み立てているとか。
キャピックの製造ラインでは様々な製品が作られており、組み合わせ次第では十分に兵器を組み立てることも不可能ではないというか、過去実際に抗争に武装パワーローダーを持ち出したことがあるとのことで、要警戒であります。
イクサスは流石に新兵器を開発するような工業力は持ち合わせていないでありますが、信仰心からくる団結力や法術が強力だとか。こちらも穏健派だった全体の取締役が恐らく偶然ではない事故によって死去。ムツリムMNB過激派の指導者が取締役の座を暫定的に引き継いだとのこと。
新取締役は第三次大布教活動を宣言。ムツリム信徒が既に言語以外のコミュニケーション手段を大いに用いた『精力的』な布教を開始しており、他教の過激派も追随して行動を開始しすつつあるとのことで、対応が必要とのこと。
フムン。
ゲーム的に言うと、キャピックとイクサス、どちらを選びますか、という感じでありますなあ。
[◆◇◆◇◆]
着任三日目。〇七〇〇。
あきつ丸であります。妖怪長老集から情報を得て、キャピックとイクサス、どちらを先に選ぶかという二択を迫られたところでありました。
うーん、とはいえどうするでありますかな。
一応情報は得てきたとはいえ、そもそも此処の住人でもないしあんまり実感わかないでありますし、どんな連中か肌で知ってる訳でもないでありますし。
なのでここはお助けキャラに期待であります。
「ワタシお助けキャラ違うネ。ワタシお助けする時、選択肢バッドエンドかデッドエンドアルヨ」
せめてリセットで。
まあ直接的なヘルプは期待してないであります。案内役として助言してくれればいいだけの話でありますよ。
「んー、そうアルネ。ワタシだったらキャピックを先に叩くアルヨ」
フムン。その心は。
「キャピックの兵器まだ建造中。動く前壊す方、楽のコトヨ」
確かに、メタルギアも作戦上は起動前に破壊するのが鉄則。大体ガチ戦闘してる気がするでありますけど。
「あと既に街中に繰り出してるイクサスは、巻き添えで街が無くなるアルヨ。本末転倒アル」
それはつまりキャピックの方も工場区画ごと壊滅するのでは……?
「可燃物があったらそれだけじゃ済まないのコトヨ」
だめだ参考にならない。
でもまあ、確かにキャピックの兵器はまだ建造中。イクサスは既に活動中。リー殿の言うように、建造中の兵器を破壊した方が、先に一方を潰せるだけ後が楽になる、ように見えるかもしれないでありますが、それは作戦が順調に進んだ場合。
恐らく警備は厳重で、人数も結構なものになるはず。自分は間諜ではありますけど、潜入工作のプロって訳ではないのでありますよ。そういうスニーキングミッションはむしろまるゆ殿の得意とするところなのでありますけど、流石に呼び出すわけにもなあ。
目標の建造時間は不明でありますが、昨夜過激派の乗っ取りが成功し、建造し始めたとなれば、完成には時間がかかるはず。下手に時間をかけて、その間にイクサスの信徒たちが溢れかえってしまっては対処できなくなる。
ここはイクサスの暴動がまだ小規模である内に説得を試み、何とか鎮圧。然るべき後にキャピックの施設へ潜入でありますな。もし時間がかかって兵器が完成したなら、その時はその時で強行破壊に移るだけであります。
まあ色々無理があるのは承知の上でありますけど、自分一人ではどうしようもない。とにかく時間さえ稼げばいいのであります。残り17時間ほど耐えきって、『アイズ』殿が復活するのを待てばいいのであります。その後は知ったことではないのであります。契約外であります。
しかし案内役のリー殿、慣れない道の案内位しか期待してなかったでありますけど、ここまで価値観が違うと助言役としては減点でありますなあ。
「そーいわれても、そもそもアキツマルがナニできるかワタシ知らないアルヨ。敵も知らず味方も知らず、これじゃ百戦しても千戦してもどーにもならないアルネ」
そう言われれば、そもそも名前くらいの自己紹介しかしてないでありますしねえ。
リー殿を動かすと大惨事になるらしいので、とりあえず自分が動くのについてこれて助言と案内ができるというヘルプキャラ扱いでいいでありますが、自分の方はメイン張って動く主戦力。その能力を教えないでアドバイスくれというのも無茶な話。
どうせ『自在蔵』を使ったのは『アイズ』殿の口から割れるでありますし、ある程度はばれてもどうとでもなるであります。陸軍三号秘匿兵器空間兵装『自在蔵』。そして空間兵装特化型強襲揚陸艦あきつ丸。どうやら解説せねばならんようでありますな。……ちょっとだけ。
[◆◇◆◇◆]
着任三日目。〇七一〇。
あきつ丸であります。今後リー殿から的確なアドバイスが得られるかどうかは実際怪しいところでもありますが、ちょっと能力解説であります。ケツの穴晒すに等しいことなのでちょっとだけであります。ちょっとだけ。
まず、陸軍三号秘匿兵器空間兵装『自在蔵』。
普通に空間兵装というと、以前、確か着任一日目即ちざっくり九ヶ月くらい前にちょっと触れたでありますが、艦娘由来の空間技術を用いた兵装であります。
艦娘が武装や艤装を圧縮保管しておいたり、提督殿があのコンパクトな匣に色々な生命維持装置を圧縮して詰め込んでいるのに使用されている技術でありますな。
これらは限定的なもので、艦娘であれば武装・艤装だけ。提督殿のも拡張には大規模工事が必要でありましょう。
『自在蔵』の場合、ちょっと仕組みは違うでありますが、見かけ上、空間を操作して収納スペースを拡張している様に見えるのは同じであります。『自在蔵』が特殊なのは、自由に色んなものを収納し取り出せる自由性と、そして極めて莫大な収納量であります。
自分の体の何処からでも物品を収納でき、取り出しも可能。ただし、すぐに取り出せるのは『ショートカット』に登録して論理コマンド一つで取り出せるように設定したものだけであります。その他は全て巻子に込められた術式で自動登録され、いちいちここから探す必要があります。
不知火殿と対峙した時、解毒剤をすぐに出せなかったのは、『ショートカット』に入れてなかったので巻子を開き、検索し、取り出すという手間があったからであります。また『ショートカット』は複数の『ポート』に日常用、戦闘用など分類して分けてあり、その選択も必要。
この鎮守府に色々と持ち込めたのはこの兵装のおかげで、鎮守府のセキュリティが笊だったわけではないのであります。因みにまるゆ殿もこの『自在蔵』で持ってきたのでありますが、これが結構大変でありました。
一応生物も入れられないことはないのでありますが、生物は扱う変数が多く、物品登録を管理する術式の負荷が大きく、きっついのでありますよね。今回みたいな場合は意識のない変数が安定した状態で運搬するのがセオリーであります。
まあそれでも歓迎会前の時間を利用してまるゆ殿を吐き出したときはそりゃあもうすっきりしたものでありますが。起きてる状態で何人も詰め込んだら多分自分死にそうな顔で吐き気堪えてうろつく羽目になるであります。
さて、この『自在蔵』。他の艦娘のような制限もなく何でも収納できて便利、ではありますが、これ単体では攻撃能力など一切ない補助系兵装。それがなんで特化型と呼ばれる一つの極致まで至ったのか。その答えが莫大な収納量なのであります。
皆さんもすでにご覧のとおり、火炎放射器に投網に強化外骨格に、それ以外でもちょくちょくいろんなアイテムを取り出してきたでありますが、それがどれだけ便利なことかお分かりでありましょうか。
未来の猫型ロボットも、彼自身が飛びぬけて凄いのではなく、彼のポケットに秘められた無数の秘密道具こそが彼の驚異なのであります。『自在蔵』も要は同じこと。
陸軍では海軍以上の艦娘は作れない。素体で言えば里見製薬、火器で言えば赤菱重工、艦娘合金は岩崎ファンド、数えればきりがない企業系鎮守府はほとんど海軍寄り。陸軍は自分の持てるコマで勝負するしかない。
予算も少なく、運用可能な艦娘も少なく、ならばどうするか。一隻で全ての艦娘を圧倒できるワンシップアーミーが陸軍には求められていたのであります。しかし理想はそれでも、実際には艦同士の相性や、運用の限界がある。
空間兵装『自在蔵』はその解答の一つなのであります。個で負けるなら数を積む。数で押せないなら相性のいい武器を積む。弾切れせず、燃料補給を気にせず、何でもできる艦。それが空間兵装特化型。山のような武装を積み込んで、何にでも対応できるようにした究極の器用貧乏。
そしてそれらの無数の武装を扱うだけのスキルと経験。たった一隻に全てを積み込んだ、人工メアリー・スー、というよりはその試作。それが自分なのであります。何でも「そこそこ」にできる。どんな敵とも「そこそこ」やりあえる。宝具一点頼りの便利屋といったところであります。
着任三日目。〇七三〇。
あきつ丸であります。さっくりと解説して、リー殿に「へー、そう」で片付けられて一寸凹み入ったあたりで、さあ、移動であります。
さて、まずはイクサスの信徒たちが暴れているという辺りまでいくでありますかな。
イクサスの中でもどういう連中が暴れてるんでありましたっけ。
「イクサスの中でも過激派言われてる連中アルネ。アタマ取ったのがムツリムMNB過激派。それにヒアソビ・シーヤ派が乗っかったアル。スンナ派はシーヤ派に反発してるけど、勢力増やしたいのは一緒だから、ダンマリ決め込んでるアル。基本話は通じないアル。
でも一番派手に暴れてるのはぽいぽい教アルネ。信仰対象は夕立モデルで、信仰形式は戦争。信徒の艦娘率が一番高いアル。出撃と戦闘求めるベルセルクの集団。違法に艤装整備してるからイクサス内でも戦力はダンチアルヨ。基本会話が通じないアル。
あとは五月雨教団が過激派言われることもあるけど、今は大人しくしてるアル。信徒はスゴク少ないアルけど、ご神体で中心人物の五月雨モデルを護る12人の騎士達は超能力を使うと言われてるアル。会話は通じるケド基本的に意見は通らないアルネ。
他の団体は纏め役の文月教の司祭が急死したことで、混乱してるある。ムツリムがアタマ取ったのも暫定処分ね。連中勝手に取締役名乗ってるだけのコトヨ。実態は烏合の衆アル。会話は通じるケド助けは期待できないアルネ」
驚異の会話の通じなさ。説得するとかなんとか言ったでありますけど、宗教関係者、特に狂信者どもと話すのって、こっちが正気であればあるほど難しい気がするであります。SAN値には注意でありますな。
とはいえ、相手は狂信者ではなく狂信者の集団。人間は集団になればなるほど、集団の利益で動くもの。上手い事扇動できれば、個人を誘導するより楽であります。尤も、相手は扇動と誘導のプロである宗教家。いかにトップを潰して下っ端を先導するかでありますかね。
まあ、どうやら真っ先に接触するのは、武闘派のぽいぽい教っぽいので、そもそも交渉自体が通じない没交渉面子かもしれないでありますけど……。
[◆◇◆◇◆]
着任三日目。〇九〇〇。
イクサス内部過激派集団が熱狂的武力的布教活動を行っているという、商業地区港湾方面にやってきたのが一時間程前。現在ぽいぽい教信徒たちと、えーと、交渉中であります。
『我々ぽいぽい教はァー! 支配階級に屈しないィー!』
「あのー、ですから自分はそういうのではなくてでありますね」
『艦娘は戦いたがっているゥー! 聖戦を望んでいるゥー!』
「そういうのはもうちょっと然るべき所ででありますね」
『戦場を我らにィー! 然らずんば敵を寄越せェー!』
「死を寄越せではないんでありますね其処は」
『死んだら戦えないじゃないかァー! あっ、でもヴァルハラで戦えるからいいかも!』
あ、馬鹿なんだこいつら。
人間の信徒以外に駆逐艦、重巡洋艦、航空母艦と好戦的メンバーの揃ったぽいぽい教の皆さん。夕立モデルを信仰するというより、夕立モデルを旗印に決起した戦争主義者どもでありますかね、こいつら。
集合住宅のビルを占拠し、通路を封鎖し、住人を人質に戦場と敵を求めてシュプレヒコールを繰り返すぽいぽい教。一時間余りこの調子で立て籠もっており、非常に喧しい。しかも大音量で夕立モデルのぽいぽい言う音声がエンドレスで繰り返される耐久BGM。なんだこれ。
如何にも阿呆っぽい連中ではありますが、伺える限り連中の装備する艤装は、全て実戦に耐え得る十分な品質を持っているようであります。違法に整備された物とは思えない高品質。犯罪者のバーゲンセールの街ではそういった技術者も転がってるのでありますかね。
狂犬共と聞いていたのでもう乱闘でも始まっているのかと思っていたでありますが、放っておいている限り砲の一発も撃たないでありますし、煩い以外は実に大人しいもの……とは言えないもので。
『既にキャピック工業組合が動き出しているのは知っているぞォー! 折角兵器を作ってくれてるんだァー! 完成した兵器を我々の手で破壊するまでここは通さんぞォー!』
何その勇者が完成するまで待ち侘びてる魔王系スタンス。
どうも連中が封鎖している通路は工業地区までつながる大きめの通路のようで、他の通路は自動車も通れない細い通路ばかり。つまりキャピックを早めにどうにかしたければ、此処の封鎖を突破しなければならんのであります。
しかもぽいぽい教はイクサス過激派の先遣。連中の封鎖している向こう側では、ムツリムが着々と布教準備を整えて信仰を携えて侵攻しようとしている。大方頭の弱いぽいぽい教をムツリムが煽ってここに置いたという所でありますかね。
「大体、出撃したいならそういうのは鎮守府側に抗議するべきでありますよー」
『いや、それはちょっと……犬死はちょっと……』
「さっきまでの威勢何処行ったでありますかおい」
『ダマラッシェー! 扶桑姉妹の相手なんかしてられないの! 成功しない抗議運動は感動的であっても無意味!』
ああ、やっぱり重武装型の戦艦は相手にしたくないんでありますね……。
確か着任二日目の朝に、デモ行動してるD級職員が艦娘の狙撃練習の的にされてたでありますし、さしもの狂犬共も無駄に死ぬとはっきりわかっている戦場は求めるものとは違うようであります。もっとちゃんとベルセルクしろよ……。
ともあれ、流石に一時間も不毛なやり取りをさせられて時間をどぶに捨てていると焦りも湧いてくるであります。あといい加減飽きてきてリー殿が「処す?処す?」みたいな露骨なバッドエンド煽りをしてくるので急がねば。
でもなあ……正直攻めあぐねてるのでありますよね。集合住宅を占拠されて住人が人質になってるでありますし、その住人もいい加減慣れてきたのか朝飯とか作って振る舞ってるし、こっちは一人で向こうは艤装を装備した艦娘が最低でも一艦隊。
一番手っ取り早いのは集合住宅ごと爆破処理してしめやかに爆発四散させることでありますが、死刑囚・超長期懲役囚ばかりのこの街とはいえ、彼らも今を生きる人々。それに罪もない二世代目、三世代目の人たちも多いとのこと。
となると…………真面目に戦ってあげるのが一番手っ取り早くこいつらを引きずり出す手なんでありますかねえ。そういうの一番苦手な部類なんでありますけど。
着任三日目。〇九三〇。
そら、きれい………。
朝の空は舞い散る埃が少なく、とても綺麗な色に見えるものであります。強化コンクリートの地面に体を横たえ、ひんやりとした空気と、地面の冷たい感触に包まれて、ビルに切り取られた四角い空を眺めていると、なんだか全てが全て馬鹿馬鹿しく思えてくるであります。
「えーっと……大丈夫かしら?」
「大丈夫であります。ちょっと世の儚さとか面倒臭さとかを思っていただけであります」
躊躇いがちに、戸惑い気味に掛けられる声に、横たわったまま答えるであります。
ああ、もう、本当に馬鹿馬鹿しいであります。
『アイズ』代行を名乗り、一人ずつ相手してやるからそれで大人しくしてくださいと喧嘩を売ったはいいものの、最初の一人のワンパンで沈むとかもうやってられんであります。
「えっと……もう止める? 私も流石に死体蹴りは……」
「いえ、全然大丈夫であります。ちょっと苦しみと世知辛さと頼りなさを噛みしめてただけであります」
よいしょと起き上がり、ガードする暇もなくフックを撃ち込まれた頬を一撫で。
よかった。歯は抜けてない。
しっかし真面目にヤバい一撃でありました。小手調べと言わんばかりに軽ーい感じで打ってくれたから良かったものの、『アイズ』殿の発勁より重い一撃でありました。
勝負を挑んだぽいぽい教の艦隊一人目は重巡洋艦足柄殿。流石に駆逐艦のパンチと比べてはいけないでありますが……それだけじゃないでありますよね。
「つかぬ事をお伺いするでありますが、練度の方は……?」
「一三〇よ」
馬鹿じゃねーのか。ガチ主力じゃねーか。
というかケッコン指輪はどうしたでありますか。収監されるにあたって指輪や艤装はひん剥かれるはず。
「艤装も違法整備してるんだから、違法指輪くらいあるわよ」
そんなあっさりと。いやまああるとは話に聞いたことあるでありますけど。
「やっぱり本物よりは性能は低いけど、頑張ればこの位の練度は引き出せるの。悪くないわ」
はあ。因みにケッコン相手は。
「ぽいぽい教の信者さん。田中さんとか鈴木さんとかそんな名前だったわ」
欠片ほども興味がなさそう。
飢えた狼としてよく婚期に焦る女として描かれることの多い足柄モデルでありますが、基本的に脳筋のガチ戦闘好きなので、焦るのはむしろ周囲の姉妹と言うのが実態であります。当然ケッコンは強くなるための道具。ケッコン相手はミーディアム程度に考えているガチ餓狼であります。
絆というものを全力でただの媒介扱いする清々しいまでの脳筋。強くなればなるほどに魅力的になり、魅力的になればなるほど本人の脳から恋愛要素が揮発していくのでどう足掻いてもまともな恋愛ができないと噂であります。
因みに自分の公定練度は、最後に陸軍で計った時は九八でありましたかね。そんじょそこらの艦娘には負けないくらいには強いんでありますけど…………所詮揚陸艦。レベル差三〇以上の重巡と殴り合って勝てるかよ。
そもそも最初から流れが悪かったのであります。正面から挑発したら、何故か怒るどころか胆の据わった奴だ気に入った、艤装は使わないでやる、武器なんか捨てて素手でやろうぜみたいな脳筋なことになって、脳筋パンチを受けて脳筋ダウンしたわけでありますよ。
相手が艤装を使わないでくれるなんてラッキー、とか思うのは普通に強い艦娘だけであります。自分、素手同士が一番弱いんでありますよ。本来相手との相性に合わせて徹底的に長所を削いで短所を突くような物量と武装に物を言わせた戦い方が本懐。
それが武器なしの素手で殴り合いとか、互いに条件がイーブンどころか一方的にハンデ背負わされたようなものであります。こっちは『自在蔵』の調整にリソース喰うから、素体強度は最低限なんでありますよコン畜生。
しかも練度差三〇。恐らくほかの面子も違法指輪でそのくらいになっている筈。これだけ差があるとふつう、向こうの打撃はばこばこ入っても、こちらからは物理保護に遮られてまともな打撃は通せない状況であります。砲撃ならまだ可能性ありでも、白打ではねえ……。
とはいえ愚痴ばっかでは、毎度毎度愚痴しか言ってない薀蓄垂れ流すだけのあきつ丸とか言われかねないので、そろそろ真面目にやるでありますか。
「あら、もう大丈夫なの? 寝不足みたいだし、休んでからでもいいわよ?」
「お気遣いどうも」
洞察力も鋭いでありますなあ。
「でもとりあえず、二、三人沈めてから休ませていただくでありますよ」
空気を軋ませる様な獰猛な笑顔が、足柄殿を彩ったのでありました。
[◆◇◆◇◆]
着任三日目。〇九三五。
重巡洋艦足柄。餓えた狼の異名を持つ通り、非常に戦闘に適した、適し過ぎた身体を持つモデルであります。素体の合成段階での調整ではなく、オリジナルのDNA自体が、であります。
基本的に新陳代謝がよく脂肪が付きにくく、様々な面で優れた身体能力と、抜群の運動神経、戦闘に対する飽くなき欲求とセンス、そして残念な女子力を持つ野武士の如き猪武者のDNAを誇り、力こそパワーで大抵乗り切れる困ったチャンなモデルであります。
ただ、そのからっとした性格となんだかんだ面倒見の良い性格など、割かし精神面にヤバ目な物を飼いがちな艦娘業界では極めて健全な人格の持ち主で、向上心もあるしそれなりに真面目だし人間関係もうまく築ける安牌の一つであります。
戦闘面においてはかなりのセンスがあり、砲撃戦だけでなく格闘戦も好み、特に教えないでも実戦からバリバリ吸収していくなかなか怖いお姉さんであります。
そんなお姉さんと真面目に向き合ってからはや三分。
違法指輪ながらその練度たるや一三〇。艦霊の侵蝕度合いは相当なもので、素体がそもそも持つ以上のスペックを、霊力が補い底上げしているであります。その拳はもはや砲弾と大差なく、繰り出される一撃一撃は分厚い鋼板を貫くことさえ可能でありましょう。
当たれば。
「ん! ぬ! に! にゃあああッ!」
ぱん、ぱん、と大気を貫き繰り出される大ぶりの拳を、軽く手を添えて受け流す。パワーは凶悪、速度は反則。それでも、出がわかりきっているのならば、拳が直線を描くのであれば、それは止まっているのと大差はない。
余計な力を抜いて、拳の軸をずらしてやる。そのことにだけ気持ちをやる。考えて行うのではない。自ずからそうなるのであります。風に柳の舞うように、成す術がないようでいて、実際には大気の暴力を受け流して傷つくことはない。
当たらないことに焦れてどんどん大振りになっていく足柄殿の拳などもはや子供が暴れているのと大差はないのであります。不知火殿の神速の連続発勁と比べれば、余りにも稚拙と言わざるを得ないのであります。
これは、自分が強いから起こる現象ではありません。自分が弱く、そして足柄殿が強過ぎたがために起こったことに過ぎないのであります。
足柄モデルは、運動神経に優れ、格闘にも秀でた優秀な艦娘。多かれ少なかれ艦娘は同じような傾向にある。しかし、それがイコールで格闘技に優れているということではないのであります。格闘技とはそもそも弱い物が強い物に近付く為の技術。弱者の発想。
もともと優れた体を持ち、純粋な腕力で敵を屠ることのできる艦娘は、動物染みた直感で最適解の近似値を導き出し、自身の暴力を最もスマートに繰り出すことを覚えていくであります。一番やりやすい形。一番自然な流れ。一番暴力に適した解放。
格闘技とは、ある意味においてそれに反するものであります。格闘技とは自然からしてみれば全く不自然な流れ。適切な状況に、適切な解を導き出すという二つは同じ。しかし格闘技においてはその過程が重要。
何故に何を如何にするか。何故そうするのか、何故そうでなければならないのか。格闘技には理屈がある。直観ではない、回りくどく遠回りで迂遠でひねくれた、理屈が。即ち、何をされると嫌なのか、というその一点。
相手の命を如何に奪うかという艦娘の暴力はとても素直で、とても強力だ。ぶん殴れば死ぬという極めてシンプルな、太古より変わらない真理。翻って格闘技の暴力はひねくれている。何故なら格闘技は常に強者を相手にするからだ。殴られれば死ぬというもう一つの事実があるからだ。
艦娘が大して長くもない戦闘経験と直観とから導き出す最適解の近似値。それとさして変わらない近似値を、しかし人間は、人類は、この地球上に自分達同士以外にも争う相手が無数にいた頃からずっと長いこと研究し続けてきたのだ。モノリスに教えられるまでもなく、自ずから。
強靭な生命力と物理保護という無敵の盾を持って生まれたが為に、艦娘には容易くはたどり着けない答え。それが、これだ。これこそが、それだ。防ぐ、躱す、受け流す、避ける、捌く、ずらす、返す、それから―――放り投げる。
「んにゃーっ!?」
大ぶりの一撃を引っ掴み、そのまま懐に潜り込み、一本背負いの要領で地面に――いや、ビルの壁に向けて高々と放り投げる。強化コンクリの地面の叩きつけた方がダメージはでかいだろうが、手元に反撃してくる猛獣を残したくなかったであります。
空中でくるりと身をひねり、半ば叩きつけられるようにしながらも壁に着地する足柄殿。まったく艦娘って奴は、どいつもこいつも雑技団のお株を取りっぱなしであります。
「もう! 何これ! 面白いけど、イラつくわ!」
自分の攻撃が通らない事に苛立ちながらも、未知の攻防に興奮している。困った脳筋であります。とはいえ、格闘技の理屈は腕力だけで勝ってきた艦娘への皮肉。
そろそろこちらの動きも学習し、対策を学び始める頃。弱者の武器である格闘技を、強者が持っているという最悪の状況が出来上がってしまうであります。結局それで格闘家とかいう強さの上に強さを重ねる本末転倒が出来上がってる訳でありますよ、世の中。
そろそろ準備運動も終わりにして、見せてやるとするであります。
『人間工具』直伝、叢雲殿や金剛殿も嫌悪する、人間が艦娘を打ち破るという横紙破りの物理保護破りを。
着任三日目。〇九四〇。
人間が深海棲艦や艦娘を相手にしたとき、まず勝てない理由。その最大の一つが、物理保護であります。
艦霊の齎す重力素子が作り出す斥力防壁。質量や運動エネルギー等を自動的に察知し、また艦娘自身の意志によってもある程度制御して展開されるこの防壁は、あらゆる物理ダメージを減衰させ、既存の攻撃手段のほとんどを無効化してしまった驚異のバリアであります。
しかし、不知火殿との戦闘時に言及した火炎放射器やBC兵器など、艦娘のエネルギーが有限であることを攻めて物理保護を「削り殺す」など、決して完全無欠の防壁ではありません。実際深海棲艦も纏まってさえいれば大量破壊兵器で蒸発させることも可能であります。
ただ、小数を相手にする時にそういう手段は非効率的でありますしコストがかかる。なので散発的にゲリラ的に、艦隊を分けて進撃する深海棲艦相手に人類は艦娘という同等存在を当てて対処しているわけであります。
という訳で今まで、物理保護への対処は「連続展開を強制して削り殺す」、「物理保護の強度以上の飽和攻撃でゴリ押しする」、といった手法をご紹介してきたであります。まるでプライマルアーマーでありますなあ。
どうでもいいでありますが、自分このレポートを書くにあたってあきつ丸という名をよく変換するせいか、ぷらい丸アーマーとかいう硬いのか柔らかいのかよくわからんもんが錬成されたであります。なんぞこれ。
ともあれ。今回ご紹介する第三の方法。今時珍しく一切機械化も生体改造も施していない純人間である教官殿こと『人間工具』より学んだ、人間が素手で艦娘を解体するという条理も道理も鼻で嗤って蹴り捨てる様な全く馬鹿馬鹿しい手法であります。
「うにゃらぁあああああッ!」
先程よりも確かに、少しずつだけど確かに、鋭く、正確に、隙を減らしながら拳を振るい続ける足柄殿。昨日までの足柄殿より、一秒前までの足柄殿より、一秒後の足柄殿は、そして明日の足柄殿は、少しずつ成長していく。
倦まず、弛まず、諦めず。戦闘という極端な暴力においての話とはいえ、それはとても前向きで、素直で、きっと素敵な頑張りであります。
その頑張りを、こう、
「うにゃーッ!?」
投げ飛ばす。
「うにゃ!」
受け身を取るどころか無理やり身を回転させて着地し、隙も最小限に再び殴りかかってくる足柄殿。
その猛襲を、こう、
「うにゃーッ!?」
極める。アームロック。
「うにゃ!」
関節を極められ、それでもなお、腕の一本くらいくれてやると言わんばかりに暴れる足柄殿を蹴り飛ばして距離を取る。腕の筋を痛めたのか、腕を庇いつつも鋭い蹴り。ガンバルネ!
その執念に、こう、
「うにゃーッ!?」
絡み付く。膝十字固め。蹴り足を捕えて倒れこみながら極める。
「うにゃ!」
なんと凶悪な筋力か! 膝を固められながら無理矢理に体を起こし、絡み付いた自分を地面に叩きつけんと蹴りつける!
まあ普通に逃げるでありますけど。
繰り出す拳も蹴りも悉く練度差を無視するかのように軽々と潰され、流石に息も荒く動揺した様子の足柄殿。
それもその筈。何せ今までの攻防で、足柄殿の物理保護はまともに働いていないのでありますから。
そう、実は物理保護の自動展開は、投げ技や関節技に対して発動しないのであります。というより物理保護の意味がない。殴ったり蹴ったりは盾で防げる。しかし盾ごと振り回されたり、腕を捩じられたりしては防ぎ様がない、ということであります。
まあこれとて、物理保護をあらかじめ盾として展開し、接触そのものを拒めば防げるでありますが、当然そんなことをすれば消費は相当な物。物理保護は本来的に瞬間的な防御手段なのであります。
更に意識的な問題としても、砲撃や魚雷などとにかく攻撃とは敵に当てるものだという常識が艦娘たちにはあり、殴ったり蹴ったりの当身技を直観的に攻撃に取り入れることはあっても、関節技を学ぶことはあまりないのであります。
というか深海棲艦には関節技の掛けようがない、どう見ても人型じゃない個体が多い上、サブミッションを仕掛ける距離に接近しているというのはもう既に次の一瞬で殺すか殺されるかという必殺距離であり、本能的に繰り出される拳や蹴りに頼るものなのであります。
なので陽炎型の仕事人とかでもない限り、基本的に関節技は最低限しか使えないし、当然防ぐ知識にも欠けているのであります。アイアンクローは大体どの艦娘もやるでありますけど。
以上の事から、高練度の艦娘であっても、対サブミッション訓練を受けていなければ容易にダメージを与えることが可能なのでありますよ。それがたとえ、物理保護を展開できない人間であろうとも。
とはいえ、それも艦娘の人間を遥かに超える膂力と速度についていける技量があってはじめて、という話でありますが。さらに言えば当然の如く、練度が上がれば上がるほど艦霊の浸食をうけた素体は素の耐久性が化け物染みてくるので、自分程度だと圧し折れないでありますけど。
しかし関節技がおるのは何も肘関節や膝関節だけではないのであります。
全ての攻撃を躱し、捌き、絡み付き、極め、ダメージを蓄積させて、最後には肉体と共に心を圧し折るのであります。
言わばこれは心を摘む戦い……!
「…………うふふふふ」
え。
「面白いッ! 最高だわあなたッ! あと何回殴ったら、届くのかしらッ!」
あ、ダメだこれ折れない奴だ。
着任三日目。〇九四五。
『人間工具』直伝物理保護破りで散々痛めつけてやっても尚心折れないオリハルコン染みたメンタルの足柄殿。正直物理ダメージは練度差もあり、重巡相手に揚陸艦がこれ以上頑張っても削るのが大変で嫌なんでありますよね。
あとスタミナ。バリキドリンクとかのドーピングは『自在蔵』を使えば隠れて可能でありますけど、あれって燃料補給はできても素体の消耗が回復するわけじゃないんでありますよね。レーションでLIFEが回復すると思ってる新兵と同じくらいまずい勘違いでありますよ。
本家『人間工具』ならこんな苦労してないんでありましょうけど、あれはバグかチートみたいなもんで、自分は流石に素手で艦娘解体するようなスキル持ち合わせてねーでありますしねえ。
このままだとよくてジリ貧。最悪足柄殿に技を全部潰されて終わるパターンでありますな。
攻めあぐねていると、向こうは寧ろ動き回ってエンジンが最高に絶好調で回転してきたらしく、それはもう壮絶な笑顔であります。
「うふふふふ……こんなの、こんなにあしらわれるの、深海棲艦相手じゃ絶対に味わえなかったわ! なんて素敵なのかしら! こっちも本気出さなきゃよねッ!」
あ、いや、そういうのいいんで、大人しくしててほしいんで。
握りしめていた拳を開く足柄殿。と言っても、それは攻撃態勢を解いたとかそういうことではなく、むしろ万力染みた力の込められた拳を、鋼線のような筋肉をぎちぎち言わせながら開くという、なんかもう視覚的な暴力でありました。絶対平和的な掌じゃねえ。
熊手の様に開いた両の手を、軽やかともいえる動作で素振りする足柄殿。その軽やかなスナップさえ、大気を弾いて凶悪な音を生み出しているであります。固く握りしめた拳よりも、あのように開いた掌こそが足柄殿の本当の武器という所でありますか。
伝説によれば足柄モデルには、血の一滴すら流さずに睾丸を毟り取っていくという神業の持ち主もいるとか。喩え睾丸を持ち合わせていない非玉付ふたなりの艦娘であっても概念的な睾丸言い換えればソウル・キンタマをむしられればただでは済まないって何言ってるんでありますかね。
ちょっと電波が混線したでありますが、こちらはほのぼの日常系あきつ丸レポートであります。ご安心ください。一部グロテスクな表現や暴力的描写を含むであります。ごゆっくりお楽しみください。
さあて、それこそ、今から君を抱きしめに行くよと言わんばかりに、針金細工めいて細く嫌に長い両腕を広げた足柄殿。或いは天翔十字鳳。退かないし媚びないし省みないし、ほんと手におえねえであります。
「ふふふふ……まさか私が揚陸艦に技を出させられるとはね。どうかしら。聖者は磔にされましたって感じに見えるかしら?」
「人類は十進法を採用しましたって感じであります」
「余裕ね。楽しみ」
笑顔とは本来攻撃的な物であるらしいでありますけど、いやはや、ここまで楽しげな笑顔というのは、確かに素敵ではあるものの同時に恐ろしさ、悍ましさを喚起させるものであります。一瞬のちには喉笛を噛み千切られていそうであります。
「いきなりじゃあ、何が起こったかもわからないまま死ぬと思うから、見せてあげるわ」
ずん、と足元を力強く踏みつけ、強化コンクリートの地面を砕く足柄殿。大きめの瓦礫を器用に蹴り上げると――、
足柄殿の右手が一瞬消失したかと思った刹那、火薬の塊が炸裂するような破裂音と共に、瓦礫が消滅する。割ったのでも砕いたのでもなく、瓦礫が粉微塵となって風に流されていく。破片が飛び散ることもない。衝撃が無駄なく完全に瓦礫にのみ集中している……。
「一喰い(イーティングワン)。貴女のみたいな特殊な技術じゃないわ。何処までもシンプルな、只の平手打ち。その一つの極みよ。只の通常技を練りに練った、私のただ一つの必殺技。ラノベを参考にしたけど、なかなか使い勝手のいい技よ」
マジで雑技団でありますか……。
「でも私、参考にするといっても応用は苦手なの。丸パクリね。だから原作通り……欠点もそのまま」
「加減が一切利かない、でありますか」
「そうそう、あれ面白いわよねえ」
談笑も程々に、ぎちぎちと再び構える足柄殿。
「わかってるならこれ以上の説明はいらないわね。暴飲暴食。餓えた狼らしく、骨も残さず喰らい尽くしてあげるわ」
両腕を広げ、凄絶な笑みを浮かべたまま、いっそ穏やかと言えるほどゆっくりとした足取りで迫る足柄殿。
あれが原作通りなら、いやいや、高練度の重巡洋艦の足柄殿が繰り出すとなれば原作以上の威力を持つことは想像に難くない。となれば、左右の一喰いに挟まれれば、自分の上半身がこの世から綺麗さっぱり消滅しかねないであります。
片手で放つ一喰いの方が体重を乗せられるので、両手で放つ暴飲暴食は寧ろ威力が落ちるのでありますが、多少威力が落ちた所で防御不可能の攻撃に変わりはなく何ら救いにならない。それどころかむしろ避けにくくなる分面倒であります。
さて、さて、さて。
これはあれでありますな。
所謂一つの大ピンチ、というやつでありますか。
着任三日目。〇九五〇。
通常技にして必殺技、只の平手打ちにして防御不能の殺戮技能、暴力の一つの極致、一喰い(イーティングワン)。それが合わせて二つの暴飲暴食。食い散らかされるか食い荒らされるか。
練度一三〇の重巡洋艦が繰り出す、溜めに溜めた溜め技となると、下手な砲撃よりも凶悪な威力なのは想像に難くないであります。直撃を受ければ上半身がこの世から消滅。抱擁の瞬間を意識することもなく、死の痛みを感じる暇もなく。
もし両腕の交差地点がもう少し下に移れば、艦娘の本体、機械知性の宿る基幹部、超チタン艦娘合金製の筐体さえ破壊され兼ねないであります。兼ねない、というより、砲撃以上の威力を誇る以上、直撃すれば間違いなく吹っ飛ぶであります。
陸軍謹製人工メアリー・スーもどきの自分でも、基幹部を破壊されればそれは即ち死であります。どんな修理も修復剤も効果を持たない、艦娘の死。流石に自分も死ぬのは嫌いなので、これは真面目にどうにかしないといけないでありますな。
とはいえ、どうしたものか。
溜め技であり、大振りであり、加減が利かない一律固定技であり、放った後は無防備でありと欠点・弱点の多い技ではあるのでありますが……ありますがねえ。
まず防御不能。掌の触れる空間を削り取ってるようなもん。当然まともには受けられない。で、足柄殿の恐ろしく長い腕のせいでリーチが出鱈目。後ろには退けない。それが左右から来る。虎挟みの如き両腕は、稲妻十字空烈刃でも両足を圧し折られて終わりでありましょう。
懐に潜り込むか。インパクトはあくまで掌に集中する。完全に懐に密着すれば、足柄殿の長すぎる腕のせいもあり、ダメージはかなり減らせる。しかし問題はその後、逃げ場のない腕の中でシームレスにベアハッグの餌食になることであります。豊満な肉体で圧死。浪漫はあるけど死。
では交差の瞬間を狙ってしゃがみ込み、暴飲暴食を潜り抜けるか。これはタイミングがシビア。早過ぎれば即座に軌道は修正され、直撃コースを無防備に受ける。遅けりゃ当たり所がずれるだけ。上手い事タイミング合わせても、頭上に覆い被さるモンスター。
素手同士なんて妙な縛りプレイでもなければもうちょっと遣り様があるんでありますけどなー。武器が使えればなー。ほんとになー。
さって。そんなことを考えている間にも足柄殿は既に射程圏内。さあ、なにをしてくれるの? 今度はどうやってしのいでくれるの? そんな楽しげな眼つきで、楽しげな笑顔で、これから誰かを傷つけようと壊そうとしているとは思えないほど朗らかに、足柄殿が見ている。
その子供のように無邪気な笑顔のまま、張りつめた弓が放たれるように、力を溜めに溜めた両の凶器の左右が左右、自分をこの世から消し飛ばさんと、襲い掛かる。解き放たれてから左右の一喰いが交差するまで、ほんの刹那。その刹那に、半歩。一歩でも二歩でもなく、僅かに半歩。
す、と踏み込む。
襲い来る掌――その、半歩先。僅かに半歩、インパクトの地点から前進。左右の肘を迫りくる足柄殿の掌、その半歩先――手首に、打ち込む。いや、正確には立てた肘で待ち受けたようなもの。
手の骨という物は非常に複雑な積木細工のようなもので、細かな骨が組み合わさって繊細な動きができる様な造りになっているのであります。逆に言えば強度面では壊れやすい方なのであります。勢いよく硬い物にでも打ちつければ簡単に壊れる程度の。
というのは生身の人間の話であって、当然のことながら艦娘、特に練度一〇〇越えの重巡洋艦がそんな軟な造りしてる訳はねーし必殺の勢いを持った一喰いがその程度で止まるわけはねーのであります。普通なら。
なので後は戦術と腕であります。
「う―――にゃッ!?」
両の掌に挟まれてあわや消滅かと危ぶまれた瞬間、激しい金属音と共に一喰いの猛襲が停止する。自分の肘に打ち付けられた足柄殿の手首が、衝撃に耐えかねて悲鳴を上げている。
「アキツマルー、今鉄骨仕込ん」
「硬気功ッ!」
「いやそんなので騙される訳」
「こ、硬気功ですって!?」
「マジアルか」
「硬気功とは、気(qi)によって身体を鋼と化す中国四千年の神秘!」
「中国凄い!」
「マジアルか」
技を封じられながらも、東洋の神秘に目を輝かせる足柄殿。馬鹿でよかった。案山子よろしく服の下に仕込んだメタクロモリ-パラカーボン複合短弓×3は流石に圧し折れなかったようで本当に良かったであります。MCPC複合材の靱性は超チタン艦娘合金以上でありますからな。
赤菱重工などが基本オーダーメイドで製造しているMCPC複合材は、空母の用いクロスボウに用いられるものの中でも最高品質の一つで、大型建造並みの資材と資金を必要とするクソ高価な素材であります。
当然陸軍がそんなもん三つも仕入れられる訳がないであります。勿論自腹なんてまず無理。其処等に落ちてるもんでもなければ、気軽にお裾分けして貰える品でもない。入手法に関しては、まあ、なんでありますか。鹵獲品とだけ。
まあそんな、強化クロスボウの自動巻き上げ機でもないと使用できないような弓を軋ませやがった化け物相手にこれ以上のんびりする気はないのであります。
この密接距離とはいえ、物理保護は健在で打撃はほとんど通らない。関節技や投げ技ではダメージがしょぼい。となれば後は、『人間工具』直伝物理保護破りその、その三? その四? まあその辺りでありましたな。
引きずり込んでベアハッグに持ち込もうとする足柄殿。その流れに逆らわず、左拳を足柄殿の胸に当てる。殴るのではない。ただそっと胸に置くだけであります。
「あらー? お姉さんのおっぱいが恋しいのかしら?」
うーん、戦闘力の高い生物にはあんまりおっぱい力を感じないのでありますよね。ともあれ。豊満な胸の上、より正確には心臓の上に握りしめた左拳を宛がって、右拳を其処に打ち込む!
「う……ぎッ!?」
物理保護が発動せず、心臓への衝撃に悶絶する足柄殿。
足柄殿本人ではなく、そこに密着した自分の拳を打ち付けることで、物理保護を発動させず衝撃を伝える。鎧通しの技術であります。外のダメージより内のダメージ。これ基本。
しっかし頑丈でありますな。心臓打ちで顔をしかめる程度かよ。
まあ、じゃあ、仕方がないでありますなァ。
「アキツマルー、凄い悪い顔してるアルよー」
失敬な。
「くっ、ふ……やるじゃない、でも、私はこの程度じゃあばばばばばばばばばばばッ!?」
おおっ、まるで超高圧電流でも心臓にぶち込まれたかのような痙攣っぷりであります。
「アキツマル、お前いまスタンガン……」
「これが気(qi)であります」
「気」
胸に押し付けた左拳から放たれる気()によって心臓を強制的に停止させられ、流石にダウンする足柄殿。関係ないでありますけど密着状態からの高圧電流も物理保護をすり抜ける裏ワザであります。まあ決め技としては心臓に直で大電力が必須でありますけど。悪用しないように。
崩れ落ちる足柄殿を押しのけ、一息。ぽいぽい教団の主力艦隊六隻。その最初の一隻をどうにかやっとこさ倒したところで、あと五隻。足柄殿との戦闘ではなかなか手こずって手の内を晒し過ぎたでありますし、次の艦娘はそれを学習して対応してくるはず。
足柄殿は何とか密やかに誤魔化して『自在蔵』大活用で止めを刺したでありますが、次もそれが通じるとは思えんであります。如何に手の内を隠して、有利に勝負を進めるか……とにかく、さあ、次の相手は誰でありますか。それ次第で姑息に戦法を変えるでありますよ!
バリケードの前に屯するぽいぽい教の主力艦隊。
軽巡洋艦神通、重巡洋艦鳥海、戦艦霧島、航空母艦飛龍、そして奥で高鼾をかいているのが駆逐艦夕立、でありましょうな。ご神体にして中心艦娘。しかも改二。
どいつもこいつも戦場慣れした歴戦の貫禄ばっちり、でありますなあ。奥で居眠りしてるラスボスはともかく、こちらを見据える四隻は四天王って感じで雰囲気出てるであります。
「……鳥海、どう思うかしら?」
「そうですね。私の計算通り、とはいかなかったようです」
「気にすることはないわ。私もこうなることは計算していなかった」
「……油断、されたわけではないみたいですけれど」
「多聞丸に怒られちゃうわ」
おお、なんだか四天王っぽい会話な気がするであります。後あれだけ戦わないといけないと思うと胃が痛いでありますが、重たい空気を纏うあの貫禄、なかなか格好の良い物であります。自分のああいうのやってみたいでありますなあ、勇者を待ち受ける魔王的な。
「霧島、得意の計算じゃどうなるの?」
「そうね……あまり良くはないわ」
「というより、決してよくない状況ですね」
「寧ろ計算するまでもないと申しますか……」
「足柄が敗れるなんて……」
「彼女はぽいぽい教主力艦隊でも最強」
「私たち四人がかりでも厳しいのでは……」
「そもそも空母に素手で戦えってのは大阪当たりのシノギでしょ?」
「飛龍が足柄のノリに乗っかるから……」
「なっ、霧島だって胆の据わった奴とか大物ぶってたじゃない!」
「そ、それはほら、鳥海が元グリーンベレーみたいな挑発するから」
「えっ、だ、だったら神通だって目が殺し屋みたいで」
「元々です」
うん?
「第一素手でやろうなんて言い出したの足柄さんでしょ、私は言ってないもの」
「でも止めなかったじゃない」
「そうそう、面白がってました」
「じ、神通、あなたまで私を責めるの!? 早く血が見たいって感じの目付きだったのに!」
「元々です」
あれれー?
「と、とにかく喧嘩は止めましょう」
「最初に責任擦り付けてきたのは霧島じゃん」
「過去は過去! 今考えるべきは目の前の事よ!」
「もういいんじゃないですか。足柄さん気絶してますし」
「いいって何が」
「袋にしましょうよ」
「!?」「!?」「!?」
!?
「素手でというのは足柄さんの勝手に言い出したことですし……夕立ちゃんも寝てますし」
「いやでも、そういう見られなきゃいいやみたいのは……」
「見られなかったんじゃなくてそんな事実はなかったことになるんですよ」
「」「」「」
「第一私たち四人がかりでも倒せない足柄さんを倒したんですよ。四人がかりで囲んで棒で叩こうが一方的に砲撃しようがそれはもはやハンデですよ。フェアプレイですよ」
「こんな濁った眼でフェアプレイ精神語る奴はじめて見た」
「私も」
「いいじゃないですか。お好きでしょう? 戦争」
「いや、ええと、まあ……」
「何この一人だけガチ罪状な犯罪者が紛れ込んだ感じ」
「犯罪係数真っ黒ですよね絶対」
なんかもうこっち放ったらかしにして内輪もめされてる……。
ちらっとリー殿を振り向いても、完全に興味をなくしてバリケードの向こうで炊き出しの列に並んでるし……何時の間にというかどうやってあそこまで……。
「あーあーあー、わかりました。わかりました。チッ。私が先陣切りますから皆さんそれに続いて援護して下さればいいですよ」
「舌打ちしやがった」
「というか当然の様に言うけど神通私たちを捨て石にして切り込む気だったよ絶対」
「何です、まだ何かご不満でも? あの仮面、『アイズ』の代表者なんですよ? 死体晒せば布教もしやすいですし躊躇うことないですよ」
「躊躇わないのが若さが理由じゃないあたりが怖いんだよ」
「老獪なサイコパスが身内にいるこの恐怖」
「あのー」
「夕立ちゃんも褒めてくれますよ」
「やり口を選ぼうよ、絶対夕立ちゃん嫌がるって」
「あのー」
「寝てますし大丈夫ですって」
「だからその見られてなきゃって言う犯罪者思考がね」
「あのー」
「犯罪者犯罪者って同じ穴の貉じゃないですか」
「同じ穴であってもあなた貉じゃなくて妖怪の類でしょ」
「あのー」
「貉だって化けるじゃないですか。あーもう煩いですね」
「何ですかさっきから、立て込んでるんですけど!」
「自分がそっちのお三方に加勢してそこのサイコパスふんじばるのが一番安全だと思うんでありますけど」
「……あー」
「……あー」
「……あー」
「待って。時に待ちましょう。こんな時に仲間割れなんて夕立ちゃんが悲しみますよ」
「大丈夫、見てないから」
「これを機にもう少し雇用見直した方がいいでありますよ」
「それな」
[◆◇◆◇◆]
着任三日目。一〇〇〇。
なんとか足柄殿を退け、四天王めいた面子の中に潜んだ真正サイコパスを四隻がかりで囲んで棒で叩いて袋にしてようやく拘束し、人質の皆さんが入れてくださったお茶を頂きながら雑談中であります。
「いやー、足柄とか夕立ちゃんが結構アレだから誤解されがちなんだけどさー。私等はただ艦娘らしくさ、出撃したい、戦いたい、そういうことを真面目に訴えてるだけの穏健派なのよ、本来」
そう語るのは航空母艦飛龍殿。
収監理由は、企業所属の大型タンカーを連続で三隻襲撃。三隻目で護衛艦に大破させられたとのこと。当人曰く、ライバル企業に所属していた指揮官の命令でやったことで、奪取した資源も全て鎮守府に運搬したとのことでありますが、まあよくある尻尾切りにあったようであります。
「確かに戦闘は好きです。戦っている時が一番生き甲斐を感じます。でもそれは深海棲艦相手であって、こういうのはあまり好きじゃないです」
なので人質とは言うけれど実際は道を封鎖しているだけ、という重巡洋艦鳥海殿。
違法地下闘技場でここ一番の大勝負に賭けた所、モノの見事に外して素寒貧になり、簡単なアルバイトだからという言葉に騙されて縄張り争い中の敵対組織に鉄砲玉としてカチコミさせられ、うっかり周辺区画ごと巻き添えで破壊してしまったという脳筋眼鏡であります。
「ちゃんと鎮守府にも嘆願書は書いてるんですよ。ただ、やんちゃなのが暴れて心証最悪なのでなんとも……」
苦労の絶えない中間管理職みたいな溜息をこぼすのは高速戦艦霧島殿。
元は海軍鎮守府で秘書艦を務めていたという霧島殿。丁寧な仕事と神経質な目配りで提督の裏口座を管理していたのでありますが、海軍の会計監査が入った際、真面目が過ぎてうっかり裏口座の隠し資産まで記載してしまって提督共々お縄についた脳筋眼鏡二号であります。
「もうこれ外して下さい……反省しています……一寸面倒臭くなっただけですから……」
インシュロックで後ろ手に拘束し、念のため関節を外して転がしておいた神通殿が棒読みで訴えてきてるでありますが無視であります。
罪状は殺人、反逆罪その他。提督の無能さに苛立って殺害した後、秘書艦としての立場を最大限に利用して三か月の間、提督不在で鎮守府を運営したというサイコパス。なお遺体はチキンブロスと称して食堂で振る舞った模様。
因みに気絶したまま夕立殿の横で寝かせられてる足柄殿は、反逆罪には至らない程度の命令不服従が積み重なりまくっての超長期懲役だそうであります。具体的には撤退拒否、船渠からの脱走、無断出撃、命令に含まれていない敵艦隊への攻撃などなど。無論反省はしてないであります。
泥沼のように澱んだ目付きの神通殿を放置して主力艦隊の皆様と歓談し、ひとまずこれ以上の騒ぎは起こしそうにないことが確認できたであります。一部の面子がやんちゃすぎるというだけみたいでありますね。というか一部のやんちゃを抑える苦労性の皆様の集まり。
「まあここを封鎖したのはキャピックの機動兵器が通るとしたらまずここだから、っていうのは本当ですけどね。被害が減らせますし、運動不足で戦いたいのはみんなの正直な所ですから」
フムン。どうやら布教にもそんなに熱心ではない、というか布教するまでもない感じか。
放っておいても戦いたがりは集まってくるし、常に一定数以上の支持する人間もいる。ガス抜きさえうまく行けば安定しそうでありますなあ。
ともあれそういう事であれば、『アイズ』代行としてはこれ以上は相手する必要もないであります。
「取り合えず、ここの封鎖は続けていただいて結構であります。キャピックの兵器が来たら好きなだけドンパチしてくださって結構。その代りイクサスの他の教団を通さないようにお願いしたいであります」
「いいよいいよー」
軽いでありますな飛龍殿。
「キャピック狙いなのは最初からだし、ムツリムの連中私等を煽って『アイズ』に突っ込ませようとしてたの見え見えだったしね。権力志向みたいなトコあって気に食わなかったし」
「ただ、こちらからも条件があります」
脳筋眼鏡二号こと霧島殿が切り出す。
「我々は再三に渡って出撃の許可を求めています。現状、はぐれ深海棲艦が現れた時でさえ、鎮守府の正規艦娘が迎撃に出ている。その業務を我々に回して下さるだけでもだいぶ改善されるんです。『アイズ』代行であるあなたから、是非お口添えして頂きたいんです」
フムン。まあ、彼女らが出撃した所で、機密を持ち逃げする確率は低そうでありますし、くすぶっている囚艦娘を使った方が安上がりで済みそうであります。不満も解消されるならなおのこと良い。
「いいでありますよ。提督殿に伝えておくであります」
「アキツマルまーた悪い顔してるアルヨ」
失敬な。大体仮面で見えないでありましょう。
ただ、伝えるとは言ったけど実現を確約するとは言ってないだけであります。
ともあれ、これでぽいぽい教についてはひと段落。後はこの先に進み、イクサス本拠である港湾地区に進んでいくことになりますか。
ムツリムは戦艦陸奥と、聖獣り陸奥たかを信奉する教団。特にMNB過激派は危険な狂信者の集まりと聞くであります。戦力ではぽいぽい教に劣るかもしれませんが、危険度はさらに上を行くかもしれんであります。SAN値にだけは気を付けていきたいところ。
バリケードを越え、次のステージへ。
( #あきつ丸レポート 編纂者です。ご質問・ご感想は #あきレポ をご活用ください。)
[◆◇◆◇◆]
Tips.
>小ネタ
・スーパーウルトラサンボマンボマーシャルアーツ
RPG「MOTHER2」に登場する敵「ストロングしょちょう」が使用するとされる格闘技。
・ムツリムMNB過激派
艦娘である陸奥を愛好する諸氏を指す言葉。
MNB過激派とは、陸奥になるビーム過激派のこと。
・瑞雲教
艦娘である日向などを筆頭に艦載機瑞雲を崇める集団。近年富士急ハイランドを支配下に置いた。
・ぽいぽい教
艦娘夕立を愛好する集団。語尾の「ぽい」をエンドレスでリピートすることで恍惚感に満ちた酩酊を味わえるという。
・スシなり、スシ・ソバ
ただスシというと一般的に想像される回ったり回らなかったりするスシだが、まずカタカタなのが怪しいし、スシ・ソバなる謎のフーズが連なってくるあたり読者の皆様もお察しのことだろう。「ニンジャスレイヤー」の世界ではスシはニンジャが補給用に持ち歩くほど体力回復や怪我の治癒に有効だ。われわれが普段食している魚の切り身を酢飯に乗せて握ったものはオーガニック・スシとして特に区別され、一般に食されるのはサカナ粉末に魚貝由来化学調味料スープを加えて成形したスシ・ネタであるとされる。
スシ・ソバはその一形態で、ソバにスシがトッピングされたものであるとされる。
・あきつ丸が食べ歩きしているもの
いちいち説明するととても紙幅が足りないので、ご存じないワードがあった場合は検索される事をお勧めする。飯テロとの批判は受け付けていない。いいね?
・Eye have you
何度か出てきている『アイズ』のキャッチコピー。
「メタルギアソリッド4」に登場する武器洗浄屋ドレビンのキャッチコピーである。
・成型ビル
元ネタというか、実際に海辺の街に量産型の建物が並んでいる街並みを何かで聞いたと思ったのだがよく覚えていない。
・リー
この先暫くあきつ丸と行動を共にする少女。
・ケジメ
指詰めのこと。ここでは物理的に指を詰めてけじめをつけたということではなく、彼自身が切られて処分された、クビになったということであろう。
・メタルギア
「メタルギア」シリーズに登場する架空のメカである核搭載二足歩行型戦車の総称。様々な状況、地形を踏破し、自力での戦闘と核弾頭の発射を可能とするとされる。開発された時代や機種ごとに異なる様相を示す。
・ケツの穴晒すに等しいことなのでちょっとだけであります。ちょっとだけ。
「ジョジョリオン」(荒木飛呂彦)の登場人物東方憲助によれば、「他人に自分のケツの穴を見せたりしない。「スタンド」とはそういうものだ」とのことである。
・陸軍三号秘匿兵器空間兵装『自在蔵』
他に一号と二号の秘匿兵器があるようだ。
『自在蔵』はあきつ丸だけが保有する専用兵装で、その特性は概ね本文中で語る通りである。
実際特化型を謳うだけあって他の追随を許さない技術の一つの極致ではあるのだが、究極的には物凄い「器」でしかなく、何を詰めどの様に扱うかという技術が要求される。特化性能を頼りにゴリ押しできるほかの特化型とは少々訳が違うのだ。
・ヒアソビ・シーヤ派/スンナ派
語源はイスラムのシーア派とスンニ派であろう。元ネタに関してはデリケートな問題でもあるし迂闊なことは言えないので置いておくとして、ヒアソビ・シーヤ派とスンナ派とは、日本語読みした時の意味そのままで、火遊びしぃや、と火遊びすんな、の両極端。つまり陸奥のアダルティなのが見たいシーヤ派と、清純派陸奥で行きたいスンナ派なのではないだろうか。知らんけど。
・五月雨教団
駆逐艦五月雨を愛好する紳士諸兄の通称。
ここではご神体でもある特殊な一隻の五月雨と、それを守護する十二人の騎士達からなる集団。
勿論元ネタは「惑星のさみだれ」(水上悟志)に登場する姫こと「さみだれ」と十二人の指輪の騎士達。
・ダマラッシェー!
忍殺語のひとつ。ヤクザからニンジャまで幅広く恫喝として使われる。「だまらっしゃい」からか。
・感動的であっても無意味!
「仮面ライダーディケイド」の登場人物海東純一の台詞「フッ…いい台詞だ。感動的だな……だが無意味だ」から。
・「処す?処す?」
「磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~」(仲間りょう)にて、街に繰り出した徳川将軍たちに民衆がひれ伏す中、主人公磯部が立ち読みに夢中で気づかずひれ伏さなかったことに腹を立てたところでのセリフ「あいつ…頭高くない?」「どうする兄ちゃん、処す? 処す?」から。
・しめやかに爆発四散
「ニンジャスレイヤー」で頻出する用語。しめやかにとは本来ひっそりとか静かにとかいう意味であるが、ニンジャスレイヤーではしめやかに走ったりしめやかに飛び降りたりしめやかに爆発四散したりと我々の言語野にアンブッシュを仕掛けてくる。何とも思わなくなってきたら十分汚染されていると見ていいだろう。
・そら、きれい
「ブラックラグーン」(広江礼威)に登場するヘンゼルとグレーテルの双子の「姉様」の最期の台詞「きれいだわ、そら。どうし…ー」から。どうして語順が逆になったかと言えば、えなみ教授氏がPixivで後悔している東方4コマシリーズにおいて、藤原妹紅がPTSDのために「そらきれい」しか言えなくなった件が原因かと思われる。
・苦しみと世知辛さと頼りなさ
「恋しさとせつなさと心強さと」(篠原涼子)から。
・違法指輪
ケッコン指輪は艦娘のリミッターを外し艦霊との親和性を高めることで強度を高めるとともに、艦霊からの汚染も強くなる諸刃の剣。しかし蛇の道は蛇というか、精度の粗いものであれば闇ルートで販売されているようだ。
・ミーディアム
オカルトやスピリチュアル業界においては霊媒を意味する語。
ここでは「ローゼンメイデン」(PEACH-PIT)アニメ版においてドールと契約し力を供給することになった人間を指す用語ミーディアムになぞらえている。
・モノリスに教えられるまでもなく
「2001年宇宙の旅」(アーサー・C・クラーク)にて、人類の祖先ヒトザルは謎の石版モノリスの影響を受け急激に進化したとされる。
・プライマルアーマー
「アーマードコア4」に登場するネクストなる兵器に搭載された防御機構。
コジマ粒子なる重金属粒子を散布し、還流させることで、慣性抑止フィールドとも呼べる力場を形成し、各種攻撃を減衰させる。
・昨日までの足柄殿より、一秒前までの足柄殿より、一秒後の足柄殿は、そして明日の足柄殿は、少しずつ成長していく。
「天元突破グレンラガン」がイメージにあった。
・その頑張りを、こう、
「それを、こう。」(大野そら)がイメージにあった。
・言わばこれは心を摘む戦い
「HUNTER×HUNTER」(冨樫義博)に登場する敵役ゲンスルーの台詞「これは肉体でなく心を摘む戦い」から。
・レーションでLIFEが回復すると思ってる新兵
「メタルギアソリッド3」ではそれまでのシリーズでライフ回復アイテムだったレーションがスタミナ回復アイテムに変わっており、そのことに関して無線でゼロ少佐からこのような事を聞ける。
・血の一滴すら流さずに睾丸を毟り取っていく
キタユキ氏の「加賀さん観察日記」における足柄は素手で睾丸をもぎ取る上に畑に植えて栽培しているというネタの解説をしているだけで正気を疑われるようなことを実際にやっている。嘘じゃない。私は見たんだ。本当だ。
・天翔十字鳳
退かぬ媚びぬ省みぬで有名な、「北斗の拳」(原作:武論尊、作画:原哲夫)に登場する聖帝サウザーの必殺技。南斗鳳凰拳の奥義であり、最強であるが故に防御の型である構えを持たない南斗鳳凰拳に会って唯一、対等と認めた強敵に立ち向かうために必殺不敗の意を込めて構えられる。
・聖者は磔にされました/人類は十進法を採用しました
どちらも「東方紅魔郷」において、妖怪ルーミアと魔法使い霧雨魔理沙の掛け合いで聴ける台詞。
・笑顔とは本来攻撃的な物である
「シグルイ」(原作:南條範夫・作画山口貴由)より、「笑うという行為は本来攻撃的なものであり 獣が牙をむく行為が原点である」から。
・一喰い(イーティングワン)
「戯言シリーズ」(西尾維新)に登場する殺し屋マンイーターの匂宮出夢の必殺技。内容はほぼほぼ本文中にある通り。
・稲妻十字空烈刃
サンダークロススプリットアタックと読む。
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第一部に登場する波紋遣いダイアーの誇る必殺技。
空中からスローの蹴りを放ち、相手が油断し蹴りを受け止めた瞬間に両脚を開脚してガードを外し、無防備となったところへ両手を交差させた手刀を叩き込む。
これを破った格闘者は一人としていないらしいが、作中で成功した試しはない。
・メタクロモリ-パラカーボン複合短弓
MCPC複合短弓。メタクロモリは以前も出た魔術的強化がなされたクロムモリブデン合金。パラと頭につくものも同様で、単にメタが連続すると音として格好良くないというだけ。
・大阪当たりのシノギ
キタユキ氏の「加賀さん観察日記」の舞台である横須賀鎮守府は大阪にある。
・元グリーンベレーみたいな挑発
武器なんか捨てて云々のこと。映画「コマンド―」のメイトリクスの台詞「来いよベネット!銃なんか捨ててかかって来い!!」から。正しくは彼は元コマンドーであり、元グリーンベレーの男は敵役としてあっさり死んでいる。
・犯罪係数真っ黒
「PSYCHO-PASS」の世界では人間の心理状態は数値化されて常に計測・管理されており、犯罪に関しての数値を犯罪係数という。これは数値と共に色でも表現され、真っ黒となるとこれはどう足掻いても後戻りのできない犯罪者である。
・あの仮面
対戦相手である足柄も突っ込まなかったが、あきつ丸は実は仮面を被ったまま一連の戦闘をこなしており、多少視界が不自由になろうと問題なく戦闘が可能であったりする。
・躊躇わないのが若さが理由じゃない
若さ。若さってなんだ。に続くのは実は躊躇わない事ではなく、振り向かない事であり諦めない事。
躊躇わないのは愛である。
宇宙刑事ギャバンの主題歌から。
・「待って。時に待ちましょう」
2ch発祥のアスキーアートキャラクター「流石兄弟」の掛け合い、「兄者マテ、ときに落ち着けって!」から。
・チキンブロス
何処が発祥かよく知らないが、レポート編纂者は「加賀さん観察日記」で見かけた。
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