転送先が死後の世界→異世界だった件   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


キメラの食欲と生存本能

―――砂漠横断一日目。

 

「暑い!」

「暑い言うな!余計に暑く感じるだろ!」

 

怪獣巨大モグラの爪とフレアが使う弓を背中に背負ったスノウの叫びに、《水の実》が入ったリュックを背負っているオレは苛立ち紛れに叫ぶ。

何故《水の実》が入ったリュックを背負っているかって?

 

『クロスブレードマンが背負ってれば、あのモグラが取り返しに来ても容易に手が出せないだろ』

 

と、アリスが言って周りも賛成したからだよ!

 

「全くだ!そう言うのは聞くと余計にそう感じるんだよ!」

 

六号もスノウに文句を言っているが、文句あるなら早く悪行やってポイント貯めて車を送ってもらえよ。

ちなみにグリムは裸足なのでロゼに背負われている。速攻で干からびてダウンしてるから関係ないが。

 

「―――そうだ!クロスブレードマン!お前が青色になれば涼しくなるだろ!」

「名案です!副隊長さん、早く青色になってください!」

 

スノウとフレアはカラーII(ツー)になれとオレに言い寄ってくるが、頷くわけないだろ。

 

「却下だ!アイスカラーはオレの周りしか冷やさないし、IV(フォー)とのコンビカラーも長時間使ったらオーバーヒート起こすんだ!あの怪獣巨大モグラが襲撃する可能性がある中で使えるか!」

「ならその黒色をどうにかしろ!六号共々、暑苦しい見た目なんだぞ!」

 

確かに黒い見た目は暑く感じるだろうが、どうも出来やしない。メットは脱いでるんだから我慢しろ。

 

「コイツには体温調整機能が付いてんだよ!何年もメンテサボったから調子悪いけど」

 

……体温調整機能だと!?

 

「なんて羨ましい機能なんだ!?オレのこの戦闘服にはそんな機能付いてないのに!!」

「嘘だろ!?熱気や冷気を放つ戦闘服なのに調整機能付いてないの!?まさか、赤や青の時って……」

「熱いし冷たいに決まってんだろ!?」

 

だからカラーI(ワン)II(ツー)はあまり使いたくないんだよ!無駄に体力消耗するんだから!メットは風通しが良いだけだし!

 

「マジで欠陥スーツじゃねぇか!必須機能を搭載しないとか、正義の組織は本当に酷すぎだろ!」

 

本当にその通りだよ!そんな便利機能があるならちゃんと付けとけよ!キサラギの装備を解析したなら特に!!

 

「てかお前ら文句や要求が多すぎだろ!人が怪獣巨大モグラと戦っている間、何もしてなかったくせに!」

「あんな激戦に参加できるか!加わった瞬間にあの世行きだろうが!」

「六号の言う通りだ!“砂の王”と戦うこと自体が本来は自殺行為なんだぞ!!」

「その通りですよ!副隊長さんはアタシ達に死ねと言うんですか!?」

 

んなこと言ってねぇよ!仕事しなかったのに文句言うなって言ってんだよ!

 

「ま、幸いなことに水は大量にあるんだ。自分は水を必要としないが、お前らは飲まないと死ぬからな」

 

ロボットだから汗一つかかないアリスは平然な表情でそう言うが……

 

「こんなに暑いとオーバーヒート起こさないのか?お前は精密機械の塊だから高温は致命的じゃないのか?」

「冷却機能が内蔵されてるからまったく問題ないぞ」

 

そうですか。

 

「……本当にアリスは人間ではないのだな。見た目は少女なのに、この環境で平然としてるとは……」

「アタシも半信半疑なんですが……本当にゴーレムなんですね……」

「まあ、似たようなもんだ。ちなみに自分の体内地図によれば、こっちに向かえば間違いない」

 

この辺りは本当に頼りになるな。六号たちと違って。

 

「水はともかく、食べ物が欲しいです……」

 

そう呟くロゼからは腹が鳴る音が響いている。朝から何も食ってないからな。

 

「非常食は本当の緊急事態で食うとして……それまでは遭遇した魔獣を食うしかねぇな……」

 

六号はそう言ってカロリーゼットの箱を取り出すと……封が切られた上に中身がキレイに消えていた。

 

「「……え?」」

 

その無意味となった箱を視界に収めた六号は、慌てたように他のカロリーゼットの箱を確認すると……全部空になっていた。

 

「……何で無くなってんの?昨日送ってもらって手付かずの筈なのに」

 

オレと六号はまさかと思ってロゼに顔を向けると、ロゼはオレ達からサッと顔を逸らした。

 

「ロゼェエエエエエエエエエッ!?」

「この事態に何てことやってくれてんじゃぁあああああああっ!?」

「ごめんにゃひゃいごめんにゃひゃい!」

 

オレと六号に頬をおもいっきり引っ張られたロゼは涙目でオレ達に謝ってくる。

この食いしん坊、貴重な食料を一人でこっそり全部食いやがった!

 

「自分が中のデータ整理で落ちている時に食ったな。でなきゃ自分がとっくに気づいているからな」

「最悪のタイミングじゃねぇか!」

 

もはやロゼを責めても非常食は返ってこない。六号のポイントも底をついてるから新しい保存食も期待できないし!

 

「こうなったらサバイバルだ!好き嫌いせずに捕まえた魔獣は絶対に食うぞ!」

「「「「おおっ!!」」」」

 

六号の宣告にオレ達は声を上げて同意した。

 

―――砂漠横断二日目。

 

「無理無理無理無理だって!」

「頭まで食うのか?さすがにオレでも少しキツいぞ」

 

手や足、頭が見事に覗いているオーク鍋に六号はもちろん、オレも抵抗を覚える。

 

「隊長が言ったんですよ。捕まえた魔獣は絶対に食うって!」

「副隊長さんも何言ってるんですか。食べられるところは全部食べないと」

 

ロゼは六号を羽交い締め、フレアはオークの手を鍋から持ち上げていく。

 

「オークは嫌だ!だってこいつら、話が通じるじゃん!」

「単に顔と手足に抵抗を覚えるんだよ。地球の牛や豚、鳥の頭を食べたくないのと同じで」

 

何せ丸々だからな。スノウとフレアに調理を任せたのが失敗だった。

 

「そういうことなら安心しろ六号。共通語で話すオークと違い、野生のは蛮族語しか喋れないぞ」

「知的生命体を食えないって言ってんだ!」

 

鍋からオークの頭を取り出したスノウの言葉に、六号はオークの頭にビビりながら反論する。

ぐ、グロすぎる……食欲が失せるぞ、これは。

地球でも魚の眼球とか食う文化もあるけどさ。

 

「そもそもなんで内臓とか処理せずにそのまま鍋にぶちこんだんだよ?せめて原型がないレベルで切り分けてくれよ……」

「面倒なのと、早く食べたかったので」

 

そんな理由で手抜きすんな!トリガーハッピー!

 

「そもそも、お前たちは酒場でもっとすごいモノを食べていたんだぞ。オークくらいは平気だろ」

「そうですよ。あたしですら引くぐらいのをムシャムシャと!」

 

……知らないって本当に幸せなんだな。

 

「え……俺、普段何食ってたの?」

「今は聞かない方がいいだろ。調理用のナイフで切り分けて食うぞ」

 

オレは覚悟を決め(?)、オークの手を綺麗に解体して薄い肉状にしてから食べていく。

 

「ほら、あーん……」

「せめて肩肉にしてくれ!それが無理なら切り分けてくれぇえええええええ!!」

 

六号の悲痛な叫びが虚しく砂漠に響くのであった。

 

―――砂漠横断三日目。

 

「さすがにお前らの体力が……クロスブレードマン以外はやばいか」

「水があるから何とか、だけどな」

 

何せ昔、救援でエジプトの砂漠で二週間も戦っていたからな。食料や水は今の横断より少なかったし、それと比べれば遥かにマシだ。

 

「クロスブレードマンの剣があってマジ助かった。冷房機代わりに出来るから、体力の消耗を抑えられる」

「まったくだ……帰ったら氷結剣二世を絶対買うぞ……」

「ふみゅう~……涼しいですぅ~……」

「本当に、ですね……」

 

六号達はカラーII(ツー)のカラフルセイバーを放り込んだテントで冷を取っている。オレも入口近くで取っているが。

 

「行軍は気温が落ちる夜しか出来ないな」

「そうなると、食いもんの調達が著しく困難になるな……六号、早くセクハラして悪行ポイント貯めろ」

 

オレのその言葉に干からびているグリムと六号、アリス以外は一斉に吹き出す。

 

「クロスブレードマン!またそんな事を宣うのか!?」

「この非常時に何言ってるんですか!?」

「そうですよ!正気に戻ってください!」

 

オレは至って正気だっつーの。

 

「……任せろクロスブレードマン。手始めにスノウのパンツを下ろしてポイントを手に入れてやるさ」

「ふざけるな!お前たちはやっぱりバカだ!」

 

スノウは怒りを露に叫ぶが、オレからしたらバカはお前たちだと言いたい。

 

「バカはお前らの方だろ。六号が悪行やってポイント稼げば、車を呼んでさっさと脱出できるんだからな」

「「「……あ」」」

 

アリスの指摘にスノウ、ロゼ、フレアは間抜けな声を洩らす。

 

「……スノウ。そういうことだから、ここで俺にイタズラされろ」

「死んでしまえ!」

 

スノウ、剣抜いて抵抗しようとすんな。後、フレアもしれっと弓に手を伸ばそうとしてんじゃねぇよ。

そもそも何で矢がないのに弓に手を伸ばしてんの?まさか、正常な判断が出来なくなりかけているのか?

その後は結局、アリスの無言の指示で六号が干からびたグリムのスカート捲って少しだけ悪行ポイントを手に入れるだけで終わった。

 

―――砂漠横断六日目。

 

この四日と五日は夜の進軍とあって魔獣に遭遇しなかった。

カロリーゼットの前借りも通らず、必要経費で乾パンを申請したが送られたのはたったの二枚。

その貴重な食料もロゼが一口で全部食うという最悪の結果で終わる始末。

今は岩場の影に隠れ、カラフルセイバーの冷気で暑さを凌いでいるが……少しキツくなってきた。

一人ならまだしも七人だからな。移動手段が限られているこの星じゃ先に帰っても意味ないし。

 

「……めくらないのか?グリムのスカート……緊急時だから黙認してやる。なんならフレアでもいいぞ」

 

スノウの奴、グリムとフレアを六号に売りにいったな。

そもそも忘れてないか?グリムのスカートめくりは二回目以降はポイント加算されなかったことを。

 

「死んでるグリムじゃポイント入らねぇよ……フレアもついにグリム同様に干からびたし……」

 

フレアは今日の時点で見事にダウンした。実際、六号がこっそりフレアのスカートを捲ったそうだが、加算音声が鳴らなかったので悪行と認められなかったのだろう。

ちなみに色はオレンジだったそうだ。

 

「……スカートぐらいなら、耐えてやる……」

 

スノウはそう言って立ち上がる。

六号はスノウのスカートを捲ってパンツを拝むも……音声は鳴らない。

 

「六号、バカ正直にスカート捲るな。そこは不意討ちで尻を触るところだろうが」

 

オレがそう呟いた瞬間、刃と手刀が飛んできたので腕を掴んで防いだ。

 

「お前は本当にふざけたことを抜かすな……!」

「ふざけてねえよ。本人が許可を出したら、その時点でセクハラは犯罪じゃなくなるだろうが」

 

未成年への猥褻は許可関係なく犯罪になるが、年が近い男女で構わないになればそれは合意の上での行為になるから犯罪では無くなってしまう。

つまり、セクハラは許可した時点で悪行じゃなくなるんだよ。

 

「おいロゼ。こういう時止めるのはお前の役目だろ」

 

アリスのその言葉に確かにと思いつつロゼに視線を向けると……当の本人は捕食者の目で蹲っていた。

……マズイ。あれは本当にマズイ。下手したら全員食われる。現にグリムとフレアをチラチラと見てるし。

オレはスノウから急いで離れ、メモ用紙に『ハムの塊。byクロスブレードマン!』と書いてアリスの小型転送機にかざして向こうに送るも、一分足らずで『不許可。by《氷結》のアスタロト』と返ってきた。

何でだよ!?今、食いしん坊キメラに食われるかの瀬戸際なのに!

結局この日もご飯無しだった。

 

―――砂漠横断七日目。

 

「あと何日かで街につくぞ」

「それは吉報じゃないぞ……」

 

まだ数日はかかること間違いなしのアリスの報告に、テントの外で胡座をかいて座っているオレはうんざり気味にそう口にする。

テントの中は今にも死にそうな五人が転がっている。食いしん坊は自身の尻尾をかじってるが。

……マズイ。本当にマズイ。このままじゃ六号もスノウも倒れ、ロゼが餓えで暴走してしまう。

 

「後、数日ならオレはギリ耐えられるが……六号たちは本当に限界だぞ」

 

フレアはダウンしたからオレが肩に担ぐ羽目になったが、水と睡眠時間が確保出来ているからまだ何とか耐えられている。

不本意ながらブラック企業での経験が活きてしまった。

 

「お前たちは本当にだらしないな。少しはクロスブレードマンを見習え」

「……無茶言うなよ」

 

アリスのダメ出しに六号は覇気のない声でそう返す。そして六号はスノウ達を流し見……

 

「……緊急事態だ。スノウ、お前を剥く」

 

そう言って六号は立ち上がった。

……妥当だな。グリムとフレアは水を飲みこそするが意識は相変わらずないし、まだ意識があるスノウにセクハラすればポイントは入るだろうからな。

 

「……いいだろう。そろそろ私も限界だ」

 

スノウも限界が近づいており、殺気を微塵も隠そうともせずに剣を構える。

 

「いいかスノウ。このままじゃ共倒れだ。ここで我慢して俺に色々いたずらされるんだ」

「あの肥満王子に身体を売ろうとしたんだ。六号にセクハラされるくらい、安いもんだろ」

 

あ、いかん。同意を求めたら犯罪じゃなくなる。やっぱオレも限界が近づいているのかな。

 

「クロスブレードマンの言う通りだぞ。セクハラくらいで悩むな」

「あの時は富裕国の全財産に目が眩み、どうかしていたのだ!しかもあの場合ならちゃん責任をとってもらえる!だがこの状況は……」

「俺、責任取れって言葉が嫌い」

 

この瞬間、殴り飛ばしたい衝動を堪えたオレを自身で褒め称えたい。

 

「六号、余計なことを言うな」

「全くだこのクソ野郎。説得を台無しにしようとすんな」

 

オレとアリスが六号を非難していると……スノウが倒れた。

 

「うう……もう……無理だ……」

 

マズイ!今スノウの意識が飛んだら悪行ポイントが手に入らなくなる!

 

「六号!早くスノウにイタズラしろ!このままだと荷物が増えるぞ!」

「い、いや……それはさすがに……」

「悪の組織の戦闘員がなに躊躇ってんだよ!?」

「そうだぞ。襲おうとしてたクセに何言ってんだ」

「動けなくなったのを襲うのは、越えてはいけない一線な気がする」

 

クソ!このヘタレめ!!そこは嬉々として襲えよ!

 

「隊長……もう、我慢できません……」

 

ロゼは包帯を緩め息を荒げてそう呟いてくる。

……ヨダレと、若干虚ろとなった目で。

とうとう恐れていた事態が起きた。ロゼのやつ、完全に食う気だ!

 

「待てロゼ!こういうのはエロ担当で性格的にも良心が痛まないスノウを先に……」

「でも……これ以上は……っ!」

 

何か食い違っている気がするが、今は早くロゼに食いもんを与えないと!

『非常事態!!至急アメリカ産の牛肉十キロ!byクロスブレードマン!!』とメモ用紙に書いてアリスの小型転送機にかざして向こうに送る。

即『却下よ六号!!by《氷結》のアスタロト』のメモ用紙が返ってきた。

六号が送ったものと勘違いしやがった!マジでふざけんなよ!?

 

「……分かった。悪かったなロゼ……恥をかかせて」

「そんな……あたしもコレは越えちゃダメな一線だってわかってます……」

 

わかってるならもっと耐えろよ!頑張って食欲を抑えるんだ!!

 

「ロゼ、極限状態なら別におかしくない。そう、これは死に際に性欲が高まる生存本能だ」

 

……六号のやつ、完全に勘違いしてやがる!今高まっているのは性欲じゃなくて食欲だ!!

 

「一つ問題があるとすれば、合意の上……」

「アホか六号!一つどころか最初の方から問題大有りだ!この食いしん坊、お前を腹の中に収める気なんだぞ!!」

「…………え?」

 

オレのそのツッコミに思案顔だった六号は間抜けな表情になるも、一気に汗を噴き出し始めた。

 

「……なあ、ロゼ?今から俺と性行為をするんだろ?」

「何言ってるんですか隊長?あたしと今から殴りあって、勝者が敗者を食べて餓えを凌ぐんですよね?」

 

間違いでもなく、本気で食うと分かった六号は一気に焦りの表情へと変わった。

 

「ふざけんな!それはシャレにならねえぞ!」

「極限状態なら仕方ないって隊長は言ったじゃないですか!」

「そもそも何で俺なんだよ!?クロスブレードマンを食えば、超パワーアップする可能性があるだろ!!」

 

おい六号。オレを売って自分が助かろうとすんな。

 

「副隊長も美味しい匂いがしますが、絶対に勝てませんから逆に食べられちゃいますよ!」

 

食わねぇよ!人間やキメラを食う趣味は一切ねぇよ!

 

「お前、ホントは余裕あるだろ!?」

「そんなわけないじゃないですか!……そういえば、お爺ちゃんが人は恋をすると好きな人と一つになりたいと思うんだって言ってました……つまり、これが恋なんですね……」

「爺さんは正しいがお前の解釈が間違ってる!」

 

確かに捕食の意味で食う可能性もあるが、それは昆虫だけの話だ!

……こうなったら仕方ない。

 

「六号。お前の犠牲は忘れない。頑張って生き残ってポイントを稼ぐんだぞ」

「それじゃ、若い二人でごゆっくり」

「お前らぁ!!」

 

オレは六号を見捨ててアリスと一緒にテントから離脱。オレは体育座りとなって無心で夜空の星を眺めていく。

もし死んだら骨は……残っていたら拾ってやる。

 

ドガッ!バキッ!ゴッ!ガキッ!ゴキッ!ガゴ!

 

ピロリロリ~ン♪ピロリロリ~ン♪ピロリロリ~ン♪

『悪行ポイントが大量に加算されます。悪行ポイントが大量に加算されます。悪行ポイントが大量に加算されます』

 

テントから激しい取っ組み合いの音と同時に、悪行ポイント加算音声が響くのであった。

 

―――翌日。

 

「喜べお前たち。街が見えてきたぞ」

「……長く感じた旅だったな」

 

六号の奮闘(?)によって新品の車が手に入り、オレは真ん中の席に陣取って寝転がっている。六号は身体のあちこちがボロボロで、助手席でグッタリしているが。

 

「……俺もう地球に帰りたい」

「昨夜はお楽しみだったくせに何言ってんだ?」

「アホかアリス!一線越えてねーしセクハラ止まりだよ!食べ物送ってもらってどうにか無力化できたが、本気になった俺と渡り合ったんだぞ!?」

 

その六号と互角の戦いを繰り広げたロゼは後部座席でスノウ達と一緒に意識が飛んだ状態でグッタリしている。

 

「それは興味深いな。クロスブレードマンとの実力差を感じ取れていたことと言い、ますますこの星の古代遺跡を調査しないとな」

「それより先に《水の実》だな。量的に依頼は成功しただろうが……」

 

飲み水や冷却用の氷に使って結構消費したが、それでも数えるのが少し面倒なこの量なら成功で間違いないだろ。

 

「それもその場しのぎにしかならないだろうがな。謎の実は“砂の王”の身体の一部だから、定期的な採取は事実上不可能だからな。それと一個はキサラギに送って研究したい」

 

……勝手にしろ。

 

 

============

中間報告

 

六号の暴走により、傭兵契約を結んでいるグレイス王国は隣国のトリス王国と戦争状態に突入。

その代償としてグレイス王国の責任者から《水の実》と呼ばれる、大量の水を内包した小さな実の採取を命令される。

《水の実》の正体は“砂の王”と呼ばれる超巨大モグラの貯水袋と判明。超巨大モグラが襲いかかってきたが何とか撃退に成功。

そして、共に行動している人造キメラは極限状態になると食欲が高まり、人間でさえ食おうとしてくる。よって定期的に食料を与える必要があります。

よって、今後は緊急時には水と食料の無料転送されることを望みます。

 

超巨大モグラと単独で戦ったクロスブレードマン。

 

追伸

《氷結》のアスタロト、もし会ったら筋肉○スターを喰らわせてやるから覚悟しとけ。

============

 

 

「…………」

「あの書きなぐったようなメモ、本当にクロスブレードマンが申請してたみたいだね」

「だから言ったじゃん。これは六号が書いたメモじゃないって」

 

死刑宣告されたアスタロトがその場で頭を抱えたのは、もはや言うまでもない。

 

 

 




プロフィール

============
ロゼ

Ver.2

遊撃隊所属の人造キメラの少女。
《水の実》採取任務で極限の餓えに合い、我慢の限界から六号を食べようとした。
クロスブレードマンは逆に食べられる危険性を察して襲わなかった。
その後は包帯やパンツを奪われ、身体のあちこちを触られて悪行ポイントのダシにされた。

クロスブレードマンの評価:餓えさすな危険。
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