城塞都市改めグレイス王国に向かう中、この世界のことはスノウから道中で聞くことが出来た。
この世界は、というかグレイス王国は現在、隣にある魔族の国にいきなり宣戦布告を受けて戦争中であること。
魔族の国は“砂の王”と呼ばれる巨大魔獣のせいで年々砂漠化が進んでおり、それを解決するために魔の大森林を開拓する奴隷を確保しようとグレイス王国を攻めているとのことだ。
……この流れ、ヤバくない?明らかにオレ達を魔族と戦わせようとしてないか?
そんなオレの疑問に構うことなく、スノウの顔パスで身分確認されずに全員入国。
「……やっぱりクロスブレードマンは色々とおかしい。ユニコーンと同じ速度で走って息一つ乱れていないなんて」
「記録ではキサラギ製の巨大兵器でさえ一人で破壊したそうだからな。日本西部の侵略が上手くいかなかった原因はコイツ一人のせいだとあったし」
「そりゃRバッソーを叩き斬ったり、銃弾を全部叩き落としたり、ヒーロー共から奪って改造した巨大ロボットを破壊したり、宇宙にある衛星兵器でさえ一人で落としたんだからな。後、武闘派のべリアル様を何度も退けた最強クラスのヒーローだし」
「それとあの戦闘服、どうやら黒い色だとあんまり稼働していないようだな。剣の方も同じと見ていいだろ」
「え?つまりほとんど素でここまで走っていたってこと?幾らなんでも人間止めすぎなんですけど!?」
六号とアリスはオレを見てそう言ってるが、全部仕方なくなんだよ!!
ユニコーンだってオレが背中に乗った瞬間に足をプルプル震わせたからやむ無く走る羽目になったし、巨大兵器が出て撤退しようとしたらオペレーターを通してクソ上司が逃げたら罰金とほざいて退路を塞ぐし、必死こいて破壊してもそれで生じた被害をオレの金で補填するし!そのせいで二ヶ月給料ゼロになったんだぞチクショウ!!
特に命の危険を本気で感じたあの衛星兵器は、キサラギの巨大兵器のレーザー砲をパクって何とか落としたんだからな!!ホントは逃げたかったのに逃げたら百万の罰金と社会的抹殺だったから決死の覚悟だったんだぞ!!それなのに特別手当が千円札一枚だったんだぞクソッタレ!!
それとあの軍服幹部はストーカーの如くしつこいし!!
「これは本当に期待できるぞ……フヒヒヒ……」
そしてスノウはまたしても怪しい笑みを浮かべ、笑い声を洩らしている!!
よし、コイツの世話になるのだけは止めておこう。世話になったが最後、骨の髄まで絞り取られるだろうからな!!
スノウをオレの心の中で第一級の危険人物認定していると、この世界ではあり得ない筈の存在が視界に入った。
「なあ、あれって……戦車だよな?」
六号も同じことを考えたのか、壊れて使い物にならない鉄の塊―――“戦車”を指差す。
「せんしゃ?この
戦車がアーティファクト?つまり、何かしらの原因で科学技術が一気に喪失したのか?
「これは要調査対象だな。さっきの魔法の件もあるし―――」
「なあ今、魔法って言ったよな?言ったよな!?」
「あ、ああ。だが私は使えないぞ。魔法の才を持つ者は限られているからな」
六号さーん?スノウとのファーストコンタクトで、オレの現状を魔法を刻まれておかしくなったという設定であることを忘れていませんかー?
「エクスプロージョンッ!!」
六号は何を考えたのか、頭上に右手を掲げてゲームで有名な爆発魔法の名称を叫ぶが何も起きなかった。
「……おかしなことを口走ると言っていたが……」
「そういうことです。そっとしておいて上げてください」
……アリスによる設定が早速活躍したな。良かったな、六号。
オレは無言で六号の肩に手を当て、そのままアリスとスノウの後を追っていく。
「今のがすごく心に刺さったんですけど……」
そんな六号を無視して。
そして、スノウに案内された先は城の一室だった。
「スノウ、お帰りなさい。任務ご苦労様でした。それでこの方たちは?」
「戦闘員六号だ」
「美少女型高性能アンドロイドキサラギ=アリスさんだ」
「クロスブレードマンです」
この部屋の主らしい、金髪をサイドテールに纏めたお嬢さんの質問にオレ達は自己紹介していく。
「美少女型とか高性能とか自分で言うのかよ?」
「お前も“戦闘員六号”ってなんだ?クロスブレードマンもそうだが、本名はどうした本名は?」
「そっちが定着してしまってつい」
「お前ら頭を下げろ!後、お前はその珍妙な兜を脱げ!我が国の王女様の前なんだぞ!!」
スノウはオレ達に注意しているけど、そんな立場の人に会わせるのなら事前にちゃんと伝えておくべきでは?
まあ、取り敢えずヘルメットは脱いでおくかな。
そう考え、オレはヘルメットをその場で脱ぐ。
その瞬間、王女とスノウの表情が一気に引き攣った。
「……あの、兜は被って頂いて結構です。というか被っておいてください」
「……なあ、アリス。アイツのあの顔は例の魔法の影響なのか?目の隈はもちろん、髪も無精髭も直視できないほど酷いんだが」
「いえ。彼のあの顔は彼の故国のせいなのです。毎日寝る間もなく戦わされた挙げ句、給金も子供が貰える程度のものと話されていたので」
猫被りモードのアリスの説明に、王女とスノウは今度は同情するような視線をヘルメットを被り直したオレへと向ける。
「そ、そのような国が実在しているのですか…………申し遅れましたが、私はクリストセレス=ティリス=グレイスと申します」
王女はブラック
……本当に長い名前ですね。いや、クロスブレードマンも長い方ですけど。
「長え名前」
「ぶ、無礼者!!」
同じ感想を抱いていた六号が口に出した瞬間、スノウが怒りを露に剣の柄に手をかける。
「ふふっ、正直な方ですね。後、私のことはティリスとお呼びして構いませんし自然体で話しかけてもらっていいですよ」
そんな六号を王女改めティリスは笑って受け流したが。
「本当に心が広いですねー。てっきり不敬を盾に何か要求するものかと」
「なあアリス。こういうのが本当の美少女って言うんだぞ」
「可哀想だから教えてやるが、王女さんが笑ったのはお前がバカだからだ。後、そっちは印象良くして多少無理な要求を通し易くするのが魂胆だろうな」
「黙れ!お前達を今すぐ斬るぞ!」
「なるほど。確かに全員、この国の住人ではないようです。私のことを知っていれば、そのような反応はしませんからね。ね?スノウ」
「っ!?す、すいません!!」
ティリスの呼び掛けに、剣を抜いていたスノウは慌てて剣を鞘にしまって謝罪する。
そこから、改めてオレ達について話していく。
「この者達は魔の大森林を抜けてやって来たそうです」
「まあ?」
「実際、この者達がいた場所には大量のデッドリーヘックの死体が転がっており、そこのクロスブレードマンに至ってはユニコーンと同じ速度で走り、息一つ乱れていなかったのでかなり腕が立つと思われます」
「え?それは誠ですか?」
ティリスが驚きを露に問い掛けてきたので、オレは無言で頷いて肯定する。
「ええ。俺は数多の戦闘員を引き連れて、世界を相手取って激戦を繰り広げたもんですよ!!」
「この流れでどうやったらお前の自慢話に繋がるんだよ」
「だってここでアピールしとかないとコイツのオマケになっちゃうじゃないか。せっかくの美少女へのお近づきのチャンスが台無しになるじゃないか」
「―――なるほど。話は分かりました。戦闘員六号様にアリス様。そしてクロスブレードマン様。我が国は現在、隣の国にある魔族の国から宣戦布告を受けてしまっています」
「その辺りは既にスノウ様から聞いております。目的が土地と奴隷であることも」
「はい。そして、我が国には古くからの伝承があります」
「伝承?」
オレがその言葉に首を傾げていると、ティリスはその伝承について語っていく。
ティリス曰く、人類が魔王の脅威に脅かされると、選ばれし者の手に紋章が現れて力を得る。その者はやがて魔王を打ち倒すという、どこぞのゲームの設定のような伝承だ。
……選ばれた人物はめっちゃ不幸ですね。本人の意思関係なく危険地帯に放り込まれるから。
「俺は選ばれし勇者だったのか……っ」
「どう見ても虫刺されだろ。後、勇者に選ばれるのはお前よりクロスブレードマンの方だろ」
六号は虫に刺された左手を掲げ、アリスは冷めたツッコミを入れる。
「え、やだよ。選ばれた勇者とか国にコキ使われる筆頭じゃないか」
そんなアリスの言葉に、オレは明確に拒絶の意を示す。
勇者特権で色々な出費が免除されるとかあるけど、用が済んだらここぞとばかりに請求してくるのが目に見えてるし。
「いえ既に我が国の王子の手に紋章が現れましたので……」
良かったー。マジで良かった。呪いの紋章がオレに現れるという可能性が潰えて。
しかし、貧乏クジ引いたその王子は本当に可哀想だなー。いや、王子だから大丈夫か?
「我が国では魔族との戦いで指揮官が不足しています。六号様にクロスブレードマン様。どうかそのお力を我がグレイス王国に貸していただけないでしょうか?」
ティリスはそう言って祈るように両手を組み、上目遣いでオレ達を見てくる。
「お姫様に頼まれちゃしょーがーねーな!」
「コキ使われたくないから嫌です」
オレが断った瞬間、六号とスノウがずっこけた。
「お前マジで断んの!?こんな美少女がお願いしているのに!!」
「貴様!ティリス様のお願いを断るとか、どういう神経をしているんだ!?」
六号とスノウがオレに文句を言ってくるが、オレの考えは変わりはしない。
「だってこの流れ、絶対にタダ働きになるやつじゃん。そんなのはもうゴメンだよ」
「でしたら、力を貸して頂ける間は一定の給金を前金としてお支払いするのはどうでしょうか?もちろん、戦果を上げればそれに見合ったお金もお渡ししますので」
「書面での契約をきっちりして頂けるなら」
ティリスの提案にオレは条件を提示して受け入れる。
正式な書面で契約して持っておけば踏み倒される心配はないし、主導権を早々に握られはしないだろうから。
「もちろんそれで構いませんよ。逆に私から提案したいくらいですので」
「ではそれでお願いしますね」
オレのその返答にティリスは安堵するように息を吐くのであった。
「まったく!口の聞き方を知らないのか!?私の評価まで下がったらどうしてくれる!」
そうしてティリスとの面会を終えたオレ達は、怒っているスノウに次の場所へと案内されている。
一応ティリスの許可があったとはいえ、形式的に面接はしないといけないそうだ。
「スノウ様。確かにお二人はバカですが戦闘のプロです。手柄を上げれば私達をスカウトしたスノウ様の手柄にもなるでしょう?」
「うっ」
アリスのその言葉にスノウは図星だったのか言葉を詰まらせる。
やっぱりオレ達を利用する気満々だったか。
「まあ、最初から分かっていたけど。絶対に手柄を一人占めするタイプだし」
「つまり俺の力と体が欲しかったんだな!」
「体はいらんわ!もう素直に言うが私は…………手柄と金と名剣が何よりも大好きなんだ!!」
堂々とぶっちゃけたスノウは抜いた剣を頬擦りして危ない顔となっている。
「六号。お前は私と同類の匂いがする。私達の利害は一致するはずだ」
悪い顔で六号に詰め寄ったスノウはそう言うと、今度はオレへと詰め寄っていく。
「クロスブレードマン。私は近衛騎士団の隊長だからな。それなりの地位にいるから邪魔者を潰したり便宜も図ってやれる……どうだ?」
「結構です。アンタに恩を売ったら絶対にロクなことにならないので」
オレのその返答にスノウはムッと表情を顰めるが、すぐに悪い顔へと戻る。
「やはり貴様は中々に手強い……だが、金の成る木となる可能性が高い貴様を簡単には諦めないからな。絶対にこちら側へ引き込んでやる!」
……完全に守銭奴にロックオンされてしまった。
「俺よりクロスブレードマンに執心かよ、この腹黒女!!」
「六号貴様っ!近衛騎士長にそんな口をきいて許されると思っているのか!?それとコイツに媚を売るのは当然だろうが!!」
そんな二人のやり取りをオレは無視していると、周囲を見ていたアリスの声が上がる。
「スノウ様。コレは何ですか?」
アリスが指差す先には、全面水色のルービックキューブのような巨大な四角い物体が中庭らしき場所で鎮座している。
「コレは雨を降らせられるという、伝説級の
マジか。アーティファクトって戦車だけじゃなく、こんな雨乞いマシーンもあるのか。
というか、気候を操作できるとかどんだけ凄いんだよこれ。
「もしかしたら直せるかもしれません。中を開けてみてもいいでしょうか?」
本日二回目のマジか。けど、幾ら何でも国宝を他国の者に触らせは……
「ほ、本当か!?直せるならやってくれ!全責任は私が取る!」
いいのかよ!?普通は王女のティリスに確認を取るものじゃないの!?
いや、ブラック上司と同じ雰囲気のスノウのことだ。この手柄を全部自分のものとするに違いない!!
そんなオレの考えなど知らず、スノウから許可を得たアリスはその機械を調べていく。
「これなら直せそうですね。電源はソーラー式のようですし」
ソーラー式……太陽光電池かい。これの動力源。
というか、太陽光電池で雨を降らせられるとか……変換効率も考えると色々おかしい。
「でかしたぁっ!!私は人を呼んでくる!この手柄は山分けだぞ~~!」
スノウは大喜びでそう言って、その場から離れていった。
「アイツ何もしてねーじゃん」
「山分け以前にこの手柄はアリス一人のもんだろ」
「クロスブレードマンの意見に同意だな。お前たちも何もしてないからな」
六号のツッコミにオレとアリスがさらにツッコミを入れる。
スノウが離れて少しして、
『これより再起動を開始します。パスワードを再設定してください』
パスワードか…………なら―――
「おちん○ん祭り」
「ブラック企業撲滅!」
……。
…………。
……………………は?
『パスワードの設定が完了しました』
……………………え?どっちが登録されたの、これ?
『尚、パスワードの再設定の際に複数の音声が確認されました。精査の結果、“おちん○ん祭り”をパスワードとします』
……六号のが採用されたんだな。ご丁寧に説明ありがとう。
「六号お前、なんてことをしてくれるんだ」
六号のその諸行に同じ悪党のアリスでさえ文句を言うが、対する六号は自慢げな表情をしている。
「いいかアリス?これは王族が祈りを捧げるんだろ?つまりティリスが公衆の面前でさっきの言葉を唱えるんだ。ティリスの恥ずかしがる顔が見られる上に、悪行ポイントもガッツリ稼げるって寸法よ」
うわぁ……さすが悪の組織の一員。中々にゲスい。姑息ではあるけど。
けど……
「これ、“王女”じゃなくて“王族”の祈りで動くんだよな?」
「そうだぞ。つまりティリス以外でも、この国の王様や王子様でもいいんだぞ?」
その瞬間、六号の口から出てはいけないものが出てきた。
きっとその光景を想像したんだろうな。男があれを言えば男女問わずドン引きするし。加えて変態のレッテルも貼られるし。
「……どうしよう。俺、ひょっとしてかなりまずいことをやらかしたんじゃ……」
「ひょっとしてじゃなく冗談抜きでまずいことだよ。“ブラック企業撲滅”なら良かったのに……」
「こうなったら証拠隠滅だ。クロスブレードマン、お前のその剣でぶった斬れ」
「それ、オレに全責任を擦り付ける気だよな?そうなんだよな!?」
このままだとオレのせいにされ……いや、いるじゃないか。全責任を押し付けられる相手が!!
「こうなったら俺がお前の剣を使って―――」
「使って、何をなされるのでしょうか?」
突如聞こえてきたその言葉に、オレ達はブリキのように振り返ると……恐い笑顔をしたティリスと、子犬のように縮こまったスノウの二人がいた。
ピロリロリ~ン♪
『悪行ポイントが加算されます』
六号からそんな機械音声が聞こえ。
オレ達は荒縄で縛られて王様と重鎮達の前に引っ立てられました。
「抵抗するな大人しくしろ!!」
「だったら最初から直させるなよ!この扱いは酷いだろ!!」
「だだ、黙れ!私は修理しろと言ったんだ!!」
六号とスノウが言い合っている間、玉座に座っている立派な髭を囃した王様が秘書官らしき眼鏡の女性と話し合っている。
「……なぜ
秘書官と話を終えた王様はアリスの功績で六号がやらかしたイタズラを不問にするようだ。
……良かったー。逃亡からの指名手配という展開を回避できて。
「どこへなりとも行くが―――」
「お父様、お待ちください。この方達は私が個人的に雇い入れたいと思います」
その解放をティリスが待ったをかけた。
「しかし……」
「ティリス様、素性を知れぬ者を側に置くなど危険ですぞ」
「しかし彼らの戦闘能力と知識を失うのは惜しいですから」
小者臭がするハゲ頭の反対をティリスは正論で返すと、そのまま王様へと向き直る。
「お父様、よろしいでしょうか?」
「そ、そうか……?ティリスがそう言うのであれば、そうなのだろうな」
……この王様、どうやら娘に甘い典型的な父親のようだ。
「六号。クロスブレードマン。どうやら実質的な政治はあの姫さんがやってるみたいだ」
「加えて娘には典型的に甘いと見た。完全にダメな父親だなあれは。しかも公私混同気味のようだし」
「つまり媚びる相手はティリスだな?任せておけ、アリス」
悪の秘密結社キサラギの一員である六号とアリスと普通に喋っているけど、別にいいだろ。正義のヒーローなんてもう二度とゴメンだし。
「では、お父様の許可もいただきましたし、改めてこれからよろしくお願いしますね」
あ、しまった。これ、ティリスに良いように使われるパターンだ。
こうなったらブラックでないことを祈るしか……
「お待ちくださいティリス様!どうかご再考を!!大切な国宝にあんなことをするなど……こやつらは我が国を陥れるのが目的のスパイかもしれません!!」
そう思っていたらスノウが反対意見を述べていた。
まあ、六号とアリスがスパイなのは間違ってないな。まごうことなき事実だし。オレはスパイじゃ……いや、黙認してるから同罪か?
というかスノウ。単に自分の失態を誤魔化そうとしているだけだろ。自分だけ助かろうたってそうはいかないぞ!!
「スパイか……じゃあお前は国に危険分子を招き入れた国賊ということになるけど?」
オレのその言葉に、スノウは怒り心頭といった感じの表情をオレへと向ける。
「貴様っ、ティリス様への忠誠心において随一と評判の……」
「自己評価高いな。第一、お姫様への忠誠心が高いなら、他所から来た人間に国宝の修理を独断でやらせないだろ」
「……スノウ?」
オレのその言葉にティリスが反応してあの恐い笑顔を浮かべる。振り返ったスノウはそれを見て一気に冷や汗を流していく。
「ティ、ティリス様。違うのです。これはヤツの戯言―――」
「そうだそうだー。クロスブレードマンの言う通り、確認した際に直せるなら嬉々としてやってくれと言ったくせにー」
「しかもお前は修理の途中で俺達から離れたよな?それだけで十分な責任問題だぞー」
スノウは慌てて弁明しようとするも、アリスと六号もオレに便乗してスノウを追い詰める言葉を放っていく。
だらだらと汗を流すスノウにオレは更なる追い打ちをかける。
「後、国宝の修理の手柄を山分けと言ったよな?アリス一人の手柄を自分の手柄にもしようとしただろ。それも八割を自身の手柄とでも報告する気だったんだろ?」
「そんなわけあるか!!七割を私の手柄に―――あ」
スノウ、自爆。
見事に墓穴を掘ってくれたスノウに対し、オレはトドメの言葉を放った。
「そしてアリスに修理を依頼した際にこうも言ったよな?『全責任は私が取る』と」
「あ……」
オレのその言葉にスノウは生まれたての子鹿のように身体を震わせ、ティリスは威圧感を感じる恐い笑顔を維持しながらスノウへと近づいていく。
―――そして。
「いきなり遊撃隊長か。なんたって俺は部隊長経験者だからなー」
「オレは経験ないのに副隊長なんだけど……」
「特に問題ないだろ。むしろ雇う以上は妥当な判断だからな」
アリスはそう言うけど正直あんまり嬉しくないなー……肩書なんて面倒ごとを押し付けるのに都合の良いものなだけだし。
「それじゃ案内頼むぜ。遊撃少隊隊員のスノウ」
六号のその言葉に、肩を落として落ち込んでいたスノウがビクリと反応する。
スノウは独断での国宝の修理依頼をした責任を取らされて近衛騎士団の隊長の地位を剥奪。オレ達の隊の隊員となった。ついでに給料も減額。
隊長から平隊員。誰がどう見ても完全な降格と左遷である。
いやあ、道連れ最高!!
「いいか!?私はお前達のことを上司だとは思っていない!!実質的には私が指揮を取るから貴様らは引っ込んでいろ!これは降格などではない!そう、怪しげな貴様らの監視役なのだっ!!」
「と、本人はこう言っているけど?」
「そう思っているのは自分だけだよなぁ?」
「当たり前だろ?国宝があんなことになったんだぞ。切腹ものの失態だ」
「いや、この場合は絞首か毒酒のどちらかだろ」
「確かにそうだな。この国は中世のヨーロッパやフランスに似ているから、そっちの方が妥当か」
「どっちにしろ自害を強要されるのは同じだけどな」
「き、貴様らああああああああああ!!」
オレ達の散々な評価に、平隊員となったスノウは涙目で叫ぶのであった。
プロフィール。
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キサラギ=アリス
《黒》のリリスが作り出した美少女型高性能アンドロイド。
過度な暴力を受けると大爆発を起こすので暴力厳禁。それを脅しに使うこともあるがクロスブレードマンには通用しなかった。
後、ロボットゆえに極度の魔法嫌い。クロスブレードマンの状態を正義の組織がこっそり脳内にチップを埋め込んだ結果だと考えている。
クロスブレードマンの評価:ロボットらしくないロボット。