警告:乙種機密指定
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下衆でも卑怯でもない、清く正しい方のあきつ丸であります。潔くもない方でありますがね。
さーて。加賀殿から逃げ出して来たところでありますが、どうするでありますかね。艦娘調査もノルマ終えた感じでありますし、パターン的に飯レポタイムでありますかな。
とはいえ、結局のところ、この鎮守府で飯を食うとなると、艦娘用食堂くらいしかないのがネックでありますな。いい加減ゲテモノ海洋生物でごり押しするのもマンネリでありますし。
普通の鎮守府でありますと、メガフロートの居住区域には民間企業が参画しており、色々美味しいお店とかあって、グルメマップが出る程なのでありますが、ここはどうなのでありますかな。
当初聞いた話では、機密保持のために外部企業は入れてない、ほぼ完全な自給自足体制らしいでありますし、そうなると労働者用の規格化された食堂くらいなものでありますかなあ。
考えてみると自分、この鎮守府に来てから一度もこの司令部棟から出てないでありますな。全てここで済むとはいえ。折角なので他の区画も見に行くべきかもであります。
労働者……D級職員とか言ったでありますか。彼らには彼らの生活があり、彼らの食べるものがあるはずであります。他の鎮守府の生活とはまた違った景色が見れるはずであります。
具体的には、ご当地B級グルメ的な。
どんなに規格化されていたとしても、そこに住むのは人間なのであります。画一的な生活の中、彼らなりの工夫や拘りによって独自の文化が生まれていることが期待できるであります。
外部とのつながりが殆どないこの隔絶された鎮守府というガラパゴスで生まれた固有の飯。言うなればガラパゴス飯。ダンジョン飯並に期待ができそうであります。その多大な期待が大きな失望を招くと半ば予想しながらも、止められないのは人間も艦娘も同じであります。
いざゆかんアーセナル鎮守府居住区!
の前に、ちゃんと提督殿と叢雲殿に許可とらんとでありますな。
報告、相談、連絡。ホウレンソウ大事。血の如き鉄分豊富な三カ条であります。
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あきつ丸であります。ちょっと遠出して、居住区域までおでかけであります。ちゃんと提督殿と叢雲喉にも許可は取ったでありますよ。
結構許可取るの難しいかも、と思ったでありますが、意外と簡単に許可が下りたであります。重要機密は司令部棟にまとまっているからでありますかね。
ちなみに交渉はかなりゆるゆるでありました。
提督殿、自分ちょっとB級グルメ探索もとい見学のために居住区とか工場とか見たいであります。
「え? ああ、いいんじゃない」
「あんたね、もう少し考えて許可出しなさいよ」
「駄目なの?」
「別に問題はないけど」
「じゃあお土産期待してるね」
みたいな感じでありました。実際はもうちょっと叢雲殿がぐだぐだ面倒なことぬかしてたでありますけど。あと提督殿に、グルメ情報アプリも頂いたのであります。所謂鎮守府限定アプリで、この『海域』でないと起動できないものの、情報量と密度はグンバツであります。
アプリを使用しているものがグルメ関連の情報を投稿していくことで常に情報がアップデートされ、見やすい地図も付いて便利であります。システム面も常に改良が続けられており、非常に使いやすく痒い所に手が届く細やかさ。
これは偏見かもでありますけど、多分アプリ製作者は艦娘ではなくて人間なのではないかと。艦娘って基本的に人の気持ちになって考えるのがくそ苦手でありますからな。こういう誰でも使いやすいというのより、ドン詰まったピーキー過ぎるとがったデザインばかりであります。
提督殿が気になっているお店や、出来れば買ってきてほしいお土産などをリストアップしてアプリに登録してくれたでありますが、やっぱりアレでありますかね。自分で動けないから余計にこういうの気になるんでありますかね。
折角なので連れて行ってあげられたらいいのでありますが、流石にそこまで気を許してはくれなさそうでありますなあ。特に叢雲殿。叢雲殿が連れていきゃあいいものを。あ、あれか。過保護すぎてジャンクな食い物はやれないってか。カーチャンでありますな。
ともあれ司令部棟を下りに下り、居住区へ繋がるゲートに到着であります。既に提督殿から連絡が行っていたのか、暇そうにテレビ見てた警備らしい駆逐艦が、通行用のカードを発行してくれて、スムーズに居住区へ。
機密区画とそれ以外を隔てるゲートなのでありますから、もっと厳しいチェックとかあるのかと思っていたでありますけど、かなりゆるいでありますな。ガバガバであります。
とか思って、ゲート抜けた後に振り向いたら、重武装型の扶桑方姉妹が阿吽像よろしくゲートの左右に仁王立ちであります。人間相手どころか並の艦娘相手でもオーバーキル前提のネギトロ製造機じみた連装機関砲がこちらをロック!
素早く閉じられた扉には、「関係者以外の立ち入りを禁じます」という丁寧な明朝体の注意と、最底辺のクズでも理解できるよう威圧的な筆文字で「コロス」のルビ振り。そしてモズのハヤニエめいて吊るされた、骨だけを丁寧に砕かれた人体。恐ろしいことにまだ生きてる。
空気が漏れ出るような呻き声と、いやに耳に残る「タスケテ」と「ゴメンナサイ」のリピート再生。扉の上部には勿論ロダンの考える人。「無思慮は罪」がテーマの、どの鎮守府でも公開処刑や拷問時に掲げられる典型的マスコットであります。
等という光景は全て自分の妄想であり、この鎮守府は日常系ほのぼの鎮守府。いいね。
さて、厳重な警備のほどを確認したところで、早速食べ歩きとするであります。え? 食欲が減らないのか? 脳と消化器官を切り離すことがいい兵士の条件でありますよ。
安心安全のセキュリティを確認したところで、早速提督殿お勧めのお店でも探してみるであります。
アプリを起動させ、チェックの入った地図を表示するでありますが………ふむ。ちょっと道がわかりづらいでありますな。地図は非常に見やすい出来なのでありますが、居住区自体が無秩序に増設を繰り返された無計画都市のようで、細かな路地が多いのであります。
これが地下――というより、船体内部であればむしろ構造は極めて秩序立っているのでありますが、甲板上に後から建造される都市は、時として混沌とした迷宮と化すのもしばしばであります。
鎮守府サイドがしっかりとした都市計画を準備していたり、居住区の管理者が計画性を持っていればそんなことはないのでありますが、基本的に鎮守府の居住区は難民の吹き溜まりでありますからなあ。
戦争特需で増えに増えた人間を賄う土地は内地には足りず、自然溢れ出た人間の群れは夢と希望とはした金を抱えて『海域』に出向くことになるのであります。勿論、その夢と希望は悪夢と失望に移り変わり、はした金さえ手に入らない羽目に至る事が多いでありますが。
今や人間という商品は、底値も底値。技能も異能も持たない人間などこの世で一番安い動産に過ぎないのであります。今日日、ベーシックな駆逐艦の素体など一体20万ちょっと。それより安い訳でありますよ、人間様は。
まあ前線で主力張ってるようなモデルやオーダーメイド品は主力戦車以上に高価でありますけど、それでさえ消耗品じみた生産がなされている世の中でありますから、人間様の価値の暴落ぶりたるやジンバブエドル並みでありますな。
命は鴻毛より軽いとか地球より重いとかいうでありますが、今の人間の価値を考えるにどちらも正しいでありますな。技能も異能も持たない人間はただの肉の塊、うんこ製造機でありますし、技能や異能を持つ者は大多数を踏みにじっていいだけの価値があるのであります。
素晴らしいことじゃありませんか。いくら高かろうと消耗品にすぎない経済動物、戦争経済動物の艦娘に比べれば、少なくとも技能を磨いて泥沼から這い出るという希望が持てるのでありますから。
自分はそんな生き物になりたいとは露ほども思わんでありますがね。
さあて、下らない考察をしている間にも腹は減るであります。こうなったら適当に誰か捕まえてインタビューでありますかなあ。
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あきつ丸であります。なかなか道案内が見つからず困っていたところ、見知った顔を見つけたであります。向こうはこちらに気付くなり目を逸らし、早足で来た道を引き返し始めたでありますが、いやはや照れ屋さんでありますなあ。
「嫌がってンだよォ、放してくれ、逃がしてくれ、キャッチアンドリリースの精神ッ」
やだなあ、自分釣った魚にはちゃんと餌をやるタイプでありますよ。鞭も。
途中から表通りに向けて全力疾走し始めたので仕方なく肘を極めて拘束し、引きずって元の路地裏に戻るであります。
全く、恥ずかしがり屋さんでありますなあ、摩耶殿は。
「うぐゥ、それ以上いけない……曲がらねェ、そっちには……!」
そして相変わらず痛がり屋さんであります。
痛がるばかりでは会話にならないので、拘束を外し、空き箱に座らせてやるであります。
フムン、それにしても、今日の摩耶殿はお洒落さんでありますな。
普段の制服ではなく、雑誌からそのまま抜き出して来たようなコーディネートであります。
「ぐッ、わ、悪かッたな。あたしもお洒落には疎いんだよ」
まあ外れはないのでいいとは思うでありますが。それに容姿に似あったチョイスもしっかりしてるでありますし、センスはあるのでは。
「なンか気持ち悪いな、褒められると」
失敬でありますなあ。しかしこうして改めて見てみると、服装一つで結構印象変わるものでありますな。瑞鶴殿もそうでありました。
「しッかし、なンであンたがこンなトコに居るンだよ?」
おお、そうでありました。早速摩耶殿に事情を説明し、提督殿お勧めの店まで案内して頂くことにしたであります。
「ああ、うン、あたしも気になッてた店だし、構わないけど………あの、そちらは?」
す、と路地裏に転がる底値の動産を見やる摩耶殿。
彼は、先程ゲートを出てすぐのところで迷っていたら、艦娘と知ってナイフ片手に強盗行為に走った………いえ、親切に話しかけて下さった有志Aであります。道案内でもとインタビューしたのでありますが、あまり話が通じなかったので諦めたのであります。
「あの、指が曲がッちゃいけない方に……」
インタビューであります。
「歯が何本か落ちてンのは……」
アンケートにご協力いただいたであります。
「息、して……」
死ぬほど疲れてるだけであります。起こさないでやって欲しいであります。
摩耶殿にも、インタビューから始めた方が……?
「よォし、じゃあ早速行こうぜッ!」
いやあ、快く道案内を引き受けて下さったであります。
これで美味しいお昼が食べられそうでありますなあ。
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あきつ丸であります。摩耶殿がパーティに加わったであります。早速案内をして頂こうと思ったら、鍵付きのロッカーに連れて行かれたであります。
ロッカーの中には何種類かの衣類がありました。
「取り合えず、まずは着替えねェとな」
別に自分はこの恰好で構わないのでありますが。
「あンたが良くてもあたしが困る。あンたも変なのに絡まれたくないだろ?」
どういうことでありますか?
摩耶殿は適当に自分に会いそうなものを見つくろいながら、言葉を選んでいるようでありました。
「あー……あンたさ、昨日、食堂でD級職員について聞いたろ?」
そうでありましたな。確か摩耶殿は詳しくは知らないし、叢雲殿が言わないから聞いていない、と。
「でもさ、あたしも気にはなッてたンだ。あの人があたしを大事にしてくれてるのはわかッてる。でも、あたしもここに腰を落ち着けると決めたからには、知らないふりは卑怯なんじゃないかッて、あンたを見てたらさ」
自分を見て、でありますか?
「あンたさ、本当は何にもしたくないンじゃないのか?」
こちらを見やる摩耶殿の視線は、いやに鋭くて嫌になるであります。
「仕事だから、そうしなければならないから。でも、ホントは、嫌で嫌でたまらない。そンな感じだったよ。それでもしなけりゃいけない以上、せめてやりたいようにやらせてもらう。納得いくようにやらせてもらう。違うかい?」
さあて、どうでありましょうなあ。
「うまくやろうと思えば、誰にも気づかれずもっとうまくやれるだろうに、あンたはわざわざ正面から馬鹿みたいに立ち向かッてく。それがあンたなりの反抗で、あンたなりの敬意の見せ方なンじゃないかって、そう思うンだけどさ」
………別に。
別にそういう訳じゃねーでありますよ。のんべんだらりとやっていきたいから適当に仕事してるだけであります。あれこれ考えるのが面倒なだけであります。郷に入りては郷に従ってるだけであります。
自分に。自分に矜持など。
「それならそれで別にいいンだ。あたしが勝手に見出して、あたしが勝手に感化されてンだ。自分なりに理不尽に向き合ッて、不条理を生きてこうッてね」
摩耶殿はようやく決まったらしい一揃いをこちらに放って、にやりと不敵に笑われました。
ほんと、自分、この娘苦手であります。
あきつ丸であります。女子トイレで制服から着慣れない服に着替えていると、なんだかこう、ちょっとドキドキするというか、悪いことしちゃってるかな、みたいな、具体的に言うと潜入捜査を思い出すでありますな。
着替える自分を待ちながら、個室の外から摩耶殿がD級職員について教えてくれるであります。
「姐さんもさァ、最初は渋ッてたンだけど、最後にゃ折れてくれたよ。反抗期かしら、なンて言われちまッたよ」
へへ、と笑って、摩耶殿は続けるであります。
「D級職員てのは、要するに囚人なんだとさ」
「死刑囚、超長期懲役刑、終身刑、そういう、生きて娑婆に出る見込みのない連中が、ここで働かされてるンだと。ここはがっちがちの機密保持体制だかンな、内地に行くあても帰る場所もねェ、死んだッて問題ない、そういう連中が押し込められてンのさ」
成程。D級のDはDeadのDでありますか。
文字通り掃いて捨てるほど人間の蔓延る今日この頃。税金を使ってただただ無為に命をすり減らすだけの社会復帰の見込めない囚人は、丁度よい労働力な訳でありますな。
いくらでも替えが利いて、しかも艦娘を有する軍からすればあまりにも無力。使い潰すも飼い殺すも御好きなままに。怖い話であります。
「二世三世もいるけど、まあ、ちょこちょこおッ死んではまた『新しい風』が入るって塩梅さ。クソみたいな話だ。健康で文化的な最低限度の生活が保障された家畜だよ、これじャ」
自分みたいに色んな鎮守府めぐりしてる艦娘も珍しいではありますが、今日日摩耶殿みたいにちょっと潔癖入った発言する艦娘も珍しいであります。お嬢様育ちというか、余程お上品な鎮守府育ちなのでありますかね。
「ま、そんなろくでもねェ連中ばかりだ。観光気分で迂闊に入り込んだパンピーなンざカモだよ、カモ。特に艦娘はな。看守側となりャ恨みもあるし、バラしャあ結構な金になる。武器にもなる」
あ、もしかして着替えろってのはそういうことでありますか。
「そ。連中も見分け方は服装くらいでさ。ちょっとそこらの娘風に着替えりャ面倒も少なくなる」
しかし、先程絡まれたときも簡単にあしらえたでありますが、そもそも人間が艦娘に挑むのってかなりリスキーでは?
「あンたは隙だらけに見えて殺人マシーンみたいだから……いやいや。まあ普通はそうなンだけどよ」
しかし、と。
「殺し方は、ある。らしい。艦娘を殺す武器もあるらしい」
曖昧な言い方でありますな。
「事件はあッた。被害者はいた。けど死体は残らねェ、犯人も見つからねェ。モチロン手口も得物もわからねェ。捜査しようにも誰が協力する? 看守殺しの英雄サマだぜ? むしろ寄ッてたかッて証拠は隠され痕跡は消され、犯人は闇の中だ」
フムン。それこそ、使い捨ての利く連中なのでありますから、区画ごと消毒でもしそうなものでありますが。
「できないのさ、もうね」
というと?
「羹に懲りて膾を吹くッてかね」
まさか。失敗したのでありますか?
「まさかのまさか、返り討ちにあったのさ」
区画消毒のために建造された、急造艦とはいえ戦艦級が一、重巡洋艦級が一、正規空母級が一、駆逐艦級が三。たかが民間人居住区の一区画を消毒するのには過剰なほどの戦力。
区画は地獄の釜が開いたような惨状になると予想されたであります。
しかし摩耶殿によれば、実際にはその当日、目的の区画に到着する前に艦隊は壊滅。突然の通信途絶に動揺する中、司令部あてに封筒が送られたであります。中身は一葉の写真でありました。
そこには丁寧に解体され、基幹部を破壊された六体の元艦娘の姿と、血とオイルで塗りたくられたメッセージが。
曰く、「Do U want 2 C this on your bed?」
「次はそっちでパーティするかい?」と。
フムン。それでそれ以降、鎮守府側は手を出すのをやめたと。
「ま、それで艦娘が遊びに行くのを控えた訳じャないけどな。娯楽がないから、多少リスキーでも街に繰り出すのさ。で、調子のッた馬鹿がやられる」
それはそれは。
ところで摩耶殿。
「なンだ?」
自分、楽しく食べ歩きでもしに来ただけなのでありますが、ごっついテンション下がったでありますよ。
「あー、いや、悪ィ。気をつけてくれって言いたかッたのさ」
やれやれ。気軽に遊びに行くにもリスクを伴うとは、困ったものであります。
まあ、ここで退いたりする気はないでありますが。
何せ飯が待っているのでありますから。
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あきつ丸であります。飯食いにきたはずがヨハネスブルグのガイドラインでも聞かされた気分であります。ていうか摩耶殿も弱っちいんでありますからわざわざ出てこないでも。
「あたしは慣れてるからいいンだよ」
無茶苦茶な。まあいいでありますけど。着替えを終えてトイレを出るであります。サイズが合ってよかったであります。あんまり体型が出ないデザインなのもベネ。いろいろ隠せるであります。
摩耶殿に倣ってロッカーに服をしまい、さあ早速お出かけであります。
ゲート付近の殺伐としたアトモスフィアとは異なり、少し離れればそこは普通の町並みでありました。道往く人々もいたって普通に笑ったり泣いたり怒ったり、何処かに急いでいたり、のんびり水煙草なんてふかしていたり。
囚人ばかりとはいえ、牢屋の中でなし。普通に生活していれば、普通になってくるものなのでありましょう。ちょっと荒っぽい下町、そんな印象であります。
構造は、中小型の鎮守府に多い、ひたすら構造物を積み上げていった過密型居住区、まあ言ってみればスラムっぽい感じはあるにはあるでありますが、どこか美学を感じるであります。
その場その場の必要に応じて適当に増設していった建築でありながら、雑然としたその接続や様式が渾然となって、全体としてみたときの奇妙なまとまりが発生しているであります。混沌という秩序、という矛盾でありますなあ。
空がまともに見えるのは大通り位のもので、路地だけでなく階段や梯子によって立体的に、複雑に絡み合った町並みは、もはや迷宮と呼ぶにふさわしい様相であります。いいでありますなあ、この感じ。
ここまで混沌とした鎮守府街は中国系列の積層構造体や印度系列の階層都市以来でありますなあ。九龍第三鎮守府のバイオ鈴虫退治の一件や、変わり所だとバルセロナ第十三鎮守府のサグラダ・セテナの聖遺物争奪戦が懐かしいであります。
「あたし、あンたの経歴がいろいろわかンないわー」
道中の話の種にでもと振ってみたでありますが、まあそういう反応になるでありますよなあ。たぶん履歴書がえらいことになるはずであります。まあ楽しんでもらえているようなので幸いでありますが。
「あたしは、ここに来る前はそンな余裕なンてなかッたし、ここに来てからは外にも出なかッたからなあ。ちょッと羨ましくはあるよ」
などと仰る。
フムン。そういえば摩耶殿の経歴は知らなかったでありますな。今までインタビューしてきたぼくのかんがえたさいきょうのかんむすの皆様とはどうも毛色が違うみたいでありますし、どういう艦娘なのでありますかな、摩耶殿は。
インタビューしてみたくもありましたが、今の自分は完全オフ仕様の気分なのであります。折角のお出掛けなので、仕事のことなど微塵も考えずに楽しんでいきたいのであります。お洒落着のときは大人しいあきつ丸なのであります。
摩耶殿とデートでありますぜふへへ、と盛り上がっても許される感じなのであります。このなんの裏もなく純粋に友達と遊びに行くための遊びとしてぶらつける解放感、何時ぶりでありますかなあ!
え? 主に暴力で約束を取り付けた? ちょっと何言ってるかわからないでありますね。自分はきちんと交渉するタイプなのであります。穏やかな口調でも言い分は通せるとルーズベルトも言ってるであります。ハハッ。
もうヨハネスブルグじみた現地の事情などすっかり忘れて、今時の健全な婦女子のように今を楽しむのであります。不穏な陰など忘れるであります。
ところで、いま向かっている提督殿お勧めのお店はどんなお店でありますかなあ。
確か、スピローズとか言う、こじんまりとした店だとか。
不定期に催される『特別料理』が格別だとかいう話でありますが……。
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あきつ丸であります。混沌とした秩序のもと、縦横無尽に接続される立体的な都市。人々はそれぞれがそれぞれの、日常というものを楽しんでいるようでありました。もとは囚人とのことでありますが、住めば都と言うことでありますかな。
しっかし、摩耶殿に案内を頼んで良かったであります。グルメガイドアプリの地図はかなり見やすいようにできてるのでありますが、そもそもの街並みが複雑すぎて、地図見ながら歩くとか自殺行為以外の何物でもありませんなこれは。
慣れていると言っただけあって、摩耶殿は迷うこともなくすいすいと歩いていくであります。実に堂々としていて、街の人とも気さくに挨拶などしていて、町娘Aとしてモブ出演していると言っても過言ではありません。
第一村人が盗賊系のジョブの方だったので結構警戒していたのでありますが、すれ違う人々は皆さんごくごく普通の人ばかりで、ちょっと拍子抜けする位であります。
「二世三世の方が割合としちャ多いしな。一応看守もいるけど、それ以上に住民の方で自治してるンだ」
フムン。まあ人が増えれば衝突も多くなる。となればお互いに生きやすい距離、生きやすい付き合い方をしていくのは当然で、要するに秩序ってのはそういうものでありますな。
人間というものはどうしたって一人では生きていけない生き物で、郷に入りては自然と郷に従ってしまうものなのでありますよ。
まあそれでももうちょっとヒャッハーな社会性を期待していたのでありますが。
「まあ、囚人は囚人だけど、自分の犯罪自慢するのはむしろ少数なンだよ。誰だッて面倒は嫌なのさ」
まあ、よく強姦犯は牢で冷遇されるとか聞くでありますし、余程腕自慢か腕にしか自慢がないの以外は爪を隠すのでありますかな。
しかし、人格破綻したようなどうしても社会と反りが合わないのもいると思うのでありますが、そういう時はどうするのでありますかな。ここもある種の監獄。その中にまた監獄でもあるのでありますかな。
「まあ、留置所みたいのはあるにはあるらしいけど、大抵そういうのは、『配慮』されるらしい」
『配慮』とはまた、穏やかな言葉であります。
「誰もが嫌がる職場とか、死亡率の高い職場に斡旋されるとか」
これはまた穏やかでない。ご近所づきあいが命にかかわる街なのでありますな、ここは。
あきつ丸であります。摩耶殿と街を進んでいくと、ある種の商店街とでもいうのでありましょうか、人通りも多く、多彩な店が左右にずらりと並ぶ通りへと辿り着いたであります。
非常に活気があり、あちこちで客引きの声や値引き交渉、楽しそうな声が溢れてくるであります。いやぁ、いいでありますなあ、こういう活気。お約束じみて裏路地に退廃的な空気が流れてさえいなければ完璧であります。
青果店や鮮魚店、肉屋に雑貨屋、なんと花屋まであるであります。生活に潤いを求めるのは、日々に余裕があるという生活程度の高さがうかがえるのであります。摩耶殿と二人して、買う気もないのに冷やかしながらのんびり進むであります。
お腹は空いてきたでありますが、こういうウィンドウショッピングというものは心の飢えを満たすのであります。殺伐とした苦界を生きていくにはこうした癒しが必須であります。疲れる、面倒くさいというインドア派の方も、体は疲れても精神のメンテにはいいかもと覚えて頂きたい。
ところで、色んな店を冷やかしていくうちに気付いたことが。
どうも行く店行く店、店先の目立つ所に印象的なデザインの旗を掲げているようなのであります。しかも、広げた掌とその中央で見開かれた眼という、お世辞にも気持ちのいいものとはいえないデザイン。
「ああ、あれは縄張りのサインだよ」
縄張り?
「いまは平穏に見えるけど、やッぱりもとは囚人の町。荒くれ者も多いンだ。だからそういうのをまとめ上げる、自警団みたいのがあるのさ。ま、言ッてみれば牢名主だな。縄張りの連中からみかじめ料を取って、代わりに治安の維持の他、面倒事を取り締まッてるのさ」
フムン。やくざやマフィアみたいでありますな。しかし鎮守府側の管理者、看守の手が回らない以上、立派な自治組織と言うことでありますな。
「あのサインは、アイズの旗印だな。ちょっと不気味なデザインだけど、穏健派だし、余所との関係もいい。派手な収穫はないけど、安定した生活ができるッてトコかな」
フムン。派閥によって色々と性格が違うみたいでありますな。
いずれここから脱出する時や、なんらかのツールを得たい時はここに来て探すと便利そうであります。そのためにも勢力を確認しておきた………いや、今日は休暇であります。出向早々でありますけど。仕事はしねえであります。
「ま、余計なことしなきゃお世話になるようなことはない、と思う。一人で来るようなことがあったら、ちゃンとサインを確認して、初めて見るサインのトコは気をつけろよ」
わかったであります。
しかしなんだかんだ言って摩耶殿面倒見がいいでありますな。そういうところ嫌いじゃないであります。
「ばッか、恥ずかしいこと言うなよ」
照れ屋さんめ。言っててこっちが恥ずかしくなったであります。
そうこうしているうちに、少し奥まったところにある小ぢんまりとした店に到着であります。看板も小さく、一見普通の家かなと思ってしまう店構えでありましたが、漂って来る匂いは、うん、本物であります。
ドアを押しあけると、かららん、とドアベルの涼やかな音。
洋食屋スピローズ。昼飯時でも落ち着いた雰囲気の、知る人ぞ知ると言ったお店でありました。
あきつ丸であります。提督殿お勧めの、グルメマップアプリでも知る人ぞ知る名店として登録されている洋食屋スピローズ。なんでも極稀にアミルスタン羊とか言う食材が入荷されたときだけ供されるという『特別料理』が格別だとか。
店主曰くそんなに珍しい食材ではないらしいのでありますが、調理や販売が法規制されており、土地によっては入手が面倒だとか。河豚みたいのでありますかな。店主は無資格での調理販売がばれて豚箱入りになったのだと笑っていたであります。あっけらかんとした人でありますなあ。
ただ、常連さんが乗っかって言うことには、店主は新しい客が来るたびに同じことを言うし、懲役100年だとか300年だとか、いやいや死刑囚だとか終身刑だとか言うたびに違うので半分法螺だよ、とのことでありました。全部じゃなくて半分なのが、らしいというかなんというか。
今日は残念ながら入荷がないようで、『特別料理』は出せないようであります。摩耶殿が妙に真顔で何度も確認していたので間違いないであります。ただ、普通の料理自体も抜群に美味しいとのことで、定連さんも大いに保証してくれたであります。五キロは太ったと。
メニューは日替わりコースの肉料理か、魚料理が選べるようでありました。自分は肉料理を、摩耶殿は何が使われているのかを確認してから魚料理にしたであります。因みに本日の魚介は鎮守府獲れの舌平目だとか。
ドリンクのメニューはなく、なんでも料理の味を濁してしまうからと、店主が選び抜いた水だけが出されたでありますが、これがちょっとびっくりするくらいすっきりとした、しかしそれでいて味わいのある水でありました。
水は常温で、なんだいなんだいお冷に氷も入れんでありますか、と最初こそ思ったのでありますが、いやいやとんでもない。これに氷を入れて誤魔化すなんて勿体無い。まさか海上施設である鎮守府で、こんなにうまい真水が飲めるとは思わなかったであります。
少し硬質でありますが、僅かな甘みと、それでいて砕けることのないぴんとした張り。そしてすっきりとした喉越し。こいつは内地の名水地でもなかなかお目にかかれんであります。
思わず飯を入れる前からお代わりしてしまう始末。
店主に聞いてみたところ、もとは温度差発電のために調査された海洋深層水を、一部飲用に引き上げて加工しているらしく、それを内地から輸入している天然水とブレンドしているとのこと。ブレンド内容と比率は企業秘密……まあ、当然でありますか。
これだけでも代金を取れそうな真水を、無料で提供。それというのもあくまで店の売りは腕によりをかけた料理であって、お冷はそれを楽しむための舞台装置に過ぎないからという。いやぁ、職人でありますなあ。
水を二杯も腹に入れて、けれど満たされるどころか厨房から漂う音と匂いで食欲は増すばかり。ああ、歩きつかれたからといって水を入れたものだから、胃袋がすっかり準備を終えて、まだかまだかと騒ぐであります。これは酷い。あんまりであります。拷問だ。
アミルスタン羊の説明を聞くあたりで、初めての店で緊張しているのか顔色を悪くしていた摩耶殿も、期待を隠せぬ様子でそわそわと厨房を見やり、ちびちびと水に口をつけているようであります。ふへへ、口ではなんと言っても身体は正直でありますなあ。
実際、空腹を抱えて店を探す一時間より、注文を終えてから料理が届くまでの短い時間の方が、空きっ腹にはたまらぬ永遠であります。一息ついて店を見回す余裕も出てくるは出てくるでありますが、厨房から漂う『昼飯時の香り』は、容赦なくそんな余裕を突き崩してくるであります。
あれは自分の料理じゃないんだろうなあ、他のお客さんのなんだろうなあ、と思いながらも、厨房から聞こえてくる、じりじりと焼き上げる音や、ことこと煮込む音、仕舞いにゃからからごーごー回る換気扇の音まで、こちらを焦らす戦略に感じてくるであります。
そんなこちらの焦れ様を察したかのように、したり顔の給仕がバスケット一杯のパンを持ってくるであります。これも店主が朝から店で焼いたという手作りパン。簡素な見た目ながら、芳醇な香りを放つ、光沢あるその焼き色は、胃袋を殺しにきた刺客その一の風格たっぷりであります。
堪えきれず二つに割った途端、目にも映るのではないかと錯覚するくらいにふわりと立ち上る小麦の香り。ああ、これは殺しにきてる。初手から鼻腔を穿ち、胃袋をきしませる毒ガスであります。たまらん。
恥も外聞も捨てて大口で齧り付きたくなるのを堪えて、一口大にそっと千切り、口に含む。柔らかい。ふんわり甘い。甘い、が、甘くない。砂糖や牛乳をどっさり入れた甘みではない。小麦本来のもつ、炭水化物という純戦力の持つ甘みであります。
自分、パンより米派という漠然とした主義でありましたが、こいつはそんな安普請の柱に容赦なく叩き込まれるボディブローであります。むしろストマックブロー。
かつてはただ小麦を食いやすくするためにと生み出されたパンという加工品。しかし人間の業や深し。いまやいかに美味く喰うかという勝負であります。
小麦そのものの品種改良だけでなく、配合、焼き方、焼き加減、そして如何に供するかという詰め将棋じみた戦略が秘められているであります。
米が劣るというのではない。白米の輝き、玄米の力強さ、あらゆるおかずを受け止める度量。米の持つ魅力が蔑ろにされる訳ではないのであります。しかし十分に練り上げられ、客を満足させる為に供されるパンの持つ破壊力は、また別の地平に聳えるもう一つの巨塔なのであります。
米派だパン派だなどと言っていた自分が空しく思えるであります。それらは西と東に聳える二つのバビロンであり、神へと至る等しく罪深き主食なのであります。アーメン。南無阿弥陀仏。いただきます。
摩耶殿もそれはそれは感動していることだろうと見やると、手に取った銀のナイフでパンになにやら塗っている。慌ててテーブルを見やればそこに鎮座するは象牙めいて柔らかく光沢を放つ、第二の刃。
バター、だと……!
犯罪的に美味いこのパンに、バター。美味いに美味いを重ねて実際スゴイ美味いというのはあまりにも乱暴な計算式。しかしゆでたまご式の計算ですら容易に想像できる黄金のコンビ。パンにバター、Oh, my gosh! これほど相性のいい組み合わせが許されるのか!
しかもこれは刺客の第二の刃。只者ではあるまい。慎重にバターナイフを立てると、それこそ伝説の聖剣が『巌をバターのように切り裂く』が如き、あまりにも呆気なく柔らかい感触。幼子の頬のように、犯罪的な柔らかさ!
つけすぎないよう少量を、千切ったパンにつけて、そっと口中へ投げ入れる。罪深さすら覚えるような咀嚼が進むにつれて、唾液と咀嚼運動によって生み出されるパン自体の甘み、そしてそれに加わるバターの甘みとコクたるや!
陶然とする耳元に、悪魔の囁きにも似た給仕の解説! 容赦ない波状攻撃であります。
なんとこのバター、工場産の合成品ではなく、鎮守府の牧場で太陽の光をたっぷり浴びて牧草を食んで育った本物の乳牛から絞った牛乳を、営業直前に店で加工した出来立てのフレッシュバターなのだとか。営業開始から僅かの間にしか味わうことの出来ない新鮮な一品!
合成品が当たり前の今日日、大抵のものは天然物と大差ないでありますよHAHAHAとか、通ぶったことをいってた自分を張り倒したいであります。天と地。天と地の差でありますよこれは。天地開闢前と現代社会の摩天楼くらいの差であります。
思えば自分、あんまりバターを評価してこなかったであります。値段的に安いマーガリンを、プラスチック食ってるみたいなもんだよなとか思いながらも惰性で消費してるような生活を送ってきたであります。
懺悔。そう、懺悔したくなるほどのショック。大袈裟かと思うかもしれないでありますが、日頃喰ってるものが、オーバースペックで突きつけられたこの月までぶっ飛ぶ衝撃は、飽食のこの時代なかなか味わえんであります。
しかし、いかんいかんいかんであります。ここでがっついて腹を満たしてしまっては、折角のメインが腹に入らなくなるであります。獣の如き食欲を、理性で堪える。そう、高等生物とは理性の生き物。本能を最高の度合いで満足させるよう理性で手綱を取るのであります。
※ご覧のレポートはレストラン・レビューではなく、暴力シーンやグロテスクな表現を含むほのぼの日常系のあきつ丸レポートです。指定のハッシュタグは間違いありませんのでご安心してご覧ください。
こちらがようやく落ち着いたのを見計らったかのように、自然に隙をつく形で給仕される前菜。
フムン。美しくモザイク様に彩られた、野菜のテリーヌでありますな。表面にかかっているのはトマトのジュレでありますかな。
正直、テリーヌかあ、と思ってしまったのであります。別に悪くないんでありますけど。フレンチといえばテリーヌみたいなのあんまり好きじゃないのでありますよね。あんまりいい店に当たらなかったのもあると思うでありますけど。
前に教官殿と喰いに行ったフレンチ・レストランのレバーテリーヌは、あれいまいちの代表格でありました。とりあえずこれ出しとけみたいな出来で、ねちっとしてるかと思えばぱさぱさとした口ざわりで、レバー臭くて。
ま、正直テリーヌってもう妙に凝ったアイディアが出尽くされた感じで、いっそもうシンプルにスモーク・サーモンとかだけで満足でありますよって印象であります。
そもそも前菜というのは言ってみればコース外の一品で、食欲をそそるのが目的、もうパンで大分食欲をそそられちまったでありますし、さっさと次いきたいであります、などという生意気な鼻っ柱をへし折りに来たでありますよこれ。
なにこれ。え。なにこれ。もうね、なにこれ。渋々と端っこを切って口に放り込んだのでありますが、え、なにこれ、しか出てこないであります。
作り置きによくある、なんとも言えない既製品感というか、大量生産品めいたぼやけた感じがないのであります。火を通しているはずなのに、かみ締めたときのきゅっと瑞々しさのある歯応え。それでいて確かにじわりと溢れ出る野菜の旨み、甘み。
堪えきれずに次の一口を大きく切り取り、今度はトマトのジュレもしっかりと乗せて、あむ。ごくん。思わず自分にバカじゃねーのと怒鳴りつけたくなるほどするりと喉に逃げ込んでしまったであります。まだ味わってねーっつーのにこの芳醇な味わい!
改めて残り少ないテリーヌを切り分け、おずおずと咀嚼。先程はしっかり味わえなかったトマトのジュレの旨みが唾液をもりもり溢れさすであります。
このジュレ、恐らく砂糖の一グラムも入ってないであります。純粋にトマトの旨みと甘み、恐らく僅かに塩、それくらい。しかしこの旨みの深さから察するに、単にトマトを使っただけではない………恐らくトマト出汁! トマト出汁を加えているでありますな!
「Exactly(その通りで御座います)」
給仕のしてやったりという微笑み。嫌味や皮肉ではなく、またお客様に喜んでもらえたぞという仕事人としての痛快な笑み。気持ちがいい笑みであります。
トマトというとリコピン酸、というのが世の思うところでありましょうが、じつはこいつ、旨み成分であるグルタミン酸をたっぷり含んでいるのであります。煮込んだりするのではなく、裏漉ししてさらしにとり、絞らずに自然に滴下させることで得られるトマト出汁。
こいつはグルタミン酸だけでなく、トマト自体の持つ甘味や酸味が合わさることで、凝縮された旨みを爽やかでさっぱりとした一段上の味に、自前で仕上げてくれるのであります。
しかし、それだけではないはず……。グルタミン酸だけではないであります。恐らく魚介系の味わい………けれどフュメではない。フュメ・ド・ポワソンの強さではない………まさか。このふんわりとした、しかし決して頼りなさを感じさせない包容力は。
「鰹節で御座います」
やはりッ、鰹節ッ! イノシン酸ッ! しかもこの上品な香りは枯れ節と見受けるであります。フレンチに鰹節。恐らく本場フランスではあまり好まれない鰹節の出汁を、実に上品に、それでいて力強く纏め上げているであります。
いや、しかしそれだけでありますか。この、ほんの僅か、しかしそのおかげで苦手意識を軽減させ、総合的な芳香にまで昇華させている香りは………成程。黄金の三角形の最後の一角、冬茹でありますなッ!
「正しく、完全天日干の冬茹、干し椎茸で御座います」
ニヤリッ、給仕め、こちらをうまく誘導しよるであります。旨み成分三強、最後の一角グアニル酸。三つの旨み成分が補強しあうゴールデントライアングル!
しかも具材にも戻した肉厚の冬茹が使われているでありますな。たっぷりの水に漬け込み、冷蔵庫でじっくりと時間をかけてふっくら戻したものを。フレンチでありながらがっつり和出汁を仕込んで仕掛けてくる、いい裏切りであります。
狙撃主のごとく正確に急所を打ち抜いてくる、第二の刺客! 見事であります。
ああ、しかしぺろりと食べてしまったであります。勿体無い。もっと時間をかけて食べたかったであります………しかしこれだけのパワを持ちながら、前菜としての本分を過たない、なんという潔さ!
※ご覧のレポートはレストラン・レビューではなく、休日を無駄に使って無駄なことをしている暴力シーンやグロテスクな表現を含むほのぼの日常系のあきつ丸レポートです。指定のハッシュタグは間違いありませんのでご安心してご覧ください。
あきつ丸であります。
余韻を殺さず、しかし立て直す余裕を与えず、意識の間隙を突いて供されたのはスープ。澄んだ、しかし深い琥珀色。コンソメでありますな。具はなく、純粋にコンソメの風味だけで勝負を仕掛けてくるようであります。
コンソメってのは見た目の割に非常に手間のかかったスープで、芳醇な風味の割に腹にも溜まらんので、食前にもってこいなのであります。しかしともすればメインにも迫るほどの爆発力を舐めてかかってはいけないであります。既にこの店が胃袋を殺しにかかってきているのは明白!
さて、問題は何のコンソメか……ブフか、ボライユか、ポワソンか。或いはジビエ……いや、ジビエほどの野趣は感じないであります。ポワソンの香りではない。ボライユに近い気もするし……ブフのコクも感じるであります。
さて、さて。そっと銀の匙を手に取り、一口。力強い、濃厚な風味。今度は小細工なし。正統派フレンチで来たなという感じ。徹底的に灰汁、脂、雑味を取り除いたシェフの仕事の味。やはりその力強さはブフに似ている。しかし軽やかでもある香りはボライユ……いや、まさか仔牛か。
仔牛はありそうだ。脂身を徹底的に取り除いた仔牛の脛や尾から取ったのか……………ちらと視線を上げれば、にやりと笑う給仕。違うッ、仔牛ではない。この試すような目は。しかし出てこないであります………どこかで体験したことがあるようには感じるのでありますが……。
「如何でしょう。この鎮守府近くで獲れた逸品で御座います」
ヒント! 給仕の笑みが憎たらしい。しかし匙を手繰る手は止められない。悔しいッ、でもッ。鎮守府近く、つまり魚介なのか。海産物なのか。しかし魚介特有の味わいではない。明らかに別種のアミノ酸であります……。
なんだ、なんでありますか………ふと視線を感じて顔を上げれば、わかったぜと言わんばかりに口角を吊り上げる摩耶殿! このチキンにわかって自分がわからないと言うのでありますか!
一体、一体何なのか………ハッ!? 仔牛に似た味わい……! まさか!
う………海亀、でありますか。
「Excellent, 当店自慢の海亀のスープで御座います」
成程、仔牛に似ていると思ったのも当然。以前食べた偽海亀のスープでありますか……!
「鎮守府近海を回遊しております海亀を、傷付けぬように捕獲したものを、味を濁らせぬよう苦しませずに絞めて煮込みました。図鑑には載っていませんが」
ちょっと怖い発言を聞いた気がするでありますが、しかし美味いことに間違いはないであります。
恐るべし第三の刺客……。メインに入る前にここまで打ちのめされるとは。ドヤ顔がうるさい摩耶殿には取り合えず眼つぶしをくらわせて黙らせるであります。
※正直自分で書いといてあんまり美味しそうじゃないんですがご覧のレポートはレストラン・レビューではなく、暴力シーンやグロテスクな表現を含むほのぼの日常系のあきつ丸レポートです。指定のハッシュタグは間違いありませんのでご安心してご覧ください。
あきつ丸であります。
来た来た、来たでありますよ、満を持して登場のメインディッシュ。止めを刺しに来た第四の刺客。それはシンプルなビーフ・ステーキでありました。
飾り気のないシンプルな肉、といった風情に、おっとっと、とちょいと肩すかし。付け合わせも人参のグラッセにボイルしたジャガイモとシンプルなもの。ちょっとちょっとちょっと、散々期待させてちょっと芸が足りないんじゃないの、と思わないでもないであります。
ソースもかかっておらず、味付けもシンプルに塩と胡椒だけのようであります。まあ最終的にはシンプル・イズ・ベストに落ち着くかもしれないでありますけど、ちょっと手を抜きすぎなんじゃないのォ~、などという油断はもはやしないッ! でありますッ!
いままで散々弄ばれてきたでありますからなぁ、ここは気を引き締めてかからねばなりますまい。ただのステーキでは済まないのは明らか。殺しに来ているならば全力で受け止めるまで。
フォークを立てると、思わぬ柔らかさ。しかし単に脂の柔らかさではないでありますな。むしろ筋切りの丁寧さ、仕事の結果とみるべきか。ナイフで切る手ごたえも、霜降りとは違う確かな肉の感触。
焼き具合はミディアム・レアと言ったところでありますか。十分に肉のうまみを引き出す程度に火をいれながら、しかし赤身はしっかりと残している。ワザマエ!
じゅわっ。じゅわわわわっ。なんと、なんなんと。口に入れる前から肉汁がっ。
いやいやこれは唾液でありますか。罪深さすら感じるほどの誘惑をかけてくる断面に、唾液腺が勝手に反応を。これは手を止めていていいものではありませんな。
程よい大きさに切り分け、口へと運ぶ。
―――死んだわ、これ。
いやいやいや、いくらなんでもこれでは酷過ぎるでありますな。レポートにならんであります。一瞬意識が涅槃に飛びかけたでありますが、本能に負けてはならんのであります。
まず鼻腔に直撃するのは、どっしりと深みのある芳香。牛肉は他の畜産肉に比べ、牛臭いとでもいうべきにおいがあるでありますが、旨味を閉じ込めるようにぎゅっと焼きあげられたおかげで、複雑な芳香の一部となってむしろ食欲をいや増すであります。メイラード反応バンザイ。
噛み締めた感触は力強く、ああ、肉食っていると思わせる歯ごたえ。霜降り牛を悪く言うつもりはないでありますが、あの頼りなくも感じる歯ごたえよりも自分はこっちの方がダンゼン好きでありますなあ。サンダル喰わされてるみたいな硬い肉も嫌でありますが。
ぎゅっぎゅっ、と歯を通じて脳に伝わる刺激そのものが快楽信号。物を食べているという実感を与えてくれるであります。やっぱ顎持って生まれてきた生き物は顎使って物食べるのが一番幸せなのでありますよ。
そしてその心地よい歯応えの間にも溢れ出る肉汁。こんなに溢れ出てくるの、と驚いてしまいそうなほどたっぷりとした肉汁が、舌の上を犯していくであります。ああ、これ、これでありますよ。肉の味。肉の味であります。
あくまでも肉の味を最大限引き立てるためだけに最小限振られた塩と胡椒。しかしこれらがあるためにこそ、ポテンシャル以上の味を生み出す絶妙なハーモニー。最小の補強にして最大の効率。
ただ肉に塩と胡椒を振って、焼く。それだけの料理があらゆる小細工をあざ笑うかのような暴力的な旨さで殴りつけてくるであります。たったそれだけを幾千幾万と繰り返し、その果てに辿り着いた境地。百億の肉の丘の上に掲げられた至高のステーキ。
料理人が丹精込めて作ったソースを否定する気はないであります。肉に合う、肉を最大限引き立てる、そんなソースの研究には莫大な時間と鋭敏なセンスがいるのは間違いないであります。
しかし、いま、このとき、肉を最大限に引き出すこの塩と胡椒の魅力は、自分の中でストップ高であります。シンプルいいじゃない。そうだよ、自分肉食いに来たんでありますよ。そう感じさせる肉。肉最高。
そして飲み下す――この満足感! 喉を押し広げ、ぎゅむぎゅむと食道を下っていく充足感。口に入れ、咀嚼し、飲み下す。この一連の工程に隙間なく繰り広げられる肉の旨味。味の絨毯爆撃………いや、戦術核であります。
長ったらしくなってしまったでありますが、そう、要するにつまり―――死んだわ、これ。
肉の破壊力に眩暈がするであります。ここはちょっと戦略的撤退。いや、転進。箸休めってわけではないでありますが、付け合わせの人参のグラッセをぱくり。
おっふ。
人参ってこんなに甘いものだったでありますか。そう思わせるほどのインパクトであります。いや、砂糖がたっぷり、ということではないのであります。むしろ砂糖は最低限。バターと砂糖、そして何より丁寧な仕事。それによって人参の潜在能力が引き出されているのであります。
やばい。これはやばいわー。やばいであります。言語中枢が詳しい説明を拒否し始めたであります。本当にうまいものを喰った時、人間の脳は味覚信号に破壊されるのであります。
これでは箸休めにもならんであります。では芋を、と手を出せばこれまた手痛い反撃。これもひたすらシンプルなボイル芋。ただ塩茹でされただけの芋であります。これに殺される。
シンプルが最強、などという脳筋なことを言う気はないでありますが、この炭水化物は殺しに来てるであります。肉の旨味、肉汁、そのパワ溢れる一撃を受け止める寛容さを持ちながら、ちょっとお邪魔するよと言わんばかりに胃袋にどっしりやってくる満足感。
わかってる。わかってやがるであります。肉を食う、アミノ酸を味わうというのは言わば旨味の追求。切れ味鋭い剣を振るうが如きもの。そして炭水化物の破壊力は満腹中枢を直撃! 破城槌の如き重い一撃。たっぷり肉汁を吸い込み、口の中で胃の中で、その猛威をふるうであります。
理性の手綱が、危うい!
気づけば最後の一切れ。分厚いとさえ感じられた肉が、ああ、自分の肉が。惜しみながらも最後の一口。最後まで猛威をふるうこの肉。嗚呼、おしい。おしいであります。しかしもう一枚などと言おうものなら余韻はすべて台無し。この肉の価値を暴落させる。
呆けたように顔を挙げれば、恐らく自分もそうであったでありましょう、夢中で舌平目のムニエルを食べる摩耶殿。物凄く幸せそうであります。艦娘食堂でちまちまサラダをつついていたのとは別人であります。
しかし舌平目のムニエル。定番中の定番でありますが、うまそうでありますなあ。こちらも実にシンプルな見た目。飾り気をのけて、味わいを追求した殺しの形であります。しかも人が食べている姿というのは通常以上にうまそうに見えるもの。
くっ……しかしここで一口貰おうものならあのステーキの余韻は台無しになるのであります。物凄く食べてみたいでありますが、ここはこらえるところ。
ここが理性のいらないウェイストランドだったら、ころしてでもうばいとっていたところでありますが、自分そういう非文明的なのってどうかと思うでありますし、ここは控えるであります。
※大変長らくご迷惑をおかけしておりますが、ご覧のレポートはレストラン・レビューではなく、暴力シーンやグロテスクな表現を含むほのぼの日常系のあきつ丸レポートです。指定のハッシュタグは間違いありませんのでご安心してご覧ください。
穏やかな満足感と奇妙な昂揚感に満たされて、放心するように椅子に身をあずけているところに、デザートと珈琲がやってきたであります。珈琲の香りが、興奮した神経を不思議となだめてくれるであります。
デザートは、添え物もなくココット皿に美しき肌をさらす、プリンでありました。
「プリン、プリンなァ~」
摩耶殿が御行儀悪くも匙で表面をつつきながら、ぼやくように呟くであります。
まあ、気持ちはわかるでありますよ。
プリンというものは、外国からやってきながら、すっかり日本に馴染んだ甘味。そこらのコンビニに行けば必ず何種類か置いてあり、専門店もある。しかしすっかり馴染んでしまったからこそ、なんだプリンか、という侮りを感じてしまうのであります。
実家のような安心感、と言えば聞こえはいいでありますが、要するに飽き飽きしてるのでありますよなあ。もうだいたいどんな感じか想像つくんですけどぉ~、という、そんなイメージであります。
しかし、ここまできてそんな落ちはない。ちら、と摩耶殿と視線を合わせると、向こうもつまらなそうな仕種ながら、瞳には押え切れない好奇心が満ちているであります。
示し合わせたように匙を取り、いただきます。
匙をす、と立てれば、ふるふると柔らかい感触。ちょっと申し訳なくなる位の柔らかさ。それを遠慮なしに大きく掬い取り、おもむろにぱくり。
「「うンまぁあああいッ!」」
「やばいッ、やばいぞこれッ」
摩耶殿がやばいしか口にできない頭の足りないJKじみた反応しかできなくなるほどのプリン・ショック。
かくいう自分も、このちっぽけなココット皿に対して手を休めることができんでありますっ。
「なんだこれッ、あたしはなにを喰ってるんだッ!?」
ふるりふるりと柔らかくふるえる卵色のプリン。だがただのプリンじゃあないであります。とろりんとかふんわりとか、そんな女性向け雑誌のスイーツ特集に載ってそうなヤワなワードじゃあ表現できんであります!
口に入れる端から、濃厚な卵の味わいと裏切らない甘さが広がり、そしてプリン自体は、これは、消える、消えていく……そう、消えていくとしか表現できないでありますッ。舌や歯ぐき、そういった細胞に馴染んで溶け込んでいくような、そんな錯覚すら感じるッ。
「手がッ、手が止まらねえッ! 片端から消えちまうプリンを手繰る手が止まらねえッ! まるで機関車に石炭をくべる投炭手だッ! 手を止めなきゃあッという間にプリンがなくなっちまうッ! だが手を止めれば口の中のプリンが消えちまうッ!」
何言ってんだこいつ。
結局手を止めることはできずに、小さなココット皿のプリンはあっという間になくなってしまったであります。未練たらたらに匙で底を探ってぬぁめるように奇麗にしてしまったでありますよ……。
いやぁ、すっかり、すっかりやられたであります。まさかこんな豚箱都市に、こんな犯罪的な料理人がいるとは………いや、実際犯罪者な料理人だったでありますか。珈琲をこればっかりはとゆっくり時間をかけて楽しむであります。
しかし、これでここまで美味いとなると、『特別料理』たるや如何程のものでありますか。是非とも食べてみたいところであります。
その時は摩耶殿もぜひ一緒に、
「あ、あたしは遠慮しとくぜ」
おや、意外。
しかし摩耶殿は艦娘食堂では食事しなかったりと、もしかしたら偏食の気があるかもでありますし、アミルスタン羊とやらが苦手なのかもでありますな。その内詳しいことは聞いてみたくもありますが……。
ああ、やめた。お腹も一杯。胸も一杯。面倒なこと考える気力もおきんであります。暫く珈琲を楽しんで、ゆったりくつろぐとするでありますよ……。
[◆◇◆◇◆]
Tips.
>小ネタ
・下衆でも卑怯でもない、清く正しい方のあきつ丸であります。潔くもない方でありますがね。
不明。恐らく当時のタイムライン上などで拾った電波だと思われる。
・ダンジョン飯
「ダンジョン飯」(九井諒子)より。こういう漫画が好きなのもあるが、もともと九井諒子が好きだった。
・血の如き鉄分豊富な三カ条
野菜のほうれん草が鉄分豊富であることとかけた駄洒落。
このような解説が必要なのであきつ丸レポートは基本的に読者にやさしくない。
・阿吽像
所謂仁王像。
口を開けた阿形と口を閉じた吽形の二体の金剛力士像からなる。
・ネギトロ製造機じみた連装機関砲
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)に頻出するいわゆる忍殺語の一つである「ネギトロめいた」から。
主に挽肉を連想させるほど損壊させられた惨殺死体などを形容する語句。
ここでは人間程度簡単に挽肉にしてしまいそうな機関砲ということ。
・ロダンの考える人
フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの作。ダンテの「神曲」に着想を得た「地獄の門」なる門の頂上に置かれる一部分にあたる。
熟考するダンテや、ロダン本人を表しているなど諸説あるが、作中では考えない人に生きている価値はない、無思慮は罪であるという悪趣味なテーマのマスコットキャラとして一般に流布しているようだ。
・いいね。
「ニンジャスレイヤー」(ブラッドレー・ボンドとフィリップ・ニンジャ・モーゼズ)に頻出するいわゆる忍殺語の一つ。
基本的に不都合な事をゴリ押しで隠蔽する際に用いられる。
例)「あきつ丸レポートはほのぼの日常系。いいね?」「アッハイ」
・ベーシックな駆逐艦の素体など一体20万ちょっと
このお値段は「とある魔術の禁書目録」(鎌池和馬)に登場するクローン体の単価18万円を参考にしている。
・ジンバブエドル
かつてジンバブエが発行した紙屑もとい法定通貨の一つ。2億3100万%というハイパーインフラメーションによって、世紀末の如くケツを拭く紙にもなりゃしねえ事態に陥った。
・自分はそんな生き物になりたいとは露ほども思わんであります
だからといってあきつ丸は艦娘としての自分自身を是としている訳でもないのだが。
・「うぐゥ、それ以上いけない……曲がらねェ、そっちには……!」
「孤独のグルメ」(久住昌之)で最も有名なシーンの一つ、井之頭五郎がアームロックを極めるシーンでの台詞「それ以上いけない」より。
・インタビュー
いわゆる忍殺語のひとつ。
普通に質疑応答の意味もあるが、もっぱら暴力的尋問に対して用いられる。
・死ぬほど疲れてるだけであります。起こさないでやって欲しいであります。
連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる。
・D級職員
SCP財団の職員が元ネタ。最悪遣い潰すことを前提とした労働職。
・「Do U want 2 C this on your bed?」
「Do you want to see this on your bed?」の意。これ(死体)をおまえんちのベッドの上で晒されたいか?と。
・ヨハネスブルグのガイドライン
インターネット上でまことしやかに噂されるヨハネスブルグの治安の悪さを語るガイドライン。
恐るべきはあながち間違いでもない事。
例えば「中心駅から半径200mは強盗にあう確率が150%。一度襲われてまた襲われる確率が50%の意味」という一文があるが、冗談みたいなこの話には実例があるという。
・摩耶殿も弱っちいんでありますからわざわざ出てこないでも
実際には弱っちい摩耶だから大丈夫なのだが。
・中国系列の積層構造体
イメージとしては在りし日の九龍城砦。
無秩序に建築物を積層させていき全体として一つの構造体と成り果てている。
・印度系列の階層都市
広いフロアを何段も重ねるようにして土地面積当たりの容積を拡張した多段構造の都市。
積層構造体より秩序はあるが、人口過密による苦肉の策なのは同様で、内部は混沌としている。
・九龍第三鎮守府のバイオ鈴虫退治
積層構造体型の鎮守府において発生したバイオ・ハザード事件。バイオ鈴虫は「グレイトフルデッド」(久正人)に登場するコオロギのキョンシーから着想。
・バルセロナ第十三鎮守府のサグラダ・セテナの聖遺物争奪戦
スペインの鎮守府のひとつに存在する巨大な宗教施設で行われた何かしらの魔術儀式的抗争。
セテナがなんだったのか不明なので、恐らくなにかしら誤字ったのだと思うが深い意味はないので別にいいか。
・お洒落着のときは大人しいあきつ丸
「GUNSLINGER GIRL」(相田裕)より、登場人物の一人クラエスが担当官ラバロと交わした約束「この眼鏡をかけている間はおとなしいクラエスでいてほしい」から。
・穏やかな口調でも言い分は通せるとルーズベルトも言ってる
アメリカ合衆国第26代大統領セオドア・ルーズベルトの棍棒政策の事。
「Speak softly and carry a big stick, you will go far」つまり「棍棒をもって静かに話せ。それで言い分は通る」。
あきつ丸はこの手の皮肉的な言い方を好む傾向がある。
・スピローズ
「特別料理」(スタンリィ・エリン)に登場する料理店。
・広げた掌とその中央で見開かれた眼
自治組織「アイズ」のシンボルマーク。
「Eye(I) have you」の意があるとされる。
・アミルスタン羊
「特別料理」(スタンリィ・エリン)に登場する食材。極たまにしか入らない。
・ゆでたまご式の計算
ウォーズマン理論などにみられる勢いだけで何やら凄そうに思われる計算式。
・Oh, my gosh!
Oh, my god!の婉曲的な言い方。要するにGodつまり神様という単語をみだりに使わないようにというかたちだ。
・鎮守府の牧場で太陽の光をたっぷり浴びて牧草を食んで育った本物の乳牛から絞った牛乳を、営業直前に店で加工した出来立てのフレッシュバター
「ジョジョリオン」(荒木飛呂彦)に登場する能書きがやたらに長いメニューのデザート「岩手県盛岡市の吉村さんの牧場の太陽をいっぱいに浴びた牧草をたっぷり食べて育ったジャージー牛のミルクで作った甘くてほろ苦い青春のひとかけらクリーム・ブリュレ580円 そして幸せが訪れる」から。
・プラスチック食ってるみたいなもん
マーガリンはプラスチックという都市伝説から。恐らく可塑性の(Plastic)油脂を誤訳したことから。
・この月までぶっ飛ぶ衝撃
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第四部における東方仗助の台詞「スタンドも月までブッ飛ぶこの衝撃」より。
・「Exactly(その通りで御座います)」
以前も出てきたテレンス・T・ダービーの台詞。
・またお客様に喜んでもらえたぞ
FPS「FALLOUT3」で見られる「またお客に喜んでもらえたぞ」というフレーズから。
・海亀のスープ
シチュエーションパズル、水平思考パズル、Yes/Noパズルなどと呼称される推理ゲームがある。
海亀のスープの名称は以下の有名な問題から。
ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい・・・ ウミガメのスープに間違いございません。」
男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました。
何故でしょう?
解答者は出題者にはいかいいえで応えられる質問の回答のみを手掛かりに深層を解き明かす。
・偽海亀のスープ
高価な亀肉の代用として仔牛の頭肉を使ったとされる料理。
「不思議の国のアリス」(ルイス・キャロル)にこれを擬獣化した偽海亀が登場する。
・来た来た、来たでありますよ
「孤独のグルメ」(久住昌之)にて焼肉屋で注文の品が届くのを見た井之頭五郎が心中で呟く「お……きたきたきましたよ」より。
・ワザマエ!
いわゆる忍殺語の一つ。優れた技術などを目にした時に用いる。
・ウェイストランド
荒地。FPSゲーム「Fallout」などで核戦争後の荒廃した大地を指す言葉。他作品でも文明崩壊後の荒廃した世界を指すという。
・ころしてでもうばいとる
ゲーム「ロマンシングサガ」におけるキーアイテム、間宮ソードを入手する方法のうち一番手間のかからないもの。
「ねんがんの アイスソードをてにいれたぞ!」と喜ぶ人物に対しこの選択肢を選ぶと殺害して奪い取るという殺伐とした展開になる。
・実家のような安心感
ネットスラングの一つ。極めて健全なように見えるが発祥はホモビ界隈らしくネットの広大さが思い知らされる。
・「うンまぁあああいッ!」
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第四部における虹村億泰のリアクション芸。このプリンの辺りの描写は特に虹村億泰のリアクション芸を思い浮かべながら書いていた。
・「あ、あたしは遠慮しとくぜ」
「私は遠慮しておきます」