「おう、六号にクロスブレードマン。帰ったか」
「ああ」
「おーう」
出迎えたアリスに酒場から帰って来たオレと六号は素直に頷く。にしても六号のやつ、本当に酔っ払ってるな。アリスの方を全然見てないし。
一緒に肩を貸して運んでくれたスノウもそんな六号に呆れてるし。
「またえらく酔っ払ってるな」
「酷いものだったぞ……」
その通りだな。帰り道で立ちションするくらいには。
「しかも飯も酒も勢いで全部奢ったからな。明日には寂しい財布に泣く筈だ」
日本円にして五十万以上の出費だからな。普段から金遣い荒いから大丈夫なのかと逆に心配してしまう。
「本当にバカの典型的な例だな。明日になったら自分に小遣いせびってくるな」
美少女にお金を集る青年……何とも情けない光景だ。
「じゃーなスノウちゃん!ほら、おやすみのチューしろよ!」
「バカなこと言ってないでとっとと寝ろ!!」
口をアヒルのように尖らせて迫る六号をスノウはケツを蹴り飛ばして一蹴。そのまま乱暴にドアを閉めて苛立ちを発散するかのように大きな足音を立てて去っていった。
「良かったな六号。おやすみのチューができて」
「汚い床とだけどな」
オレとアリスの言葉に六号は言葉を返さない。念のために六号の身体をひっくり返すと白眼で気を失っていた。
「六号は戦闘員なのに打たれ弱いのか?」
「酒と顔面強打で意識が飛んだだけだ。数分したら勝手に目を覚ますだろうさ。だからそっちのベッドに放り込んでおけ」
扱いが雑だなー。優しくする理由もないけど。
取り敢えず六号はアリスの指示通りにベッドへと放り投げ、オレもベッドの上で寛ごうとするもそれより先にアリスが話しかけてきた。
「クロスブレードマン。これ返すぞ」
アリスはそう言って長方形の物体を投げ飛ばしてくる。オレはそれをキャッチしてそれの正体を確認する。
「これ、オレが持ってたエネルギーカートリッジじゃん。しかも満タンだし」
このエネルギーカートリッジはカラフルセイバーの柄尻に装填して強引に出力を上げるもので、今の装備と共に押し付けられたものだ。だが、充電料だけでも一回五万と高く自腹だったので、一回使って以降ずっとガラクタに成り下がっていた装備である。
「そうだ。そいつはお前が持っていた空のカートリッジを充電したやつだ。キサラギのものをまんま流用してたから全く問題なかったぞ」
「手抜き組織ぃ……後、どうやって充電したんだ?内部動力からの充電は暴発の危険がメッチャ高いはずだが」
「今日取り寄せた避雷針装置に吸収された電力からだ。変圧器も兼ねた優れものだからこれぐらいは余裕だ」
「マジで凄いな」
本当にオーバーテクノロジーの塊だよ、悪の組織キサラギは。
アリスといい、デストロイヤーといい、衛星兵器といい、転送機といい本当におかしい。それを解析して利用する正義の組織も大概だが。
「てか何で充電したんだ?それと何時拝借してたんだ?」
「拝借は例のリミッター云々の時だ。充電したのは奴の雷はキサラギの装備の動力源としても使えるかのテストだ」
「もし失敗して壊れでもしたら、お前はどうするつもりだったの?」
「それは壊れても大丈夫なやつだろ?だから一切問題はない」
心なしかドヤ顔している気がするアリスにオレは何とも言えない気分となる。
だって開き直りだよ。オレじゃなくてもこうなるだろ。確かに壊れても問題ないけど。
「うーん……あれ?スノウちゃんは?」
「もう帰ったぞ。それとまだ酔っ払ってるのか?」
本当に数分で目を覚ました六号の呟きにアリスは呆れたようにそう返す。
「それとクロスブレードマンから聞いたぞ。お前、今日の酒場で全部奢ったそうだな」
「だいじょーぶだいじょーぶ!また手柄を上げればお金が入ってくるから問題なーし!!」
それ、大丈夫な流れじゃないだろ。絶対後で痛い目見るぞ。
「にしても俺は本当に大活躍だな。その内王様が『ティリスと結婚して国を治めてほしい』って言い出したらどうしよう」
「知るかそんなもん」
「国を治めるのは、将来的には勇者にされた王子さんだろ」
六号の妄言をオレとアリスはバッサリと切り捨てる。
魔王を討ち取った勇者である王子ならネームバリューで新たな王になるだろうし、ティリスは他国の王子の嫁にされる可能性が高いだろ。
その勇者が王位継承を放棄した場合は知らんが。
「そんな夢のないこと言うなよー?俺の隊は女ばっかだし、『私……実は隊長のことが……』みたいな展開になるかもしれないんだしー?」
「守銭奴、地雷、食いしん坊に好かれて嬉しいのか?」
「だから現実的な意見は止めろぉ!!」
そう叫ぶ六号は苦渋に満ちたかのような表情だ。酔いが覚めてきたのか?
「良かったな六号。クロスブレードマンのおかげで無事酔いから覚めれて」
「良くねぇよ!!人がせっかく薔薇色な人生を描いているのに悉く水を差しやがるんだから!!」
「その妄想があまりにもあり得ないから言ってるんだろ。アイツらは友人関係としてはありだが、生涯共にする相手としては先ずないだろ」
主に手綱を握り続けたり、その責任や後始末で走り回されたりで。一生尻拭いなんてゴメンだ。
「そうかー?スノウとか嫁にしたら毎日違う意味で刺激がありそうだろ?」
「悪い意味でな。毎日金銭トラブルの尻拭いや借金返済に奔走する羽目になるぞ」
この短期間で剣二本、ローン組んで買ったんだからな。その内一本はハイネとの戦いでお陀仏だ。他の剣のローンもあるみたいだし、手柄を上げて金を得ないと借金の形に剣が取り上げられるとも言ってたしな。スノウの家計はほぼ間違いなく火の車だ。
「本当にお前は夢がないな。まっ、俺は明るい未来の為にキサラギの幹部ルートも確立しておかないとな。スパイ任務もぼちぼち完了させないといけないし」
「またそれか。本当にぶれないな」
もちろんこれも悪い意味で。それを黙認しているオレも似たり寄ったりだろう。もうヒーローなんてゴメンだし。
「おい六号。機嫌がいいのはわかるが声がでかいぞ。そういう話は日本語でしろと何度も……」
ドサッ。
アリスの注意を遮るように、扉の向こうで何かが床に落ちる音が聞こえてきた。
その音にオレはもちろん、アリスと六号もゆっくりと開く扉に目を向けると……
「……スパイとはどういうことだ?」
帰った筈のスノウがいた。床には給金袋を落ちている。
……もしかして今の話を聞かれた?いや、スパイと言っていたから確実に聞かれた!!
どうする!?こうなったら六号とアリスを売って……いや、オレも知ってて無視してたんだから同罪か!!というか、二人が道連れにする姿しか浮かばねぇ!!
どうする!?マジでどうする!?
「お前ノックもなしにドア開けるとか何考えてんの!?俺やコイツが特殊なことしてたら大惨事だぞ!このおっぱい女!!」
六号はまさかの逆ギレ。いや、逆ギレして誤魔化すつもりか!!
「まったくだぞ!!こんな頭のネジがぶっ飛んだヤツのそんな行動なんて死んでも見たくないだろ!?」
「というか酔っ払いの戯れ言を真に受けんな。適当に相槌打たないで無視すると、実は俺様が魔王だったとかほざいてどんどん悪化するんだからな」
「アリスの言う通りだ!いちいち真に受けてたら……」
六号の逆ギレ作戦に便乗してオレとアリスもそれに乗っかって、六号を犠牲にスノウを言いくるめようとするも、スノウは俯いて無言を貫くだけだった。
……脅迫しない時点で色んな意味で終わったな。後、腐っても国に仕える騎士なんだな。
「……こりゃ駄目だ」
「……終わったな」
もう夜逃げするしかないな。うん。
「諦めたらそこで終わって首チョンパだぞ!?頼むから諦めないでくれ!!」
そうは言ってもなー。もう何を言っても通用しないレベルだぞ、これ。
そんなオレ達の前で、スノウは腰の剣に手を掛けようとするも、途中で止めて下ろし、固く拳を握り締めた。
「お前達が何者かは聞かない。今まで国を守ってきたせめてもの礼だ」
そう言うスノウの声には感情が籠っていない。むしろ何かを堪えるかのようなものだった。
「出ていけ。そして、二度と私の前に姿を見せるな」
顔を俯けたまま、オレ達を見ずにスノウは固い声でそう告げた。
こうして、オレ達は騎士団を辞めることとなった。
―――数日後。
「いえーい、一番乗り!俺この部屋がいい!」
「ズルいぞ六号!じゃあ自分はトイレを占領だ!」
「おまっ!?」
「せめてトイレ近くの部屋にしてくれ!オレまで巻き添え喰らうだろ!?」
騎士団を辞めたオレ達は、郊外にある小さな家で部屋を選んでいた。
ちなみに借りる為の資金はアリスが九割、オレが一割出した形だ。
「安心しろ。自分が占領するのは一階のトイレだ。二階のトイレはお前が占領すればいい」
「あ、それなら……」
「止めろぉ!!トイレを占領されたら俺、家の外で出さなきゃならなくなるだろうが!?」
「それが嫌なら六号、その一番でかい部屋を自分によこすんだな」
「チクショー!!」
こんな感じで家を探索しつつ、部屋割りを次々と決めていく。
今のところは他に行く当てもないし、六号とアリスと行動しながらこれからのことをゆっくり考えていけばいいからな。
「よし、ここをアスタロト様の部屋にしよう。そうすりゃ、風呂上がりのアスタロト様をちょこちょこ拝めるだろうからな」
「それならあの軍服コスプレ女の部屋はオレの部屋から一番遠いところにしてくれ。近いと決着つけろと突撃しかねないし」
「仮の拠点で何やってんだか……そういえば六号。お前がクロスブレードマンと一緒に毎日騎士ごっこしている間に、有用な資源や生態系の調査は済ませておいたぞ。ついでに差し障りのない程度の新素材や新薬を流してコネや活動資金も増やしておいた」
おー、おー。流石高性能ロボット。それくらいはお手の物ってか。
「……お前って本当に高性能だったの?」
「普通に高性能だろ。現地の言葉を数分で理解できるくらいなんだから」
何せ支援目的で作られたロボットだからな。それくらいできなきゃむしろ大問題だろ。
「クロスブレードマンの方が自分を良く理解しているな。どこかのアホと大違いだ」
「さりげなく俺をディスるの止めてくれませんかね」
六号の文句を他所に、アリスは一仕事終えたようにベッドに寝転がる。
「あとは最後の任務だな。この家の地下をクリーンルームに改装し、地球向けの転送機を組み上げる。転送が出来るようになり次第、地球からキサラギの戦闘員を呼び寄せて内部から侵略する」
「まあ、そうなるよな。それが目的でこの星にお前達は来たんだし」
「だな。キサラギの力なら魔王軍なんて敵じゃないしな」
確かに六号の言う通り、キサラギの科学力なら魔王軍も敵じゃない……のかもしれない。
「おいクロスブレードマン。なんだその微妙そうな顔は?」
「いや……毎回オレから逃げていたから大丈夫なのかと不安に思ってな……」
「それはお前がアホみたいに強すぎるからだろ!!シシ男さんを一方的にノシたり、ワニ男さんの顎を力ずくで無理やり開けたり、巨大掘削機を両断したり!!」
「お前は自身が規格外であることを自覚しろ」
二人してオレのことを人外扱いしてきた。解せぬ。単に他のヒーロー達があっさり負けているだけなのに。
「とにかく!俺達キサラギの力なら魔王軍程度……」
そんなことを言う六号の表情はどこか優れない。やはり懸念すべきことがあるのだろうか?
「六号。自分はお前のサポートの為に作られたんだ。悩みがあるなら聞くぞ?」
「ねぇよ!俺は悪の組織の戦闘員だぞ?今まで散々悪事を働いてきたんだ。ここだけ侵略しないってのもおかしいしな」
「まるで自分への言い訳だな」
「うぐっ!?」
オレの指摘に顔を顰める六号。この反応、図星か。
「うぉっほん!第一、こんなガスも電気も通ってないような未開な星に未練なんてねーよ!早く終わらせてキンキンに冷えたビールが飲みたいぜ!!」
だからー、そういう反応は逆に何か隠してるものなんだってー。
……もしかして。
「……隊の連中が気がかりなのか?」
「べ、べべべ別に気がかりじゃないしぃ!?第一、あのおっぱい女が俺達を追い出したんだろうが!!そりゃあ、スパイをしていた俺達に、少しは非があるかもしれないけど!?」
「スパイは悪い事だし重罪だぞ。バレたら即刻死刑だからな?」
オレがそう言うと六号は気まずそうに顔を背ける。
スノウがそうせずにオレ達を追い出したのは、アイツなりの最大限の譲歩だったんだろうな。
スノウはともかく、ロゼとグリムのことは気がかりだな……ブラックな職場環境はそのままだし、また良いようにコキ使われてないか……
「そういえば勇者様とやらが幹部の一人とどこぞの洞窟で決戦中だそうだ。その隙に、他の魔王軍の幹部が王都に向けて進軍準備しているらしい」
「よし、急いでこの国から逃げよう」
その瞬間六号はずっこけ、アリスは滑るようにベッドへと沈んだ。
「お前、普通は何とかしたいとか考えないの!?悪の組織の俺が言うのもなんだが、それは人としてどうなんだよ!?」
「だって攻めて来たら戦わなきゃならなくなるじゃん。そしたら魔王軍撤退、王族はスパイ容疑を盾に戦闘を強要。結果、社蓄人生へまっしぐらじゃないか」
今はキサラギの臨時バイトだけだからな。それもヤバくなったら簡単に切れれるし、特に問題なし。
スノウ達の方は後は自己責任だしな。オレが気に病む要素はもう一つもない。
だから急いで逃げましょー。善は急げだ。
「お前は本当に六号なみにぶれないな……取り敢えず話は最後まで聞け。転送機の準備中に魔王軍が王都を攻められたら、キサラギの計画は台無しだ。かと言って自分達が連中と戦うのも現状を考えても厳しい」
「いや、クロスブレードマンが戦えばかなり楽―――」
ジャキッ!
「すいません、何でもないです」
「本当に物理の脅しをしてくるな……話を戻すぞ。そんな訳だから、連中を足止めして勇者が王都に帰る時間を稼ごうってわけだ」
「具体的にどうやってだ?」
「地雷だ」
地雷かー。確かに地雷なら地面に埋めて放置してれば後は勝手に仕事してくれる最凶クラスの兵器だなー。
「でも地雷って後始末が面倒じゃないか?地雷の被害が結構凄かったし」
「そこは一切問題ない。キサラギ製の地雷はボタン一つで全部爆破できるから後始末には困らないし、探知機も超一流だ。何せ、世界中の地雷を全部把握できるくらいだからな」
マジか。キサラギの科学力は世界一ィ!!
「だから六号、お前は悪行ポイントを頑張って稼いでこい。クロスブレードマンは当日の穴堀要員として働けよ」
「……まぁ、それくらいならいいか」
「よし任せろ!!俺の本気を見せてやるぜ!!」
こうして『勇者に全部押し付け、魔王軍に嫌がらせ』作戦が可決されるのであった。
―――数日後。
「おお帰ったか、チャックマン」
「おかえりチャックマン。何を買ってきたんだ?」
「お前らもチャックマン言うな!!」
オレとアリスの言葉に、食料の買い物から帰ってきた“チャックマン”こと六号はキレ気味に反論する。
“チャックマン”は夜中に女性の前に現れ、ズボンのチャックを上げ下げする変態であると六号の似顔絵付きの手配書に書かれていた名称だ。
「本気を見せてやるとか言いながら、やることはみみっちい悪事とか……そんなんだから万年平社員なんだよ、チャックマン」
「昨日スノウとロゼに会って悪事は失敗したと言っていたが……それが運のつきだったな、チャックマン」
「だからチャックマン言うな!!」
ちなみに昨日のチャックマン行動はスノウの件も含めて散々だったようだ。
前半は順調だったが、スノウとロゼに遭遇する前に迫った二人は失敗だったそうだ。
一人は口では嫌々言いながらそういう展開を望んでいる変態。もう一人は防衛能力が高くて返り討ちにあったとのこと。
そのもう一人である灰色の髪の女性の前でチャックを開けながら迫った際、『汚物を見せようとすんな!!このヘタレチャックヤロー!!』と言う暴言と共にジャーマンスープレックスを決められたからだ。
そんな手痛い反撃を受けた六号は頭を地面から叩きつけられた状態で放置され、チャックもその拍子で全開だったところでスノウとロゼに見つかったのだから、色々な意味で大ダメージを負う羽目となった。
にしても、その女性は凄い力持ちだな。くそ重い戦闘服を着込んだ六号を放り投げるなんて。
「久々に遊びに行ってあんな変態に出会うなんて……エリスが転生者にパンツ取られたと聞いたくらいの衝撃だったわよ……せっかくの息抜きがあんな形で台無しにされるだなんて……こうなったらあのクソ真面目な天使にバスターかけてやる。転生者の末路とか転生のリスクを大袈裟に話すから私の仕事が無駄に増えて―――」
その女性に関しては一先ず放置し、六号が買ってきた串焼を食べながら今回の作戦の話し合いを始めていく。
「それで六号。悪行ポイントはどうだ?」
「五百五十くらいは貯めたぞ」
「おお。チャックマンの異名は伊達じゃないな」
「凄いぞチャックマン。あんなみみっちい悪事でよく稼いだな」
「本当にチャックマンって言うな!!定着したらどうしてくれるんだ!?」
もう定着してるだろ、チャックマン六号。
「改めて確認するぞ。勇者は四天王の一人、《風》のなんとやらと決闘中で不在。そこを狙って魔王軍の主力部隊が集結中だ。地下に組み上げた転送装置も移送空間の安定に一ヶ月はかかるから、その間にこの国が落ちるのは避けたいところだ」
「あれ?なんでそんなに時間がかかるんだよ?」
「一方しかないと転送の成功率が六割程度だからだそうだ。最悪の場合、全く異なる場所に飛ばされる可能性も高いそうだ」
実際、オレを転送した際はかなり適当な座標設定だったそうだし。にも関わらずこの星に送られていたからそのヤバさは十分に窺える。
「……六割?……なあ、アリス。もし四割の失敗に当たってたら、俺はどうなってたの?」
「だから転送装置の為にも時間稼ぎが必要だ。連中が通る道に地雷をしかけて足止めし、勇者が戻る時間を稼ぐ」
「おい、答えろよ!!」
六号は冷や汗だらだらでそう聞いてくるけど、アリスは華麗にスルーしている。
「確かオレの適当な転送でいいデータが取れたから成功率は上がってたんだよな」
「ああ。九十パーセントの確率で空になるくらいにはな」
「だからパラシュートを持ってたのかよ!!どうせなら地面に降り立つようにしてくれよ!!」
「その場合、地中に埋もれるか海に放り出されていた可能性が浮上するぞ」
なんせ転位先の範囲が広いみたいだからなー。空の方も下手したら大気圏突入とかアリスが言ってたし。
「てか、お前は何でそんなに冷静なんだよ!?下手すりゃ死んでたんだぞ!?」
「あの時のオレは別にそれでも良かったと考えていたくらいだったからな。本拠地襲撃も自滅覚悟だったし今さら感が凄いし」
とにかくブラック企業から逃れることを最優先にしていたからなー。自分から装置に入ったんだしそこを恨むのは
筋違いだ。
「こういう割り切り良さは六号、お前も見習うべきだぞ」
「見習えるか!俺、幹部連中に嫌われてないよな!?」
「派遣メンバーにその幹部連中も含まれていたんだから嫌われてはいないだろ。どちらかと言うとお前の運の無さを嘆くべきかと思うんだが」
なんせサイコロの六分の一の確率で見事に当たってしまったんだからな。軍服コスプレ幹部がサイコロに細工しておけば良かったと愚痴を溢していたようだし、完全に運任せだったわけだし。
「クロスブレードマンの言う通りだぞ六号。むしろ転送に無事成功したことを喜ぶべきだろ」
「俺の味方が一人もいない!!」
六号は自身の不遇さに嘆くが、かなりマシな方だと思うんだがなー。
取り敢えず、六号の悪行ポイントは保険の二百ポイント以外は全部地雷の取り寄せに使うことを決め、オレ達は魔王軍が進軍するであろうルートへと向かうのであった。
プロフィール
============
女神
クロスブレードマンが出会った、時間と空間を司る神に仕える灰髪巨乳の女神。クロスブレードマンの装備を神器級にした張本人。
仕事モードでは優しく丁寧な口調だが、本性は口の悪い毒舌家。
役職上、天界ルールによって本名が名乗れず、後輩二人は本名名乗れて信仰対象であることを悔しがっている。ただし、その事自体は恨んでいない。
仕事は主に天国の管理。現在は駄女神の仕事を引き継いだ天使のせいで自身の仕事が増えたことで観光の時間が取れなくなってストレスが増加している。
その為、観賞モニターでの人間ウォッチングが唯一の癒しとなりつつある。
クロスブレードマンの評価:リアルな夢に出てきた人物。