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あきつ丸であります。洋食屋スピローズでの素敵な食事を済ませたであります。いやぁ、実に充実した昼餉でありました。暫くは生半可な飯では舌が文句を言いそうでありますなあ。
しかし思わぬ収穫もあったであります。なんでも食べっぷりが気に入ったとか、理想的な骨格だとか実にいい筋肉のバランスだとか陸軍艦は珍しいからとか色々言われて、特別料理が入りそうなときはすぐ報せると、アドレス交換したでありますよ。
いやあ、本当に良い事尽くめであります。摩耶殿はあんまり嬉しそうじゃなかったというか、絶対止めとけと引き攣った顔で言ってきたでありますが、なんでありますかね。まあ次来るときも連れてくれば文句も言うまい。
それにしても、自分艦娘と名乗ってないでありますけど、変装が半端でありましたかね。と言うと、店主殿曰く、「食材の目利きに慣れるとわかるようになるのさ」とのこと。料理人ってすごいでありますな。
さて、目的の店も楽しんだことでありますし、報告は後でまとめるとして、お土産の購入も兼ねてショッピングでも楽しむでありますか。この辺り、アイズとやらの勢力圏は商業盛んなようでありますし、この辺りだけでも楽しめそうであります。
まずは、行動拠点となるべき何かしらの目印を設定したいところでありますな。何も考えずにうろちょろして迷子になったり、気付かぬうちにどんどん遠くへ遠くへと行ってしまっては問題であります。
うーん、目立つ建物と言えば。お。あったであります。囚人収監所といえど、ちゃんとあるものでありますな、あれ。
社会福祉センター。
冷や奴みたいにつるんと真っ白な巨大ビルディングに、目につきやすい赤字の看板。
基本的に全ての鎮守府に置かれているだけでなく、世界各地の主要都市にも設置された社会福祉センターのビルであります。
社会福祉センターは国連社会福祉局の運営する施設で、急激な人口爆発に対応すべく設立された機構であります。
宗教色、政治色を一切排除することで、全ての民族、宗教、国家に関係なく全ての地域でその職務を遂行しているのであります。その職務とは高齢者・障碍者の施設介護、養護を必要とする児童の養護・教育、失業者への職業斡旋、安価での食料販売、埋葬、各種手続きなどなど。
要するに老人ホームと病院とリハビリセンターと孤児院と学校とハローワークとスーパーマーケットと寺と役所が一緒になったもんでありますな、ざっくり言うと。色いろ手広くやってるので網羅するとちょっとしたリストが必要でありますからなあ。
まあ、取り合えず困ったことがあれば頼ればいい訳でありますよ。大抵の都市に何箇所か設置してあるので、最寄りの社会福祉センターへどうぞ! まあ艦娘にはあんまり関係のない施設でありますが。
あきつまるであります。
社会福祉センターがあるということは恐らくあれも………お、あった。
同じ系列のコンビニが徒歩圏内にあったり、宮崎でコインランドリーがコンビニ並に存在するように、こいつもあちこちあるのであります。
羊羹みたいにつるんと真っ黒な巨大ビルディングに、目に優しい緑字の看板。即ち、コミート! その生産工場と販売所!
社会福祉センターにコミート。ビルディングが無駄に邪魔くさいので一か所にまとめられてるんじゃないかとか色々勘ぐられている位邪魔くさいビルで有名な二本柱であります。
コミート、それは海軍の合成食品ブランドであります。主要な穀物である米(Kome)と小麦(Wheat)から名付けられたとのことであります。何故米がriceではないのかは謎であります。
コミートの合成食品は非常に幅広いラインナップと、合成食品業界当初からの伝統ある老舗ということもあって、いまも根強い人気を誇るであります。まあ一番の理由はえらく安いからというそれだけでありますが。
対深海棲艦戦の為に、ありとあらゆる資材と資源と人間が徴用された初期から、艦娘運用がこなれて来て、前線が安定してきた安定期、そして『海域』資源によって復興を果たし、人口爆発まで起こした現在まで、常に街角にあり続けたブランドであります。
世界各国でおなじみのCMも流れていて、初期の頃は「何もないけどコミートがある」、いまでは「何でもある、そう、勿論コミートも」というフレーズが、一日に何度もお茶の間に流れるであります。世代ごとに違う象徴的なフレーズがキャッチーでありますなあ。
店頭にワゴンセールじみて並んだ、ブロックタイプの物や缶入りの液体タイプ、チューブ入りにゼリータイプ、缶詰の肉タイプ、非常に多彩ながらも全てのコミートは人体を作る栄養素を網羅しているという徹底ぶりであります。
業務用にも多彩な合成食材を販売しており、皆さんもよく行かれるであろう外食産業でもコミートの合成食材を使用しているところは多いのでありますよ。安くて栄養価も確か。そして信頼の海軍産。ふふ、これではコミートの広報でありますな。
そんなコミートの簡素で誠実なパッケージは全製品共通で、「Komeat of the peaple, by the people, for the people!」、つまり人民の、人民による、人民のためのコミートという謳い文句が創業当時から刻まれているのであります。
ブロックタイプなどの水分が少ないタイプや、缶詰の物は賞味期限も長く、安売りの時に買いこんでおくといざという時に便利であります。こだわりのブランドや商品がない方にはお勧めでありますな。
そう言えば買い置きも少なかったし、幾らか購入して行こうかと足を向けたところ、摩耶殿に引っ張られて止められたであります。
「やめろ」
え?
「やめろ。な? 別に買わンでもいいだろ」
えー、でもコミートの買い置きがあると、なんかないかな、って時に便利なのでありますが。
「あー……ほら、いま買うと荷物になるし」
フムン。
まあ確かに買いこもうと思ったら荷物になるでありますな。自分はさして問題ないでありますけど。しかしまあコミートなんてどこにでもありますし、いま殊更に寄る必要もないでありますな。
摩耶殿がどうしても近寄りたがらないので、しかたなく土産物でも探してショッピングへ。アミルスタン羊と言い、摩耶殿偏食なんでありますかなー。それともなんか嫌な思い出でもあるのでありますかな。
まあ同行者の機嫌を損ねてまで詮索したくないでありますし、自分の手を引いてお勧めの店がなんだとか言いながら距離を稼ごうとする摩耶殿に大人しく従うであります。
さあ、お土産探しであります。
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あきつ丸であります。
提督殿へのお土産を探して摩耶殿とショッピングであります。
この雑然とした感じ、活気のあるにぎわい、いいものでありますなあ。店頭に積まれた海賊版のDVDとか、明らかに公式じゃないっぽい翻訳漫画とか、出所不明のアクセサリーの類とか、うーん、自分こういう雰囲気嫌いじゃないであります。
今日はちょくちょく摩耶殿の地雷を踏み抜いてるっぽいので、気をつけていきたいところであります。まあいまいち何を踏んだのかよくわからんでありますし、地雷処理は専門ではないので、気をつけるのは事後処理の方でありますが。
要するにアレでありますな。絨毯爆撃して焼け野原にすれば地雷はなくなるというマチョーな戦法がシンプルでベネ。という方針で行くであります。そして爆破後は手早く応急手当。うん、ハリウッド式はスマートでいいでありますな。
「おーい、なにぼーッとしてンだ?」
あ、いえ、なんでもないであります。
ところで、提督殿へのお土産は何がいいでありますかな。
なにしろ、提督殿、アレでありますからなあ。
「ああ、うン、あれだもンなあ」
胴から上しかない、でありますからなあ。
身につける類はほぼ全滅。アクセサリーも衣類も駄目。日用品の類もあの人使うのでありますかね、果たして。
そもそも、体が万全であろうとなかろうとあんまりそういうものに頓着しないタイプっぽいでありますしなあ。
「まあ、そうなると食い物じゃねえか? 甘いもンとか好きみたいだし」
あー、そういえば艦娘から餌付けされてるらしいでありますな、あの人。叢雲殿があんまり餌付けするなと言ってたような気がしないでもないであります。
フムン。まああの体だと食べる位しか娯楽なさそうでありますし、思えば出歩けないのにグルメマップアプリまでダウンロードしてたわけでありますし………あ、そう言えば、お土産に買ってきてほしいもののリストもアプリに入れて貰ってたのでありました。
ぺぽぺぽと端末を操作して、リストを立ち上げるであります。
んー、やっぱりお菓子関係。そしてなかなか多いでありますな。ひぃ、ふう、みい、よ、うん、10くらいでありますな。店舗数自体そんなにないでありますから、そこまで手間取らなさそうでありますな。
「んー、お、この店は知ッてる。餡蜜がうまい」
ほほう。餡蜜、久しく食べてないでありますなあ。
「お、こッちは洋菓子屋だな。アレがうまい。あの、栗の奴」
モンブランでありますかな。
「それそれ」
「えーッと、ここは喫茶スペースがついてたな。珈琲がうまいな」
フムン。それは楽しみでありますな。
「あの、アレだよ、なんつッたかな。藤原鎌足みてェな名前の奴だッたな」
………藤原鎌足?
…………あ、コーヒー・モカ・マタリ。
「そう、そのそれ」
フムン。自分もモカ・マタリ、イエメンの高級品持ってるでありますけど、自分で淹れるのと専門店で飲むのとでは大違いでありますからなあ。楽しみであります。
「ふーん。あたしは珈琲はよくわかンねェからなァ」
それはもったいない。折角ならば美味しく飲みたいものではありませんか。
「あたしはインスタントでも全然……つか違いがわかンねェ」
ぶっとばーすぞー?
この貧乏舌に美味い珈琲というものを味わわせてやらねばならんようでありますな。偏食の多い艦娘でも美味いものは美味いとわかるはずなのであります。
例外は以前、自分が淹れた珈琲を泥水呼ばわりした紅茶キチガイの金剛モデルくらいであります。
てめぇの茶こそハーブティーとか言いながら合法ハーブティーじゃねえかであります。むしろ概ね非合法ハーブティーでありましたよ。嗜んでる水煙管も大麻じゃねえかであります。しまいにゃマジックマッシュルームまで持ち込んでマッドティーパーティ開きやがって。
鎮守府で大麻やらハーブやらマジックマッシュルーム栽培するだけじゃ飽き足らず、工廠で合成麻薬の精製までしやがって。提督に報告に行ったら肝臓がやられてるレベルの中毒者に仕上がってやがったし、ほんともうあそこだけは二度と行きたくねーであります。
連中のケツ蹴りあげて軍警から逃がして隠して誤魔化して、表向き平常運航ですよって偽装工作を十重二十重に仕込んだ上で、ブツの流通経路確保して情報部の資金源にするのにどれだけ苦労したことか……!
後輩に引き継げて本当によかったであります……もう呂律の回らない瞳孔開き気味の艦娘どもの相手は御免でありますからな。艦娘は電脳さえ無事なら、生体素体がどれだけ薬物でやられても最悪修理が利くでありますから、用法用量守る気がねーのでありますよなあ。
まあ腹の立つ話は忘れて、さあ、いざ往かん甘味処、であります。
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あきつ丸であります。
提督殿へのお土産購入及び食べ歩き開始であります。
御土産リスト一番目は、藪犬庵の餡蜜であります。
摩耶殿もお勧めであります。
こちらはご夫妻で経営している小さなお店で、無愛想で小柄なおじいさん店主と、更にちっちゃくて可愛らしい奥方とで仲睦まじく切り盛りしているであります。まあ、傍から見るとご夫妻というより祖父と孫娘といった風情でありますが。
実は奥方、駆逐艦モデルの艦娘なのでありました。しかも俗に「ガチ」などと言われる朝潮型。その九番艦、霰モデルであります。ちなみに出迎える際「んちゃ」と挨拶してくれるひょうきんな奥方であります。
艦娘は嬲り殺しにされて柱に吊るされるだとか、住民の手でじっくりと車輪轢きの刑に処されるだとかそういう話を聞いていたのでありますが、実際はそういう悪意を向けられるのは鎮守府所属のものだけで、艦娘自体は割合多く、日常に溶け込んでいるのだとか。
当然のことながら、鎮守府所属でもないのにこの鎮守府に居る艦娘というのは、つまり彼女らもD級職員だということであります。囚人ならぬ囚艦娘なのでありますな。
まあ艦娘に真っ当な人権なんぞ無いので、人間の法ではなく艦娘関連にまた別の法体系があるのでありますが、過激派人権団体とかといまも揉めに揉めてるので詳しい内容はまた今度。
まあ実際は、艦娘をいちいち軍法会議で裁く手間を考えると、まともに対応してたらきりがないということで、きちんと裁かれることは滅多にないであります。提督も監督責任問われる前に内々で処理しちまう方が安全でありますしなあ。
大抵は標的艦として艦娘のガス抜きに使われるか、解体して資材にするか或いは部品を横流しして裏金を積むか、ああ、解体せず艦娘自体を売りに出すこともありますな。違法でありますけど。
まあ、そんな訳でありますから、大事件で海軍本部預かりになったとかでない限り、きちんと軍法会議で裁きを受けられる艦娘というのは結構恵まれているのでありますよね。犯罪犯してる時点で恵まれてねえでありますけど。
この鎮守府には大小様々な罪を犯した囚艦娘が収容されているようであります。更生なんざまずしないんでありますから、反省を促すとかじゃなく、純粋に犯罪に走る艦娘のデータを取りたい上層部の判断なんでありましょうけど。
ちなみに奥方の霰殿、実は元提督のご亭主とは職場結婚だったとか。ケッコンカッコガチでありますな。ここに収監されたのも犯罪を犯したからというよりは、共犯ということでご亭主についてきたというのが実際のところだそうで。
真面目そうな店主殿でありますが、一体何をされたのか、まあそこら辺をつつくのは野暮というものでありますな。いまは餡蜜の美味しい甘味処の、口数少ない穏やかなご夫妻というだけでいいのであります。
変に藪突っついて餡蜜逃してたまるかでありますからな。
あきつ丸であります。
さて、いい加減餡蜜を実食と行くであります。
さっき飯食ったばっかだろというご意見は、艦娘の胃袋を舐めておられる。そしてもちろん、女子の別腹も。
さて。霰殿が運んできてくれた餡蜜。小振りな硝子の器が涼しげであります。そしてその小振りな器に、下品でない程度に、しかしぎゅっと詰め込まれたボリュームがなかなか憎いものであります。
まず目につくのは透明な普通の物の他、赤、緑、黄、白と色取り取りの寒天であります。どうも色粉で色付けしたものでなく、果物や抹茶等で風味づけも兼ねているようでありますが、これが調和を邪魔しない程度の穏やかなもので、全体が豊かなままに色々な風味を楽しめる。
気持ち多めに入った赤豌豆は、丁寧な仕事を感じさせる皺のないつやつやとした表面で、こりっとちょっと硬めの食感が、柔らかいものばかりの餡蜜の中で歯に嬉しい。豆ばかり集めて、きゅっきゅっと歯応えを楽しみたい位であります。
小豆餡。これがなけりゃあ餡蜜とは言えないでありますなあ。どっしり鎮座しているこのアンコ。でも重くない。匙でつつくとほろりと崩れる、そんな軽い丸め方。口に含むと舌の上でほろほろ崩れて溶けて、後に残らない。でもしっかり甘い、仕事してるアンコであります。
ふにふにっとした頼りない食感。いやいやとんでもない。むっちりふわふわ、しっかり歯に返ってくる食感が嬉しい紅白求肥。白玉のぎゅむぎゅむっとしっかりした歯応えもいいけど、くにゅくにゅむちっとした求肥は、なんというか、官能的でありますなあ。
ご褒美だよ、と言わんばかりの存在感がある、干し杏。干してあるから、水菓子の瑞々しさはないでありますけど、ぎゅうと噛み締めた時の、干果物特有のねっちりした甘さと、すきっとした酸味が甘いものぞろいの中で最高に爽やかであります。
お好きにおかけ下さいと、小さな硝子の器に入れられた黒蜜がまた、なかなか上等。あの黒糖特有の豊かな香りがふわりと鼻腔中に広がるでありますが、どっこいあのくどいような甘さがない。穏やかな甘さ。勿体ないと、とぷとぷ全部かけてしまって、それで丁度いくらい。
そしてこれ、これがまたね、ご亭主の奥さんに対する思い入れっていうのか、そういうの感じさせるでありますなあ。上からぱらりと振りかけられた雛『霰』。つやつやした寒天の上で、キラキラ輝いているようであります。しゃくさくした食感も飽きを来させないであります。
堅物みたいなご亭主が、大真面目な顔でこんなきらきらちんまりしたものをこさえている姿は、いやいや見ものでありますなあ。
小さな匙でちまちま突き崩していると、そっと卓に置かれる熱い焙じ茶。嬉しいでありますねえ。甘いものには、これ最高。しかも奥方が、七輪ぱたぱた仰いで、自分で焙じてるもんだから、茶を淹れる前から香ばしい香りがぷんぷんして、お茶好きにもたまらん店であります。
なるほどこれは、お勧めなのも分かるであります。アプリのお気に入り店に登録であります。
摩耶殿と下らない会話を交えながら、ちまちまと惜しむようにして平らげ、焙じ茶をすすってほうと一息。
お土産用にと、プラスチックのカップに詰めた餡蜜を四つ、包んで貰ったであります。
一つは提督殿へ。一つは叢雲殿へ。二つは自分と摩耶殿用に。
この調子じゃ手荷物がどんどん増えそうでありますなあ。
お代を払って、小さなご夫妻に挨拶して、次の店へ。
次は確か、モンブランが美味しい洋菓子屋さんでありましたな。
別腹の空きはまだまだ十分。いざ吶喊であります!
あきつ丸であります。
腹ごなしには丁度よい距離。途中の店を冷やかしながら上手に腹を均して、目的の洋菓子屋へ。
洋菓子屋、というと、いかにも洒落た外装の洋風のお店を想像していたのでありますが、予想に反して純和風の佇まい。昭和の香りすら感じるでありますなあ。艦娘の自分は昭和なんて教科書でしか知らんでありますけど。
掲げられた看板も、まるで寺社か何かのように厳かで、したためられた屋号は『白山伯』。何も知らないできたらここが洋菓子屋だとは誰も思わないであろう堂々たる店構えであります。もう少し中華風だったら梁山泊かなんかかよと突っ込みたくなるレベルであります。
しかしからからと引き戸を開けてみれば、漂ってくるのは紛う事なき洋菓子屋の甘い香り。砂糖にスパイス、それに素敵なものをいっぱい。
そして、
「え゛い゛、ら゛っしゃい゛ッ!」
ケミカルXでは誤魔化せないリアル・ヤクザじみたパティシエが一匹。
唇の端のチャーミングな縫い痕。鼻を横切るヤンチャな秋刀魚傷。左目を縦断する気ままな刀傷。左手の人差し指が風来坊にも行方不明。
ケミカル過ぎる劇物フル武装の属性一点推し、文句なしのヤクザ・フェイスであります。ユートニウム博士でも苦言を呈するレベルの余計な一品。
固有結界じみて店内の空気を洋菓子屋から事務所へと塗り替えかねない存在感であります。砂糖の結晶が急激にいかがわしいものに見え始め、小麦粉が小さなパッケージに包まれていないことに違和感を覚えるレベル。物凄い笑顔がまた、スパイス効いてやがるであります。
こちらは店主であり白山伯のお菓子を殆ど一人で作っているパティシエの根田氏であります。ご近所付き合いもよく町内の取り組みにも積極的で、よく相談にも乗ってくれる人格者。ソンケイを込めてセンセイと呼ばれることもあるのだとか。
日々生地をこねたりクリームを立てたりと体力勝負のパティシエとあって体格も体力も優れており、力仕事やいざというとき、ご近所さんから頼りにされているようであります。
勿論、洋菓子屋、パティシエとしての実力も本物で、確かな味覚と信頼できる技術が生み出す自慢のモンブランはグルメマップアプリでも上位に食い込む一品。特に一本足りない無骨な指先が作り出す細やかで見目美しい細工物は、有閑マダムを唸らせるとか何とか。
ちなみに洋菓子屋、と書いてしまったでありますが、実はこのお店、扱ってるのはモンブランのみ。ショーケースに並んでいるとりどりのケーキは、実は全てモンブラン。材料やサイズなどの違う様々なモンブランを売りにしたモンブラン専門店なのであります。
ショーケースを眺めるだけでも楽しく時間が過ごせるラインナップで、食べ比べても飽きが来ないので毎日通っては端から順に攻略するお客もいるのだとか。更には季節ごとに限定品も販売するというのだから、モンブランへの愛に満ちているでありますなあ。
例えば、屋号でもある白山伯の名を冠するモンブランは、和風の一品。土台はカステラで、内部の生クリームには小豆餡が混ぜ込んであります。栗のクリームは栗金団を使用しており、頂点に鎮座する栗は勿論甘露煮。僅かに醤油を使用することで、思わぬ味わいが生まれているそうな。
摩耶殿は迷ったようでありますが、結局お勧めの白山伯を注文。摩耶殿って結構そういうタイプでありますよね。初めての店だとまずお勧め注文するタイプ。外れがない選択というか、保守的というか。
でも店に寄るでありますけど、本日のお勧めとかって材料が余ってるからとか最近売れてないからとか、そういうのがあったりするので注意であります。勿論、その日いい食材が入ったから、というほうが多いとは思うでありますけど。
自分は初めての店で選択に迷うときは、店員に一番ケレン味のあるものを持ってくるよう注文することにしているであります。正統から外れた、一番はっちゃけたものこそその店の実力や遊び心といったものがわかるとか何とか、まあその方が面白そうなだけでありますけど。
飲食スペースがあるので、そちらのテーブルで待つことしばし。サービスの珈琲をウェイトレスの望月モデルが持ってきてくれたであります。
この望月殿、白山伯の接客や清掃など、菓子作り以外を担当しているそうで、気だるげな接客態度や寝起きじみた挙動とは裏腹に、仕事の効率には一定の評価があるそうであります。殺気もといやる気に溢れる店主と足して二で割ったら丁度よいのでは。
洋菓子屋というメルヘンな職場にありながらこのダウナーな艦娘、甘いものをカロリー摂取以外で考えていないらしく、徹夜でゲームした翌日などは無言でもりょもりょ羊羹齧ったり、珈琲用のシュガースティックをざらざら流し込んで、いいねえ、こいつが最高の栄養だよー、など。
面倒臭がりながらも邪険にはしてこない辺りが妙な人気を博しているようで、燃料にと重油や工業用アルコールなどで餌付けしたり、オンラインゲームのネット対戦を申し込んだりと、お客さんとの付き合いもそこそこ良いようであります。
しかし遅いであります。合成物らしい珈琲を啜って待つことしばし。摩耶殿から飲むことは飲むんだなとか言われたでありますが、別に合成物を否定する気はないのであります。インスタントも如何に手軽に美味しい珈琲を飲めるかという、そういう頑張り嫌いじゃないであります。
自分の趣味として拘るのと、珈琲を楽しむというのは、似てはいるでありますが同じではないのであります。第一、質素倹約を重んじる陸軍で散々飲まされた代用珈琲と比べたら大抵の珈琲は美味しいであります。
陸軍の石頭どもは頑張って不味くしようとしているとしか思えないレベルでありますからなあ。まあそのおかげで陸軍軍人はすべからく、自分家(陸軍)以外ではどんな状況でも食事を楽しめる精神が育まれるのでありますが。
ともあれ、ようやくモンブランの到着であります。まずは「あいよー」と気の抜けた声と共に給仕される和風モンブラン『白山伯』。ふわっと漂う甘い、しかしかすかに混じる醤油の香りが、懐かしさと穏やかさを感じさせるであります。
そして自分の分が……あれれ。少し待つように言って、望月殿が奥に引っ込んでしまうであります。一度に持って来ればいいものを、と思ったのも束の間、小柄な望月殿ではなく体格のよい店主殿が抱えてきたものに思わず唖然。
「え゛い゛、お゛待゛ちッ!」
慎重にテーブルに置かれるそれ。
「えーと、ウチで一番ケレン味のあるヤツね。題して『梁山泊』」
望月殿がやる気なく付け加え、店主殿のどう゛ぞごゆ゛っく゛り゛という威圧ボイス。
それは山でありました。険しくも繊細な稜線。どっしりとした構え。山肌は栗のクリーム、紫芋のクリーム、薩摩芋のクリーム、南瓜のクリーム、また抹茶やココアを混ぜ込んだクリームなどで鮮やかに彩られ、見るも鮮やか。
また山肌に蛇行して一筋、きらきらと輝く飴細工はメール・ド・グラース氷河を模したものでありましょうか。店主殿の繊細なワザマエを最大限発揮した食べられる芸術。冷ややかながら艶やかな輝きが目を奪うであります。
そして頂点には、栗の代わりとでも言うのか当店お勧めの『白山伯』がまるまる一つ、どんと鎮座しているであります。
ショックから抜けきれない自分を置いて、他人事と言わんばかりに逸早く回復した摩耶殿が、腹を抱えて笑いながらタブレットでぱしゃぱしゃ撮影中であります。
モンブラン専門店白山伯が裏メニュー『梁山泊』。新メニューを考えるのがだるい看板娘の望月殿が「もう全部一緒くたにしちゃえばいいんじゃない?」とぼやいたのを真に受けて、店主の根田氏が全力を込めて作り上げたゴリ押しと匠の技術の合わせ技。総重量3kgの山であります。
根田氏のパティシエとしてのスキルを余すところなくつぎ込んだ芸術的な造形と、それで誤魔化しきれない脅威のボリューム。発表以来何人もの登山者が挑み、遭難を繰り返し、知る人ぞ知る裏メニューになってしまった曰く付きの一品であります。
店主の根田氏の唯一の懸念は、「これもはやモンブラン(白い山)じゃないよね」だそうで、もうね、ホントね、バカじゃねーのかと。
けたけたと笑いながら写真を撮っていた摩耶殿もようやく落ち着いたようで、タブレットをしまうと、真顔で「どうすンのそれ」と一言。
まあ、食べる、しかないでありますよねえ。
根田氏の洋菓子職人としてのワザマエは実際本物で、ぱくりと口にした一口は、文句なしの一言であります。モンブランと言うとなんか野暮ったくて甘ったるいというイメージがないでもないのでありますが、非常にさらっとした口当たりで、栗や芋の自然な甘さが楽しめるであります。
掘り進めると、中にはなんと贅沢にもイチゴやキウイ、ブルーベリーといった酸味のあるフルーツが散りばめられているであります。どうしても食べ進めるうちにもったりしてしまうなか、新鮮な果物の甘酸っぱさがありがたい。
見た目の重厚さから感じられたとにかく重い、というイメージは間違いなく事実でありますが、いろんな味のクリームを食べ比べられるというのがなかなか高ポイント。隣り合ったクリームがしっかり際立つ個性を持っているおかげで、飽きが来ないであります。
これには珈琲より、渋めの濃い紅茶の方が合うかもでありますなあ、と思っているところに、望月殿からポットの紅茶の差し入れ。ポットからはみ出るティーバッグのタグは、ヌワラエリア。タグの数からも結構濃い目。嬉しい。
食べ進めるうちに気づくのは、思ったよりも軽いな、ということ。栗や芋を使っている以上、どうしても重量的にも味的にも重くなるのは必然のはずでありますが、どうも根田氏の独特の製法で、空気をたっぷり含ませてふんわりさらっとしたクリームに仕上がっているのだとか。
いやぁ、これなら全部食べきれるわけねーだろバカか。
頑張ったけど無理でありますよこれ。いくら艦娘がバカみてーに食べるとはいっても、自分揚陸艇でありますから! 格納庫は広くても胃袋はそんな大きくねーでありますから!
正規空母や戦艦連中と一緒にされたら困るでありますよ。特にバーバリアン入った一航戦なんかは出撃がてら駆逐艦とか軽巡洋艦とかバリバリ食ってるでありますけど、ああいう化け物と一緒にしないでほしいであります。
うぐぐぐ。三分の一ほど食べたあたりでさすがにダウン。豪華なランチ食べてきたのも痛いであります。まあランチコース食ってなお一キロ平らげたのは褒めてほしいであります。摩耶殿にも手伝ってもらって更に少し減らしたでありますが、さすがに半分で両者ダウン。
仕方がないので、今日は俺様の奢りだてめぇら、と言わんばかりに他のお客さんにお裾分けを強行。幸いにも、久々に出た化物モンブランを興味深そうに見物していた定連さんは快く引き受けてくれたであります。
うぇええ。おなかがぽっこり出ちゃってるのが自分でもわかるであります。えぼぢわるい。死ぬ。同じようにげんなりしてる摩耶殿。喉元からモンブランがあふれ出そうであります。恨みのこもった目で睨まれ、げしげしとテーブルの下で蹴られるであります。面目次第もございません。
しっかし、重巡洋艦なんだからもっと食べられるだろうと思うのでありますが、駆逐艦みたいに小食でありますからなあ、摩耶殿。まあ人間からしたらそれでも健啖家でありますが。
さて、どうするでありますかなあ。暫くじっとして体勢を立て直すか、それとも歩いて少しでも腹ごなししていくべきか。このまま座ってると根が生えそうでありますからなあ……。
そろそろ、と摩耶殿に言いかけたところで、ばたーん、と荒々しくドアが開かれるであります。
「センセイ! また与太者が暴れてるんでさァ! お願ェしやす!」
「お゛う゛、待゛って゛ろ゛い゛ッ!」
応えるや否や、レジの下からシカゴのご家族御用達タイプライターを持ち出し、颯爽と駆け出していく根田氏。
ヴォラッケラーッ! と吼え声なのか怒鳴り声なのかよくわからない奇声を上げて飛び出していった根田氏。それを追いかけていくサンシタ。残された望月殿が、何時もの事とばかりに壁にかけてあったソードオフ・チョメチョメを手にとってお留守番。
言葉だけでなく実際に、いざというとき、ご近所さんから頼りにされているようであります。
少し離れた路地から、激しく交わされる怒号と、タタタタタタッと軽快に響くタイプ音()に、我々は顔を見合わせるであります。
どうやら店主殿は困ったやんちゃさんのパースエイド(説得)にお出かけになられた模様。
腹と自体が落ち着くまで、ゆっくりするであります。
「そーだな。そーしよう、ウン」
どこまでも平和な麗らかな午後を、耳を塞いで過ごす事にするであります。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。
白衣を着替える羽目になった店主殿に挨拶をして、モンブラン専門店白山伯を後にする我々。暫くモンブランなど見たくもないので、お土産は提督殿と叢雲殿用に二つだけ購入であります。
すっかり腹も膨れてしまって、もうさっさと帰りたい気分でありましたが、次が最後のお店であり、しかも珈琲屋ということもあって、ぶらぶらと向かうことに。固形物でなければまあ、まだいけるであります。
それに摩耶殿に美味しい珈琲を飲ませると言う目的もあるでありますからな。まあこの満腹状態で過不足なく楽しめるかは不明でありますが。
重たい腹を抱えてゾンビの如くのろのろと歩いた先、目的の珈琲屋『是々非々庵』はありました。赤煉瓦の瀟洒な店構えで、合成樫のドアも心なし年期の入った感があるであります。ドアにかけられたOpenの札には、デフォルメされたブチ模様の猫のイラスト。
フムン。是々非々庵、でありますか。珈琲の当て字である可否にかけたものでありますかな。合成物が主流となり、造り物の人間もどきである我々艦娘が闊歩し、正義というものが曖昧になったこのご時世、耳に痛い言葉であります。
ドアを開けると、からからと涼しげなドアベルの音。
「いらっしゃい」
重厚なバリトン。深く息を吸えば、肺を満たすような芳香。珈琲の香り。部屋の隅のプレイヤーから流れる掠れ気味のモダン・ジャズ。
なかなかいい雰囲気であります。
ドアを閉めると、表の喧騒がぴたりと遮られ、まるで時間が止まったような穏やかな空間が生まれたであります。
もう百年も前からずっとこうして営業していたような、そんな趣さえ感じるであります。
「おや……マヤちゃんじゃないか。今日は、お友達も一緒かい?」
「ああ、マスター。ちょッと珈琲にうるさい奴でね」
「やあやあ、それは怖いな」
摩耶殿は結構常連さんみたいでありますな。落ち着いた初老の店主殿と談笑など。
切れ長の目に、ロマンスグレーのオールバック。
日々よく手入れのされた口髭に、悪戯っぽい笑い皺の刻まれた目元。
こちらを見やる視線は、面白いものを見たという感情を仄めかしているようでありました。
フムン。
摩耶殿はよく来られるので?
「ああ、まあ以前ちょッと助けてもらッて、それが縁で」
「大したことはしてないんだがね。ま、座ってきなさい。一杯淹れるよ」
年期の入ったミルを用意しながらそう仰るので、お言葉に甘えるであります。
驚いたことに、店内のテーブルや椅子は、大戦開始以前のアンティークものでありました。合成品ではない、本物の樫材であります。内地でさえなかなか手に入らんでありますよこれ。天然木材は伐採規制で殆ど手に入らんでありますからなあ。
摩耶殿、珈琲はよくわからん、のでは?
「まあ、普段は、選べるンなら選ばねェなあ」
子供味覚なんだろーよー、と不貞腐れた様に言う摩耶殿。
その割に常連さんみたいでありますけど。
「ンー………まあ、珈琲飲みにッつーか、人生相談かな。珈琲の香りは落ち着くし、マスターも、なんてーんだろーなー。親父みてーだからなー」
親父、でありますか。
「そ、親父。父親。いッつも落ち着いてて、おッきな掌してて、提督みてーだなーッて」
提督殿?
「ああ、いや、その、」
ああ、前に居た鎮守府の提督でありますか。
「ッそうそう、それ」
摩耶殿が前に居た鎮守府、でありますか。ほんと、摩耶殿どういう経歴なんでありますかね。事前調査でも出てきてないでありますし、陸軍はそこまで重要視してないみたいでありますけど。ぼくのかんがえたさいきょうのかんむすって感じでもないでありますし。
それにしても父親、でありますか。遺伝子操作で強化されたクローン体、合成人間を素体とする艦娘が口にするには何とも似あわぬものであります。イメージというか、固定観念というか、テンプレートとしての父親像というものは想像がつくのでしょうがね。
艦娘は人間とは少々精神構造が異なるので、そのカウンセリングは専門家でも手を焼くものであります。手近なところで相性の良いカウンセラーを得られるとは、摩耶殿も運がいいでありますなあ。
「娘を持つ前に、嫁さん貰わないとだけどね」
「マスター、貰う気もないンだろ?」
「まあ、独り身は何かと気楽でね」
軽口を叩きながら珈琲を持ってくる店主殿。
この香りは……。
「おー、これこれ、藤原鎌足」
「モカ・マタリ、な。マヤちゃん、こいつは気に入ってくれたからね」
おお、モカ・マタリ!
それも丁寧に欠陥豆を取り除き、自前で焙煎したものでありますな!
単なる珈琲屋ではなく、焙煎屋でありましたか!
「お、わかる? 珈琲は豆も大事だが、焙煎の具合が決め手というのが持論でね」
独特な焙煎具合でありますなあ。かなりの浅炒り。香気と酸味がうまいこと引き出されているであります。
「最初マンデリン出した時は、どうも苦味が駄目みたいでね。酸味が楽しめる豆を選んでったら、こいつがドンピシャみたいでね」
フムン。摩耶殿も舌が肥えてるでありますなあ。まあこればっかりは好みでありますから肥えてるも何もないでありますが。
上質な店。上質な家具。上質な珈琲。これらを楽しめる上質な空気。たまらんでありますなあ。事ここに至ると、もはや言葉は要らぬの境地であります。ゆったりと時間を楽しむ、その贅沢こそが、何よりも価値のある宝でありますよ。
そうしてしばしの時間を楽しみ、モンブランで膨れた腹も落ち着いて。
「じャあ、そろそろ帰るか」
立ち上がる摩耶殿に、ちょっとお願いを。
自分、もうちょっと珈琲についてマスターと語らっていきたいので、お土産を届けて頂けるでしょうか?
「え? ああ、まあ、いいけど」
まあ摩耶殿がもうちょっと珈琲語りに付き合えるようであれば、ねえ。
「うるッせえやい。あたしャ飲む専だからいーんだよッ」
言い捨てて店を出ていく摩耶殿を、マスターと二人仲良く見送って、さて。
いったん店を出てOpenの札をひっくり返し、Closeに。
そして店内に戻ってドアを施錠し、念のため盗聴器がないか走査し、一息。
新しく珈琲を淹れてくれる店主殿に、改めてご挨拶を。
御久し振りであります、中尉殿。お元気そうで。
「相変わらず嫌味な奴だな、あきつ丸」
シニカルに笑う男は、陸軍式の答礼を返してそう仰いました。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。
Closeの札のかけられたドアの向こう。
天然樫材の家具に囲まれたモダンな内装。
擦れた歌を奏で続けるジュークボックス。
洒落た珈琲屋。
落ち着く香り。
しかし、その空気は先程までとは一変していたのであります。
「貴様も元気そうで何よりだ。まあ、硬くなるなよ。いまの俺はただの珈琲屋のおやじだ。ただのな」
くしゃりとオールバックを崩して、中尉殿は変わらぬ笑みを浮かべたであります。大人の余裕を醸し出すマスターのそれではなく、皮肉めいて気だるげな野卑な笑み。
陸軍情報部第二課に所属していた“カイゼル”中尉殿……尤も、陸情の殆どの構成員がそうであるように、その階級に信憑性など置けないでありますし、本名も不明。特徴であるカイゼル髭からみなそのように呼び習わしていただけのことでありますが。
中尉殿に置かれましては、先頃内地で獄中死なされたと聞き及んでおりますが。
「ああ、あんなものは嘘だ嘘。死人が入用だったのでな」
フムン。陸情構成員が行動しやすくするために死を偽装することは稀にあると聞いていたでありますが、それでありますかな。
では罪状は海軍将校の秘書艦である駆逐艦にコナかけたからという噂は。
「ああ、あれは参った。ちょっとハイエースしてダンケするつもりだったんだが、最近の駆逐艦はお洒落さんだな。そこらの小学生かと思ったぞ」
では、自分ちょっと忙しいので。
「待て待て、冗談だ」
「全く、冗談の通じん奴だな、貴様は。三課じゃユーモアは教えとらんのか」
艦娘(人外)にユーモア(人間味)というのも毒が利いてると思うでありますが。
「嫌なユーモアだ。とにかく、その噂は根も葉もない嘘八百だ」
だといいでありますが。
「第一、そっちは示談で済んだからな」
…………それも冗談でありますか?
「さてな。貴様で考えろ」
突っ込むのも面倒になり、中尉殿の淹れて下さった珈琲を一口。
そしてしかめつら。
これも中尉殿なりのユーモアでありますかな。
「貴様があちこち回って舌を肥やしてると聞いたからな。懐かしい故郷の味はどうだ? え?」
常在戦場の味と心得るであります。
「モノは言い様だな、三課のお利口さんめ」
まだ非合法ハーブティーがマシに思える陸軍名物代用珈琲をすすり、溜息。合成品の豆でもまだよほどうまいものが飲めるだろうに、よくまあこのご時世にこんなクソ不味い珈琲を錬成できるものだと感心するほどでありますよ。
まあ、旧交を温めに来た訳じゃあないであります。これが単なる偶然とも思えないでありますから、とっとと現状確認と参りましょうかね。
「フン、三課は情緒っつーもんを知らんのかね。まあ、いい」
自分の淹れた泥水を不味い不味いと飲み干して、髭の中尉殿はにやりと笑ったであります。
「構成員間の情報交換は推奨事例だ。いいとも。尤も、何事もただじゃあないんだがね」
そのクソ不味い泥水もな、とのたまう。
あきつ丸であります。
摩耶殿もお勧めの珈琲屋に入ったら陸軍情報部の知り合いに遭遇したのでありました。
さて。では、中尉殿が戸籍上……まあどうせ偽造戸籍でしょうが、その戸籍の上で死刑扱いになってまでこんなところにもぐりこんだ訳でも聞かせていただきましょうか。
「勿論、橋頭保の作成だ。二課の仕事は現地に溶け込むこと。貴様ら三課の工作員どもの為にな。………尤も、まともに潜伏できたのは俺位だったようだがな。他に三度、二課の人間が送られてきているはずだが、根付く前に刈られたようだ」
陸軍情報部は、深海棲艦どもが『海域』からやってくる以前から、各国で諜報活動を続けてきた陸軍の懐刀。これは友軍である海軍にさえ一切合財を秘匿して運用してきた歴史と伝統のある悪意の結晶であります。
特に現地に潜伏して情報を収集・分析し、工作員の補助をその任務とする二課は、古い言い方をすれば『草』であります。場合によっては何世代もかけて現地に溶け込むものもあり、陸情の長い手として活躍している、らしい、であります。
自分の所属する三課は、潜入と工作が任務であります。二課のように時間をかけたものではなく、潜入し、目的を達成し、離脱する、基本的にこの流れであります。何かとお世話になるので二課には頭が上がらないのであります。
この悪意の塊である組織は、まるで当然のように、友軍である海軍内部にも根を張っているらしいのであります。三課ですら噂程度にしか知らないので、実際のところはよくわからんのでありますが。
海軍にも諜報機関は存在するらしいのでありますが、こと諜報関係に関しては陸軍が完全に圧倒している、というのが現状であります。というのも主な活動場所が海上・船上であった海軍は、深海棲艦登場以前まで諜報関係にあまり力を注いでいなかったのでありますな。
結果として、人間同士で戦争してた往古から積み重ね続けた悪意の結晶には及ばぬ程度でしかないようであります。
まあ、その悪意の結晶の工作員は、ちょっと前に海軍の電子工作員に脳焼かれかけたんでありますけど。ああいうチートさえなけりゃ陸軍の電子工作技術は図抜けてるんでありますからなー。
まあともあれ、その悪意の結晶であるところの陸情二課が潜入を拒まれているとなると、この鎮守府のガードの固さがうかがえるものであります。まさか使い捨ての労働力である囚人の受け入れ時にもそこまで徹底したチェックがあるとは。
自分が研修という形で真正面から出向するとか聞いた時は、脳に重大な故障でも発生しやがったのかと思ったでありますが、要するに他に潜入のしようがなかったのでありますなあ。
そう思うとこの軽薄な髭のおやじが途端に歴戦の古兵に見えてくるから不思議であります。
「おう、なんだ馬鹿野郎、この野郎、見つめ腐りやがって。貴様は俺のストライクゾーンよりかなり上だぞ」
やっぱなしで。
あきつ丸であります。苦み走った渋いおじさまもとい、斜に構えたロリコンのおっさんとぼちぼち情報交換してたでありますが、大した収穫はなかったでありますな。というよりは、こちらの『支払い不足』を理由に出し惜しみされたであります。
二課の仕事は三課のサポートじゃねーのかよであります。いくら頭があがらないっつってもそりゃちゃんと仕事してるうちの話でありますからな。トチ狂って二重スパイの真似事始めた二課員の『退職手続き』くらい経験ありますからな、こちとら。
と、軽く脅して見たでありますが、どこ吹く風。むしろこっちの職務怠慢をなじられる始末であります。
「貴様がここに潜り込んだのはお上の指示で、俺はそのお上の指示で情報提供に条件をつけられてんだ。貴様がもっとうまく仕事回してねーのが原因なんだよこのポンコツ」
ぐぬぬ。そもそもこちとらそんな条件何ざ知らねーでありますから。現地協力員がいるとかはじめて知ったでありますから。などと言いかえそうにもお上の指示という伝家の宝刀が許さんのであります。こちとら所詮命に枷のかかった艦娘稼業。ガス欠と自爆装置には敵わんであります。
でもでも、少なくともここの艦娘の情報はいくつか渡したじゃないでありますか、と食い下がってみたものの、梨の礫。むしろ嗤われたであります。
「馬鹿め。そのくらいの情報は既にお前の前任者が報告済みだよ。よほど詳細にな」
前任者。自分の前に送られてきた間諜は殆どが、輪切りのソルベじみた処置を施されて熨斗付けて送り返されたそうでありますから、叢雲殿が取り逃がしたという唯一の生き残りのことでありますか。しかも、自分と同じ歩き方をするとか言う。
「おー、おー、心当たりがあるって顔だな。ご明察ご明察、頭の切れる狗ッコロで手間ァねえや。おじさん嬉しいねえ。貴様の教育係だった三課の少尉殿だよ」
少尉殿――教官殿。自分に間諜のいろはを叩き込んでくれた、いまどき珍しい純天然物の人間であります。
あきつ丸であります。
提出した報告は既に前任者が提出したものの劣化版でしかなかったみたいであります。クソが。ほんとあの教官殿、無駄に仕事できるんだから。
「本当はヤツが任務を続行する予定だったんだが、百戦錬磨の秘書艦のプライドが存在を許せなかったんだろうなァ。実際、貴様もあの男には思うところもあるだろうよ」
まあ、大抵の艦娘にとって腹立たしい人間ではあると思うでありますよ、あの人。
機械人どころか、強化義肢も歯のインプラントすら入れてない純人間が、艦娘とのタイマン勝負で勝ち越し最多記録を保持するレコードホルダー『人間工具』となると、正直兵器としての自信木っ端微塵でありますよ。
自分は製造されたて日も浅いうちからアレの指導を受けてきたでありますから、もう慣れっこでありますけど、艤装展開した艦娘を素手で無力化するとか、純人間の癖に大分人間やめてやがるでありますからなあ。
もうあれ人間とかじゃなくて艦娘絶対殺すマンとかそういう種族だと自分の中で納得させてるであります。まあ、自分はその殺しのネタを大分ご教授いただいたので、チートではあってもバグではないなとは思えるでありますけど。
ホントのバグってのは、深海棲艦の個人最多撃破数と最長継戦時間を誇る『人間飛翔体』殿みたいのをいうでありますけど、あれキワキワの機械人でありますからなあ。艦娘技術到来以前に機械化しておきながら、いまだ前線で深海棲艦狩りしてる爺様とか、悪夢でしかねえであります。
「貴様と同様、視察を理由に正面から潜入したが、軽く見て排除にかかった巡洋艦を一蹴、警戒して本気で殺しに来た秘書艦殿を返り討ち。統率者がダウンしたんで頭のイカレた設計の既知の外の艦娘どもが好き勝手襲いはじめてな。手に負えんくなってしかたなく逃がした」
毎度毎度非常に胡散臭いというか、嘘臭いというか、ファンタジー入っているというか、もう全部こいつにやらせればいいんじゃないかって言うぼくのかんがえたさいきょうのすぱい殿も、さすがに数には勝てない、というかまあタイマン専門みたいな所あるでありますからなあ。
それでもあの魔窟から逃げられたというだけでメアリー・スーみたいな……というか、どうやって逃げたのでありますかね。艦娘なしでは『境界』は越えられないはずでありますが。
「企業秘密だ。一応いざというときの為に、緊急脱出手段は用意してる」
…………それはおいくらで?
「生憎取引不可だ。換えのきかない『人間工具』ならいざ知らず、貴様は任務完遂まで逃げられんぞォ」
チッ。
あきつ丸であります。
どうやら陸軍は海軍も知らない『境界』の裏道を用意してあるみたいでありますが、まあ使い捨ての艦娘には教えてくれませんよねわかるであります。クソ人間様万歳。
「まあ、二課の部外秘なんで貴様でなくても教えてやらんが、そいつを活用して俺はここでのんびりやれてる訳だ。外部との連絡もその『裏道』を使っている。俺のところに報告を持ってくれば、本部に提出しといてやる。そろそろ連絡手段に困っていたところだろう?」
フムン。見透かされているのは腹がたつでありますが、アンシブル中継器に細工が出来ない以上、助かるのは事実であります。クソが。
しかし、一体どうやっているのやら。例えこの鎮守府に内通者・協力者がいたとしても、艦娘なしでは越境は出来ず、艦娘が越境しようとしても、『海域』を支配しているアンシブル中継器が『境界』を通過する艦娘を捕捉する。
………まあ、自分が考えても仕方の無いことでありますな。不要な悩みの種は判断を遅くするであります。
とりあえず今回は、カイゼル中尉殿にまだ詳細のつかめていない艦娘のリストを頂戴し、調査の足掛かりとするであります。一応感謝を述べて席を立つと、掌を出される。
「代用珈琲と情報代」
………………このおっさん。仕方なくクソみたいな泥水とカスみたいな情報に感謝してトークンを叩きつけ、とっととおさらばであります。
店を出ようとしたところで、中尉殿の声。
「余計な事は考えず、まずはしっかりと信用を勝ち取ることだな。貴様が優秀であることを見せ付けるところが、貴様の任務でもある」
そして放り投げられる珈琲の袋。土産にでも、と。
黙って頷き、店を出る。どうにも、自分に知らされていない裏があって、そのシナリオに従って踊らされているのを感じるでありますが、まあ、仕方の無いこと。随分傾いた日を見上げて、ため息一つ。
仕事、したくねえなあ、であります。折角の休日と思ってのんびり遊んでたのに、最後の最後で仕事の話とは。来る前よりもげんなりとした心持で、帰路に着くのでありました。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。
司令部棟に帰ってきたであります。来たときのゆるいチェックとは違い、司令部棟に入るときはかなりチェックが厳重みたいであります。
阿吽像よろしくゲートの左右に仁王立ちする重武装型の扶桑方姉妹の連装機関砲に舐めるようにロックされながらゲートの受付へ。アレに撃たれたら、並みの戦艦級が物理保護を最大にしても、ネギトロにされかねんでありますな。
こちら側の警備は、神経質そうな目付きと人間不信を象徴するような隈がステキな駆逐艦モデル。接近と同時に傍の対艦回転式拳銃に手を伸ばし、提出した通行証を絶対に何か問題があるはずとばかり何重にもチェックする仕事熱心振りであります。
見上げれば、「関係者以外の立ち入りを禁じます」という丁寧な明朝体の注意と、最底辺のクズでも理解できるよう威圧的な筆文字で「コロス」のルビ振り。
そしてモズのハヤニエめいて吊るされた、骨だけを丁寧に砕かれた人体。残念ながら日没までは持たなかったらしく、今はだんまりのオブジェ。
扉の上部には「無思慮は罪」をテーマとする処刑と拷問のマスコットであるロダンの考える男が見下ろしているであります。その思慮深き眼差しはセンサーとなっており、こうしている間にもこの身を走査し、危険物の有無を調べているであります。
はてさて、地獄なのは門のこちら側なのか、向こう側なのか。一切の希望は、どこに捨てたらよいものか。
ぼんやり考えてたら、問題が何一つ見つからなかったのか、舌打ちと共に通行証にだん、と認可印が捺され、「次は必ず虚偽を見つけ出してやるからな」突っ返されたであります。重々しい音と共にゲートが開き、早々に通り抜けるよう促されるであります。
足早に潜り抜け、背後でゲートが閉じると、そこは平穏としか言いようのない、気の抜けた空気でありました。相変わらず暇そうにテレビを眺める、警備の駆逐艦モデル。テレビからもれる内容のない笑い声。
どちらが地獄なのか、ね。
[◆◇◆◇◆]
あきつ丸であります。
居住区から帰還し、お土産の珈琲を届けに執務室へ。
摩耶殿は既に他のお土産をお届けして、立ち去った後のようでありました。
執務室では、如何にも座り心地のよさそうな椅子には提督殿ではなく叢雲殿が我が物顔でどっかりと腰をおろしていたであります。そしてこれがまた様になっているので、文句のつけようもない。多分普段からあそこが定位置なのでありましょうなあ。
肝心の提督殿は、デスクの上にでんと無造作に置かれて、叢雲殿の手で餡蜜を食べさせてもらっているところでありました。大変美味しそうに食べるので、餌付けする気持ちがよくわかるであります。胴から上しかねーでありますけど。
「おー、おかえりー」
「なんだ、無事だったのね」
既に摩耶殿から報告いってるでありましょうに。というか危険だとわかって行かせたんでありますよねこいつら。
まあそこら辺つついてもいいことなさそうでありますし、さっさとお土産の珈琲を渡すであります。
「ああ、是々非々庵の珈琲だね。マスター元気だった?」
ええまあ。殺しても死ななそうなくらいには。
珈琲の袋を受け取った叢雲殿は、少し開いて中の豆を確認し、ひとつ頷きました。
「今回もいい豆よ、提督」
「そりゃ重畳。あとで頂こうか」
じゃあ自分もお相伴に。
「駄目よ」
アッハイ。
香りからもいい豆っぽかったので残念であります。
まあ致し方ない。
しっかし叢雲殿、こうしてる今もこっちを警戒するのやめないから緊張するでありますよ。
まあ教官殿に返り討ちにされたとのことですから、多分触れる距離には近づけさせてくれないでしょうが。おんなじことが出来ると判断したら、自分でも絶対接近させないでありますし。
その割に提督殿はあんまり警戒してこないというか、大抵面白そうに観察してきやがるので、なんとなく不気味でありますが。何時尻尾を出すかと待っているんでありますかね。おお、こわいこわい。
それでは大人しく退散するとしましょうかね。もう色々疲れたから、部屋に戻って水出し珈琲でも飲みたいでありますよ……。
「ああ、ちょっと」
あきつ丸であります。提督執務室を離れようとしたところで、叢雲殿に呼び止められたであります。
嫌な予感しかしないのでさっさと立ち去りたいのでありますが、そうもいきますまい。
「あんた、摩耶に変なことしてないでしょうね?」
……………はあ?
あんまり突然だったもので、素で反応しちゃったでありますよ。失敗失敗。
でも突然そんなお母さんか少女漫画の噛ませ犬みたいな台詞言われたら仕方ないでありますよ。
「この馬鹿がなんと言おうと、私はあんたに気を許しはしない。摩耶に少しでも妙なことしたら、三枚に下ろしてアノマロカリスの餌にしてやる」
うへぇ。目がマジであります。殺してから海産物の餌にするとか鎮守府百刑でもかなりぞんざいな位置であります。
しかしまた、一艦娘に随分入れ込んでるでありますな。見た感じ、ぼくのかんがえたさいきょうのかんむすっぽくはないのでありますが。むしろ普通の小娘みたいなんでありますが、なんでそんなにこだわるんでありますかね。
「あんたには関係のないことよ。でも、私には彼女を保護する義務がある」
ゆらん、と無造作にこちらに手を向けたかと思うと、そこには予備動作もなしに瞬間的に展開した長物が、こちらにずらりと向けられていたであります。
「あの日から片時も、あの屈辱を忘れはしなかった。対策は十二分。あんたが『あれ』と同じ技を使うなら、練習台として膾切りにしてやるわ」
滅茶苦茶いい笑顔であります。威嚇的な意味で。これ完全私怨入ってますな。
「ほらほら、あんまりいじめたげないの。私はその娘には期待してるんだから」
「チッ………精々素行に気をつけることね」
ええ、まあ、そうさせて頂くであります。お義母様。
「あんたに義母呼ばわりされる謂れはないわよ。殺すわよ?」
そいつはご勘弁を。そそくさと退出して、ぎんぎらぎんの殺気から逃げ出すであります。おーこわいこわい。
自室に向かいながら、きりきい痛む胃に溜息一つ。やれやれ、あの秘書艦殿、ピリピリし過ぎで困るであります。隙も突けやしない。生理でありますかね。子宮残してるタイプかは知らねーでありますけど。
もう今日は、面倒事がこれ以上起こりませんように……。
[◆◇◆◇◆]
Tips.
>小ネタ
・社会福祉センター
本文中にあるような複合施設。文字通り揺り篭から墓場まで一通りそろっている。
葬儀があった場合、大抵このビルからコミートのビルまでトラックが走る。
・冷や奴みたいにつるんと真っ白な巨大ビルディング
上遠野浩平の「しずるさんシリーズ」を始め同世界観の作品で登場する医療機関を指す「豆腐あるいは『白い墓石』」のようであるという描写から。
・宮崎でコインランドリーがコンビニ並に存在する
宮崎に引っ越して気付かされたのだが本当にあちこちに存在する。下手するとコンビニより多い。
・羊羹みたいにつるんと真っ黒な巨大ビルディング
社会福祉センターと真逆の色調となっている。
・コミート
連合海軍の官営合成食品ブランド。『人体を作る栄養素』を網羅しており、非常に安価。
海軍運営となったのは深海棲艦戦争開始からだが、それ以前から悪名高きライフリサイクル法の下に活動していた幾つかの官営企業が統合されて現在の形になっている。
現在は『海域』産海洋プランクトンの培養・合成技術も発展し、必ずしも文字通りの「人民の人民による」人民の為のコミートだけという訳では無いようだ。
・藤原鎌足
日本史における最大氏族藤原氏の始祖。
藤原姓は臨終に際して賜ったもので、生きていた頃は中臣鎌足を名乗った。
・「ガチ」
朝潮型はガチ。
朝潮型の駆逐艦は見た目が幼い容姿をしている艦娘が多く、ランドセル様の装備をしている物もあり、朝潮型を推す提督はガチのロリコンなのではということから発生したネットスラング。
なお実艦の戦績もガチのようである。
・んちゃ
ご存じ「Dr.スランプ」(鳥山明)に登場するアンドロイド則巻アラレの挨拶。
同名であるからか、駆逐艦霰は入手時に「んちゃ…とかは言いません」とのたまう。
・柱に吊るされる
シミュレーションゲーム「Civilization4」に登場する言葉、「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ」より。
・車輪轢きの刑に処される
過程にはいろいろある様だが、四肢の骨を砕かれたり引き裂かれたりした後、車輪にくくりつけられて晒されたという。
レポート編纂者は「ベルセルク」(三浦建太郎)で知った。
・白山伯
フランス貴族シャルル・フェルディナン・カミーユ・ヒスラン・デカントン・ド・モンブラン伯爵にしてインゲルムンステル男爵。
日本では白山伯として知られている。
・梁山泊
中国山東省済寧市梁山県に存在した沼沢。
日本では「水滸伝」で有名になり、有志の巣窟を意味する代名詞のように使われている。
ぶっちゃけた話、レポート編纂者は水滸伝を読んだことが無いので、本文で述べていることは「ジャイアントロボ」のイメージとなんかふわっとしたイメージの合成である。
・砂糖にスパイス、それに素敵なものをいっぱい。そしてケミカルX
アニメ「パワーパフガールズ」にて説明されるガールズ製造のレシピ。
レポート編纂者はユートニウム博士がパンツ一丁で狂ったように奇声を上げて駆け回った直後何の前触れもなくクールダウンして紳士的にやあガールズと何事もなかったかのように挨拶する動画位しか見たことが無いので、可愛い女の子を作るという気の触れた実験をする上に、うっかり誤ってケミカルXなるどう考えても厳重に保管していて然るべきアイテムを放り込むというユートニウム博士の気の触れようくらいしかよく知らない。
・固有結界
TYPE-MOON作品に登場する用語。術者の心象風景を形にし現実に侵蝕するものとされる。
そこに立っているだけで洋菓子店をヤクザ事務所の空気に塗り替える様はまるで水晶渓谷である。
・根田
ネタたっぷりだからネタという訳ではなく、「静かなるドン」(新田たつお)に登場する沖田寝多の名前をもじった。
・ソンケイを込めてセンセイと呼ばれる
お察しの通り忍殺語。概ね意味は日本語と同じだが、この場合の先生は教育者ではなく用心棒的意味合いである。
・白山伯の名を冠するモンブラン
とりあえず和風っぽいものを放り込んだがこんなもの食べたことないので実際美味しいのかどうかはレポート編纂者の知ったことではない。
・徹夜でゲーム
ゲームばかりの望月のキャラクターは「スエズ鎮守府」(アフリカの星逆氏)のところの望月から着想した。
・こいつが最高の栄養だよー
「ピューと吹く!ジャガー」(うすた京介)にて、花に肥料を与えるときの台詞「こいつが何よりの栄養だぜ」から。どう見てもその筋の人がその筋の薬物を扱っているようにしか見えない。
・代用珈琲
恐らくタンポポの根を焙煎してつくられたもの。第二次世界大戦中ドイツで飲まれていた。
恐らく合成珈琲の方が余程安上がりの筈である。
・題して『梁山泊』
所謂登山系メニュー。当然のことながらこんなもの食べたことが無いというか見たこともないので実際美味しいのかどうかはレポート編纂者の知ったことではない。
・ヌワラエリア
濃厚で緑茶にも似た適度な渋みとコク、優雅な花香が特徴の紅茶。
・バーバリアン入った一航戦なんかは出撃がてら駆逐艦とか軽巡洋艦とかバリバリ食ってる
キタユキ氏の「加賀さん観察日記」から着想を得た描写だと思われる。
・えぼぢわるい
Web漫画「胎界主」に登場する表現。気持ち悪いの意。
・シカゴのご家族御用達タイプライター
トンプソン・サブマシンガンのこと。禁酒法時代のアメリカで警察とギャングの双方に用いられた。連続する射撃音をタイプライターの打鍵音に例えてシカゴタイプライターの別名で呼ばれた。トミーガンとも。
・ヴォラッケラーッ!
忍殺語。上級ヤクザスラングであるとされる。
・サンシタ
三下のこと。下っ端。
・ソードオフ・チョメチョメ
ソードオフ・ショットガン。銃身を詰めて取り回しを良くした散弾銃。お子様が持っている絵面が世間的によろしくないのではないかという今更な懸念からチョメチョメとふせた。意味はないが。
・パースエイド(説得)
説得行為。武力を背景にしたものを指す。
・是々非々
中国の思想家 荀子曰く、是を是とし、非を非とする事を智とし、是を非とし、非を是とする事を愚と言う。つまり善い事は善いとし、悪い事は悪いと言うことが正しいことであるという意味の教え。
・ハイエースしてダンケする
拉致して不埒な行為に及ぶという意味のネットスラング。
・常在戦場の味と心得る
「幼女戦記」(カルロ・ゼン)にて、ターニャ・デグレチャフのクソ不味い食事に対するコメントより。
・なんだ馬鹿野郎、この野郎
「ドリフターズ」(平野耕太)の菅野直、ではなく、ザ・ドリフターズの荒井 注。
・純天然物の人間
今日日ある程度荒事に携わる人種は、軽いもので義眼、大掛かりなものでは全身義体などサイバネ化やバイオ手術を施していることが多い。
・『人間工具』
この世界では図抜けた人間に対して人間○○と言った形で二つ名をつけることが多いようだ。
素手で艦娘の解体をこなすことから「教官殿」はこの二つ名で呼ばれているようだ。
・絶対殺すマン
「ジョジョの奇妙な冒険」(荒木飛呂彦)第七部「スティール・ボール・ラン」に登場するスタンド、タスクAct4にファンから付けられた二つ名から広まったネットスラング。次元の壁すら乗り越える敵に対して使用した際、何処までも追いかけて絶対に殺すという意志の強さを見せつけた。
・『人間飛翔体』
機械人、轟無尽の二つ名。その名の通りミサイル、或いはロケットのような機械人。
・もう全部こいつにやらせればいいんじゃないか
ネットスラング「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」より。
・メアリー・スー
二次創作物のオリジナルキャラクターのうち、作者の自己願望がこれでもかと詰め込まれたキャラクターを指す。「最強系」、「チート系」であることが多い。
・トークン
忍殺語。硬貨を指す。