吸血鬼は窯の女神の眷属となりて   作:一般的曇らせ愛好家

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第五話

「神様、帰ってきましたー!」

 

ベル君の元気のいい声と一緒に、本拠(ホーム)へと入る。

 

「やぁやぁお帰りー、今日はいつもより早かったんじゃないかい?二人とも」

 

ヘスティア様が出迎えてくれる。やっぱりここは落ち着くな。

地下室ではあるけれど、中は生活感たっぷりのワンルーム。

そのソファーから私たちの主神が飛び降り、トトトトと小走りになりながら向かってきた。

 

「そうなんですよねー、ちょっと二人ともダンジョンで死にかけちゃって。こうして無事帰って来たんですけどね」

 

私がそう返すと、ヘスティア様は若干不安そうな顔になりながらも軽口で返してくる。

 

「おいおい、大丈夫かい?君たちに死なれてしまったら、僕はとても悲しいよ」

 

...腕の件は黙っておいた方が良さそうだな。

ベル君に軽く目配せをしておいたが、理解してくれたかな?

現在進行形で行っているヘスティア様との非常に感動的なやり取りを見る限り微妙そうだが...

 

「ベル君、君ってやつは...!」

 

ヘスティア様が感動のまなざしでベル君の事を見つめているが、私は知っている。

 

 

さっきまでの最初は苦しいけどここを乗り切れば楽になるとか、ファミリアのファルナが同じだからどーたらって、全部エイナさんの受け売りってことを。

 

 

そんなことを露とも知らずにベル君の事を見ているヘスティア様を見ていると胸が痛くなる。

えぇ、ほんとですよ?

 

たわし嘘つかない。

 

顔に笑みを浮かべながら微笑ましいやり取りを見ていると、ステイタスの更新を行うようだ。

 

「じゃあ、いつものようにそこに寝っ転がってくれよ」

 

...にしても、ベル君の身体すっごい綺麗だよなぁ...

程よく筋肉が付きつつ色白だと?いくら何でもズルじゃない?

 

「そういえば、死にかけたって言ってたけどいったい何があったんだい?」

 

ずっとアホなことを考えてたせいで空気と化してるからもうそろそろ口を出そう、というかまずベル君がアイズ氏に関して本当のことを言うとは思えないな...よし、ちょっと脚色して伝えてやろう。

 

笑みをより深めながら、少しばかりの悪意を持って私も話に参加するのだった。

 

 

散々ベル君を煽って、ヘスティア様と一緒に笑いあった辺りでベル君のステイタスの更新が終わった。

 

さて、ベル君のステイタスはどのくらい伸びてるかな?

 

...ん?なんか今ヘスティア様、ステイタス書くときに手元がおかしくなかったか...?

 

まぁ、見間違いだろう。

今日は疲れたからな。

 

自分が思ったより疲労していることに軽く驚きながらも、ベル君のステイタスを覗き込む。

 

ベル・クラネル

 

Lv.1

 

力:I77→I82

耐久:I13

器用:I93→I96

敏捷:H148→H172

魔力:I0

 

《魔法》

【】

《スキル》

【】

 

うわ、めっちゃ伸びてる。

 

えぇ...一日、しかもあんなことがあったせいで途中で切り上げて帰って来たっていうのに、こんなに敏捷が伸びるか...?いや、むしろか。

途中で道に迷って相当走ってたらしいしな...

 

「...いつになったら魔法、使えるようになるのかなぁ...」

 

ベル君の口から思わず、といった感じで言葉が漏れる。

 

まぁ、魔法には確かに憧れるよな。

一流冒険者は大体持っていて、魔法が強力な冒険者はそれを主軸にして戦うものもいるくらいだ。

 

「そうだねぇ、私も欲しいな、魔法。なんかかっこいいやつ」

 

そう言ってはみるものの、無いものねだりをしても仕方ない。

私もステイタスの更新をしてもらおう。

 

一旦ベル君には外に出てもらうとするか。

声をかけようとすると、ベル君が突然何かに気付いたらしく喋りだす。

 

「...神様、このスキル欄、何か変な跡がありません?何か消したみたいな...」

 

その言葉でもう一回ステイタスを覗き込んでみると、確かに何か擦ったような跡がある。

 

「......あぁ、それは手元が狂ってしまった跡でね、ちゃんとスキルは発現してないから安心して」

 

やっぱり駄目かぁ、とベル君は落胆しながら、夕食を作りにキッチンへと向かった。

 

さっきの、やっぱりそういう事だよな...後で聞いておこう。

 

「じゃあヘスティア様、私のステイタスも更新して下さい」

 

ベッドに横になりながら、私のステイタスがどのくらい伸びているのかと思案する。

さっきのベル君があそこまで伸びてるのなら私のステイタスはもっと伸びていてもおかしくないよなと期待を込めて、私はシーツに伏せった。

 

「ん、分かったよ。そういえば君たちは逃げる途中で二手に分かれたんだったよね?ネイア君の方の話も聞かせてくれないかい?」

 

分かりました、そう返事をして体をベッドに預け、ゆっくりと今日の出来事を思い返していく。

 

「まず、あの時分かれた後にですね...」

 

 

最終的にアイズ氏に助けられて地上に向かったあたりでステイタスの更新が終わった。

 

「はい、これがステイタスだよ。それにしても、治るとはいえそんな怪我を負うだなんて、無理はいけないよ!」

 

割と真剣に注意をされてしまった。治るのだしそんなに無理をした気はしないのだが、本当に死にかけたのはそうだし、気を付けなければいけないな。

 

改めて意識しながら、ステイタスに目を落とす。

 

ネイア・リーク

 

Lv.1

 

力:I58→I67

耐久:I98→H121

器用:H108→H124

敏捷:I68→I80

魔力:I0

 

《魔法》

【】

《スキル》

徹底忠誠(ヘスティア・ファナティック)

・忠誠心が干渉を受けない

 

 

真祖(トゥルー・ヴァンパイア)

・吸血可能

・体表に付着した血液を吸収可能

・血液操作

 

 

ミノタウロスと正面切って戦闘したからか、めっちゃ成長してた。

ちょっと引くくらい。

 

トータル60上昇かぁ...ミノタウロスとの戦闘、やっぱり相当影響してたんだなって。

特に耐久の上昇がかなり大きい。これ絶対盾が壊れるほどの攻撃受け止めたり腕落とされたりしたせいですよね...?

次点の器用は、まぁ納得。普段から攻撃を弾いたり、受け流したりしているから、今回のミノタウロスの戦闘でさらにブーストがかかったという感じか。

 

それにしても、二つも100越えのステイタスになるのは非常に嬉しい。

自分の成長が実感できる。

 

今回に限ってはあまり嬉しくはないが...結局死にかけたわけだし。

いつかあいつもボコボコに出来るくらいには強くなるぞー、という決意を密かに固めていると、あることに気付く。

 

...これ、スキル欄に何か追加されてるな。

よく見ると、さっきのベル君と同じように消された跡がある。

 

何か追加技能が来たなら言ってくれればいいのに。何か言えないようなものなのか?

 

首を傾げつつヘスティア様の肩を叩いて、無言でステイタスが刻まれた紙を見せつけて消された部分を指さす。

 

「ん?どうしたんだいネイアく...」

 

それに気づくと、途端にばつの悪そうな顔になる。

 

「あぁ、ごめんね?そこも間違えてしまったんだ。今日はバイトが大変でね」

 

どうやら誤魔化そうとしているみたいだが、私には通じない。

上司の顔色を窺いまくったこの私が嘘の一つや二つついているのを見逃すわけがない。

 

理由は定かではないが、どうやらどうしても隠しておきたいことらしい。

...はぁ、しょうがないか。

 

ため息をついて、紙を置く。

 

「分かりました。そんなに秘密にしておくなら聞きません...ベル君の方は。私の方は後で教えてもらいますからね」

 

前半部分で顔をきらめかせたヘスティア様は、後半から真逆の顔になってしまった。百面相かな?

 

「...分かったよ、ご飯を食べた後、外に来てくれ」

 

ベル君のはまだしも、私のステイタスに分からない部分があるって言うのは、一度気づいてしまうともう気になってしまってしょうがないのだ。

 

その後は、ベル君が作ってくれたご飯とヘスティア様がもらってきてくれたじゃが丸君で3人のささやかなパーティを開いた。

 

そして宴も終わった所で、へスティア様から声をかけられた。

 

「ネイア君、ちょっと来てくれないか?」

 

先ほどの件だろう。聞かせてもらうとしようじゃないか。

ベル君には武器の整備でもしててもらうように言って、外に出る。

 

...そういえば、武器両方とも駄目にしてるんだった...

高くつくだろうなぁ...

 

教会の半壊した二階で外に足を投げ出しながらヘスティア様は待っていた。

 

「はい、本当のステイタスはこれだよ」

 

渡された二枚の紙には、ベル君と私のステイタスが刻まれていた。

ベル君のものまで見ちゃってもいいのかな?首を傾げながらもさっと目を通す。

 

隠されてた部分を見て、ベル君の方に関してはすぐに納得がいった。

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する。

懸想(おもい)が続く限り効果持続。

懸想(おもい)の丈により効果向上。

 

なるほど。

ヘスティア様がベル君に惚れこんでいるのは誰が見ても分かる。

アイズ氏に対する嫉妬心ゆえだろう。

 

「ヘスティア様...これは...」

 

流石に苦言を呈するが、その前にヘスティア様から反論が飛んでくる。

 

「流石にボクだってそれだけで伝えないわけじゃないさ!それは君の方のスキルの方にも通じることだよ」

 

そう言われ、自分のスキルに目を落とす。

 

徹底忠誠(ヘスティア・ファナティック)

・忠誠心が干渉を受けない

・早熟する

・忠誠心が強いほど効果向上

・忠誠心が失われた時、このスキルも喪失する

 

...確かに改めてマジマジと見ると恥ずかしくなるようなスキルだが、そんなに問題があるようには思えないのだが?

疑問の顔を浮かべているのが分かったらしく、ヘスティア様から解説が飛んでくる。

 

「こんなレアスキル、特に成長に関わるようなものは他の神に目を付けられる可能性が高い。君のもう一つのスキルだってそうだ」

 

改めて、この世界の神様は愉快犯が多いことを思いだした。

このスキルが晒されることになれば、相当迷惑するのは間違いない。

 

「...すみません...」

 

ヘスティア様なりにちゃんと考えてくれた上でスキルを消してくれたんだな。

特にベル君は口があまり固くないし。多分ベル君に伝えてないのはそれだけじゃないけど。

 

「いいさ、自分のステイタスが気になるっていうのは当然のことだしね」

 

ヘスティア様は、私の結構失礼な言動にも一切腹を立てることなくこう返してくれた。

信仰心もより高まるよこんなの...

 

「それじゃ帰ろうか、ベル君を待たせちゃ悪いしね」

 

そうですね、と相槌を打ち地下室に戻る。

ベル君をほったらかしてお外でお喋りってのはあまりよくない。

 

 

部屋に戻ると、ベル君はナイフの手入れをとうに終わらせて、丁度鎧を磨き終わった所だった。

 

「ごめん、待たせてしまったね」

 

ベル君に声をかける。

全然気にしてないよ、と笑顔で返してくれる。

 

やっぱりみんないい人や...ファミリアってあったかいな...

 

漫画の感動的なシーンみたいな感動に浸った所で、ベル君に()()()()を頼む。

 

「ベル君...いいかい?」

 

じゃあ先に寝てるからねー、とヘスティア様がベッドに向かうのを尻目に、私は毎晩の楽しみを頂くとするのだった。

 

ソファーに座り込んだベル君が服を掴み、左の首筋をさらけ出す。

ゆっくりと近づき、ベル君の膝に乗っかり、首筋に舌を這わせる。

くすぐったそうにするベル君の反応をひとしきり楽しんだところで、目線で合図する。

 

ベル君から肯定の意を示されたので、鋭く突き出た牙を首に突き立てる。

 

ずぶり、と首に異物が侵入していく。それにも関わらず、苦痛を感じている様子は見えない。

 

私は今、吸血を行っている。この身体になった影響か、スキルの影響か、定期的に血を摂取しないと非常に気分が悪くなってしまうのだ。

本当は3日ごとのペースで良いのだが、この吸血という行動、非常に強い快楽を感じるのだ。

 

未だにベル君の血しか吸ったことはないのだが、例えようのないほど美味で、身体全体に痺れるような感覚と高揚感が走る。

 

非常に依存性が高いといえるだろう。止めようと思えば止められるのだろうが、止める必要もさしてないので、すっかり毎日の習慣と化している。

 

少しづつ、気持ち悪さを感じさせないように血を吸いだす。

 

試したことはないが、多分この快楽を血を吸っている相手にも与えることが出来るようだ。そんな確信にも似た感覚がする。

しかも、恐らくは元の世界の薬物のような今私が感じているものよりも数段上のものだ。

こんなもの、加減せずに注入したら一発で廃人になっちまうよ...

 

幸い、しっかりと意識しないとできないようだから今のところベル君は無事で済んでいる。

 

私が吸血をたっぷりと楽しんだところで牙を引き抜く。

スキルによるものなのか、がっつりと刺さっていたはずなのに、一切傷が見えない。

 

キスマークのようなマーキングができないことを少し残念に思いながらベル君にお礼を言う。

 

「ありがとうベル君、いつも助かっているよ」

 

実際快楽以外にも、体内に血を補給する事で自己修復がしやすくなるというメリットもあるのだ。

明らかに私の身体に収まるレベルではない量の血を吸っているのに、私の身体に目立った異常が出ていないことからも、恐らくは上限を超えた量はどこかに貯蔵されるのではないかと考えている。

 

え、そんな量を吸ってベル君は平気なのかって?体調に支障が出ない量には抑えてるからヘーキヘーキ。

 

ベル君は気にしないで、といつものように笑顔を浮かべながら返事してくる。

 

あぁもう、ほんと聖人だなベル君は。

 

口元から血が零れないように気を付けつつ、手を振ってベッドへと向かう。

明日は武装を買う所から始めないといけないからいつもより少し早く起きなければ。

 

私はさっとベッドに潜り込んで、早々に夢の世界へと歩みを進めるのだった。

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