転送先が死後の世界→異世界だった件   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ。


勘当娘と未確認生物

―――仮アジトにて。

 

「つーわけで変な祭りの手伝いしている」

「本当にその祭り、妨害してえな」

 

アンデッド祭り開催の手伝いをする事になったことを報告した六号に対し、アリスはショットガンの整備をしながら相変わらず不機嫌そうに呟く。

 

「本当に相変わらずだな」

「当たり前だろ。自分を真正面からバカにする存在の祭りなんだぞ。グリムのペテンに惑わされて真に受けんじゃねえぞ」

「祭り自体はグリムが生まれる前から存在してるみたいだが……」

「それもグリムのようなペテン師が続けてきた結果だ。オカルトは最初から存在しない」

「そこは残留思念を操作する超能力者と考えないんだな」

 

地球にだって呪いの藁人形や何とか人形、心霊写真やポルターガイストといったオカルト現象が存在するんだから。

 

「後、彫刻や絵画に作り手の魂が宿るという言葉が……」

「そんなのは思い込みだ」

「お前は本当に頑なに超常現象を信じねえよな」

 

オカルト関連を頭ごなしで否定するアリスに六号は呆れたように呟く。

 

「仮に神様とかいたらどうすんの?」

「そんな奴もいるわけねえだろ。いてもグリムのようなペテン師だ」

「けど、オレの言語の謎は神絡みの可能性があるんだが」

 

夢だから自信ないけどさ。

 

「それに関しては本当に忌々しい謎だ。科学で全然解明できないんだからな」

「だよなぁ。俺にもお前の言葉は日本語で聞こえてる上に、スノウ達にも普通に通じてるし。ところで……」

 

六号はオレの言語の謎に頷きながら、部屋の隅に視線を向ける。

 

「なんでコイツらがいるんだ?」

 

それはオレも気になっていた。何でここにスノウとフレアがいるの?しかも銃弾を作ってるみたいだし。

 

「スノウは魔剣のローンの支払いで金がなくなったらしくてな。フレアの方は家から勘当されて住む場所がなくなったそうだ」

 

スノウのローンはまだしもフレアは勘当?

 

「なんで勘当されたんだ?」

「……トリスの外交無礼が原因ですよ。魔王軍と戦争してるのに、トリスとも戦争する羽目となった責任を取らされる形で勘当されたんです。何故か父上はもうこれ以上は庇えないと意味が分からないことも言ってましたし……」

 

ああ。フレアのおやっさん、娘のトリガーハッピーの不始末をしてたんだな。

そこに六号のやらかしで擁護は不可能となって追い出したと……ある意味不憫だ。

 

「そこを自分が見つけて拾ったというわけだ。家賃は弾丸作りの内職で払う形にしてな。スノウの方は身体を売ろうか真剣に悩んでいたから借金を肩代わりしてやった結果だ」

「ああ。だからフレアはよく出入りしてたのか」

 

今はここで寝泊まりしてるから出入りが増えるのは当然だし、オレのバイトにすぐに頷いたのも家から勘当されてお金に困っていたからか。

スノウ?ローン地獄は自業自得だろ。

 

「ちなみに貯蓄は?」

「……矢の購入に給料を全部使ってましたから、貯蓄は全然ありません」

 

フレアも自業自得だった。同情を返してほしい。

 

「アリス、できたぞ!」

「借金があるうちは“さん”をつけろ」

「はい、アリスさん!」

 

見事な上下関係だな。まあ、アリスに借金肩代わりしてもらってるから当然なんだが。

 

「……まだまだ作りは甘いが上手くなってきたな。もっと上達すればフレアのように時給を上げてやるからな」

「やった!」

 

アリスの評価にスノウはガッツポーズを取る。

てか、フレアのように?

 

「フレアの銃弾作りの出来ってどれほどなんだ?」

「キサラギが作る銃弾と遜色のない出来だ。おまけにスピードも早い」

「それ、絶対自分も使いたいからだろ」

 

なんせ飛び道具を奪おうとするくらいだからな。むしろアリスの目が届かないところで弾丸を着服しそうなんだが。

 

「失礼ですよ副隊長さん。そりゃあ、出来ればアタシも使いたいですけど、これだけあっても意味がないのは流石にわかりますよ」

 

つまり、銃があれば着服すると。やっぱりこのトリガーハッピーには銃を持たせるべきではないな。

 

「アリス、ショットガンの管理は厳重にしとけよ」

「当然のことを一々言うな。コイツは他の誰にも触らせないからな」

 

なら、安心だな。トリガーハッピーに持たせた瞬間、そこらかしこにぶっぱするのは目に見えているからな。

 

「でも大丈夫なのか?火薬は本来は免許を持ってないと扱ってはいけない品物だろ?」

 

ここは地球じゃないから免許なんて関係ないとか言いそうだけど。

 

「今は六号の悪行ポイントはマイナスだからな。弾も現地で作成するしかねえんだ。それに、火薬の扱いには注意しろと二人にはしっかり言ってあるしな」

 

それなら大丈夫か?まあ、二人も状況が状況だから慎重に扱うとは思うが。

 

「六号。お前は新任務のためにも早く悪行ポイントを稼げよ?」

「おー、わかったわかった」

 

アリスの言葉を六号は軽い感じで返して部屋を後にする。

 

「……本当にわかってんのか?」

「一応は分かってるんじゃないのか?制裁部隊が此方に来る可能性が浮上してるから」

 

一応、リリスが手を回して先伸ばしにしたそうだが、このままマイナスだと制裁部隊とやらが六号を処罰するために此方に来るそうだ。

後、マイナスが酷いからアジトの建設に必要な物以外は転送禁止になっているからあれでもちゃんと理解しているだろう……たぶん。

 

「じゃ、オレもそろそろ行く。グリムに夜になったら人形の素材集めをするから来るように言われているからな」

オレはそう言って、六号に続いて部屋を後にするのであった。

 

―――で。

 

「何で《魔の大森林》に来てるんだよ」

「全くだ。ここにはヤバイのが沢山いるってのに。人形の素材集めで何で此処に来なきゃならないんだよ」

 

オレの呟きに六号が同意しながら呟く。

夜になって人形の素材集めに何処に行くのかと思っていたらモケモケやスポポッチ、カチワリ族がいる場所だったんだからな。

 

「月が出ている夜にしか咲かない花が必要だからよ。死者が正式に地上に留まるための許可証で、これがないとご先祖様たちの霊が悪霊になってしまうのよ。そうしない為にも、その花は絶対に必要なのよ」

 

ロゼに押される車いすに乗っているグリムは丁寧にそう説明する。

花なら確かに此処しか生息できないだろうが……

 

「帰るか」

 

六号の言葉にオレとロゼは頷いてその場から立ち去ろうとする。花摘むだけならグリム一人で出来るだろ。夜だから大抵の生き物は寝ている筈だし。

 

「ねえ待って!私はか弱い乙女よ!?あの森には蛮族だっているし!せめて副隊長だけは残って!」

「そういや、クロスブレードマンはその蛮族を倒したんだったな。なら大丈夫か?」

 

おいグリムに六号。オレを蛮族避けにするつもりか?第一、ここには魔獣もいるんだぞ?

 

「第一、可愛い部下が傷物にされていいの!?」

 

え?可愛い部下?

 

「グリムは地雷の危ない部下だろ。間違っても可愛くない」

「むしろその蛮族でやって大人になればいいだろ。結婚願望の強い行き遅れの生娘だし」

「ムキー!!」

 

オレと六号の言葉にグリムはカンカンだが知らん。

ん?背中に丸い突起物を生やしたカエルが出てきたな。

 

「私はゼナリスの大司教!いい?司教って―――」

「あのカエルのようなヤツは食えるのか?」

「もしそうならロゼ、食ってみろよ」

「アレはミピョコピョコです。食べたら口の中で爆発しますよ?」

「聞きなさいよぉおお!」

 

爆発するカエルか。まんま動く爆弾だな。

 

「それにしても、隊長と副隊長はこの暗さで見えるんですか?」

「俺は改造手術で簡単な暗視能力が付いてるからな」

「オレはこのヘルメットに暗視機能があるから見える」

 

ちょっと時間はかかるけどな。

 

「マジか。俺にはシルエットしか見えないのに」

「?シルエットでも目を凝らせば見えるだろ。うっすらとカエルに見えるんだし」

「……それ、本当に暗視機能か?単に目が夜に慣れてるだけじゃないのか?」

「…………え?」

 

いやいや。まさかそんな筈は。

 

「……取り敢えず、そのヘルメット貸してくんね?」

「……おう」

 

オレは頷いてヘルメットを脱いで六号に渡すも、然程変化していない周りの暗さに対して嫌な予感を覚えていた。

 

「……やっぱりこれ、暗視機能ついてないぞ」

 

六号のその言葉に、オレはその場で崩れ落ちた。

暗視機能付きと言いながらないとか、完全に詐欺だろ!!

 

「マジでクロスブレードマンが不遇すぎる。通信機能しか付いてないとか」

「副隊長の前の職場って、本当に酷いところだったんですね……」

「扱いが私やロゼより酷いわよ……」

 

三人の同情が身に染みる……やっぱり逃げて正解だったよ。

あ、またカエルモドキが出てきた。

 

「またミピョコピョコか?」

「いえ。アレはムピョコピョコです。煮たら美味しいですから捕らえましょう!」

 

似てるが違う生物なのか。たぶん、擬態で生き残るカエルモドキなんだろうな。

そんなこんなで、オレ達は目的の花を摘むのだが……

 

「そこ。後、そっちにもあるわ」

 

摘んでいるのはオレと六号とロゼだけで、グリムは後ろで指示しているだけだった。

 

「グリム。綺麗な姉ちゃんがいる店を頼むな」

「あたしは安くてもいいから量が多いお店がいいです」

「……?」

 

六号とロゼの言葉にグリムは首を傾げている。

 

「……ひょっとして二人とも、私に奢れって言ってるの!?国から頼まれた仕事なのに!?」

 

いや、本来はお前がやるべき仕事だろ。それを後ろで指示してるだけだから安いもんだろ。

 

「副隊長!副隊長もまさか奢れと―――」

「オレは貸し一つにするだけだ。面倒事を押し付ける先としてな」

「ある意味二人より酷い!」

 

グリムが涙を浮かべてショックを受けて叫んでいるが知らん。

そんなグリムを無視しつつ花を集めていると、周囲が急に騒がしくなった。

 

「まったくお前ってやつは……」

「お前が叫ぶから何かに囲まれたじゃないか」

「グリムの後始末はもう慣れましたよ」

「ちょっと私のせい!?」

 

いや、そう考えるのがベターだろ。お前が叫んだ後に周囲が騒がしくなったんだから。

 

「敵は……六体か」

「シルエットからして全部人型だな」

「じゃあ、二体ずつ受け持ちましょう!」

「お願いね!私は直接的な戦闘力がないから三人が頼りなの!」

 

……本当に使えないな。そこは呪いで援護すると言えよ。

 

「本当にグリムは使えねえな」

「隊長!使えないって言わないで!」

 

六号の言葉に、事実なのに怒っているグリムを無視してオレは近づいてくるそいつらを警戒していると、ソイツらは草木を分けて近づいてくる。

そうしてオレ達の前に出てきたのは……ゾンビだった。

 

「あいやあああああああああ!」

 

ペンライトを照らしてゾンビを認識した六号がめっちゃ叫んでいる。

 

「ゾンビ!?なんでゾンビ!?アメリカ人が大好きなゾンビじゃん!」

 

ゾンビの登場にだいぶ混乱してるな六号。

アメリカのホラー映画はゾンビがよく起用されてるみたいだから、ゾンビが好きというのは間違いじゃないだろうけど。

 

「……アメリカ人?」

「よくわかりまふぇんが、落ち着いてくだふぁい隊長!」

 

グリムは六号の言葉の意味が分からずに首を傾げ、ロゼは鼻を押さえている。

ああ、死体の臭いもダメなんだなロゼ。

 

『セイバーカラーチェンジ!ヒートカラー!!』

 

取り敢えず、焼き斬るか。

 

「よしクロスブレードマン!ゾンビの相手は俺には無理だから全部任せた!!」

「後ろに隠れてないで仕事しろよ、悪の戦闘員」

「無理無理無理!ゾンビは俺達悪の組織の天敵なんだよ!」

 

そうなのか?オレは知らんけど。

 

「てか、ロゼも何で後ろに下がってるんだ?得意のブレスで一掃しろよ」

「あたしも無理です……臭いだけでもう……!」

 

本当に使えない隊長と部下だ。

てかロゼ。お前は世界一臭い缶詰の臭いを知ってるだろ。それと比べたらゾンビの臭いはまだマシじゃないのか?

 

「ヴヴ……あの時の臭いまで思い出しそ……ヴエ」

 

あ、ロゼがその場で吐いた。思い出しただけで吐くのかよ。さすが世界一臭い缶詰。

 

「ロゼ……こんなところで吐くなよ……ヴロロロロ」

 

お前もかよ六号!?もらいゲロで吐くんじゃねぇよ!!

 

「アア……憎イ……憎イ……」

「苦シイ……助ケ……」

 

ゾンビに恨まれる覚えはないぞ。鬱陶しいからもう斬るか。

取り敢えず首と胴体を斬って三等分にした。

 

「本当に容赦ないな、お前は」

「副隊長は本当に頼もしいですね……」

「ちなみにこれも貸し一つだからな」

 

オレがそう言った瞬間、ゲロで口元が汚れている六号とロゼは揃って顔をオレから逸らした。逸らしても意味ないのに。

 

「ちょ、ちょっと!?何で攻撃してるの!?あいたっ!」

 

見ればいつの間にかグリムは新しく現れたゾンビに袋叩きにあっていた。

 

「あれっ!?何でアンデッド達がグリムを攻撃してるの!?」

「?そんなにおかしいことなのか?」

 

ロゼが何故かその光景に驚いていたので、オレが疑問を露にぶつけるとロゼは少し躊躇いながらも答えてくれた。

 

「……実はグリムは半分人間を辞めてて、アンデッドと似たような状態なんです。だから、グリムはアンデッドとお友達……」

「だから頭が取れてもひょこっと生えたのか」

「アリスの未確認生物説が真実味をおびてきたな。となると、アンデッドも未確認生物の一種か?」

「何でそんなに軽いんですかぁ!?」

 

オレと六号の言葉にロゼは信じられないと言わんばかりに叫ぶが、実際どうでもいいことだからな。

 

「そもそも、トラ男は改造手術で人間からトラ怪人になったんだから本当にどうでもいいし」

 

その程度で一々重く受け止めていたら、蜘蛛女や蟷螂女、座敷わらしに同情しなきゃならなくなるし。

 

「副隊長ってたまに本当に薄情になる時がありますよね!?」

「この程度は薄情じゃないだろ」

 

薄情ってのは給料をワンコインで済ませようとする奴らのことを言うんだ。もしくは試作品の性能を正しく伝えなかったこととか。

 

「許サヌ……許サヌ……」

「オマエ達ヲ殺シテ……殺シテ……!」

「苦シイ……苦シイ……」

「それに、何かゾンビ達がめっちゃ恨み節を呟いてるし」

「「え?」」

 

オレがそう言った瞬間、六号とロゼは揃ってオレに顔を向けた。

 

「……ゾンビの言葉がわかんの?ずっと呻き声しか言ってないのに」

「そういえば、副隊長は“砂の王”の言葉も理解してましたね。副隊長の声や耳がおかしいのは今更でしたね」

 

マジかよ。ゾンビの言葉まで理解出来たのかよ。マジでオレの頭はどうなってるんだ?

 

「い、痛っ!はぐっ!た、隊長、副隊長、ロゼ、助けて!」

 

その間もグリムはゾンビ達に殴られ、堪らずにオレ達に助けを求めてきた。

 

「俺、素手であいつら殴りたくねえよ。ロゼ、炎吐いてアレ焼いとけよ」

「ゾンビは焼くと本当に酷い臭いが……それに、あれじゃグリムも巻き添えに……」

「あれだけ群がられると色々と面倒だよな。第一、お前仕事してないだろ。だから頑張って逃げろ」

「早く助けなさいよ!可憐な乙女が穢れた男たちに襲われてるのに!!」

 

え?可憐な乙女?

 

「お前は可憐な乙女じゃなくて行き遅れた地雷女だろ。自己評価を高くするなよ」

「ムキー!!もういいわよ!!」

 

グリムは怒り心頭といった感じでそう叫びながらゾンビを追い払うと、首にぶら下げた十字架を握りしめる。

 

「大司教の本気を見せてあげるわ!偉大なるゼナリス様!この場に満ちた不死の加護を取り払い―――」

 

……ん?この場の不死の加護を取り払う?

確かグリムも半分アンデッドだから……対象に含まれてないか?

 

「おいグリム―――」

「―――あるべき形に戻したまえ!」

 

オレが止めるより早くグリムはグリムは言葉を言い切り、地面から現れた魔法陣の天へと昇る光にゾンビ諸とも包まれる。

そして……

 

「……やっぱりこうなったか」

「アンデッドのくせに自殺しやがったぞ、こいつ」

「……いつもの儀式で治るのかなぁ……?」

 

見事に自身の不死の加護まで消し去ってしまい、グリムはゾンビ達と共に地面に沈んでいた。もちろん息はしていない。

こうなっては仕方ないので《魔の大森林》を後にし、グリムを何時もの祭壇へと連れていく。

そして例の祠の祭壇に寝かせて適当に供物を置いていくのだが……

 

「今回は死に方がアレでしたから……これで足りるかなぁ……?」

「自身が崇める神の加護を阿呆にも自分で解いたからな……」

「俺がその邪神なら見捨ててなかったことにするぞ」

 

というか、大抵は呆れて見捨てるだろ。

 

「グリムはバカなことに力を使っても許されてきたんです。今回も大丈夫ですよ!……たぶん」

 

たぶんと言う辺り、結構危ないんだな。

そんなこんなで並べた供物は光となって消えるのだが……

 

「……復活しないな」

「やっぱりお供えが足りません。グリム酔っ払うといつも自慢気に見せてきた幼馴染みから貰ったていうラブレターまで捧げたのに……」

 

憐れグリム。一番大切であろう宝物まで供物に捧げられて。

 

「しゃあない。俺もなんか捧げるか……」

 

六号はそう言ってポケットから外国の硬貨、十円玉、パチンコ玉を並べる。

それらも光となって消えるも……グリムの身体は宙に浮かない。

 

「まだ足りないのかよ……」

「副隊長。副隊長も何か捧げてくれませんか?」

「そうは言ってもなあ……」

 

オレはそう言ってポケットを探ると……自分で砕いた【ヒーローパスポート】の欠片が入っていた。

恨みの思い出しかないが……ダメ元で置いてみるか。

その嫌な思い出しかない欠片を置くと……それも光となって消えてグリムの身体が宙に浮かんだ。

 

「マジか。恨みの品の欠片なのに供物として成立するとか」

「なにを捧げているんですか副隊長。でも、何とかいけてよかったです」

 

ロゼが微妙な表情ながらもホッとしていると、グリムが何かを呟いていた。

 

「……ゼナリス様の名を騙る……不届き者……私は敬虔な信徒にして……」

 

…………。

 

「こいつ、邪神に怒られてるんじゃないのか?」

「グリムがバカな死に方をした後はたまにあるんです……」

 

前科あるんかい。

 

「まあ、普通に怒るだろ。自分の加護を解いたんだから……」

「……誰よ貴女は……今……ゼナリス様の名を騙る……不届き者と……」

 

その瞬間、グリムの身体が急に海老反りになった。

 

「「「!?」」」

 

その光景に驚くオレ達を他所に、グリムの身体はロメロスペシャルや逆海老固めといった様々な体勢へと変わっていく。

 

「……時間と空間の女神……副隊長の供物で……私は……」

 

…………。

 

「……何か、とんでもない寝言を呟いてる気がするんだが」

「あんなのはあたしも初めて見ますよ……」

「まさか、別の神に制裁くらってんじゃないのか?」

 

まさか、あの夢って実は現実だったのか?

 

「そうなると……豚や牛、魚に転生するのもマジなのか?」

「それだとなんでそれらに転生するんでしょうかね?」

「普通に考えれば……悪いことをした魂への罰?」

 

地獄に落ちた魂は血の池に落とされたり、針の山を登らされたり、身体を引っ張られたりするそうだが……ひょっとして調理や加工される過程での経験からか?

 

「だとしたら死んで転生なんかしたくない!家畜になって食材にされるとか本当に嫌だ!!」

 

オレとロゼの会話を聞いていた六号は頭を抱えてそう叫ぶ。

結局、グリムの寝言は真に受けないようにするのであった。

 

 

 




「ゼナリスの信徒!受けた加護を自分で解くんじゃないわよ!」
「ふべっ」
「しかも復活の際に私と繋がりのある品が捧げられて回収する羽目になったんだから、しっかり反省しろ!」
「あああああ!」
「…………」

夢の中で女神に制裁されるグリムの図。
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