転送先が死後の世界→異世界だった件   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


待遇が本当に酷すぎた件

「そういや、遊撃隊って具体的にどうすりゃいいんだ?」

「確か六人で動くように言っていたな。本来は五人で一組の小隊のようだけど」

 

六号の質問にオレはティリス……というかあのハゲジジイの言葉を思い出しながら答える。

というかあのハゲジジイ、スノウと同じブラック上司の匂いがするな。良いように使われないように警戒しないと。

 

「なんで規定通りじゃねえの?」

「さあ?たぶん厄介払いに丁度いい理由作りじゃないか?()()()()()()()()()宿()()()()隊員を選べと言っていたし」

 

特別な措置なら一応は名誉ある騎士に取り立てられたオレ達に優遇しているという体が取れるからな。実際は使い潰す気満々だろうけど。

 

「そもそも選ぶ必要ある?クロスブレードマン一人入れば十分な気がするんだが」

「よし六号。今すぐ血祭りに上げてやろうか?」

「すいません申し訳ありませんでしたお願いですから殺さないでください」

 

ドスを効かせた声で剣を少し抜いてオレがそう口にした瞬間、六号は一気に捲し立てるように謝罪と命乞いをしながら、その場で土下座する。

明らかにオレ一人だけを働かせる算段をしていただろ。楽をしようたってそうはいかないからな。危険地帯ではお前も道連れにしてやる。

 

「そんなことをされたら私の評価に関わる!隊の形を取れないとますます私の立場が危うく……!」

 

スノウはこんなことを言ってるけど、とっくに評価はマイナスだからな?いや、クビが残っているから焦っているのか?

一応スノウは直前までそれなりの地位にいたから給料は良かった筈なのに、何でこんなに焦って……

……もしかして。

 

「借金でもあるのか?」

 

オレのその言葉にスノウはピクリと反応した。

あ、図星だなこれ。

 

「どんだけ金遣いが荒いんだよ。金が好きなのに貯めずに散財するとか」

「違う、違うぞ!!私には借金なんかない!名剣コレクションと愛剣フレイムザッパーのローンがあるだけだ!!」

 

消耗品の武器をローン払いかよ。いや、一括ではなくローンで支払うとかどんだけ買ってるんだよ、その名剣達を。

オレのカラフルセイバー?バイト先からの支給品だが……“試作品”だからなー。実戦データは取り終えた筈なのに正規品を支給してくれないし、試作品だからスーツ共々たまに動作不良を起こして動かない時があったし。

 

 

――――――――――――

 

 

「それにしてもアレの装備、本当に不良品だったわねー。私がちょっと手を加えた際に不具合のある部分も直したけど……壊れると爆発するとか欠陥品としても酷すぎよ。リミッターがなかったら使用者は間違いなくすぐに爆死していたわよ、あれ。それよりも、特典として連れていかれたアクアの仕事を引き継いだクソ真面目な天使のせいで仕事が増え―――」

 

 

――――――――――――

 

 

「とにかく!我が部隊は私を含めたお前達三人だけだからな!足りない分はその宿舎にいる連中から選ぶ!!いいな!?」

「へいへーい」

 

明らかに適当な返事をする六号にスノウは眉間にシワを寄せるが、すぐに気を取り直してアリスの方へと顔を向ける。

 

「アリスはどうするか……一応、宿舎は関係者以外は立ち入り禁止で―――」

「はぁぁ?」

 

スノウのその言葉に、アリスはキレ気味に反応した。

 

「この優秀な自分だけ除け者か?六号の部隊所属に決まってんだろうが!そんなんだから降格させられるんだよ!!」

 

あ、猫を被るのを止めたなアリス。言葉の羅列からしてこの世界の言葉で喋っているだろうから。

 

「あ、アリス?子供なのになんて口の悪い……それに私に対してのその口の聞き方はなんだ!?」

「ああ?上司である六号とクロスブレードマンに舐めた口を聞いているお前にだけは言われたくねぇぞ。第一、今のお前は平の隊員だろうが。この守銭奴の出来損ないが!」

「な……し、しかし隊には役割というものがな……それに六号とクロスブレードマン、私の三人は前衛の騎士だから後衛の魔法使いと治癒術師は必須で―――」

「高性能な自分は何でもできるつーの。お前のような未開人には理解できない超テクノロジー、治療用ナノマシンを活かして衛生兵を参謀と兼任してやってやるよ!だから、その治癒術師とやらはいらないな!!」

 

憐れ、治癒術師。勝手に不要な人員扱いされて。

それにしても本当に感情豊かだな、このロボットは。

後、せっかくだから聞いておくか。

 

「てか、お前と六号は敵だったオレと一緒でいいのかよ?」

「正義のヒーローと悪の組織の対立はお約束だろ。ヒーロー止めたいお前と敵対する意味も今はないしな」

「俺だって変態タイツ共を何人も葬ってるし、そこはお互い様でいいだろ」

 

うわあ、結構ドライな反応だな。オレも散っていったヒーローの敵討ちをするほどの情はないし、忙しすぎて関わり自体がなかったし。

情報なんて、オペレーターの子とクソ上司からしか伝わってこなかったしな。

 

「まあ、遺恨がないなら別にいいかな」

「また六号とアリスはニホンゴを……クロスブレードマンの言葉から何となく内容は理解できるが……」

 

そうしている内に宿舎へと辿り着くと、宿舎前で戦闘訓練しているのは老人と女性がほとんどだった。

 

「年寄りや若い女が多いな」

「魔族との戦いで多くの若い男を失ったからな。―――訓練やめ!これより小隊の編入を執り行う!!」

 

スノウは訓練している者達に大声でそう告げると、オレ達に振り返って紙の束を突き出してくる。

 

「小隊の隊員は私が決める。お前達は履歴書だけ目を通しておけ」

 

それだけ言うとスノウは集まってきた隊員へと向き直ってしまう。

 

「ここは普通、上司の人間のサポートに回るんじゃ……」

 

オレは勝手に決めていくスノウに呆れながらも、六号とアリスと一緒に手渡された履歴書を確認していく。

 

「てか、文字読めんの?オレは何故か普通に読めるけど」

 

見慣れない文字なのに何て書いてあるのか普通に分かるから恐い。本当にオレの頭はどうなってんの?

 

「俺も普通に読めるぞ。つまり不思議パワーに―――」

「お前が読めるのは脳のチップに自分が翻訳したデータを送って覚えさせているからに決まってるだろ。一々同じ説明させんな」

「だからそれがちょー怖いんだって!?」

 

六号とアリスのコントを聞きながらも、オレはアリスが捲っていく履歴書にある名前を確認していく。

《味方殺しのドジっ子魔法使い》、《誤射の多い残念弓兵》、《よく武器が折れる槍使い》、《酒乱のぼったくりシスター》……

肩書の時点でヤバい気しかしない。もちろん悪い方向で。

 

「“《武神》アレキサンドライト=グレイプニール”なんていいじゃないか。めっちゃ強そうな名前だし」

「そいつは八十歳超えの爺さんじゃないか。そいつよりこの二人だよ」

 

アリスがそう言って見せてきたのは『《戦闘人造キメラ》ロゼ』と『《ゼナリスの大司教》グリム』という二人の履歴書だ。

 

「討伐数が他の連中と比べてぶっちぎりだ。編入させるならこの二人だな」

「いや、さっきの爺さんの討伐数はその二人よりもずっと多いぞ。《武神》という肩書きからしても、かなりの実力者と思うんだが」

「爺さんだから戦闘中にぎっくり腰になったらどうすんだよ?それでぽっくり逝かれても困るし、キサラギは捨て駒はしない主義だからな。たまに肉壁にはするが」

「ああ、だから無人兵器で足止めして衛星兵器でブッパしてたのか」

 

意外と社員を大事にするんだなキサラギは。少なくともあのバイト先よりかは。

……肉壁発言は無視で。

 

「全員集まったな!では小隊編入者を発表する!まず……だっ!?」

 

アリスは編入者を発表しようとしたスノウの髪を引っ張って強引に中断させ、二人の履歴書を突きつけた。

 

「待てスノウ。編入させるのはこの二人だ」

「うっ、いや、この二人は……せめてどちらかをアレキサンドライト様に……」

「お前らどんだけジジイが好きなんだ?いいからこの二人をさっさと紹介しろ」

 

アリスに強く押されたスノウはしぶしぶといった感じで二人を呼び寄せる。

 

「私の名はロゼ……戦闘用キメラのロゼ。あなた達に私が使いこなせる……?」

 

そんな台詞と共に現れたのは片角、悪魔の片翼、尻尾を生やしたオッドアイと長いメッシュの少女だ。香ばしいポーズをして。

……何、この厨二病末期の痛い子ちゃんは。これは乗るべきなのか?

 

「俺は戦闘員六号。改造手術を受け、本来の名と過去を捨てた戦闘機械。よろしく頼むぞ、戦闘用キメラのロゼ……!」

 

六号はロゼと名乗った少女と同じポーズで痛々しい自己紹介をした。

……仕方ない、乗るか。黒歴史になるけど。

 

「オレはクロスブレードマン……数多の色の力を駆使して戦う、今回設立された遊撃隊の副隊長の剣士だ。これからよろしく頼むぞ」

「自分はキサラギ=アリスさんだ。お前らのような痛い子ちゃんの扱いは慣れてるから安心しろ」

 

オレもロゼに合わせて剣で顔を半分隠して自己紹介するも、アリスが普通に自己紹介&痛い子認定でロゼは恥ずかしげに顔を覆って後ろを向き、その場で蹲った。

 

「お前も合わせてやれよ。クロスブレードマンも合わせたってのに」

「ここで合わせないと逆にいたたまれないぞ。後、これはお約束の気がするし」

「そんなお約束のバカな遊びに付き合ってられるか。それとお前、恥ずかしがってないでいいからこっちに来い」

 

本当に容赦ないな!?流石悪の組織、キサラギが開発した悪のロボットだ!!

 

「あたしを作ったお爺ちゃんの遺言で自己紹介はこうって……本当はこんなバカなことしたくないのに、お爺ちゃんの遺言だから……!」

 

ロゼはお爺ちゃんっ子か。それとこっちが素なのか。

 

「……お前は食ったもんの能力を取り込めるのか?」

「は、はい。一口二口じゃ駄目ですけど、魔獣の肉を食べ続ければその特性を取り込めるんです」

 

食った魔獣の特性を取り込めるか……うん、怪人の特性だな。

 

「その角や翼、尻尾は魔獣の肉を食べた結果か?」

「はい!一角獣鬼や爆炎トカゲのお肉ばかりを食べていたので、今では口から炎が吐けます!!」

 

マジか。もしそうなら……

 

「バッタを食べたらどんな見た目になるんだろうな?」

「昆虫系は嫌です!!」

 

即却下するほど昆虫系は嫌なのか。食べたら一撃必殺クラスの凄いキックを放てる可能性が高いのに。

 

「……おいアリス、怪人見習いだ」

「ああ、コイツは逃がすわけにはいかないな。それと、バッタは折を見て食わせてみるか」

「それはいいな。戦力も大幅に上がるし万々歳だ。なんたってバッタだからな」

 

ああ、見た目と能力から二人にロックオンされてしまったな。憐れ、ロゼ。

 

「な、なんですか……?そちらの二人はよく分からない言葉を話して……それと副隊長さん?なんで手を合わせているんですか?すごく嫌な予感がするんですけど!?」

 

ああ、また日本語で話してるんだな。

え?勧誘を止めないのかって?ここで止めてブラックな正義の組織にコキ使われるくらいなら、見逃すのがこの子の幸せに繋がるだろうからな。

 

「……あれ?何か変わった食べ物を持ってませんか?すごく良い匂いが……」

 

ロゼはそう言って六号をクンカクンカしている。

そんなロゼの前に六号が取り出したのは……カロリー○イトモドキより数十倍美味しいカロリーゼットだった。

 

え?何で知っているのかって?怪人が逃げた時に落としたのを食べたからだよ!!

「欲しいなら……俺の言うことなんでも聞けよ」

「なんでもですか!?それはさすがに……でも、抗いがたい良い匂いが……!」

 

……これ、警察に通報した方がいいのだろうか?いや、この世界の場合は憲兵か?

そういえば、カロリーゼットで思い出したが、確か懐にあのクソ不味い保存食があった筈。

 

「おいクロスブレードマン。それはなんだ?」

「支給されていたクソ不味い保存食。捨てるのも勿体ないしどうしようかと……」

「ちょっと貸せ。どんな材料を使ったら不味くなるのか気になるからな」

 

アリスがそう言ってきたので、オレはあっさりとその保存食を渡す。

そこで、中身を確認したアリスから驚愕の事実を知ることとなった。

 

「……この保存食、消費期限がとうに過ぎてるぞ」

 

……………………え?消費期限切れ?

 

「いや、パッケージにある期限はまだ二月くらい先―――」

「期限と中身の状態が一致してないんだよ。大方、売れ残って廃棄することになったカロリー○イトを外の箱だけ変えて支給していたんじゃないのか?というか“発酵保存食品”ってなんだよ?チーズや梅干、漬物じゃねえんだぞ」

 

え?じゃあ、最初の頃にお腹をよく下していたのは不味かったからじゃなく期限切れで痛んでいたから?

あのクソ上司が、会社が負担してるから食費は給料から引かれないと言ったのも……元手がタダだったから?

 

「嘘、だよな……?胃薬も下痢止めも自腹だったのに……?」

「状態からして半年は確実に過ぎてるぞ。保存食でさえ廃棄のものとか、お前が所属していた正義の組織は本当にクズの極みだな」

 

その瞬間、オレはその場で崩れ落ちた。

バイト先のブラックぶりは、オレが知っていたのよりも酷かったようです。もう、キサラギが正義に見えてくるよ。

今回の侵略も環境や食料問題の解決も狙っているみたいだし、むしろ企業としてはめっちゃ真っ当ではなかろうか。

 

「あ、あの……なんで副隊長さんは崩れ落ちてるんですか……?」

「今はそっとしておいてやれ。あまりにもアイツが不憫すぎる」

 

日本語が理解できないロゼは困惑しているが、六号は涙を浮かべて本気で同情している。

 

「……つ、次!グリム!!」

 

そのいたたまれない雰囲気から逃げるように、スノウがもう一人の編入者を呼ぶ。

現れたのは……木製の車椅子に座った女性だった。

 

「初めまして。私はグリムよ。ねえ二人は妻帯者?ちなみに私は独身よ。こんないい女なのに」

「あ、これ駄目な女性の典型的な台詞だ」

「誰が駄目な女性ですって!?こんないい女を無視した男たちは全員節穴なのよ!!」

 

オレの思わず口にしてしまった言葉にグリムが食い気味に反応する。

たぶん、その反応が独身の原因だと思います。

 

「どうやら副隊長さんは彼女持ちのようね。いいわ、偉大なる―――」

「彼女?彼女なんて……毎日朝早くから夜遅くまでずっと戦わされ続けたオレにいるわけないだろぉおおおおおおおおっ!!」

 

そもそも出会い自体がないし!!あんな戦闘だらけの毎日でどうやって彼女作れって言うんだよ!?

オペレーターは女性の声だけど通信でしか知らないし、クソ上司は中年の男だし!!

あの女幹部?バトルジャンキーだからノーカンだ!!

 

「そ、そう……ごめんなさい……まさか出会いすらなかったとは思わなくて……」

「本当にどんな環境だったんだ……」

「少なくともウチより酷いのは確実だな」

「元気出してください副隊長。これ上げますから」

 

全員から同情の視線が集まり、ロゼに至っては六号から貰ったカロリーゼットを渡してくる始末だ。

うう……優しさが染みる!!

 

「えっと……グリムは魔法使いなのか?」

「せ、正確には魔法使いじゃなくて奇跡の代行者ね。不死と災いを司る偉大なるゼナリス様のお力を借り受けるのよ。私はゼナリス様の信徒だからね」

 

不死と災いを司る神か……普通に邪神じゃないか。

そう言えばあの夢に出た自称女神は時間と空間を司る神に仕えていると言っていたけど……自称女神は何を司っているんだ?

 

「じゃ、邪神?」

「失礼な!バチが当たるわよ!!」

 

若干引いた六号の言葉にグリムが怒りを露にして叫ぶ。そして妖しい笑みを浮かべると、自身の丈の長いスカートの裾を少し上げた。

 

「……ねぇ隊長さん。スカートの中身が気になるでしょう?ゼナリス様を侮辱したことを悔い改めなさい。そうすれば―――」

 

その瞬間、六号はおもいっきりグリムのスカートを捲った。それも一切の躊躇もなく。

 

ピロリロリ~ン♪

『悪行ポイントが加算されます』

 

「黒か。清楚系じゃないのかよ」

「……大司教なのにエロ下着かよ。この世界の宗教はどうなっているんだ?」

「あああああああああああああああッ!?」

 

オレ達が感想を言っているとグリムは羞恥から絶叫しながら慌ててスカートを押さえて下着を隠す。

グリムの下着は六号が壁となって見えなかったが、下着を六号に見られたグリムの顔は真っ赤で涙目である。

 

「本当は見せないつもりだったのに!ねえ、ちゃんと責任取ってよね!スカートの中身を見たその責任を取って養ってよね!専業主婦として!逃がさないわ!特にスカートを捲った隊長さんは絶対に逃がさないからっ!!」

「うわぁ……行き遅れの地雷女性だよ。後、オレは見てないから何の責任もないし」

「行き遅れと言わないで!!」

「落ち着けよ、怪人紐パンパン」

「その呼び方は止めて!この下着着けてると彼氏が出来やすいってピヨコクラブに載ってたのよ!!」

 

紐パンって……完全にアダルトな下着じゃないですか。

それと育児雑誌のようなタイトルの本が出回ってるんですね。

 

「まったく……厄介者ばかりの中でさらに問題児を集めたな……私はお前たち(おちこぼれ)と馴れ合うつもりはないからな。私ならすぐに元の地位に返り咲けるからな」

厄介者ねえ……

 

「それ、ブーメランだからな?」

「そうだぞー。お前も十分に厄介者に入るぞー。しかも最後の言葉で左遷と降格を認めてるしー」

「い、いや違うぞ。今のは言葉の綾で!私は怪しいお前達の監視のために!!」

 

オレと六号の指摘にスノウは慌てて反論するも、説得力は皆無です。

金に汚く、手柄欲しさに勝手に国宝を修理させたんだから。

 

「だからそう思ってるのはお前だけだって。少しは現実を見ろよな」

「そうだぞー、左遷降格隊員ー」

「隊員なら立場は私たちと同じね。ひゅーひゅー」

「や、やーい」

「左遷降格言うな!断じて違うからな!!」

 

アリスの辛辣な指摘や六号の囃し立て、グリムとロゼも乗って六号と一緒に煽るもスノウは必死に違うと反論する。

 

「とにかくお前達は私の指示を聞けばいいんだ!!」

「いや、隊員に降格したあんたにその権限はないでしょ」

「クロスブレードマンの言う通りだぞ。上下関係はちゃんと守らないとなー?」

「ふざけるな!腐った目をした男と、不健康な顔の男が部隊を率いるなどと!それだけで我々の名誉に関わるのだ!」

 

名誉って……この隊に名誉なんて元からあるのか?単に自分の手柄欲しさから部隊の指揮権が欲しいだけだろ!!

そんなお前にやるくらいなら、隊長職の六号かロボットのアリスに指揮権を渡した方が百倍マシだ!!

 

「第一、お前達は学が無さそうではないか!私は最高位の大学卒だが、お前達はちゃんと学院を卒業しているのか?」

 

コイツ……学歴自慢してきやがった……!こっちはブラック企業のせいで中退させられたのに!!

努力不足?出席自体をさせてくれなかったからそれ以前の問題なんだよ!!

オレが怒りで拳を握りしめていると、スノウはそれを見てさらに挑発しいく。

 

「ほう?殴る気か?できるのか?殴る度胸があるならやってみろ!!」

 

……ほう。殴っていいのか?じゃあ、お望み通り殴ってやるよ。軽くウォーミングアップした後でな!!

オレは近くにあった木に向き直ると、その木を右ストレートで殴り飛ばした。

 

バキッ!!

 

「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

「……今、木が真っ二つに折れたよな……?」

「は、はい……あたしにもそう見えました……」

「え、ええ……それも拳一つで」

「拳一つで木を折るか……さすが最強クラスのヒーローだな」

「マジでコイツとだけは戦いたくねぇ……」

 

外野は何か言ってるけど、今はスノウを一発殴ることが重要だ。

オレが向き直った瞬間、スノウの足がガクガクと震え出した。

 

「な、なぁ……冗談なんだろ?さすがに冗談だよな?全力で殴らないよな……?」

 

一歩。

 

「さっきのを受けたら下手したら私が死ぬぞ……?それと、何で無言なんだ……?」

 

二歩。拳を握りしめる。

 

「ま、待ってくれ。謝る、謝るから。お前のことは上司と認めるし、二度とバカにしないから!」

 

三歩。拳を弓なりに引き絞る。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。挑発してすいませんバカにしてすいません見下してすいませんお願いですから許してください」

 

スノウ、土下座。

涙でぐちょぐちょに顔を濡らして何度も土下座してきたので、オレも溜飲が下がったので拳をゆっくりと下ろした。

 

「……次学歴自慢したらぶん殴る」

「……はい」

 

オレのドスをきかせた警告にスノウは素直に頷いた。

いやあ、あのクソ上司に仕返しできたような気分だ。あのクソ上司は情報という脅しで反撃を封じていたからな。

もちろん八つ当たりの自覚はあるけど。

 

「スノウ、これで分かっただろ?」

「アイツだけは絶対に怒らせてはいけない。それが身に染みて理解できただろ?」

「…………うん。もう二度とクロスブレードマンは挑発しない」

 

肩に手を置いた六号とアリスに、未だ座り込んでいるスノウは本当に素直に頷く。

 

「ついでに俺のことも隊長として認めるよな?」

「……それは断る」

「はあっ!?ここは流れ的に頷くところだろうが!!クロスブレードマンのことは認めたくせに!こうなったら―――」

 

六号はそう叫ぶと―――スノウの両胸を鷲掴みにした。

 

ピロリロリ~ン♪

『悪行ポイントが加算されます』

 

今度は別の意味でその場にいた全員が唖然となった瞬間であった。

 

 




プロフィール

============
スノウ

グレイス王国の元・近衛騎士団の隊長。金と名剣と手柄に並々ならぬ執着を見せる重度な守銭奴。
原作では責任を取らされて六号の部隊の副隊長だったが、此方では隊員に降格した(現時点で)一番の被害者。
クロスブレードマンも自身の手柄の為に利用する気だったが、その強すぎる実力から手綱を握れないと悟り、現在は後悔している。

クロスブレードマンの評価:ブラック上司と同じ雰囲気がする危険人物。
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