吸血鬼は窯の女神の眷属となりて 作:一般的曇らせ愛好家
「やぁやぁ、元気にしていたかい?」
「え、僕が誰だかわからないって?」
「やだなぁ、僕だよ、この前彼...ネイア・リークを転生させた張本人さ。」
「名前を知らない...?あぁ、確かに言ってなかったね。まぁでも、どうせ大した存在じゃないんだ、存在X、その他なんとでも呼んでくれ。」
「まぁとりあえず、君も楽しみにしていただろう。彼の物語の続きを見ていこうじゃないか。」
えーと、現状を整理していこう。
まず、俺はどうやら異世界転移してしまったようだ。
しかも、大好きだったゲームのキャラになって。
そして、今俺は神様の前にいる。
えぇ...神様だよ?あの。ゼウスの姉/妹の、ギリシャ神話の中でもトップで聖人?聖神のヘスティア様がこの黒髪ツインテ女神様なのか?しかも体格から比べて胸がでかすぎるだろ...
「ベル君!おかえ...り...」
?どうしたんだ?突然固まってしまったぞ?
ならば先手必勝!断られる前に交渉をしてしまえ!
「こんにちは!ネイア・リークと申します!最近オラリオに来て、ファミリアを探してました!ベル君に出会って、ヘスティア・ファミリアを紹介してもらったので、入団しに来ました!よろしくお願いします!」
決まった...すべてを一言で済ませることで反撃の流れを封じ、仕事を追加させない社畜時代のテクニックが今役立つとはな...
普通にその後仕事渡されてよく失敗してたけど。
「...はっ!」
あ、復帰した。
「すまないね、自己紹介が遅れてしまって。僕はヘスティア、神ヘスティアだよ。今しがたベル君から聞いたと思うけどやっぱり僕の口からもね。」
やっぱりあのヘスティアなんですね...
「よろしくお願いします。ヘスティア様。」
「様なんてつけなくていいさ、呼び捨てでヘスティアと呼んでくれ給えよ。」
想像より随分と気さくな神様だな、他の神様もそうなのだろうか?
「随分と素早く言うものだから聞き逃してしまったのだけれど...名前は何というのだったっけ?」
流石にフリーズ中に一気に押し付ける言い方では伝わらないよな...後半の要件は伝わってくれたようで助かったけど。
「あぁ、申し訳ないです。ネイア・リークと言います。」
まぁ、この身体になってしまっている以上、名前はこう名乗るのが妥当だろう。
それに、何故か元の名前は思い出せないし。
「元の体の情報なんて必要ないだろう?君は前の自分が好きではなかったようだし」
...?ヘスティア様が若干の思案顔をしている。
「神様?どうしました?」
ベル君がそう声をかけると、再びヘスティア様はフリーズから帰ってきて、慌てたように言う。
「え?あぁ、何でも無いさ。よろしく、ネイア君。」
...?何だろう、さっきの顔、やけに...
「それで、ネイア君はうちのファミリアに入団したいんだよね?」
「はい、そうです!」
「分かった。歓迎するよ、ネイア君。君がこのヘスティア・ファミリア第二の眷属だ!」
やはり俺の交渉方法は優れていたな...素晴らしい...
「よし!それじゃあ、ファルナを付与しようじゃないか!そして、今日は新しい眷属の入団祝いでパーティーだよ!」
「良いんですか?やったー!」
入団初日にパーティーだなんて最高じゃないか!
♢
僕は神ヘスティア。
今日は僕の眷属がまた一人増えた素晴らしい日だ!
ベル君が女の子を連れて来た時は最初何が起こったのか分からなくて思考が止まってしまったけれど、入団したいと言ってきて安心した。
実に高価そうな格好をしていて、どんな子かと思ったけど、オラリオに来たばかりとはね...ただ、本当のことばかりを言っていたわけじゃないみたいだ。
いや、正確には、本当のことなんだろうけど、正しく説明はしていないんだろう。
でも、ネイア君が語りたがらないっていうなら、それはきっと聞かなくていいことなんだろう。害意も感じ取れなかったことだし。
ただ、やはり事情はある程度知っておくべきだろう。後で最低限のことは確認しておこう...
♢
じゃが丸君というジャンクフードを沢山出された。
これがこのファミリアでは豪華な食べ物らしい。
分かっていたことだが、やはり想像通り裕福なファミリアではなかったらしく、ベル君はダンジョンに潜るために勉強を受けさせられていて、今日それがようやく終わった所らしい。
ヘスティア様はじゃが丸君を販売するバイトをしているらしく、今日はそれをもらってくることが出来たそうだ。
...神様だよ?いや、人間と同じように生きたいというのだから貧乏ならば確かにそうなるのだろうが...
酷い現実をさまざまと見せつけられた気分だ。実際そうなのだが。
まぁ、粗方お腹も膨れて、宴もお開きという雰囲気だ。もうそろそろ、ファルナとやらを付与してもらえるだろうか。
「ふぅ...それじゃあ、もうそろそろファルナを付与しようじゃないか。上着を脱いでそこに横になってくれるかな?」
「分かりました。」
浮かれ気分になっていた頭を切り替えて、ファルナの付与というメイン・イベントに胸を膨らませる。
よくよく考えたら、頭が切り替わっていない。
まぁ、良いか。
ファルナは背中に刻むらしく、素肌を見せなければいけないらしい。
ベル、ちょっとあっち行ってて。
赤面しながらスタスタと駆けて行ってしまった。
軟弱者め。
マントを外し、ゴスロリっぽくした服を脱ぐ。
着脱が楽になるからこういう時に助かる。
ベッドにうつ伏せになり、ヘスティア様が俺に乗っかってくる。
「よし、それじゃあファルナを付与していくよ。」
ヘスティア様が指に針を刺す光景が視界の端に映る。
指先から血が玉のように膨らんで出てくる。
忌避感を覚えるであろう光景に、何故か目が離せなくなる。
...なんだ、この感覚...
奇妙な感覚に違和感を覚えながら、ソレを求めたくなる感情に蓋をして、目を閉じて、腕に押し付ける。
少し待つと、背中に血が垂らされる。
突然背中が淡く光り始め、驚いて目を見開き、軽く身を捩らせる。
そんな俺を安心させるように、ヘスティア様が声をかけてくる。
「大丈夫さ、やってることは派手だけど、これはただの遊びのようなものだから。」
この仰々しい光やら雰囲気ってのは、実際は出さなくても出来る、一種のパフォーマンスのようなものだそうだ。
...凄いな。作り物とはいえ雰囲気に圧倒される。
ここまで神様とやらが凄いとは正直思ってなかった。
どうせ一度死んだ身だ。新しい体では、ヘスティア様を信奉して生きるのもいいな。
「酷いなぁ、君を生き返らせてあげたのは僕だっていうのに。僕にもその厚い信仰を向けてくれたっていいじゃないか。」
そんな事を頭でくるくるさせている間に、ファルナを付与し終わったらしい。
見たことがない記号?文字?が書かれている紙を手渡された。
「よし、ファルナを刻み終わったよ。これが君のステイタスだ!」
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ネイア・リーク
Lv.1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・主神への忠誠心は他者からの干渉を受けない
【
・吸血可能
・体表に付着した血液を吸収可能
――――――――――――――――――
うん、まぁ分かってはいたけど...
やっぱり吸血鬼なんですね、私...
「凄いじゃないか!いきなりスキルが二つも発現しているよ!...ちょっと、いくつか質問したいことはあるけれど...」
ですよねー。
身体の上からヘスティア様が退いたのを確認してから、起き上がって服を着なおす。
うむ、似合ってるぞ私。
「...まぁ、ある程度想像はしてました」
そして、これまでの自分の身の上を正直に話し始める。
自分が異世界人であること。自分がどんな仕事をしてきたか。
突然倒れ、気づいたらこの世界に居たこと。そして、この身体になっていたこと。
今に至るまで。
職場の話をする時には愚痴が混ざってしまったが...
「そうか、そんな気は薄々していたよ...」
え、バレてました?そういえば神様には嘘をつけないっていう話だったし、見抜かれてたのか...
そんなことは無い、とやんわり否定される。
どうやら俺の服が目立っていたらしい。後、名前を言うときに違和感があったそうだ。
まぁ、そらそうか。
前の自分の名前はもう思い出せないため、自分の名前はこのままネイアと呼んでほしいと伝える。
肯定の返事が返ってきた。
ついでに、服の中に入れっ放しになっていた物もヘスティア様に渡しておく。
「...ネイア君、なんだい?これは」
机の上にそっと置いたそれは、ファンタジスタ・オンライン内の金属、『ヴィブラニウム』だ。
最後にやった時に長い堀り作業がようやく実って一個落ちてくれた激レア金属である。
このままポッケに入れておくのも勿体ないし、ヘスティア様に渡してファミリアの為に使ってもらえれば嬉しい。
俺の一か月の努力も報われる。
軽くどういうものかを伝えて、受け取ってもらった。
そうして、外に出て行ってもらってたベル君を呼び戻して、眠りにつくことになった...のだが、ここで問題が発生した。
これまではヘスティア様がベッド、ベル君がソファーで寝ていたらしく、俺の寝るスペースが無かったのだ。
慣れっこだったため、俺が床で寝ることを提案したのだが、凄まじい勢いで却下され、最終的にヘスティア様と同じベッドで寝ることになった。
最初は拒否したのだが、久しぶりの睡眠ということもあり、最終的には折れて一緒に寝ることにした。
最後に寝たの、そういや4日前じゃん。そりゃ死ぬわ。