吸血鬼は窯の女神の眷属となりて   作:一般的曇らせ愛好家

4 / 10
第三話

私は、ギルドで講習を受けていた。

 

「はい、それじゃあ、この姿をしたモンスターは何ですか?その特徴まで言ってください」

「...ゴブリンです。一般的には弱いモンスターとして知られていて、第一層から第三層まで出現します」

「よくできました!正解です」

 

ダンジョン内でのマナーや出てくるモンスターの暗記、正直もう一回学校に通っている気分だった。

まぁでも、実際大したことは無い。

毎日知らない内容の仕事を吹っ掛けられることなどざらだったので、知識を身に着けるのは慣れっこなのだ。

 

「んー、もうそろそろダンジョンに潜っても大丈夫そうですかね」

 

エイナさんからとうとう待ち望んだダンジョンへ入る許可が出た。

ベル君は俺より先に講習を終わらせて既にダンジョンに潜っている。

 

現状私が稼げないので、ヘスティア様のバイトとベル君の稼ぎだけでこのファミリアは成り立っている。

早くダンジョンに潜って二人に楽をさせてあげたい。

 

そうはやる気持ちを押さえつけ、エイナさんに感謝の意を伝えて、いつから潜れるのかを訪ねる。

 

「重ね重ねありがとうございました。ダンジョンに潜るにあたって必要不可欠な沢山の知識を身に着けることができました。いつからダンジョンに入れるようになりますか?」

 

「いいのよ、そんなお礼なんて...明日から入ってもらって構わないから。」

 

快い返事をもらったので喜んでギルドを出る。

 

やった、やった!働けるぞ!

 

確認:生まれ変わっても俺は社畜から脱却できなかったようです。

 

異世界に来てまで社畜です。

それでも、それを苦に思えないのは大切に思える人たちが出来たからだろうか。

前世ではそういう人がいなかったからな...

 

そんなことを考えていたらファミリアに着いた。

 

よし、明日から頑張るぞ!

 

 

起きたばっかりでまだ覚醒してない頭を軽く振りながら装備の点検を始める。

 

この世界に来たばっかりの時に着ていた俺のアバターの装備では防御力に不安があったので、まだマシ、という程度だが防具屋で超格安で売られていた所々錆びているようなオンボロの鎧を着用する。

軽く磨いて錆だけは落としているがやはり耐久性に不安は残る。

 

同じく格安で買った円形盾(ラウンドシールド)を右手にしっかりと固定し、腰に付けた鞘に短剣をしまう。

 

俺は右利きだったのだが、キャラ設定で左利きと設定していたのが影響したのか、今は完全な両利きだ。

 

そして、同じくベル君も装備が整ったらしく、親指を立てて準備okのハンドサインを出してきた。

 

「それじゃあ神様、行ってきます」

「行ってきます、ヘスティア様」

 

ヘスティア様に挨拶を済まし、ダンジョンへと歩を進める。

 

 

土壁の通路に、甲高い金属と金属がぶつかり合う音が鳴り響いている。

 

そこには少年と少女が競い合うように敵へと向かう姿があった。

 

相対するは三匹のゴブリン。二匹は鉄の剣も持っている。

 

まず少女がステップを踏みながらゴブリンとの距離を詰める。

いい獲物が来たとばかりにゴブリンが鉄剣を振り下ろすも、少女が持っている盾が体と剣の間に滑り込み、間一髪攻撃を防ぐ...だけでなく、そのまま巧みな切り返しでゴブリンの剣を大きく弾き、体勢を崩させる。

そのまま喉元に向け左手のナイフを滑らせ、勢いよく切り裂く。

 

ぐぎゃあ、なんて言う無様な声を上げてゴブリンが一匹灰となって消える。

 

その間に少年も、少女以上の素早さでゴブリンの懐に入り込み、腕を切り裂いて剣を振り回させなくし、そのまま首に突き立てた。

 

また、一匹が灰になる。

 

若干ひるんだ様子を見せた最後のゴブリンが、及び腰になりながらも構えようとする。

 

しかし、その怯んだ隙を二人が見逃すはずもなく、右側からは盾が頭に叩きつけられ、左からは胸にナイフが突き刺さり、ゴブリンは即死した。

 

「...ふぅ。今回も上手くいったね」

 

そう、これが私たちにとって軽い日常と化し始めていたダンジョン探索だ。

当初は少し怖かったものの、数日こなすうちにすっかり慣れてきた。

 

今ではダンジョンの中で軽口を叩く余裕さえある。

 

「そうだね。今日は少し深い階層まで行ってみようか?」

 

ん?ベル君がこんなことを言い出すのは少し珍しい気もしなくもないが、きっとベル君も物足りないと感じてきているのだろう。

二人とも順調にステータスが育ってきているし、私は吸血鬼のスキルに項目が増えていた。

 

使う機会はないと思うが、保険もできたことだし、少し下まで降りてみるのはありかもしれない。

 

 

そのまま降りた第四層でも特に苦戦はしなかったので、調子に乗って第五層まで降りた。

 

そして今

凄い後悔してる。

 

「あれ、あれやばいでしょ...」

 

俺の言葉に、声も出ずコクコクとベル君が頷いてくる。

それもその筈、今俺たちの目の前を通ったのは、本来中層にいるはずの怪物、ミノタウロスだったからだ。

 

上層のモンスターとは比べ物にならないほどの威圧、恐怖感。一目見ただけで身体中の細胞が全力で撤退命令を出している。

 

逃げろ。戦うな。まっすぐ逃げろ。

 

あたかもそういう風な言葉が聞こえてきそうなほどの圧。

 

一体だけでも相当やばいのに、しかもそれが二体。

その上片方はボロボロとはいえ剣まで持ってやがると来た。

 

「ベル君、逃げよう。無理だこれ」

 

耳元で囁き、しっかりとベル君が聞こえたことを確認して、二人そろって階段に向かい駆けだす。

鎧の擦れる音、地面を踏みつける音が響き渡り、気づいたミノタウロス二頭が全速力で追ってくる。

 

二人して顔を見合わせて、すぐに前を向きなおして全速力でダッシュした。

 

迷路のようになっている迷宮を駆けずり回り、とうとう階段まであと少しのところまで辿り着いた。

 

直前の十字路で急速に方向転換したことで多少距離を離せた今のうちにベル君に計画を話す。

 

「このままだと追い付かれる。それにこれより上にミノタウロスを向かわせるわけにもいかない。ここで別れなきゃ」

 

ベル君は突然の言葉に一瞬硬直するも、すぐに理解して言葉を返してくる。

 

「分かった。じゃあ僕は左の通路に行く。右はこのまま真っすぐで階段だから、ネイアはそのまま地上へ出るんだ」

 

...悪いな、ベル君。それは出来んのだよ。

 

「いいえ、ベル君。君が右の通路に行くんです、私よりもベル君の方が足が早い。私はこのまま道を駆使して逃げ回ります。ベル君は先に地上に出て助けを呼んできてください。この階層にミノタウロスが出たのならすぐに騒ぎになりますから」

 

そう、だから私では駄目なのだ。

事実を突きつけてすぐに別れようとするも、それでもまだ言葉を続けようとしてくる。

だが、通路にミノタウロスがとうとう現れてしまった。

 

ベルを突き飛ばし、急いで逃げる。

ベル君の速さなら逃げきれるはずだ。

 

行く直前に小石を顔めがけて投げ、しっかり目標をこっちに向かせつつ走る。

 

頼むよベル君。なるべく早く助けを呼んできてくれ。

 

()()()()()へと向かう道を走りながら、私はベル君の無事と私の命が保つことを祈るのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。