あきつ丸レポート   作:長串望

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あきつ丸、伝書鳩の秘密に迫る段


あきつ丸レポートまとめ7

警告:乙種機密指定

皇国陸軍データベースへの許可無きアクセスは固く禁止されています。

違反者及び関連者は追跡、特定の後、停止処分されます。

 

 本文は皇国陸軍秘匿第██工廠被験体「███████」よりサルベージされた文字媒体情報群を再構築した文章です。

 本文は皇国陸軍秘匿第████号指令による乙種機密案件第█████号、計画名「Phantom Pain」に関連する参考資料に分類され、乙種保安権限保有者又は一時付託者以外の閲覧を固く禁止されています。

 

 

 

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 あきつ丸であります。綾波殿と別れて、電信室を後にしたであります。そして向かう先は司令部棟中程からベランダ状に突き出た鳩舎区画であります。

 綾波殿に今回の件は流して頂けたでありますが、今後アンシブル通信で陸軍に報告を送れば、容赦なくチェックが入ることは間違いないので、そちらは生存確認の定期報告だけとして、何か手段がないかとそれとなく振ったところ、二つ紹介されたであります。

 一つは定期船の郵便を利用すること。週に一度定期船が内地からやってくるので、鎮守府の郵便受付に手紙を投函して、定期船で内地に送ってもらう。まあこれ間違いなく検閲が入るので、勿論不可であります。

 そしてもう一つが、実験的に越境通信を試みているという綾波殿曰くの『伝書鳩っぽいレトロでまだるっこしいシステム』とやらであります。綾波殿は興味がないらしく詳細はご存じではありませんでしたが、興味深いことは分かったであります。

 この実験は既にある程度成果が出ていて、『境界』を越える越境通信はすでに成功しており、実績がある事。半分くらいは趣味でやっているらしく、交渉次第で利用させてもらえるかもしれないこと。そして担当者が物臭で、恐らくは検閲なんて面倒なことはしないだろうということ。

 最後が一番大事でありますな。公的記録に残さず郵送ができるというのは大きいであります。勿論、過度の信用は危険でありますから、普段からどうでもいい報告を定期的に行い、油断を誘ってここぞというときに大事な情報をねじ込む、というのがよさそうでありますな。

 まあそういった実用的な点は別としても、伝書鳩を利用したという越境通信システムには個人的にも興味津々であります。今から楽しみでありますなあ。

 

 

 

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 あきつ丸であります。アンシブル通信に次ぐ、第二の越境通信方法。それはなんともレトロな伝書鳩であるとか。自分、気になるであります。

 ご存じ『境界』は電波も通さぬ開かずの障壁。艦娘とそれに導かれたもの、そして深海棲艦しか通ることのできない不可視の転移門。

 しかし鰻や鯨など、一部の海生生物が複数の『海域』を回遊ルートに含むことが知られており、まだまだ不明な点も多いのであります。何でもそういった研究を専門に、複数『海域』を巡回している移動式の鎮守府もあるとか。

 仮説も色々で、深海棲艦の越境に追随しているとか、艦娘特有の知覚を彼らも有しているのではないかとか、我々の知らない『境界』の隙間があるのだとか。艦娘のこと自体も人類はまだ解明しきれていないでありますからなあ。

 さて、『海域』というくらいで海ばかりなので海生生物ばかり注目されてきたでありますが、実は一部の渡り鳥もまた『海域』を渡っている群があるのではないか、という報告が近年上がってきているであります。

 実際に越境の確認が取れた例は少ないのでありますが、人跡未踏であるはずの『海域』内の島に営巣された巣から、明確な人工物、例えば針金やビニールといった品が発見されることがあり、以前から越境品ではないかと噂されていたであります。

 ただ、これが鳥が運んできたものなのか、漂流物が艦娘や深海棲艦の越境に巻き込まれたものなのかは判断ができず、確証は得られていなかったのであります。

 小型のアンシブル通信機でも鳥に取り付けられる程小型なものはないため、現在も調査は難航しているはず………なのでありますが、ここの実験はすでに伝書鳩を成功させているとか。無駄に引き延ばしている感はありますが、これがこのレポートのやり口であります。悪しからず。

 

 鳩舎区画は、メガフロートの中央から鐘楼状に聳える司令部棟の中程から、ベランダのように突き出た一角にありました。

 屋上の展望区画のように日の良くあたる眺めの良い区画でありますが、もっと広くてベンチやガーデンテーブル・チェアなどが据え付けられており、居住者の憩いの場として利用されているようであります。鳩舎はその一角に後から設置されたようでありますな。

 あ、それと自分勘違いしてたのでありますが、この様式はベランダというよりバルコニーでありますな。屋根や庇がないのであります。テーブルにはパラソルも設置されているでありますし、快適ではありますが。

 弁当など持参して、ここで昼餉と洒落込むのも悪くありませんな。水筒に水出しの珈琲など詰めて、気に入りの本でも開いて、潮風と海鳥の鳴き声など楽しみながらのんびり時を過ごすのもよいでありますな。

 最近何かと異動が多くて、ゆっくり本を読む暇もなかったでありますからなあ。積んでる本もそろそろ消化したいのであります。先日内地で買ったフィリップ・K・ディックやジェームズ・P・ホーガン、ティプトリージュニアも読みたいところ。

 あとアニメ化したので目だけは通しておこうかなと思って、結局なかなか読む気の起きてないラノベも一気に消化したいであります。ラノベは一冊一冊は時間取らないものの、シリーズの冊数が阿呆みたいに多いのと、文体が馴染まないのが多いのでありますよなあ。

 文体と言えば村上春樹はあんまり馴染まなかったでありますな。あと舞城も苦労した記憶が。多分二、三冊しか読んでないのでまだ慣れてないだけなのでしょうが、そこまでがなあ、そこまでがやっぱり本読みの壁だと思うんでありますよ。

 自分、年に百冊も読まないような人種でありますから、癖のある文体ってなかなか馴染むまでが大変なのであります。読んでてもするする頭に入らないのでありますよね。小説は深く考えず娯楽として楽しむ主義なので、読書ペースが乱れると、気持ちがだれるのでありますよ。

 まあ、本のことは仕事がひと段落してから考えることにするであります。区画の端、大きなケージが立ち並ぶ一角に、いざ。

 

 

 

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 あきつ丸であります。伝書鳩を求めて鳩舎区画へやってきたのでありますが、どうも変でありますな。ケージの中にはそこそこの数がたむろしているのでありますが、その、なんというか、自分の知る鳩と違うというか。

 なんていうのでありますかな。ちょっとこう、顔つきが険しいというか、目つきが怖いというか、嘴が鋭いんじゃないかなというか、いや、もしかしたら自分の知らない種類の鳩なのかもしれないでありますし、気を悪くされたら悪いのでありますが。

 

 これ、鷹じゃね?

 鳩じゃなくね? 鷹じゃね? であります。

 

 というか間違いなく鷹でありますよこれ。餌箱にあるのこれ生肉じゃねーか。むしろ鳩を捕食する立場でありますよこれ。猛者の風格が漂ってるであります。

 もしかしてアレでありますか。単にこのケージだけ趣味で鷹入れてるだけで、本命は別のケージでありますか。ははーん。そうでありますよきっと。自分ちょっと焦りすぎたであります。

 隣のケージをのぞいてみれば、ほらね、ほーらほらほら。この円らな目といい、ちょっとくいっと曲がった嘴といい、がっしりと止り木を掴む節くれだった趾といい、うん。

 

 隼じゃねーか。

 

 誰が鷹と隼の区別付くってんだよクソッ。スタンド使わねーのが鷹で、スタンド使う殺戮追跡機械が隼でありますよボーシッ。タカ目とハヤブサ目の違いなんざ素人に分かるかっ。

 オーケイ。落ち着くであります。一発だけなら誤射かもしれないのならば、二発目もまだ要警戒っていうレベルであります。落ち着いて、気持ちを落ち着けて、ビークール、ビークールであります。

 並んだケージを確認したのが間違いだったのでありますよきっと。たまたま端の方に鷹匠エリアみたいなの作っただけかもしれないでありますし。ほかのはきっと鳩がぎゅう詰めのすし詰めのはずであります。

 どーれどれ、ほほーん。成程。これね、うん。円らな瞳に白いふわふわの羽毛。うん。丸っこい頭にちまっとした嘴。うん、知ってる。自分知ってるでありますよこれ。うん。あのね、もうね、三度目なの。

 

 梟じゃねーか。

 

 どこまで猛禽推しなんでありますか。だからこいつ平和の象徴じゃなくて捕食者じゃねーかと。どこまでロックアンドアンチピースなんでありますか。ケージを幾つか占領してるし魔法学校かここ。責任者出せアバダケダブるでありますぞくそう。

 結局すべて確認して回ったでありますが、鷹、隼、梟の他、予想通りの鷲、鳶、数は少ないものの禿鷲、あとなぜか海猫と鴎が確認されたのみで、鳩は見当たらなかったであります。

 風の流れが変わった訳でもないのに、なんとなく血腥い空気が漂ってくる気がする、そんな猛禽どもの檻に囲まれて立ち尽くすのでありました。

 

 

 

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 あきつ丸であります。猛禽の檻に囲まれて凄まじい居心地の悪さであります。伝書鳩を探しに来ただけなのでありますが何このふれあい猛禽類コーナー。手ぇ出したら持ってかれそうであります

 海猫と鴎だけが癒しでありますが、こいつらもこいつらで別段愛らしい形相ではないでありますからなあ。

 しかしどうしたものでありますか。すっかり当てが外れたでありますなあ。と途方に暮れていると、杖を突くような音が。

「あら? あんた確かモノマネ名人じゃない」

 実に不本意な呼び方をされたであります。振り返った先には、松葉杖を突く少女の姿がありました。無造作に黒髪を後ろで束ね、色気も何もない作務衣に、安っぽいサンダルをつっかけていますが、はて。どちら様でありましょう。

 自分をモノマネ名人呼ばわりするということは、歓迎会で披露した細かすぎて伝わらない艦娘モノマネ百連発を見ていた艦娘ということでありますが、はて、見覚えのないモデルであります。いや、どことなく見覚えはあるのでありますが、いまいちこう、ピンと来ないというか。

「ああ………ほら、これでわかる?」

 そう言って少女は髪を解き、二つ結いにしてみせたであります。

 二つ結いの緑がかった黒髪に、この顔立ち。

 それは五航戦がひとり、正規空母瑞鶴殿でありました。

 はあ、髪型が変わると結構印象が変わるものでありますなあ。

「あんたモノマネやってるんだからその位の観察力ないの?」

 いや失敬。というかあれはモノマネというより声帯模写でありまして、七色の声色を使い分けられるのがすごいのであって、いや、まあいいでありますけど。結局有名芸人とかアニメのモノマネもやらされたでありますし。

 瑞鶴殿はどうでもよさそうに、ケージに囲まれた如何にも安っぽいキャンピングチェアに腰をおろし、脚を放り出す様にして一息ついたであります。よくよく見ると投げ出された右足は、金属光沢のある旧式の義足のようでありました。

 じろじろと見たつもりはなかったのでありますが、視線に気づいたのか、瑞鶴殿は軽く義足を持ち上げて、緩く振って見せたであります。

「昔、ちょっとへましてね。それ以来前線を退いて、のんびりさせてもらってるわ」

 実は義肢の艦娘というのは結構珍しいのであります。岩崎ファンドのサイバネ化艦娘や、赤菱重工の重武装艦娘の強化義体といった事例もあるはありますが、そもそもの身体能力が極めて強靭でありますから、普通に対深海棲艦戦してる限りオーバースペックなのであります。

 そして修復材や医療農作物によって切断部位でも修復できる艦娘にとって、強化目的でない機械式義体は、あまり意味のないものなのであります。それでも性能の悪い義肢を使っているということは何がしか理由があるのでしょうが………まあ、深入りしないのが一番であります。

「あんた、それ気遣ってるんじゃなくて単に面倒なんでしょ」

 ご明察。声に出したつもりはないのでありますが。

「顔に出てるわ。それで? 私の研究室に何の用?」

 私の研究室、ということは、もしや。

「生物利用越境通信研究室、研究主任にしてたったひとりの研究員。瑞鶴よ」

 

 

 

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 あきつ丸であります。伝書鳩を探しに来たら、義肢の艦娘である瑞鶴殿にエンカウントであります。

 生物利用越境通信研究室研究主任………よくわからんでありますが、とりあえず伝書鳩の管理人と考えていいのでありますかな?

「まあ鳩じゃないけど、そうね。伝書鷹とかってことになるのかしら」

 つまり、このふれあい猛禽コーナーは実験に使われている動物ということでありますな。しかしまたなんでここまで猛禽推し。

「だってその方が強いじゃない」

 すごくバカっぽい理由でありました。

「で、なに? 見学かしら? 解説は5セントよ」

 フムン。伝書鳩を利用させてもらいに来ただけなのでありますが、解説付きとあらば聞かずにはおれぬであります。どうやって越境させているか気になっていたでありますし、是非。

 あ、でもニッケルは持ってないであります。両替利かないからじゃらじゃら邪魔くさくって嫌がらせに募金箱に突っ込んできたのでありました。

 ため込んでたガバスじゃ駄目でありますか?

「ガバスかぁ」

「細かいのある?」

 えーと、一番細かいので500ガバス券でありますな。

「お釣りでないけど」

 別にいいでありますよ。どうせ使わないでありますし。

「まいど。これでVitaに手が届いたわ」

 結構溜めてるでありますこの暇人。

 無造作にメタリックガバスを懐に突っ込んで、瑞鶴殿は松葉杖を取り立ち上がりました。どうやら解説してくれるようであります。あのガバス、使用期限が今月末までだったけど、黙っておこう。

「さて、と。何から解説したもんかしらね。趣味でやってるようなもんだし、見学客なんてきたことないし」

 面倒くさそうに頭を巡らせて、瑞鶴殿はケージを見渡しました。

 では、まずは核心というか、どうやって鷹たちに越境通信、つまりは『境界』を越えさせているのか、その辺りを教えて頂けると。

「教えたら、陸軍産の伝書鳩が鎮守府に出入りして情報を盗む、って流れ?」

 いえいえそんな。

「まあ、最初から細かいノウハウまで教える気はないから、構わないわ」

 瑞鶴殿は近くのケージを開けて隼を一羽、腕にとまらせて引き出したであります。

「この子たちが『境界』を越えられる理由は簡単」

 ひゅう、と風切音立てて、隼が飛び立っていくであります。

「この子たちが『艦娘』だからよ」

 

 

 

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 あきつ丸であります。傷痍艦娘瑞鶴殿の、わくわく伝書猛禽解説コーナーが始まったでありますが、この捕食者どもが艦娘であるからだ、という冒頭からショッキングなスタートであります。

 まあ艦娘が捕食者でヴァルチャーで人非人なのはあながち否定のしようもない所なのでありますが、しかし、一体どういうことなのでありますか。

「まあ、艦娘というと、ちょっと語弊があるけれど、システムと理屈は同じよ」

 上空を旋回する隼に、瑞鶴殿はフリスビーのようなものを何気なく放りあげたであります。すると、隼は急旋回してそれを追い、

 

 ZapZapZapZapZap!!!!!

 

 機銃音とともにフリスビー、いや的が粉砕四散。馬鹿げた機動で宙を舞い、隼は急降下。餌掛けをした瑞鶴殿の手元に舞い降りる隼は、飛び立つ前とは姿を変えていたであります。

 翼にギラリと輝く金属の筒。翼面と尾羽に掲げた赤き日ノ丸。だうだうと唸りを挙げる駆動音。見慣れた金属光沢。見慣れない光景。これは、これではまるで。

 

 艤装、ではないか。

 

「正確には機装とでも言うべきなのかしら。わかっちゃいるだろうけど、さっき的を撃ち抜いたのは翼内20mm機銃」

 では、あの隼は。艦娘と同じというのはつまり。

「そう。この子は紫電改。紫電改の装備妖精をその身に宿した戦闘機鳥なのよ」

 

 

 

 

「ちなみに主食はボーキサイトとコミート(※海軍の合成食品ブランド。米(Kome)と小麦(Wheat)から)の肉缶詰」

 あ、いや、そういうのはいいであります。

 

 

 

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 あきつ丸であります。伝書隼の正体はなんと紫電改の装備妖精をその身に宿した改造隼だった、のであります。しかしそんな技術があるとは、技術力もさることながら関係ない動物を兵器に造りかえる辺り人間の業は深いでありますなあ。

 しかし、装備妖精を動物に宿すとは、驚いたでありますな。陸軍でもそのような発想は、あー、あったかもであります。確か軍用犬に艦霊を降ろそうとして、大失敗した例があったでありますな。それ以降、研究は頓挫したはずでありますが。

「まあ、陸も海も似たようなこと考えるのよ。あんたは、艦娘の造り方は知ってる?」

 はあ、まあ、陸軍にも伝わっている、大雑把なあたりでしたら。

 艦娘というのは要するに、沈んでいった艦の魂即ち艦霊を巫女たる娘に卸すことで艤装や強靭な身体能力を始めとする異能を得る技術であります。正確には艦の魂そのものではなく、その分御霊でありますが。さらに言えばその端っこと接続するようなイメージだとか。

 最初期の艦娘、つまりいまでいう第一世代型の艦娘というのは、艦霊を降ろしやすい体質、巫女としての適性を持った少女たちに、儀式を以て直截艦霊を降ろしたもので、佐爾波とも呼ばれたであります。

 しかし人間とは根本的に異なる精神構造を持ち、人間の身に納まりきらない魂魄量を誇る艦霊をか弱い少女の身に降ろそうとすること自体が危険な試みで、艦娘の成功例は非常に希有なものでありました。

 またその数少ない艦娘たちも人ならざる存在に侵され、精神の均衡を崩し、往々にしてその力を暴発させたり、化け物に成り果てたり、とてもではありませんが安定して扱える戦力ではなかったのであります。

 そこで開発されたのが第二世代型。第一世代型の巫女たちのクローン、即ち素体に、基礎的な情報のみを与えた電脳を搭載し、艦霊の精神汚染を低減。さらに第一世代型の研究で得られた艤装に艦霊を降ろし、素体に接続するという間接降霊方式により負担を減らしたのであります。

 現在主流の艦娘はこの第二世代型のマイナーチェンジで、素体そのものを強化したり、サイバネ手術や生体改造を施されており、同じモデルでも製造工廠や鎮守府で差異が大きいであります。

 最新型である第三世代型は、基本は第二世代型と同じであります。違うのはその精神構造なのであります。正確には表層人格情報のOSでありますか。

 第一世代型は精神汚染で壊れ気味。第二世代型は自己学習する機械知性体。どちらも一般常識や人間社会との折り合いがなかなかつかない既知の外の精神なのであります。

 第三世代型に搭載された特殊な電脳、それがココロ機関なのであります。人工の魂とも呼ばれる艦娘の電脳、モザイク。その大掛かりなバージョンアップなのであります。

 艦娘の電脳モザイクは、識臣と呼ばれるシミュレート・マシンによって表層人格と最低限の知識のセット、つまりパターン化されたメンタルモデルをあらかじめインプットされて出荷されるであります。

 そして鎮守府での生活や前線での戦闘を経て、徐々に固有の差異を得て、個性を獲得していくであります。この個性は非常に膨大な経験と記憶、微妙な差異から生まれるもので、バックアップを取ったりコピーしたリができないのであります。

 第三世代型の電脳であるココロ機関は一つ一つが完全オーダーメイドの一品モノであります。それまで不可能であった、既に成立した人間のメンタルモデルパターンを電脳にインプットすることで、極めて細やかで、非常に人間に近い反応をとるのであります。

 ココロ機関は非常に高価で手間もかかるため、まだ主流となってはいないでありますが、第二世代型のような出荷後の教育や慣らしと言うものが最低限で済む他、人間との共感能力に優れているため、より人間社会に密接した活躍を期待されているであります。

 まあそういった人間とのコミュニケーションを考える以上に、結局のところ人間がココロ機関にこだわるのはフランケンシュタイン・コンプレックスのせいだと思うでありますけど。

 要するに、化け物の力を宿した兵器を運用するにあたって、出来る限りその制御に人間を噛ませて、安心感を得たいのでありますよ。完全な無人機械を、人間はいまだに信用できないのであります。

 第一世代型では当初は艦霊を降ろす巫女が、その巫女の精神が危ういとなれば彼女らと直結して操縦する提督がその役割でありました。より安全な手法として、造り物の人格を搭載した兵器を、提督が指示して動かす第二世代。

 そして人間に限りなく近い人格を搭載した艦娘を、人間が指揮する第三世代型。きっと第三世代型が普及しても、人間は次の世代を模索するでありますよ。どこまで行っても安心などできないまま。

 そうでなければ艦娘の基幹に爆破機構など組み込まないのでありますよ。

 あ、ちなみに電脳などという言葉を使うのでよく勘違いされるのでありますが、艦娘の電脳は実は頭部にはないのであります。頭部の生体脳は神経信号の中継機程度の役割。首がもげても一応は大丈夫なのであります。神経信号伝達の切り替えに一瞬かかるでありますが。

 肝心要の電脳は、腰部にある艤装と接続される基幹部に存在し、この部分が破壊されなければ、艦娘は基本的には修復可能なのであります。人間で言うとえーと、子宮あたりでありますかね。

 なので大抵の場合艦娘は子供は産めないであります。子宮を残したモデルにしても出生率は極めて低いでありますし、生まれたとしてもそれは人間の子供であって、艦娘の幼態などではないのであります。

 なので艦娘相手に腹パンは完全な敵対行動として認識される危険行為でありますから、冗談でもお勧めできないのであります。愚かな提督が今でも年に何件か悲しいニュースになったりするでありますが。

 

 

 

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 あきつ丸であります。艦娘に腹パンはよくないという、教育勅語にも載っている実際大事なことをお伝えしたところでありましたな。

 まあさっくり短く説明すれば、艦娘というものは沈んだ艦の霊を人間の体に降ろしたもの、と言えば最低限及第点なのであります。

「まあ、そんな感じなのよ。で、人間以外でもできないかって考えたのが、いた」

 それこそ、陸軍にも海軍にも、でありますな。人の姿をした人でないものより、最初から人でない者の方が安心できる……等と揶揄するのは悪趣味すぎるでありますかな。

 まあそれでなくても、最初から基礎能力が人間より勝る動物の方が優秀なのでは、という考え方もあったみたいであります。犬の嗅覚、梟の視力、熊の膂力。期待できる点は多いであります。

 しかし。

「しかし、なのよね。艦霊を降ろすには、犬猫では駄目だった。分御霊の魂魄量を受け入れるには容量が足りず、何より相性が悪かった、って聞いてるわ」

 この辺りは宮内庁の専門であって、陸軍もしかとは把握していないのでありますが、可視化・数値化された適正が低すぎて如何ともしがたかったのであります。艦と人間という、被造物と造物主、乗艦と乗組員という関係があってさえ、第一世代の精神は崩壊したぐらいであります。

 ましてやまるで関係のない、縁のない、むしろ人工と自然と言う対立する動物たちは、この適正が徹底的に低かったのであります。例え無理に降霊したとして、よくて耐えきれず爆発四散、悪くて制御不能の化け物が一体誕生であります。

 そういった経緯があって、動物の艦娘化計画は頓挫したはずでありましたが……。

「まあ、海軍も同じよ。期待したほどの成果は出せなかった。だから目標値を低めに設定したの」

 それが、艦霊ではなく装備妖精の降霊、でありますか。

「Exactly。その通りよ。もともと装備は艦霊の従属霊。付属品みたいなもの。それを人間が扱いやすいようにプログラムを噛ませて、式札に宿したのが装備妖精。あの姿はユーザインタフェースとしての、翻訳化されたアイコンにすぎないわ」

 艦霊を理解しやすく、扱いやすいようにと人間に宿したものが艦娘。その規模の小さいもの、として扱った訳でありますな、動物に装備妖精を降ろす実験は。

「そんなところね」

 瑞鶴殿はケージを見回して、猛禽たち、戦闘機鳥たちを眺めるであります。

「随分いろんな試みがあったらしいわ。そして結果として、戦闘機は攻撃性の高い猛禽類に適正があることが分かった。また水上機であれば、海鳥なんかがいいってね。

 ま、解説はこんなところね。この子たちが艦娘の下位互換である装備妖精だから、『境界』を認識し、越えることができる。そして私は、それを使って趣味で伝書鳩みたいなことしてる」

 趣味だったのでありますな、それ。

「まあね。正直、この方面の研究ってすっかり行き詰ってるのよ。理論的にもコスト的にも」

 再びキャンピングチェアに腰をおろして、瑞鶴殿は一息つくであります。

「普通の装備妖精でさえ開発資源がかかるのに、こいつらは素体の調達に訓練、それに維持費までかかるもの。多少優れてたところで、とてもじゃないけど実戦で使えるものじゃないわ」

 まあ一応こいつらナマモノでありますものなあ。

 それに普通の装備妖精なら、艦載機妖精一人につき、最大で四十以上の艦載機が扱えるであります。ところがこの戦闘機鳥どもは、分裂するという訳にはいかないでありますからなあ。単体でどれだけ優れていても、数が出せない以上、戦力としては心もとないのであります。

「だから最近だと、式札型の装備妖精の改良とか、改造とか、そう言う方にシフトしてったわ。そういうのは軍事企業でも頑張ってるとこね。合法非合法問わず。

 あー。しかし喋りすぎたわ。疲れた。こんなに喋るのって久しぶり」

 普段は誰かとお喋りしたりはしないのでありますか?

「ない訳じゃないけど、ここに来るような娘ってあまりいないわね。来ても無口で愛想悪い娘くらい」

 随分具体的でありますな。

「ああ、噂をすればなんとやらね」

 瑞鶴殿の言葉に振り替えると、丁度ケージの向こうから一人の艦娘が訪れるところでありました。

 

 

 

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 あきつ丸であります。瑞鶴殿のわくわく猛禽ランドもつつがなく終了したところで、新たな艦娘のエントリーであります。

 盆に急須と湯呑を載せて姿を現したのは、加賀モデルの艦娘でありました。もはや誰だお前と言うほどラフな格好で寛いだ瑞鶴殿とは違って、テンプレートな佇まいであります。サイコパスじみた世間への無関心を詰め込んだような無表情もテンプレートであります。

「あら。陸軍の間諜」

「研修生でありますバンザイ」

 もうこの手のやり取り慣れたでありますなあ。

「ああ、丁度よかった。喋りすぎて喉渇いてたところなの。お茶貰える?」

「ええ、もとよりそのつもりよ。でも……」

 ちらとこちらを見やる加賀殿。盆の上の湯呑は二つ。まあそりゃそうでありますよね。

 しかしそこら辺は無問題。お気遣いなく。懐からこの間仕入れたばかりの湯呑を取り出すであります。

 え? お茶を遠慮するのが普通? そんな普通は知らんであります。貰えるものは病気以外貰うであります。

 さて、加賀殿にお茶を淹れてもらった訳でありますが……この湯呑と急須、見覚えあるでありますな。というか自分の湯呑と出所同じでありますな。

 内地でやってる一番くじの景品であります。一番くじの開催鎮守府は限られているので、悔しがる艦娘が多いのでありますが、はてさて、絶対開催地ではないであろうここになぜこんなものが。

「定期船の随伴当番だった娘にお金を預けて、引いて来てくれるよう頼んだの」

「私も欲しかったしねー。鎮守府から出られるのって基本随伴当番の娘だけだから、お使いが多くて大変みたいだけど」

 成程。そう言えば他の鎮守府でも店舗限定品とかの遠征班があったでありますな。

 しかし、この急須確か66個中2個しかなかったはず。自分は5回引いて湯呑と小皿、箸置きでありました。しかもダブり。確実を期すなら箱買いでありますが、いくらほど預けられたので?

「急須と湯呑三種が欲しかったから、一回600円の四回で2400円よ」

 は?

「そうそう、私と加賀で割り勘して1200円ずつ」

 馬鹿じゃねーの?

 これくじでありますから。欲しいのが手に入る訳じゃねーでありますから。しかも湯呑は中身が分からない完全ランダムでありますから。陸軍の知り合いでも26枚引いてようやく全種類コンプしたくらいであります。しかも一緒に引きに行った人とダブり交換でようやく。

 いっそ箱買いしてダブりは転売した方がよっぽど経済的っていうのが一番くじじゃねーのかよであります。それを狙った的だけピンポイントとか馬鹿なんじゃないでありますか。

「そういうもんなの? 頼む時いつもこんな感じだからねえ」

「そうね。大抵欲しいものを伝えてお金を預けたら、ちゃんと引いて来てくれるわ」

 ええー………取り合えず湯呑一個手に入ったからもういいや満足したよ勝負はしないって退いた自分は何でありますか……。

「まあでも今回は絶好調ってわけじゃなかったみたいね」

「そうね。別色の急須は駄目だったみたいだもの」

 それくじの景品じゃねーから。北上印のそれダブルチャンスキャンペーンでありますから!  100名様限定でありますから!

「でも前にJOJ○のを引いてもらった時はクレイジー・ダイヤモンドとキラークイーンを二色ずつ持って来たわ」

「猫草くらいだったんだけどね、欲しかったの」

 Act2のABC賞にラストワンにダブルチャンスじゃねーか! 馬鹿でありますかその店舗!?

「何でかしらねえ、雪風が当番の時に頼むと絶対そんな感じよね」

「それも大抵余計なのまで付いてくるわ」

 雪風殿かぁー、実力でとか言ってたけどガチで幸運艦勢でありますかぁー。あとそれ余計なのじゃねーでありますから。

 うわー、マジでありますかー。なんか妙なところで妙な凹み方するでありますなあ。Act2は猫草とランチバッグ欲しさに結局ほぼ一箱いっちゃったでありますからなあ……。手に入れた後は結局放置してるでありますけど……。

 妙な疲れを覚えながら、加賀殿の淹れてくれたお茶をすするであります。あ、玄米茶。美味しいであります、これ。ほんとに……。

 

 

 

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 あきつ丸であります。加賀殿襲来とこの場にいない雪風殿のリアルラックの壊れ方に大破寸前のあきつ丸であります。

「また玄米茶? あんたも好きねえ」

「別にこだわりはないわ。特売で買っただけだもの」

「貧乏くさ」

「あなただってお金はかけない方でしょう」

「まあね」

 しかしこのお二方、気の置けない仲というか、かなりフランクなやりとりであります。一航戦の加賀殿と五航戦の瑞鶴殿というと、民間の方には結構ぎすぎすした関係というか、ぎこちない間というか、あまり仲の良いイメージは少ないと思われるであります。

 艦娘を題材にしたアニメーションでも登場していたでありますし、書籍にも代表的な艦娘として紹介されることが多いでありますから、自然、テンプレートと言うか典型的なパターンが構築されているのではないかと。

 例えば、突っかかる瑞鶴殿と、軽くあしらう加賀殿。生意気にも噛みついてくる瑞鶴殿と、それにイラつかせられる加賀殿。憧れを抱いているけれども素直に気持ちを表せない瑞鶴と、子犬のような純真な瞳の後輩を制止できない拗れズッカガズッカガとか。

 まあそんなもんは所詮一例にすぎない訳でありますよ。同モデルの艦娘なんざそれこそ万単位で世界に蔓延っている訳で、それがみんな同じ考え方をしている訳ではないのであります。

 最初は知識の詰まった赤ん坊にすぎない電脳も、育った環境や人間関係の中でたった一つの個性を得ていくのであります。なのでそれこそテンプレ通りの二人もいれば、ちょっとブラウザゲームやり直してこいと言わんばかりの甘々いちゃらぶカップルもいる訳であります。

 その辺りは拒絶するより受け入れるのが大人のやり方で、うちはうち、余所は余所という住み分けが大事であります。これ創作でも大事。この陸軍間諜もといおとぼけ派遣艦娘あきつ丸ちゃんだって一つの個性なのでありますバンザイ。

 嫌なら読むなというのは一種の断絶であり発展性を欠くでありますが、お互いが程良い立ち位置を維持するというのが平和の基本であります。まあこの鎮守府は争いと無縁なほのぼの日常系なので心配はありませんなははは。

 あ、でもアナルきつきつ丸とかは程々にするでありますよ。アナルは形容詞なので正確にはアヌスきつきつ丸でありますからな。より正確にはエイヌス。まあ日本人の発音なので気にするほどでもないでありますが。

 まあそんな自分の尻の穴の話などどうでもいいのであります。尻の穴が小さい奴は帰ってどうぞという話ではありましたが、まあそういうきな臭くなりそうな話は止めておくであります。

 えーと、なんでありましたか。

 そうそう、艦娘も個性いろいろなので、鎮守府ごとにテンプレ通りにはいかない性格や関係が見られるという話であります。

 例えばこのお二人も、気さくに気楽に話し合えるという関係だけではなかったようであります。一応自分も気になったのでどういう関係かお尋ねしてみたのでありますよ。

「関係ねえ。わたしが加賀の教官役だったってくらいよ」

「そう、私が後輩。弓のや艦載機の扱いは全て瑞鶴譲りよ」

 と、実はこのお二人、世間一般で認識されている関係とは逆で、瑞鶴殿の方が先輩格なのであります。

 全ての鎮守府にはそれぞれの事情というものがあり、艦娘というものはそれぞれが人格と個性を持った別人であり、実艦としては最新艦が最古参の鎮守府もあれば、時代遅れの骨董艦が新入りのお茶汲み係の鎮守府もあるのであります。

 瑞鶴殿と加賀殿のように、実艦では後輩であり練度に劣ったとされる五航戦の瑞鶴殿の方が実戦経験も豊富、先輩であった加賀殿にため口でお茶を汲ませる、そんな関係も一つの形なのであります。

 自分のように臆病で腰の低い艦娘などは、誰にでもぺこぺこと頭を下げて平身低頭を尽くす他ないのでありますけどね。いやぁ、全くどこに行っても、戦力の乏しい揚陸艇は肩身が狭いでありますよ。おまけに陸軍所属でありますから、いやはや御行儀よくしてないとであります。

 え? 摩耶殿? あれはほら、気の置けない仲というか、本心を晒せる仲というか、笑顔でダブルピースまでした仲でありますよ自分らは。ああいう息抜きできる相手がいないとやってられないでありますし。

 自分、嫌われるのも馬鹿にされるのも軽蔑されるのも平気でありますが、舐められるのだけは我慢なら無いでありますからなあ。

 一応お仕事でありますから笑顔で舐められてやってるでありますが、犬畜生が生臭ェ息はあはあ言わせて舐めかかってくると鬱憤晴らしもしたくなるであります。

 こればっかりは、教官殿に再三に渡って指摘される自分の悪癖でありますなあ。

 思い出すでありますなあ。まだ工廠から出たばかりで右も左も分からなかった頃は、よく教官殿に噛みついていたものであります。物理的にも。本部の柱にはまだ歯型残ってるでありますかなあ。

 まあそれでも教官殿や上官殿方の、ほんと申し訳なくなる位のご指導のおかげもあって少しは余裕らしきものも出てきたでありますが、その結果得られたのは陰険腹黒の揶揄だけでありました。あと帝都物語なる綽名でありますな。不本意であります。

 まあ陰険腹黒どころか口先で世の中回してるような妖怪どもの巣窟で育てられてこの程度で済んでいるのでありますから、むしろまだピュアな方でありますよこれ。陸軍情報部は就職先としてお勧めしないのでありますよ、皆さん。

 

 

 

[◆◇◆◇◆]

 

 

 

 あきつ丸であります。就職先は選べる内に選んでおかないとケツから血が出る程の後悔すらも生温い絶望を味わう羽目になるという話でありました。ありましたっけ?

 そうそう、実は先輩後輩関係が実艦の頃とは逆転している、年下×年上なのか先輩×後輩なのか下剋上スタイルなのかよくわからないお二人の話でありましたな。艦娘が二人いたらそこには百合の花が咲くかレズが跋扈すると大井殿も仰ってるであります。

 ところで加賀殿は瑞鶴殿のお弟子さん。ということは加賀殿も鷹匠の真似事でも?

「そういうわけではないわ。今のところまともにこの子たちを運用できるのは瑞鶴だけだもの」

 おや。あんまり互換性のないシステムなのでありますかな。

「まあ、まだ試験段階みたいなものだしね。それに正式採用しちゃうとうちの旨味が減る」

 ふむ。まあどんなに優秀な商品もどんなに奇抜なアイディアも、出回って一般化してしまえば瞬く間に応用策や対抗策が組まれるものでありますしなあ。

 そうなると、加賀殿がこのアーセナル鎮守府におられる理由が気になるでありますな。ああ、下世話な好奇心からではなく、仕事としての興味でありますが。

「ふむ………秘密兵器の運用試験、とだけ言っておくわ」

 おや、いけず。詳しくは教えてくれないと。

「秘密兵器は秘密にしているうちが花だもの」

「それ、堂々と晒してる私に対する当てつけかしら?」

「そう感じるのは疾しい所があるからではなくて?」

「あーあーあー、やなやつー」

「まあ、でも、そうね。もしもあなたが秘密兵器の秘密を知る時があるとすれば」

 加賀殿はすぅと目を細め、その猛禽じみた瞳でひたとこちらを見据えたであります。

「それがあなたの命を奪う時になるかしら」

 そうならないことを願っているでありますよ。おーおっかねえ。

 このままのんびりお茶してても、猛禽どもの目と、猛禽の目をしたおっかねえお嬢さんが怖いので、そろそろお暇するであります。

「あら、そう? いつでも遊びに来ていいわよ。無口な根暗女しか来ないんだから」

「口が減らない」

「一つしかないもの」

 やれやれ、仲がよろしいことで。お茶を飲み干し、湯呑を懐へ。そして立ち去ろうとして、ふと思いついたことがあったので、再度踵を返すであります。

 加賀殿。少々お聞きしても?

「何かしら?」

 特に近くが仕事場でもなさそうなのに、話を聞く限り頻繁に訪れているようでありますが、理由をお聞きしても? あ、これは下世話な好奇心からであります。

「雉も鳴かずば撃たれまい」

 アッハイ。

 目を細め唇を吊り上げる笑い方――空母型によく見られる威嚇行為が見られたので、馬に蹴られる前にとっととおさらばするであります。加賀モデルがこじれるとバグるって本当でありますな……。

 

 

 

[◆◇◆◇◆]

 

 

 

Tips.

 

>小ネタ

 

・スタンド使う殺戮追跡機械

ご存じ「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第三部より、スタンド使いの隼、ペットショップの事。なお鷹と隼は厳密には別種だけれど、収斂進化の結果素人目には知ったことかとしか言いようがないくらい似てる。

 

・ボーシッ

黒人ヤクザがブチ切れて叫びそうなセリフ。

恐らくBullshitだと思われる。

 

・一発だけなら誤射かもしれない

朝日新聞が武力攻撃事態とは何かという反有事法制記事にてぶっこんできたフレーズ。

記事内のFAQで、「Q.ミサイルが飛んできたら」という設問に対し、「A.武力攻撃事態ということになるだろうけれど、一発だけなら、誤射かもしれない」と記述し解説。

 

・ビークール

「冷静になれ」という意味。雛見沢では「クールになれ」はむしろ暴走フラグに位置する。

 

・魔法学校かここ

少なくともイギリスの魔法社会ではフクロウ便が広く使われており、魔法学校にも当然のようにフクロウ舎がある。

 

・アバダケダブる

防御不能の死の呪文とされる「アバダ・ケダブラ」のスラング的動詞活用形。

 

・松葉杖を突く少女の姿

瑞鶴。拙作「気まぐれ屋の君へ」の瑞鶴のラフなスタイルはここから来ている。

また「絶対に沈まない雪風のお話」の叢雲の義足もこちらから。

 

・細かすぎて伝わらない艦娘モノマネ百連発

フジテレビ系列の番組である「とんねるずのみなさんのおかげでした」内のコーナーである「博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権〜」及びそれを元ネタにしたMMD動画「細かすぎて伝わらない鎮守府モノマネ選手権」が元ネタ。

 

・七色の声色

「七色いんこ」(手塚治虫)に、「モノマネがうまい素人役者、そしてドロボー」というセリフがあるが、ある種あきつ丸の一面を指しているともいえる。

 

・サイバネ化艦娘

人間の体であるから艦霊を降ろせる艦娘をサイボーグ化するという限界を試すような技術。

部分的なサイバネ化(多機能義眼など)から殆ど全身義体まで幅広い。

「ニンジャスレイヤー」のサイバネニンジャがイメージにある。

 

・重武装艦娘の強化義体

サイバネティックによって艦娘を強化するサイバネ化とは違い、重火器を運用するために土台である艦娘を強化するという火器主体の設計思想。

 

・医療農作物

後ほど実物がお目見えするアイテム。

元ネタは「クロとマルコ」(掘骨砕三)の同名のアイテム。

 

・「だってその方が強いじゃない」

この世界の企業における基本的な思想。類似系に「その方が格好いい」などがある。

いわゆるロマン。

 

・解説は5セント

スヌーピーで有名な「ピーナッツ」(チャールズ・M・シュルツ)より、ルーシーの精神分析スタンドの料金5セントから。

 

・ニッケル

アメリカ合衆国の5セント硬貨の通称。銅とニッケルの合金である白銅製。

 

・ガバス

ひょうたん島の通貨。初代大統領ドン・ガバチョが芋版で造幣。のことではない。

ここではファミ通誌上で使えるポイントサービス「メタリックガバス」の事。

読者ページにお便りが採用されるとガバスチケットを入手でき、一定のチケットを送付するとポイントに応じた商品と交換できる。

およそ1ガバス=1円くらい。

いまはもうサービス終了しているのでは。

 

・フリスビーのようなもの

クレー射撃で使用される的。クレーと呼称される素焼きの円盤。

 

・ZapZapZapZapZap!!!!!

もとはアメコミにおける銃やレーザー兵器の発射音を表す擬音。

 

・戦闘機鳥

当時はまだ春日丸=大鷹が実装されておらず、鷹匠スタイルの艦娘はいなかった。

着想を得たのは虎順氏(id=125380)の描く鷹匠スタイルの赤城加賀より。

 

・コミート(※海軍の合成食品ブランド。米(Kome)と小麦(Wheat)から)の肉缶詰

映画「ソイレント・グリーン」及び原作である「人間がいっぱい」(ハリイ・ハリスン)に登場する合成食品ソイレントの名称が大豆 (soybean) とレンズ豆 (Lentil)の合成語であることから。

さらにレポート編纂者がこの映画を見るきっかけになったのはRPG「ゼノギアス」に登場するソイレントシステムより。

 

・艦霊

読んで字の如く艦の霊。

艦そのものというよりもそういう概念という方が近い。

 

・分御霊

わけみたま。分霊。神道においては神霊は無限に分けることができるとされる。また分けても影響はなく、元と同じように働くとされる。

サーヴァントが座にある本体から分かたれて顕現するのと同じようなもの。艦娘はその分霊の端っこに接続して力をもらっている。

 

・佐爾波

さにわ。審神者とも。古代の神道の祭祀において神託を受け、神意を解釈して伝える者のことであるとされる。

同じDMMの刀剣乱舞にてさにわの用語が出たため、お借りした。

 

・人工の魂とも呼ばれる艦娘の電脳、モザイク

「ガレリオのモザイク」(清野桂也)より、人工の魂と呼称される電子知能(?)モザイクから。

 

・メンタルモデル

ここでは「基本的な人格セット」というような扱い。

こういう風に感じやすい、このようには感じにくいといった傾向程度。それにプラスしてオリジナルを模倣した行動様式といったところ。

 

・既に成立した人間のメンタルモデルパターンを電脳にインプットする

人間の記憶や人格を記録装置に転写するようなもの。厳密にはこの通りではない。

一つ仕上げるのに十数年から二十年弱かかるため現実的ではないが、後述のフランケンシュタイン・コンプレックスもあって研究が続けられている。

 

・フランケンシュタイン・コンプレックス

人間が自身の創造主である神の御業に憧れることと、その模倣によって生み出した人造人間やロボットによって反逆されるのではないかという恐れの入り混じった複雑な心理。

「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」(メアリー・シェリー)にて、ヴィクター・フランケンシュタインが自ら生み出した怪物の醜さを恐れ拒絶したことから。

ここでは、人間が自分の作りだした兵器を恐れ、どこかで制御に人間をかかわらせることで責任を発生させたいということに対して使用している。

 

・爆破機構

自爆装置。この場合他爆装置か?

RPG「ゼノサーガ」より、合成人間であるレアリエンに危機管理のための緊急制御コードが仕込まれていることから。

勿論普通の艦娘や提督は知らない。

 

・艦娘相手に腹パン

業の深い界隈でよく見かける光景。

 

・教育勅語にも載っている

「ニンジャスレイヤー」に頻出する「古事記にもそう書かれている」から。

直接の元ネタはツイッター鎮守府の一つである「ケンペイ天狗」(ANA氏)に見られる「教育勅語にもそう書かれている」より。

 

・Exactly。その通りよ。

「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第三部より、敵スタンド使いテレンス・T・ダービーのセリフ「Exactly(そのとおりでございます)」より。

 

・わくわく猛禽ランド

TYPE-MOONの『月姫』及びMELTY_BLOODシリーズに登場する死徒ネロ・カオスが体内に宿した666の獣の因子と同数の命を用いた物量戦を繰り出す様をファンが「ガクガク動物ランド」と称したことから。

 

・新たな艦娘のエントリー

殺戮者のエントリーだ!

 

・サイコパスじみた世間への無関心を詰め込んだような無表情

何故かレポート編纂者は加賀さんに無表情属性を詰め込みたがる。

 

・「研修生でありますバンザイ」

「ドリフターズ」(平野耕太)より、那須与一にエルフが強制された語尾「ゲンジバンザイ」より。

 

・貰えるものは病気以外貰う

「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)にて、似たようなセリフがある。

一つは第四部より「オレはくれるっつーもんは、病気以外なら何でももらうかんなーコラァ!」(虹村億泰)。

もう一つは「スティールボールラン」より「もらえるものは 病気以外ならなんでもイタダくぜ」(ジャイロ・ツェペリ)。

他にもあるかもしれないが。

 

・内地でやってる一番くじの景品

ツイッターでは画像付きだった。

『一番くじ「艦これ」 -提督、お茶ですよ!-』のD賞湯呑みとC賞単装砲急須のこと。

あきつ丸が語っている26枚云々はレポート編纂者の経験談。

 

・Act2のABC賞にラストワンにダブルチャンス

これもレポート編纂者の経験談。どうしても猫草がほしくて最終的にほぼ箱買いになって神に祈っていたらまさかのダブルチャンス当選で交通事故に遭って死ぬんじゃないかと戦々恐々としていた。

 

・雪風が当番の時

ぼくのかんがえたさいきょうのかんむす玩具箱の筆頭ではあるが、人格者であり単体としての危険度がさほど高くないので、内地へも出られるようである。

 

・美味しいであります、これ。ほんとに……。

「孤独のグルメ」(久住昌之)第七話より、たこ焼きを食べた井之頭五郎のセリフ、「ほんと…これほんとにおいしい けど…どうやって表現していいのか 何を言っても気取っているようで…おいしいです…ほんとに…これ」より。

 

・艦娘を題材にしたアニメーション

この世界でも広報用にアニメ版艦これが放映されていたようである。

 

・アナルきつきつ丸

業の深い界隈でよく見かける。

 

・アナルは形容詞

analとanusの違い。レポート編纂者は「GTO」(藤沢とおる)で知った。さすがグレート・ティーチャー・オニヅカ。

 

・瑞鶴殿の方が先輩格

これも拙作「気まぐれ屋の君へ」に流用されています。

 

・自分のように臆病で腰の低い艦娘などは、誰にでもぺこぺこと頭を下げて平身低頭を尽くす他ないのであります

「魔人探偵脳噛ネウロ」(松井優征)に登場する魔人脳噛ネウロのセリフ「それはもう… 腰の低い我が輩は… 毎日のように人に頭を下げる日々だ」より。

 

・笑顔でダブルピース

業の深い界隈でよく見かける。

 

・嫌われるのも馬鹿にされるのも軽蔑されるのも平気でありますが、舐められるのだけは我慢なら無いであります

「皇国の守護者」(佐藤大輔)の登場人物、新城直衛のセリフ「嫌われるのも馬鹿にされるのも軽蔑されるのも平気ですが、 舐められるのだけは我慢なら無い」より。

なおレポート編纂者は途中で打ち切りになったコミカライズしか読んでいない。

 

・艦娘が二人いたらそこには百合の花が咲くかレズが跋扈すると大井殿も仰ってる

仰っていたかどうか定かではないが、あきつ丸レポートはガチレズ大井botを応援しております。

 

・空母型によく見られる威嚇行為

笑うという行為は本来攻撃的なものであり 獣が牙をむく行為が原点である。

「シグルイ」(山口貴由)より。

 

・加賀モデルがこじれるとバグる

特に関係はありませんがあきつ丸レポートは「赤城の結婚が決まったクソレズ加賀bot」及びふぶキチシリーズを応援しております。

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